わたかわ 鉄道&旅行ブログ

乗り鉄&旅好きの20代男子が全国を巡る!

【さらば北陸特急】大阪→金沢直通2時間31分の最速達便に乗車。サンダーバード金沢行いよいよ終焉へ…

 

2024年3月3日(日)

本日は大阪駅へとやってきました。

これから特急サンダーバード号にて、金沢へと向かいます。

いよいよ目前に迫った、2024年春のダイヤ改正

今年最大の注目は、何といっても北陸新幹線 金沢~敦賀駅間開業です。

2024年3月16日より、ついに東京~敦賀駅間が新幹線のレールで結ばれます。その一方で並行在来線は経営分離が行われ、今日まで特急街道として名を馳せた北陸本線第三セクター鉄道として新たな歴史を刻み始めることになります。

大阪駅「11番線」は、幾多の駅改良工事が行われつつも長らく北陸特急のホームとして君臨してきました。また、北陸よりもさらに先の東北日本海側・北海道方面へ向かう夜行列車も使用してきた歴史あるホームです。

かつてはこのホームから富山へも乗り換えなしで行くことができていましたが、2015年の新幹線金沢開業時に金沢以東の在来線特急が廃止され、富山へは途中の金沢で在来線特急から新幹線に乗り換える方式となりました。ホームへと上がる頭上の看板は富山の部分にのみ「金沢のりかえ」の表記がありますが、これも2024年3月16日からは福井・金沢・富山の全ての都市に対して「敦賀のりかえ」ということになります。

私が最後の乗り納めとして選んだ列車は、大阪17時42分発の特急〔サンダーバード37号〕金沢行です。途中停車駅は新大阪、京都、福井の3駅のみで、新幹線の終着駅となる敦賀さえも通過してしまいます。

途中停車駅が新大阪・京都・福井のみのサンダーバードは1日3往復設定されていますが、その中でも今回私が乗車する「37号」は最も所要時間の短い「真の最速達便」。何とわずか2時間31分で267.6kmを走破するため、表定速度は約106km/hとなっています。

使用車両は681系・683系特急電車で、本日この列車は堂々12両編成で運行されます。何もこの車両が新幹線開業で引退するわけではなく、また「サンダーバード」という列車自体も大阪~敦賀駅間で引き続き運行されるわけですが、これが福井・金沢・富山のいずれの都市へも直通しなくなってしまうというところに鉄道ファンは寂しさを覚えるわけです。

私自身はこれまで何度かサンダーバード号に乗車したことがありますが、首都圏在住からか新幹線で金沢へ向かい、その先の上り(金沢→大阪)で乗ることが多く、大阪発の下り列車にはほとんど乗ったことがありません。大阪駅11番線から発車する特急で金沢へ、という体験は私にとってとても貴重な経験です。

今回は普通車指定席を利用します。最後なので贅沢にグリーン車の利用も考えましたが、やはり最後こそこれまで何度も乗ってきた普通車で締めくくりたいという思いがあります。

17時42分、列車は定刻通りに大阪駅を発車。梅田の建物群を横目に、一路金沢を目指します。

すぐに次の新大阪駅へ停車するため、この時点ではまだ詳しい放送などはかかりません。車内は大半が空席です。

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新大阪を発車し、「北陸ロマン」の車内チャイムの後、改めて自動放送による停車駅の案内等がなされます。新大阪発車後のためこの後の途中停車駅は京都・福井の2駅のみで、終点の金沢を含めても3駅のみのアナウンスは非常にあっさりとしています。大阪駅新大阪駅発車時に車掌さんより「この列車は停車駅の非常に少ないサンダーバード号です、停車駅にご注意ください」と繰り返しアナウンスがありました。

ちなみに最も停車駅の多い〔サンダーバード〕の途中停車駅は新大阪、高槻、京都、片田、近江今津敦賀、武生、鯖江、福井、芦原温泉加賀温泉、小松、松任の計13駅です。

列車は先頭から順に1号車がグリーン車、5・6号車が自由席、そのほかの号車は全て指定席です。今回のダイヤ改正に合わせ、〔サンダーバード〕でも自由席を廃止し全車指定席となることが発表されています。

今回はJR西日本インターネット予約「e5489」より、WEB早特15を利用しています。大阪~金沢駅間を特急の普通車指定席で移動すると通常7,790円(乗車券4,840円特急券2,950円ですが、それぞれ約15%割引となり6,610円(乗車券4,110円特急券2,500円で乗ることができています。乗車券と特急券がセットになったインターネット予約限定商品で、チケットレスではないため乗車前に必ず発券する必要があります。

大阪駅を出てから30分かからずに、列車は京都駅に到着。日曜日の夜とあってか京都駅からの乗車は大変に多く、多くはスーツ姿のビジネス客や週末を関西で過ごした行楽客等のようでした。京都駅停車中も車掌さんは「停車駅にご注意ください、次は福井です」と繰り返しアナウンスし、注意喚起を図っていました。

18時09分、列車は京都駅を発車。車内の表示器にも「次の停車駅は、福井です。」とスクロールが流れます。

京都~福井駅間は148.1km。東京~富士・沼田・韮崎等にあたります。これほどの距離をノンストップで走り抜ける在来線特急はそうそうないはずです。

京都駅から車内は満席に近くなり、車内のあちこちで缶ビールを開ける「カシュッ」という音が聞こえてきます。観光客も一定数乗っているとは思いますが、大勢・大声で騒ぐような人はおらず、混雑こそあれど平穏な車内です。

山科駅を通過すると列車は湖西線へ入ります。外はすっかり暗くなり、車窓はほとんど見えません。

ここで私も夕食としたいと思います。というのも「大阪駅11番線にある駅弁売場で買った駅弁を金沢行のサンダーバードの車内へ持ち込んで食べる」という経験を一度でもしてみたかったのです。なお選んだのはサンダーバード沿線とは全く関係ない「姫路城 鶏のり弁」(1,180円)です。

開けると姫路城の写真が立体的に飛び出すしかけがついており、なかなか手の込んだ掛け紙です。姫路城の世界文化遺産登録30周年を記念した商品のようです。

中にはおかずがぎっしり詰まっており、総面積の3分の1ほどを占める大きなちくわの磯部揚げのほか、鶏肉の照り焼き、にんじん、小松菜、玉子焼きなどなど。一つ一つおかずを味わっていくうちにご飯と海苔が姿を現します。

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駅弁に舌鼓を打っているうちに、列車は滋賀県を抜けていよいよ福井県へ。そしてちょうど19時頃、敦賀駅を通過します。暗いため非常に分かりにくいですが、ちょうど在来線ホームの向こう側に大きな新幹線駅舎があり、そのそばを颯爽と通過していくのです。

敦賀駅は決して小さな駅ではありません。今回開業する新幹線の終着駅となることが何よりの証拠ですし、1日3往復の速達サンダーバード号を除いた全ての定期旅客列車が停車しています。しかし逆にこの敦賀駅を通過することによって、驚異の大阪~金沢2時間31分という記録を打ち出すことができているのもまた事実。それほどに関西と北陸は、切っても切れない関係にあるわけです。

武生・鯖江ももちろん通過し、19時29分に福井駅へと到着。京都駅を出てから、ちょうど1時間20分ぶりの停車となります。降車される方も多数いらっしゃいました。

金沢駅については引き続き七尾線方面の特急〔能登かがり火〕があるためわずかながらJRの特急が残りますが、福井駅に関しては特段そのような列車もないため3月16日からJRの特急は一切やってこないことになります。「新幹線開業後もサンダーバード敦賀止まりではなく福井まで走らせてほしい」という声もあるようですが、実現には至っていません。

福井駅を発車すると、次の終点金沢駅までは40分ほど。

サンダーバードの車内には、北陸新幹線敦賀開業を知らせる広告があります。大阪~金沢駅間は最速2時間9分となるようで、現在のこの列車から22分の短縮となります。

一見するとそれほど大きな短縮に見えないかもしれませんが、これはこれで大きな意味があると思うのです。というのも、2015年の新幹線金沢開業時に東京~金沢駅間が約2時間半で結ばれたことで、金沢からは「東京も大阪もだいたい同じ」時間で出られるようになりました。これがきっかけで北陸地方の「東京志向」が強まりつつあり、長らく経済的・文化的に結びつきの強かった関西方面とのつながりが相対的に弱まったような印象を与えてしまっていた側面があります。

しかし今回の新幹線敦賀開業によって、わずかではありますが金沢からは再び「東京へ出るよりも大阪へ出る方が近い」という状況に戻ることになります。新たに敦賀駅での乗り換えが生じるため一概に比較するのは難しいかもしれませんが、関西と北陸の結びつきを再び強く取り戻したい、そんな矜持さえ感じる今回の新幹線敦賀開業でもあると思います。

石川県に入り、まもなく終点金沢が近づいてきました。

北陸本線で特急の運行が始まったのは、遡ること63年前の1961年。サンロクトオ改正(S36.10.1)にて大阪~青森・上野駅間を金沢経由で結ぶ特急〔白鳥〕の運行が開始されました。またその後1964年には大阪~富山駅間で特急〔雷鳥、名古屋~富山駅間で特急〔しらさぎがそれぞれ運行を開始し、今日に至る北陸特急の原型はちょうど60年前につくられました。

特急〔白鳥〕はその後大阪~青森駅間のみの運行となり、やがて2001年に廃止となります。かつては大阪~金沢・富山に限らずその先の新潟までを結ぶ優等列車も多数存在していた北陸本線ですが、時代とともにその数は徐々に減っていきました。

特急〔サンダーバード〕の名称が登場したのは1995年。大阪~富山・和倉温泉駅間で運行する特急〔スーパー雷鳥〕に括弧書きで(サンダーバード)の愛称が付けられました。しばらくの間は〔雷鳥〕と〔サンダーバード〕が混在する時代が続きましたが、2011年をもって〔雷鳥〕は廃止され、いよいよ関西~北陸間〔サンダーバード〕一強の時代となります。

2015年に新幹線が金沢まで開業したことで金沢以東での特急が全て廃止となりましたが、引き続き金沢まで走る〔サンダーバード〕はまだ北陸特急としての意地を見せ、表定速度100km/h超の速達便をはじめ1日1往復限定で和倉温泉発着便も残されていました。

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しかし石川県・福井県まで運行されてきた〔サンダーバード〕もいよいよ終わりを迎えようとしています。

厳密には敦賀駅福井県ですから、今後も〔サンダーバード〕は北陸地方に一応乗り入れはします。しかし敦賀駅の北にある「北陸トンネル」が実質的には北陸圏と関西圏の境目となっている側面もあり、今後大阪~敦賀駅間でのみ運行される〔サンダーバード〕は「関西完結特急」の感すらあるものです。

半世紀以上に渡り連綿と続いてきた”北陸特急”、まもなく終焉です。

20時13分、定刻通り列車は終点の金沢駅へと到着。時刻表通り、確かに大阪~金沢駅間を2時間31分で駆け抜けてくれました。本当に頼もしい特急でした。

2024年3月16日より、この広大な金沢駅在来線ホームは全て「IRいしかわ鉄道」のものとなります。毎日当たり前のように〔サンダーバード〕〔しらさぎ〕がやってきていた金沢駅ですが、それも過去の光景となるのです。

金沢駅の在来線コンコース内には、各方面の列車の発車時刻がコンパクトにまとめられた発車標があります。今日まで「京都方面大阪」「名古屋」といったごく当たり前の行先が表示されてきましたが、これらの都市は全て金沢駅から発車する列車の行先ではなくなります。また特急〔ダイナスター〕〔おはようエクスプレス〕〔おやすみエクスプレス〕は新幹線の開業区間と完全に重複するため、今回の改正で完全に廃止となります。

watakawa.hatenablog.com

訪問時はまだ金沢駅構内にも「北陸線」の文字が随所に残っていますが、おそらく簡単に剥がせるシールのようなものなので、もしかすると既に下にはIR仕様の新しい表記の案内が準備されているのかもしれません。

2015年以前は自動改札機すらなかった金沢駅ですが、新幹線金沢開業に合わせ設置されました。9年の時を経て、今度はこれもIRのものになるということなのでしょう。頭上には大きく「JR線(北陸線七尾線)・IRいしかわ鉄道のりば」とあります。

在来線改札前には「ありがとう北陸本線」と書かれたメッセージボードが用意されています。非鉄道ファンと思われる地元の方々も足を止めて見ていたり、実際にメッセージを書いて貼り付ける光景も見られ、やはり並々ならぬ思いがあることを感じます。

一方でIRいしかわ鉄道にとっては、金沢~大聖寺駅間が新たにJRから経営分離されることで晴れて「全線開業」を迎えることにもなります。IRいしかわ鉄道やハピラインふくいにとっては、優等列車の制約を受けることなく利便性の高い普通列車のダイヤを組むことができるため、運賃こそ上がれど日常利用においては使い勝手がよくなる場面も多いではないでしょうか。

いよいよ、北陸3県全てが東京と繋がる日がやってきます。一人の鉄道ファンとして、もちろん大阪までの1日も早い北陸新幹線全線開業を願っているところではありますが、まずは今回の敦賀開業に大きな期待をするところです。

ありがとう、北陸特急。

ありがとう、サンダーバード金沢行。

 

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

【始業に間に合う】新幹線開業で不可能になる「金沢→大阪」朝一番の最速ルートで移動

 

2024年3月4日(月)

おはようございます。本日は北陸本線金沢駅にやってきました。

まだ外は真っ暗ですが、それもそのはず…何と現在の時刻は午前4時30分過ぎ。いやはや当ブログ史上最も朝早いオープニングではないでしょうか。いや朝というかこれはもはや深夜と呼ぶべき…?

金沢駅のシンボル「鼓門」は日中こそ多くの観光客でごった返していますが、この時間帯ともなると写真を撮る人は一人もおらず、無人の状態です(ただし消灯しているので非常に見えにくいのですが)。

本日はここ金沢駅より「大阪へ朝一番に到着することのできるルート」で移動していきたいと思います。夜行バス等の手段を除き、当日朝に金沢を出発するという条件です。

ご存知の通り、2024年3月16日に北陸新幹線の金沢~敦賀駅間がいよいよ延伸開業をする予定となっています。これに合わせ、同区間並行在来線JR北陸本線から第三セクターIRいしかわ鉄道・ハピラインふくい)へと引き継がれます。このため金沢駅の東西を結ぶコンコースの頭上に設置された「JR線(北陸線七尾線)」の文字もやがて過去のものとなる見込みです。

新幹線は午前6時からの運行となるため、まだこの時点では改札口が開いておらずシャッターが下りています。しかし発車標は稼働しているようで、東京方面は6時03分発の〔かがやき500号〕東京行から運行が始まり、その後6時16分発〔はくたか552号〕東京行、6時51分発〔つるぎ700号〕富山行…と続きます。

敦賀方面はまだ開業していませんが、発車標は設置され準備は万端といった様子です。

在来線改札口付近には「ありがとう北陸本線」と書かれたメッセージボードがありました。かつては米原から福井・金沢・富山を経由して直江津へと至り、まさに名の通り北陸地方を貫く一大幹線でしたが、2015年の新幹線金沢開業に合わせ直江津金沢駅間が経営分離され、それに続く今回の金沢~敦賀駅間経営分離となります。「北陸本線」自体がこの世から完全になくなってしまうわけではなく、路線名としては米原敦賀駅間のみ残りますが、その距離はわずか45.9km。「本線」としての風格は完全に影をひそめることになりそうです。また金沢駅においてやってくる列車は「北陸本線」ではなくなってしまうため、惜しむ声が多く寄せられていました。

通常「金沢から大阪へ行く」となれば、まず真っ先に思い浮かぶのは特急〔サンダーバード〕でしょう。金沢駅を朝一番に出発する大阪行の在来線特急は金沢5時35分発の〔サンダーバード2号〕で、終点の大阪駅には8時20分に到着します

これでも十分朝早いのですが…実はそれよりも朝早くに大阪へ到着することのできるルートがあります。それが金沢5時10分発の特急〔しらさぎ52号〕米原を利用する方法で、金沢駅サンダーバード2号よりも25分早く出発します。

朝5時前の在来線金沢駅ホームはがらんとしており、人影はほぼありません。ただし金沢4時53分発の七尾線 七尾行があり、これが本日この駅から発車する最初の列車となります。こんな朝早くにもかかわらず、若干名の乗客がいました。

やがて1番線ホームに、ゆっくりと列車が入線。本日福井方面への最初の列車となる、5時10分発の特急〔しらさぎ52号〕米原です。6両編成で、前寄りの6号車・5号車が自由席となります。

この列車を含め、金沢駅からは朝5時台だけで計3本もの特急列車が発車していきます。つまり、金沢から大阪方面・名古屋方面へ朝早くに移動する需要がそれだけ大きいというわけです。

とはいえ、〔しらさぎ52号〕が金沢駅を発車する時点で車内がそれほど激しく混雑している様子はありません。指定席は各車両数名程度といったところです。自由席の方が乗車率は高いように見えました。

5時10分、列車は定刻通りゆっくりと静かに金沢駅を発車。停車駅は松任、小松、加賀温泉芦原温泉、福井、鯖江、武生、敦賀終点米原です。

5時16分、松任駅に到着。朝夕を中心に一部の特急が停車します。普通列車でも金沢から10分ほどの距離ですので、残念ながら松任駅のある白山市内に新幹線駅は設置されません。新幹線開業により”割を食う”特急停車駅の一つです。

余談ですが、こんな早朝ともなれば当然ながら駅弁を入手できるわけがありません。宿泊先から金沢駅までの道の途中で運良く24時間営業のコンビニエンスストアを見つけましたので、そこで食料を調達してきました。

5時28分、小松駅に到着。空港のある街としても知られ、金沢を出て最初の新幹線停車駅となります。こうして特急の車内から撮影する小松駅駅名標なども、やがて大変貴重な光景になることでしょう。

加賀温泉芦原温泉と停車していきながら、列車は石川県を抜け福井県へと入ります。両駅とも観光地ではありますが、温泉街からは離れていることもあり、また何よりまだ早朝ですので観光客がどさっと乗ってくることはありません。指定席車両には、地元の方が若干名乗車されました。3月のこの時間帯、外はまだ真っ暗です。

5時58分、福井駅に到着。福井からはかなりの数の乗車がありました。中には大荷物を抱えたグループ客もおり、車内の乗車率は一気に高まります。やはり北陸地方と関西・中京圏との結びつきの強さを感じます。

福井を出ると列車は鯖江武生の順に停車。武生駅がある越前市内には新幹線駅「越前たけふ」が設置されますが、両駅本体には新幹線が直接乗り入れることはなく、これもまた「割を食う」駅ということもできると思います。ちょうど進行方向左側に乗車しており、この辺りからだんだんと空が明るくなってきたことが分かります。

北陸トンネルを抜け、6時32分に敦賀駅へ到着。大阪方面へ向かう〔サンダーバード〕はこの先湖西線経由ですので琵琶湖の西側を進みますが、今回私はここ敦賀で乗り換えることなく引き続き米原方面へ向かいます。

7時8分、列車は定刻通りに終点の米原駅へ到着。外はすっかり明るくなっています。

ちなみに同じ頃、後続の金沢5時35分発の特急〔サンダーバード2号〕は既に敦賀駅を発車し湖西線内に入ろうというところ。何とかしてこれよりも早く大阪に到着したいわけです。

そこで利用するのが…そう、天下の東海道新幹線米原には新幹線という武器があります。

乗車するのは、米原7時18分発の〔こだま761号〕新大阪行です。〔しらさぎ52号〕から到着してからちょうど10分後に発車するスムーズな接続で、何とかして〔サンダーバード2号〕よりも早く大阪へ着きたいところ。

新幹線ホームへ降りるやいなや、すぐに列車が入線してきました。この列車は始発の名古屋駅を6時51分に発車しており、早朝につきこの区間では〔のぞみ〕の本数が少ないため途中駅での後続列車の待避を一切行いません米原に関しても、到着後すぐに発車となります。

16両編成のこの列車には、N700Sが充当されています。今回は終点の新大阪まで、自由席で移動していくことにします。

列車は定刻通りに米原駅を発車。自由席は1~6・13~16号車と豊富なこともあってか、余裕で着席可能です。車内は通勤途中と思われる方の姿が目立ちます。

さて、〔サンダーバード2号〕との時刻の比較をしてみます。金沢駅を出る時点では〔しらさぎ52号〕の方が25分先行する形で、米原経由のルートの方が少し距離は長いです。また米原駅での10分間の乗り換えはロスタイムとなりますが、それをものともしない新幹線の怒涛の追い上げにより新大阪には何と〔サンダーバード2号〕よりも24分先着。ただし新幹線は大阪駅へ直接乗り入れたりしないので、在来線へ乗り換える必要があります。

そして同様の比較を、ダイヤ改正の前後で行ってみます。新幹線開業後、金沢から大阪方面に向かう手段としてまず利用することになるのが北陸新幹線〔つるぎ1号〕敦賀行です。新幹線は午前6時からの運行となるため、これに合わせ〔つるぎ1号〕も6時00分ちょうどの発車となります。

すなわち現在運行中の金沢5時10分発〔しらさぎ52号〕の50分後の発車となるわけですが、では最新鋭の新幹線の力をもってその時間差を追い詰めることができるかというとそうでもありません。〔つるぎ1号〕敦賀駅到着は6時57分で、実はこの時点で現行の〔しらさぎ52号〕はおろか現行の〔サンダーバード2号〕(敦賀6時53分発)にすら間に合わない時間なのです。このため新たに敦賀始発として運行される〔サンダーバード2号〕は敦賀駅の発車時刻を12分繰り下げて〔つるぎ1号〕からの接続を取ることになり、最終的に新大阪到着は8時29分、大阪到着は8時34分となります。新大阪駅到着時刻は現在の朝一番最速ルートよりも実に38分遅い時間の到着となります。

また、現行の朝一番ルートであれば米原乗り換えのため、乗継割引が適用され〔しらさぎ52号〕の特急料金は半額となっています。しかしこちらは制度そのものがダイヤ改正をもって完全に取りやめとなり、例えば新幹線敦賀開業後に新幹線と在来線特急を敦賀駅で乗り継ぐようなルートであっても乗継割引は適用されません。新幹線開業後について、JR西日本ではインターネット予約での各種割引商品の利用を推奨しています。

曇り空が続いていますが、その雲の切れ間からようやく朝日を覗くことができました。米原~京都駅間は東海道新幹線で最も駅間距離が長い区間となり、ここで一気にスピードを出していきます。

7時37分、列車は京都駅に到着。ちょうどJRの在来線・私鉄・地下鉄各線は朝ラッシュに差し掛かり混雑を迎えているところですが、ここから市内各所への通勤・通学の移動を行うにも十分な時間の余裕があります。

京都駅でかなりの降車があり、車内はかなり空きました。あとは新大阪へ向かうのみです。

在来線の京都~大阪間といえばこの朝の時間帯は大変な混雑でしょうが、それとは対照的にこの新幹線は快適でゆとりある空間を手に入れることができています。

そして…7時51分、終点の新大阪駅に到着!!

列車はまもなく回送へと切り替わりました。

現行ダイヤにおいても、金沢駅を朝一番に出発して大阪市内に朝8時までに到着することができるのはこのルートただ1つのみ。すぐ隣のホームからは約5分の接続で〔のぞみ273号〕博多行もあり、山陽・九州方面へもスムーズに乗り継ぐことができます。

この乗り継ぎルートの注目は、何といっても「大阪市内に朝8時までに到着できる」ということにあります。新大阪7時51分着ですので、新大阪駅大阪駅周辺であれば8時30分始業の会社への出社も可能な時間です。しかしこれがダイヤ改正後となると話も変わってくるもので、金沢駅を朝一番に出発しても新大阪駅到着は8時29分ですから、間に合わない企業が多く出てくる時間帯だろうと思われます。

今回はさらに、〔サンダーバード2号〕を大阪駅で迎え撃つべく在来線に乗り換えて移動していきます。発車標には確かに〔サンダーバード2号〕大阪行の文字も出ており、それより前にも新快速・快速・普通列車が多数運行されています。

時刻を調べずともすぐに列車がやってくる過密運行ですが、複々線区間のため種別によって発着ホームが異なる点には注意が必要です。今回は7時59分発の普通 西明石行で移動します。

新快速でなくて普通なので混雑はそれほどでもない…と高をくくっていると痛い目を見ます。最混雑時間帯であり、普通列車でもこの有様。東京の満員電車で鍛えた耐性とマナーを武器に、何とか乗り込みます。

約4分で大阪駅に到着。ちょうど8時を過ぎたタイミングですが、それでも〔サンダーバード2号〕に20分近く先行することができているはずです。

3番線ホームへ移動してみると、確かに「サンダーバード2号 当駅止」の文字が。8時29分発の列車よりも下に表示されているのは回送されるタイミングの問題で、入線するのはもっと早いです。

8時20分、ようやく〔サンダーバード2号〕が終点大阪駅に到着!

ダイヤ改正後はこの時間に大阪駅に到着することさえも不可能になります。

なお今回はあくまでも「金沢→大阪市内」での話をしておりますが、実は「福井→大阪市内」であればこれまで通り朝8時前に新大阪へ到着できるケースがあります。

今回ご紹介したルートを金沢ではなく福井から利用する場合、福井駅発車時刻はちょうど6時00分。残念ながら福井始発の新幹線は設定されないため、先に示した金沢始発の〔つるぎ1号〕が敦賀駅へ到着する最も朝早い新幹線となります。しかし福井駅であれば在来線でも敦賀へ1本で向かうことができ、福井始発(5時49分発)のハピライン快速に乗れば6時28分に敦賀駅へ到着することができます。現行の〔しらさぎ52号〕にあたる時間帯の特急列車は廃止となりますが、その代わりだいたい同時刻で敦賀米原を結ぶ北陸本線の臨時快速列車が当面の間設定されることになっており、これを利用すると現行の〔しらさぎ52号〕と同様に7時08分に米原駅へ到着することができるのです。

 

一方でやはり金沢駅から朝一番で動き出しても大阪での朝の出社・会議等に間に合わせることができなくなってしまうというのは決して小さくない影響があると考えています。

2015年の北陸新幹線金沢開業時、富山からの朝一番の大阪行特急列車が金沢始発になってしまうために大阪への到着が従来よりも遅くなり、従来通りの形態での営業が困難になるため店を畳まなければいけなくなってしまった富山のとある個人経営の衣料品店の店主の声を取り上げたニュースが今でも印象に残っています(9年前の記憶なのでうろ覚えですが)。

もちろんこれは一例にすぎないのですが、金沢5時10分発の米原行特急が今日まで運行されてきたのにはそれなりの理由があるわけで、実際に私が利用した際も指定席・自由席を問わず一定の需要があったわけです。

新幹線の1日も早い大阪までの全線開業を願ってやみません。

 

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

【新幹線開業目前】北陸特急乗り納めの旅[敦賀・武生・鯖江]

 

2024年3月3日(日)

本日は愛知県の名古屋駅へとやってきました。

いよいよ到来する、2024年春のダイヤ改正。今年も全国各地で様々な話題が飛び交う季節になりました。そんな中でも最大級の注目を集めるのが「北陸新幹線 金沢~敦賀駅間開業」です。1997年の高崎~長野駅間、2015年の長野~金沢駅間に続き今回さらに福井県へ新幹線が進出することになります。

しかしそれとひきかえに、北陸地方を往来していた在来線特急列車はその長い歴史に幕を下ろすこととなります。名古屋・米原金沢駅間では特急〔しらさぎ〕が運行されていますが、この運行区間が名古屋・米原敦賀駅間へと短縮されるため、名古屋駅で「金沢行」の文字を見ることができるのもあとわずかです。

今回はこうした「新幹線開業により見られなくなる光景」を中心に、しっかりと記録しながら北陸方面へおでかけしていきます。

まずは名古屋9時48分発の特急〔しらさぎ5号〕金沢行…ですが、いきなりこれに乗ることはせず、何と名古屋駅のホームにて見送ります

9時48分、列車は名古屋駅4番線ホームから一路福井・金沢へ向け発車。いきなり乗り遅れたみたいな感じになっていますが大丈夫です、実は後から追いかけてあの列車に乗ることができるのです。というかむしろ、今だからこそあえてそのような乗り方をしておくことに意味があります(詳しくは後ほど)。

私の乗る予定の列車まではまだ少し時間がありますので、名古屋名物の「きしめん」でもいただくことにしましょう。名古屋駅ではホーム上でお手軽にきしめんをいただくことができ、今回は在来線3・4番線ホーム上にあるお店で「ワンコインきしめん(500円)」を注文しました。海老天、油揚げ、ネギ、鰹節が入っており、これだけいろいろ具材が入っていながらリーズナブルなのは嬉しい限りです。

さて、私の乗る列車は…そう、東海道新幹線です。

特急〔しらさぎ〕は名古屋を出ると岐阜を経由して米原に必ず停車しますが、その際実は後から名古屋駅を発車する新幹線で追いつくことができるのです。これは現在も、そしてダイヤ改正後も変わりません。

10時14分頃、17番線に〔ひかり635号〕新大阪行が入線。こちらに乗車します。ここまでの途中停車駅は品川、新横浜、豊橋のみで〔のぞみ〕に匹敵する速達ぶりですが、名古屋~新大阪駅間は各駅に停車することになります。

隣のホームには、10時17分発の〔のぞみ211号〕が入線。こちらを先に通し、また接続をとってからの発車です。

〔ひかり635号〕は10時19分、定刻通りに名古屋駅を発車。〔しらさぎ5号〕から遅れること約30分、果たして本当に追いつけるのか…?

悲願の延伸開業となる北陸新幹線の傍ら、今年で開業60周年を迎える東海道新幹線岐阜羽島米原も、1964年当時から新幹線駅が設置されており歴史ある駅です。

乗車することわずか30分弱、10時47分に米原駅へと到着。早足で在来線ホームへと急ぎます。

乗り換え改札を通った先の在来線コンコース内には、「5・6 北陸線 長浜・敦賀・金沢方面」と書かれた大きな案内表示があります。新幹線開業後は敦賀以遠が北陸本線ではなくなり、また金沢への直通特急も廃止となりますので、この付近の案内も3月15日を最後に更新されることでしょう。

ホーム上の発車標を確認…ありました、特急〔しらさぎ5号〕金沢行!!

本来であれば米原駅への入線は10時48分とのことですが、本日はどうも少し遅れているようです。

程なくして列車が到着。名古屋駅で見送ったはずの列車をいとも簡単に先回りすることができました。

米原駅では増結作業があり、また列車の進行方向が変わります。名古屋からここまでは6両編成でしたが、本日はここにもう3両を繋ぎます。

車両は681系・683系が使用されています。連結面は先ほど見たのっぺりとした顔ですが、ここから先頭となる反対側の車両は流線形のスタイリッシュな顔をしています。

列車は定刻よりも2分ほど遅れ、10時58分頃に米原駅を発車。ここから北陸本線へと入ります。

列車は前から順に1号車(グリーン車)、2~4号車(指定席)、5・6号車(自由席)、7~9号車(指定席)となっています。米原駅で増結されたのは7~9号車です。

自由席車両は2両分しかないこともあり、比較的混雑している様子。私も何とかして運良く窓側の空席を確保することができたといった様子です。

名古屋からでも乗れる〔しらさぎ〕にあえて米原から乗った理由、それがこちら。「乗継割引」を活用したかったためです。

JRでは、新幹線と在来線特急を指定の駅で乗り継いだ際に在来線特急料金が半額になる「乗継割引」という制度があります。米原駅もその対象となる駅のため、米原から敦賀までの自由席特急料金は760円→380円へと値引きされています。

しかしこの乗継割引制度、残念ながら今回のダイヤ改正をもって取りやめとなってしまうのです。すなわち今回と同様のルートで列車を乗り継いで移動することは引き続きできても、在来線特急の料金は半額にはなりません。さらに、〔サンダーバード〕〔しらさぎ〕等は今回のダイヤ改正に合わせ自由席廃止となることも発表されており、今回使用している「米原敦賀の自由席特急券(乗継割引適用)」は二重の意味で貴重となりそうです。

自由席では、車掌さんによる検札が行われます。検札といっても近頃は感染症の影響もあってか特急券にスタンプを押すことは稀で、乗客一人一人の乗車区間を目視で確認し、その情報を手元に控えているようです。また特急券を持たずに乗り込んだ乗客に対しては車内で料金を精算する必要があるため、それも併せてこのタイミングで行われます。こうした手間を削減するための「全車指定席化」の波は首都圏・関西圏、そして今回の改正で北海道へも押し寄せることになります。

座席のポケットには、早くも「敦賀駅でのお乗り換え方法について」というリーフレットが入っていました。これまで乗り換えの必要がなかった駅で、新たに乗り換えが必要となるとマイナスイメージも大きいところですが、このリーフレットもその払拭に一役買ってほしいところです。

長いトンネルを抜け、福井県に入ると敦賀駅はすぐそこへ。進行方向右側には、北陸新幹線の高架橋が早くも見えています。

定刻よりも2分ほど遅れ、11時26分頃に敦賀駅へ到着。ホームにはかなり多くの鉄道ファンが集っています。

実はこのホームに特急列車が入線する光景が見られるのもあとわずか。というのも、敦賀駅の在来線ホームと新幹線ホームは離れているため、新幹線開業後は乗り換えの利便を図り新幹線ホームの真下に新たに設けられた特急専用ホーム(31~34番線)が使用されるためです。

現在は米原金沢駅間が「JR北陸本線」ですが、新幹線開業後は北陸本線敦賀までとなり、この先福井県内の並行在来線は「ハピラインふくい」へと経営移管されます。敦賀はその結節点となる駅で、駅名標は既に新しいものに交換されているようでした。右上のシールを剥がすとハピラインのロゴマークが出てくるものとみられます。

1本特急が発車しても、またすぐに次の特急がやってきます。これこそ北陸本線が「特急街道」と呼ばれてきた所以で、日中は大阪方面からの〔サンダーバード〕と名古屋方面からの〔しらさぎ〕が数分差で続行する形で運行される場合が非常に多いです。

また、発車標を見てみると1日1本限定のサンダーバード和倉温泉の文字も出ています。2024年1月1日に発生した能登半島地震の影響で七尾線の一部が不通となっていましたが、2月15日ついに全線運転再開へこぎ着けたようです。もちろん新幹線開業後はこの直通運転もなくなるため、大阪~和倉温泉駅間は必ず2回の乗り換えが発生することになります(敦賀駅金沢駅)。

敦賀駅のコンコースでは、新幹線開業を祝う手作りの看板を発見。その上の「JR線のりば」と書かれた案内看板は不自然に余白がありますが、よく見ると黒いテープで覆われており、これもやはり剥がすと「ハピライン」の文字が登場するのでしょう。

先ほどのコンコースとは別に、敦賀駅では在来線ホームを跨ぐようにして新たに連絡通路が設けられました。この連絡通路はやがて新幹線改札方面へも繋がるもので、現在は在来線ホーム間の移動および西口改札からのみ利用ができる状態です。

こちらには新型の色鮮やかな発車標モニターが取り付けられており、このモニターに「サンダーバード 和倉温泉行」等の文字が表示される光景は新幹線開業直前の今だけしか見ることのできない超貴重な光景です。また柱の部分には「北陸線 福井・金沢方面」の文字もしっかりと刻まれており、一時的な措置であることを感じさせない綺麗なコンコースです。

サンダーバード〕は9両・12両、〔しらさぎ〕は6両・9両と様々な両数で運行されるため、その停車位置を示す案内もこの辺りの名物です。「3番のりば」との記載がありますが、新幹線開業後は少なくともこの場所からこの案内看板は撤去されてしまう可能性が高いでしょう。

新幹線側のコンコースへは立ち入れないよう柵が設けてありますが、その隙間から少しだけ中の様子をうかがうことができました。長い連絡通路には動く歩道が設けられており、その先は上りエスカレーターでさらに上へと向かうようです。

新しい方の在来線コンコースからは、駅の全景を見渡すことができます。在来線ホームはこれまで通りの位置ですが、それとは別に設けられた新幹線駅舎の大きさは圧倒的。いくら新幹線とはいえ、ここまで高い位置を走ることは全国的にもかなり稀であると感じます。

敦賀駅は一部の〔サンダーバード〕を除き、ほぼ全ての特急列車が停車します。現在の時刻表を見ると上りも下りも赤い文字で示された「特急」が大半を占めますが、こうした当たり前の光景もやがては過去のものとなります。

敦賀駅の改札口ですが、現在はまだ長らく使用されてきた西口のみが稼働しています。街の中心側に位置する改札口で、新幹線開業後も引き続き使用可能です。

ただし新幹線開業に合わせ、西口改札側にあった「みどりの窓口」は、東口へと移転してしまうようです。新幹線・特急ともに新しいホームから発車するためでしょう。

敦賀駅の外観は完成しており、また西口駅前のロータリーも綺麗に整備されました。新幹線側と在来線側でそれぞれ出入口がある駅だと、在来線側の出入口は割と昔ながらの趣を残す場合もありますが、敦賀駅の場合はそこも含めて全面的にリニューアルがなされたようです。そして新幹線駅舎が大きすぎるゆえ、西口側にいてもその存在感をはっきりと感じることができます。

内装も大きく変わっており、天井の高い待合スペースやコンビニ等が確保されています。2階部分は勉強スペースになっているようで、日曜日ということもありたくさんの高校生が集まっていました。

せっかくなので、私は「炙ります&焼きさばのちょいとすしセット(550円)」をいただくことに。おにぎりよりも一回り大きいくらいのご飯の上に、こんがりと炙ったほどよい塩加減のますと脂ののったジューシーな焼きさばがそれぞれのっています。近頃の物価高を考えると、このボリュームでこのお値段はなかなかお得なのでは…!?

お腹も満たされたところで、再び列車に乗車していきます。福井県内を移動し、武生・鯖江方面を目指します。

乗車するのは敦賀12時37分発の北陸本線 福井行。特急が先に発車するのでそちらに乗ってもよかったのですが、JR線としての普通列車も味わっておきたかったのでこちらに乗ることにします。

車体の側面に貼られていた「JR」のマークは既に剥がされており、この区間がやがてJRでなくなってしまうことをひしひしと実感します。

列車は2両編成で、ワンマン運転がなされています。ドア上部の路線図はまだしっかりと「北陸本線」の文字が残っており、おそらくギリギリまでこの状態を残しておくのだろうと思います。

12時37分、列車は定刻通りに敦賀駅を発車。右側に新幹線の高架を望みつつ、すぐに北陸トンネルへと入ります。北陸トンネルは福井県嶺北と嶺南を結ぶ全長約13kmにも及ぶ長大なトンネルで、途中に駅がないため次の南今庄駅までの距離は実に16.6km、11分ほどかかります。

車内は各区画の座席に1人ずつが着席している様子で、立ち客もいますがそこまで激しい混雑というわけではなさそうです。1月の能登半島地震からの復興支援として企画乗車券「北陸おでかけtabiwaパス」が980円で発売されていたり、またJR東日本からも期間限定の企画乗車券が発売されていたりなどで一部の普通列車は大変な混雑である様子がSNSにも投稿されていましたが、時間帯にもよるのでしょうか。

しかしこの列車においても鉄道ファンの割合が高かったことには変わりなく、明らかに通常の日曜日よりは混雑しているのだろうと思います。18きっぷで福井・金沢に行けるのもあとわずかですから…。

12時37分、列車は武生駅に到着。ここで下車します。

武生は福井~敦賀駅間の途中駅としては最大で、実際にかなり乗降が多かったように見えます。

駅名標JR西日本仕様ですが、よく見ると左下が少しめくれているのが分かります。おそらく既に更新は完了していて、JR仕様のものを剥がすと下からハピラインの駅名標が出てくるのでしょう。王子保武生駅間には2025年をめどに「しきぶ駅」という新駅が開業する予定です。

武生駅がある越前市内には「越前たけふ」という新幹線の駅が設置されます。しかしその場所は現在の武生駅からは少し離れており、新幹線単独駅としての開業になります。すなわち新幹線開業後の武生駅は、JRから分離されるだけでなく優等列車の発着がなくなってしまい、普通・快速列車のみの発着となるのです。

武生駅の運賃表・自動券売機はまだJR仕様で、その近くには3月15日(最終営業日)の案内がなされていました。JRからハピラインへ移管されるだけで駅自体は存続されるわけですが、「武生駅の営業終了について」という文字を見ると何だかドキッとします。

越前市の人口は約7.8万人で、県内人口第3位を誇ります。特急列車は、全てとはいわずともかなり多くが停車するようになっており、京都・大阪・名古屋のいずれの都市へ出るにも非常に便利です。

新幹線開業後は、こうした中長距離の移動需要を新駅「越前たけふ駅」が担うこととなります。街の中心をこの武生駅周辺であると捉えると「新幹線駅は街外れに造られた」という言い方になってしまいますが、一方で越前たけふ駅周辺には高速道路のインターチェンジ国道8号線があり、自動車との親和性が非常に高い立地でもあります。「パーク&ライド」の文化が根付きつつある昨今、むしろ新幹線駅が単独駅として設置されたことは必然であったようにも思えます。

ちなみにJR北陸本線武生駅からアル・プラザの横を歩くと、福井鉄道福武線の「たけふ新駅」があります。「新」を地名の後につけるという何とも斬新な駅名ですが、実はもともと1924年の開業時から長らく「武生新」という駅名でした。21世紀に入り、市町村合併によって旧武生市が廃止されたのに伴い2010年に「前武」へと改められましたが、その後新幹線駅と同駅名のため混乱を招くとして2023年に現在の「たけふ新」になったという経緯があります。

武生駅からも徒歩圏内であり、個人的にはただの「武生」でも良いのでは…あるいは「福鉄武生」などの方が分かりやすさの面では適切なのでは…と考えてしまいますが、何よりも「武生新」としての時代が80年以上続いていたことを踏まえると、駅名の後ろに「新」がつくことへの抵抗はなく、むしろ親しみをもって受け入れられるということなのかもしれません。

JRの武生駅に戻ってきました。みどりの窓口はハピラインへ移管されてからも存続するようで、これは朗報です。武生駅周辺に住む人にとって、JRのきっぷを気軽に買える場所が残るかどうかは今後の鉄道利用の如何にもかかわってくるところでしょう。

さて、続いては一つ隣の鯖江駅へ移動していくことにします。1駅なので普通列車に乗れば何も問題ないのですが…。

今回は特急を利用します。「はぇ!?」と思うかもしれませんが、実はちゃんとした理由があるのです。というわけで武生13時47分発の特急〔しらさぎ7号〕金沢行に乗車。

車内は比較的混雑しており、何とかして窓側座席を確保。いや別に1駅だけなのでデッキで立っていてもよかったのですが、せっかく自由席に着席する権利を得ているのなら短い時間でもその権利を行使したいじゃないですか。

私がこんな変なことをしている理由、それは「武生・鯖江の両駅に特急が停車していたことを記録・記憶に残すため」です。武生と鯖江はいずれも主要駅ですが、残念ながら新幹線はどちらの駅にも停車しません。そこでこの区間に確かに有料特急が運行されていたことを何らかの形で記録・記憶に残したいと思ったのです。

わずか5分ほどの乗車で鯖江駅に到着。この区間では検札が来なかったため周りの乗客の方から不正乗車を疑われていたかもしれませんが、特急券はしっかりと買ってあるため問題ありません(むしろ特急券が欲しかったのが最大の目的)。鯖江駅出場時に無効印を押していただいています。

鯖江駅武生駅と同様に、多くの特急列車が停車します。その本数は武生駅よりも若干少ないというところではあるのですが、〔サンダーバード〕が通過してもその前後で続行運転する〔しらさぎ〕が必ず停車するため大きな問題はありません。

鯖江駅にも同様にみどりの窓口があり、これもハピラインで存続されるようです。便利である一方、第三セクターで2駅連続でみどりの窓口が存続するというのも稀有な話。そのうちいずれか片方のみに集約されてしまいそうな気がしなくもありません。

また、武生駅鯖江駅にはそれぞれ駅構内にセブンイレブンがありましたが、ハピラインへの移管に先駆けどちらも閉店してしまいました。特に鯖江駅の駅前等にはコンビニが一切ないようで、これは是非とも復活してほしいところです。

駅は昔ながらの国鉄の雰囲気を残しており、これが国鉄はおろかJRですらなくなってしまうというのはにわかに想像もつきません。しかしそれは、これまでのどの並行在来線の駅も歩んできた道のり。「ハピラインの鯖江駅」として、次第に地元にもなじんでいくことでしょう。

鯖江はめがねフレームの生産量日本一の街であることが知られており、駅前には「めがねのまち」のモニュメントもあります。

新幹線駅も設置されず、特急も廃止される鯖江市。中長距離移動はどのようにするのがよいかと考えた時に、まず思いつくのは「ハピラインで福井駅もしくは敦賀駅へ移動」でしょうか。特に鯖江福井駅間は13.7kmしか離れておらず、普通列車での移動も苦ではありません。ほかに先ほどご紹介した「パーク&ライド」の活用も考えられますが、その際鯖江市内の人が自動車で「福井駅」と「越前たけふ駅」のどちらへ出るのかは気になるところです。

さて、最後はここ鯖江から一気に大阪まで移動しておこうと思います。

乗車するのは鯖江14時50分発の特急〔サンダーバード26号〕大阪行。「京都方面大阪」という独特の言い回しはJR西日本ならではです。

特急〔しらさぎ10号〕名古屋行の発車後、すぐに3番線へと入線。9両編成で関西を目指します。

14時50分、列車は定刻通りに鯖江駅を発車。今回は贅沢にグリーン車を利用していきます!

グリーン車は金沢寄りの1号車で、4列ではなく3列のゆとりあるシートが特徴。かつては首都圏の特急列車もグリーン車はこの3列シートが多かったそうですが、その時代を知らない私としてはもはや別物感さえ感じるほどです。

グリーン料金を含めた特急料金は、ちょうど5,000円。普通車指定席ならば2,730円ですから、2倍近い金額をかけて乗っていることになります。

ひじ掛けにはドリンクホルダーと折り畳み式のテーブルが収納されており、両方同時に使用することもできます。テーブルは反対側のひじ掛けに渡せるようになっており、安定感があります。他にも、各座席にコンセント・フットレストが備わっており、車内にはフリーWi-Fiもあります。なお背面テーブルはありません。

特急の車内から北陸新幹線の高架を望むことができる体験も今だけ。窓から見えるあの線路は、東京とつながっています。

あっという間に敦賀駅へ戻ってきました。今度は降りずに、直通の利便性を味わいたいと思います。

敦賀駅を出ると、新幹線ホームからやってくる線路と合流します。これは新幹線の線路ではなく、先ほどご紹介した新たな「特急専用ホーム」の線路です。開業を間近に控え、あらゆる設備は準備万端のようです。

近江塩津より先、列車は湖西線へ入ります。その名の通り琵琶湖の西側を走る路線で、実際に琵琶湖を一望できる区間が多くあります。線路も高規格なので高速走行ができ、これがある意味では新幹線のさらなる延伸を阻む要因の一つとも言えるかもしれません。

京都駅でかなりの乗客が降車し、満席近かったグリーン車にもだいぶ余裕が出ました。淀川を渡り、まもなく終点大阪です。

16時37分、列車は定刻通り終点の大阪駅に到着。武生・鯖江から2時間を切ると考えると、この〔サンダーバード〕がいかに便利な列車であるかを実感します。

なおこれはおまけですが、終点到着後は幕回しを行うため、今はなき貴重な列車名の数々を見ることができます。〔びわこエクスプレス〕や〔おはようエクスプレス〕は今回のダイヤ改正をもって見納めとなります。

 

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

【意外?】千葉県内乗車人員第1位の駅は千葉でも船橋でも柏でもなく…

 

2024年1月29日(月)

本日は千葉駅へとやってきました。

千葉市は県内唯一の政令指定都市であり、その人口は約98万人。惜しくも百万都市一歩手前というところですが、県内最大人口都市であることには変わりありません。

その中心駅である千葉駅は、JR東日本千葉都市モノレール、京成の3社が乗り入れます。特に大きいのはJRの駅で、当駅を始発・終着とする列車も多く運行系統上の拠点駅となっています。もちろんほぼ全ての列車が停車します(一部の特急〔成田エクスプレス〕を除く)。

しかしこんな立派で大きな駅でありながら、実は千葉駅は千葉県内の鉄道駅乗車人員1位ではないのです。意外すぎませんか…?

JR東日本の発表によると、2022年度の1日乗車人員で千葉駅は94,864人JR東日本全体では第30位、さらに千葉県内に限定すると第4位となっています。同社内の他地域の駅では藤沢駅町田駅国分寺駅等と同水準で、いずれも首都圏有数のターミナル駅ばかりです。

また京成千葉駅の2022年度1日乗車人員は13,810人。JRと比べても大きく少ないですが、これは千葉駅を通る京成線が「京成本線」ではなく支線の「京成千葉線」であるため致し方ないともいえるでしょう。京成のメインルートは上野~成田間で、実は千葉駅はここから少し外れるのです。

さらに千葉都市モノレール千葉駅の1日乗車人員は2020年度が最新の発表となっており、その数字は9,929人。新型コロナにより需要が大きく低迷した年のため単純な比較は難しいですが、2019年までも概ね1日平均12,000~14,000人程度で推移しています。

これらをすべて足し合わせると、千葉駅の1日平均乗車人員は約12万人程度であると推測されます。駅の規模の割には少ないと見ることができますが、これは先ほども述べた通り主にJRで見てみると千葉駅が「運行系統上の拠点駅」として機能していることが理由として挙げられます。

千葉駅から各方面へと向かう各駅停車の列車は原則として千葉駅を始発・終着としており、また千葉県内で広範に運行されている快速列車も千葉駅を始発・終着とする場合が多々あるため、JR千葉駅改札内における乗り換えの需要は極めて高いと言えます。しかしそうした乗客の大半は自動改札機を通らないため「乗車人員」としてはカウントされず、見た目の割に「乗車人員」自体は少ない傾向にあると見られます。

それでは、真の「千葉県内乗車人員第1位の駅」へと向かいたいと思います。乗車するのは、総武線各駅停車の中野行。かつて山手線で使用されていたE231系が第一線で活躍しています。

総武線各駅停車は、中央線と直通運転して三鷹~千葉駅間を結ぶ運行系統です。千葉・津田沼方面から御茶ノ水や新宿へ乗り換えなしで行けますが、途中こまめに停車するため時間がかかり、例えば千葉から新宿へ移動する場合は途中の錦糸町まで快速列車で移動しそこから乗り換えるルートが推奨されています。

横浜方面やさいたま方面で言うところの「京浜東北線」のような立ち位置で、総武線快速が呆気なく通過してしまう途中の駅にも停車していきます。「幕張駅」がありますが、ここは幕張メッセの最寄駅ではないので注意しましょう(幕張メッセの最寄駅は京葉線の「海浜幕張駅」)。

沿線は人口が多く、民家やマンションがずっと連なっています。特に船橋市千葉市に次いで県内人口2位ですが、残念ながらこの船橋駅でさえ乗車人員第1位ではありません。

千葉駅から25分ほど乗車し、列車は西船橋駅に到着。ここで列車を降ります。

千葉県内乗車人員1位の駅、それがまさにここ「西船橋駅」なのです。

西船橋駅にはJR東日本のほか、東京メトロ東葉高速鉄道が乗り入れます。

JR東日本総武線各駅停車・京葉線武蔵野線が乗り入れ、1日平均乗車人員(2022年度)は119,941人。千葉駅の約1.26倍ほどおり、同社の他地域と比べると中野駅吉祥寺駅と同水準です。また先ほどご紹介した船橋駅ともほぼ同水準で、年度によっては船橋駅の方が上回ることもあるのだそうです。

東京メトロの1日平均乗車人員は2021年度が最新となり、110,265人。路線は東西線1本のみですが、JR東日本とあまり変わらない水準です。また東葉高速鉄道は同じく2021年度で45,803人となっており、年度が異なるため参考程度ですが全て合算すると西船橋駅全体で1日平均乗車人員は約28万人にも上ることになります。県庁所在地であるはずの千葉駅にダブルスコアをつけて堂々の第1位です。

最初に私が降り立ったこちらの総武線各駅停車ホームですが、構造としては地上ホーム2面3線(1~4番線)。中線は上下両面のホーム(2・3番線)に接しており、主に当駅を始発・終着とする折り返し運転で使用されるものと思われます。1・4番線にはホームドアが付けられており、主にこちらが使用されています。

総武線快速の方にはホームがなく、全列車が通過するため東京都心へ出る上で最も使用頻度の高いと思われるこのホームですが、その割には狭く、平日朝のラッシュ時間帯は大変な混雑となっていることが予想されます。平日朝は都心方面へ列車が2~3分間隔で次々に発車しており、7時台は列車間隔が4分以上開くことはないのでとにかく次々運んでいるような状態かと思いますが、このホームから発車する列車の両数・方面・停車駅が全て同じであるがゆえに成立しうるとも言えます(先発列車を見送る理由が薄い)。

改札階へ上がってきました。JRの改札内にはエキナカ商業施設が充実しており、流石は県内1位の駅です。立ち食いそば・コンビニ・ペーストリー・本屋等々で、快速通過駅とは思えない充実っぷりです。

JRと東京メトロ東葉高速の間には中間改札があり、乗り換え改札口としては相当な台数が並びます。後ほどまたご紹介しますが東京メトロ東西線東葉高速線は同じ改札内にあり、この乗り換え改札をくぐることでどちらへも乗り換えができます。

JRでは他に、京葉線武蔵野線のホームがあります。こちらは総武線各駅停車と交差するように十字に造られており、高架ホームです。

番線としては9~12番線で、2面4線構造です。2024年1月現在ホームドアは設置されていませんが、ホームの広さは総武線各駅停車と大差ないか少し広いくらいです。

路線系統としては「京葉線武蔵野線」の2路線ですが、やってくる車両は武蔵野線E231系・209系ばかり。というのも、西船橋駅京葉線の「本線上」にある駅ではないのです。

武蔵野線西船橋駅付近はいわゆる「デルタ線」になっており、3方向からの列車がいずれの方面へも進行方向を変えることなく直通できる配線となっています。本線的な立ち位置となるのは東京~蘇我駅間を結ぶ「京葉線」で、これに対し府中本町方面からやってきた武蔵野線西船橋を出ると市川塩浜方面・南船橋方面の両方向へ発車していきます。日中は東京行と南船橋行が交互に運行されており、本数もちょうど3本/時ずつのため武蔵野線内での運行本数は6本/時となります。

しかし朝夕はこの限りではありません。東京行・南船橋行に加え、南船橋よりも先の新習志野海浜幕張まで直通する列車が多数設定されています。これらは必ずしも府中本町から来るとは限らず、途中の東所沢を始発として運行されていたり、あるいは埼玉県内にあるデルタ線を活用して大宮方面からやってくる場合があります。

これらのような「西船橋を発車して東京方面・南船橋方面」へ進む列車は武蔵野線の車両を用いて運行されているものの、西船橋駅では便宜上「京葉線」として案内されており、府中本町方面行の列車と区別しているようです。ホーム上でも「12番線、京葉線、ドアが閉まります。」というアナウンスが流れていました。

先ほど「総武線各駅停車は新宿方面へ向かうので錦糸町で乗り換え」的な話をしましたが、ピンポイントで東京駅へ向かうのであればこの11・12番線から発車する”京葉線”の方が便利な場合もありそうです。ただし日中は20分間隔ですから、本数は限られます。

12番線ホームからは、地上を走る総武線の線路を見下ろすことができます。ちょうど成田エクスプレスが通過している線路、あちらが総武線快速の線路です。

駅周辺には民家・マンションが多く、東京都心へ出るにもいくつか手段があると考えると乗車人員1位も頷けます。西船橋駅総武線快速の停車を熱望する声がよく聞かれることでも知られていますが、これはいわゆる「遠近分離」を考慮すると致し方ない側面がありそうです。仮に停車すれば西船橋駅周辺に住む方は確実に利用されるかと思いますが、一方で船橋津田沼・稲毛・千葉、或いはそれよりもさらに遠くからの通勤・通学、その他の移動の需要が十分に果たせなくなってしまう恐れがあるのです。西船橋自体は総武線だけでなく東西線京葉線経由でも東京都心に出ることができるわけですから、あえて棲み分けをすることは妥当な判断であると言えます。

JRだけでも計4面7線のホームを有する西船橋駅ですが、実はJRの改札口は意外にこじんまりとしています。自動改札機の数は先ほどご覧に入れた乗り換え改札よりも少なく、かつ駅の内外を結ぶ改札口はここ1ヵ所しかありません。

駅の南口はすぐに目の前が道路に面しており、ロータリーは見当たりません。駅入口の看板は東京メトロ仕様で、そこにJRと東葉高速のロゴが併記されています。

駅構内に戻り、今度は北口方面へ。こちらには「みどりの窓口」があります…が、何とこの訪問後の2024年2月19日をもって営業終了してしまいました。繰り返しますが県内1位の駅です…1位なのに…みどりの窓口が消えてしまう時代なのです…。

北口は広場にせり出すような特徴的な階段・エスカレーターが印象的で、看板はJR仕様のものが採用されています。こちらが街の中心といった様子です。

北口にはロータリーがあります。が、バスが次々に発着する様子もなく、人影はまばらです。もちろん平日日中だからというのはあると思いますが、それにしても県内1位の駅にしてはロータリーが小規模すぎる気もします。

北口を出て510mほど歩いたところには、京成本線の「京成西船駅」があります。距離があるので乗り換えの需要は低いでしょうが、それよりも気になるのはこの「西船」という呼称。当然ながら「西船橋」の略称であり、それが正式な駅名として採用されてしまうことに驚きです。

しかしこれ、略称が転じて現在は正式な地名となっている様子。何よりも駅周辺一帯の地名は「西船」ですし、周辺のアパートや保育園等でもこれが多く用いられています。1967年から住居表示として「西船」が使われ、1987年にかつての「葛飾駅」が「京成西船駅」へと改められました。京成西船駅の1日平均乗車人員はわずか5,000人程度で、普通以外の全ての種別が通過します。

再び駅構内に戻り、今度は東京メトロ東葉高速の改札を見ていきます。自動券売機は東京メトロのものと東葉高速のものが並びます。

東京メトロ東西線東葉高速線はここ西船橋駅を境に相互直通運転を行っており、実はこれが西船橋を「県内1位」にしている理由の一つであるとも考えられています。序盤でご説明した「約28万人」という数字の中には東西線東葉高速線を直通で利用する乗客の数も含まれており、直接西船橋駅の自動改札機を使用せずとも入出場の記録を元に乗車人員としてカウントされているのです。

東葉高速線は初乗り運賃が210円と高めで、鉄道ファンの間では”東葉高額鉄道”等と揶揄されることもあります。1996年に開業した比較的新しい路線で、西船橋東葉勝田台駅間を結びます。

西船橋駅の改札口では「T23」「TR01」と2社それぞれのナンバリングが表記されていますが、駅の管轄は東京メトロです。案内サイン類も全面的に東京メトロのものが使われています。

改札口頭上の発車標は大きくてとても見やすく、東西線東葉高速線両方とも東京メトロ仕様のものです。先発列車の停車駅が表示される造りですが、東葉高速線内は全列車が全ての駅に停車します。

ホームは5~8番線で、主に5・6番線が東葉高速線、7・8番線が東西線という一応の区別はあるようです。ただし6番線から東西線が発車する場合や7番線から東葉高速線が発車する例外的な運用があるらしく、煩雑極まりない運用です。おまけに平日朝夕のみ東西線総武線各駅停車へも直通運転を行っており、その場合は東西線総武線の列車が5・6番線、総武線東西線の列車が8番線を使用します。

駅名標には東京メトロ東葉高速・JRの3社のナンバリングが併記されており、超詰め込みスタイル。そういえば自然すぎて説明を忘れていましたが、東西線の浦安~西船橋駅間各駅は「東京」メトロにもかかわらず千葉県にあります。

東西線の複雑な運行系統についてはまた改めていつか乗車して記事にしたいな…なんて考えたりもしていますので、是非お楽しみに。

そして現在、X(旧Twitter)アカウントでは「#目指せ中央駅全駅踏破」と題して全国に41駅ある「中央駅」全てをめぐる企画を実施中です。

せっかく西船橋に来ましたので、今回はそこから東葉高速線で「八千代中央駅」に移動。2024年1月29日、記念すべき踏破1駅目はここから始まりました。

その都度記事にする予定はなく、基本的にはX(旧Twitter)上でのみ展開する予定ですので、是非ご注目ください!

 

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

【快適】1人1.5席使用可能! 10席だけの特別な「普通車指定席」に乗ってみた[京都→新横浜]

 

2024年1月2日(月)

今回は京都駅にやってきています。これから東海道新幹線で、新横浜へ帰りたいと思います。

本日はちょうど年末年始のUターンラッシュがピークを迎えており、駅構内は家路を急ぐ人々で大変な混雑です。果たして新幹線に乗り込むことはできるのか…?

ご存知の通り、東海道新幹線では12月28日~1月4日にかけて〔のぞみ〕全列車を全車指定席として運行。それにもかかわらず、何と驚くことに東京方面へは〔のぞみ〕〔ひかり〕とも全列車が例外なく満席という恐ろしい事態です。

一応〔ひかり〕には自由席の設定がありますが、始発駅でもない京都からですと着席はおろかまともに乗り込めるかすら怪しい状況。ここは何としてでも座りたかった私、何か方法はないものか…としばらく頭を悩ませていましたが、こんな状況でも何とかして指定席を押さえることができたのです。

というわけで、乗車するのは京都19時36分発の〔ひかり664号〕東京行。〔のぞみ〕と比べ停車駅が多く時間はかかりますが、座れるのであれば致し方ありません。

〔のぞみ〕の圧倒的な運行間隔、そして「全車指定席」の文字がずらりと並ぶ光景は、今後の最繁忙期ではおなじみの景色となりそうです。

11番線には、ちょうど先行する19時33分発の〔のぞみ456号〕東京行が停車中。次々に乗客が乗り込みますが、その傍らお隣12番線ホームでは早くも接近放送が流れ始めています。怒涛の「のぞみ12本ダイヤ」、ここに〔ひかり〕〔こだま〕も追加すると1時間あたりの運行本数は16本ほどに上ります。乗降に時間を要する新幹線では、とても1つの乗り場だけで捌ける数ではありません。

程なくして、12番線に〔ひかり664号〕東京行が入線。この先の停車駅は米原岐阜羽島、名古屋、浜松、新横浜、品川、終点東京です。

今回乗車するのは7号車。運用上は「普通車指定席」としての扱いですが、実は他の指定席車両と少しだけ異なる特徴があるのです。

それが…こちら。「Swork Pシート」です!!!

見ての通り、3人がけの座席の中央は座面が取り払われ、代わりにカップホルダー付きの半透明の仕切りが取り付けられています。

列車は定刻通り、京都駅を発車。発車直前の駅の空席案内では普通車指定席に名古屋まで「×」の印がついていましたが、今のところは比較的空いています。この先米原岐阜羽島での乗降も多数予定されているものと思われます。

東海道新幹線では、現在7号車を「Swork車両」とし、いわばビジネス客向けの”優先指定席”として発売しています。EXサービス上でのみ発売されているため、駅の自動券売機やみどりの窓口で7号車を予約しようとしても空席は表示されません。

その7号車の中でも、6~10番のA・C列のみが「Swork Pシート」として発売されています。この区画のみ、中央のB席は発売できないようになっており、その部分に先ほどお見せした仕切りが取り付けられているというわけです。

カップホルダーは窪みが深く、熱い飲み物や不安定な容器の飲み物であっても安全に置いておくことができる造りになっています。上の画像はひじ掛けを下ろしている状態ですが、上げた方が占有スペースを広く感じることができそうです。

テーブルは一見何の変哲もないように見えますが、よく見るとA・C列のテーブルのみ少し厚みがあるように見えます。実際に引き出してみると…。

何とグリーン車のように、手前側にスライドすることができるのです!

さらにこの状態から少し手前側に傾けることもでき、パソコン作業を楽な姿勢で行えるような工夫がなされています。

この号車では、客室内でのWebミーティングや通話も可能とされています。一方でそうした乗客への配慮か、会話は原則禁止となっています。言うなれば「ビジネス客優先席」といったところでしょうか。平日ならまだしも、最繁忙期でもこうした設定があるのは東海道新幹線ならではという感じがします。

19時54分、列車は米原駅に到着。ここでは金沢方面からやってきた米原止まりの特急〔しらさぎ64号〕からの乗り換え客が多数乗り込みます。〔のぞみ〕と比べ影が薄いように思われがちな〔ひかり〕ですが、このように〔ひかり〕でしか果たせない役目をしっかりと果たして東京へ向かいます。

夕食は「東海道新幹線弁当」と抹茶味の生八ッ橋。発車間際の京都駅構内で急いで買いました。売店の方の手際がよく、流石は東海道新幹線の駅の売店だなと驚くばかりです。

Swork車両でも他の車両と同様に飲食を取ることが可能です。ただし、利用人数にかかわらず座席を転換しての利用は禁止されています。

余談ですが東海道新幹線弁当は沿線のご当地グルメを一気に味わえるオススメの一品。東京の深川めし、浜松のうなぎ、名古屋のみそカツ&エビフライ…等々だったかと思いますが、蓋の裏の説明書きが省略されていたのであくまでも推測です(前は説明書きがあったような気がする)。

気づくと列車は岐阜羽島も発車、まもなく名古屋へ到着します。

名古屋からは〔のぞみ〕にも見劣りしない速達運転が行われます。日中の”速達ひかり”は名古屋~新横浜駅間において「豊橋」「小田原」のいずれか片方のみ停車するというものが一般的ですが、この〔ひかり664号〕はそのどちらでもなく「浜松」にのみ停車します。

さて、この「Swork Pシート」のお値段ですが、何と通常の普通車指定席に「+1,200円」で乗ることができます。今回私は「京都→新横浜」でお値段14,380円でしたが、これは〔ひかり〕の普通車指定席(繁忙期)13,180円に+1,200円をした金額です。

新幹線の料金は種別・曜日・期間により異なりますが、Pシートの加算額は一律1,200円となっています。

21時59分、横浜駅に到着。〔のぞみ〕で移動するよりも20分ほど多くかかりましたが、広々と使えて快適でした。

 

一人旅で少し広い環境を使いたいという方、是非ご利用ください!

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

【乗り間違いに注意】停車駅の異なる列車を連結!? 特殊なイブニング・ウイング号に乗車

 

2024年1月29日(月)

本日やってきたのは品川駅。これから京急本線で移動していきます。

watakawa.hatenablog.com

京急といえば、記憶に新しいのは2023年11月に行われたダイヤ改正。13年間に渡り運行されてきた「エアポート急行」の呼称を取りやめ、行先・方面にかかわらず「急行」としての運行が開始されました。

そんな話題の陰で、実はもう一つ大きな変更点があったのが座席指定列車「イブニング・ウイング号」です。

平日夜に下り方面で運行されているイブニング・ウイング号は品川18時台~21時台まで計8本が設定されており、以前は全て2ドア車両2100形(8両編成)での運行でした。しかしこの度のダイヤ改正で8本のうち最後の2本にあたる「14号」と「16号」はそれぞれ単体での運行ではなく、快特列車に併結して運行される方式となったのです。

今回は品川駅を最も遅くに発車する「16号」に乗車していきます。品川駅の発車は21時19分で、通常イブニング・ウイング号が使用しているはずの3番線ではなく1番線からの発車となります。

発車標には「快特 三崎口 12両」とありますが、備考欄に小さく「後4両は座席指定Wing号です」との記載。文字通り、前8両は通常の快特として乗車券のみで利用することができ、後4両に乗車する場合のみ座席指定券(Wing Ticket)が必要ということになります。

後4両が停車する付近では、イブニング・ウイング14・16号の乗車に関する案内がなされています。「赤枠含め」の意味ですが、赤枠とは本来都営浅草線方面から直通する快特・特急に乗車する場合のみ使用できる整列位置となっています。しかしこのイブニング・ウイング号は品川始発でありながら、1番線を使用する場合は当該列車の乗客も赤枠に並んでよいとされているようです(通常品川始発・泉岳寺始発の車両は緑枠に並ぶ)。

やがて列車が入線(写真ブレブレですみません…)。前8両の快特は先に1番線へ入線済みで、後から4両がやってきてホーム上で連結作業を行います。4両ということで2100形ではなく、新1000形(L/C仕様車両)での運行です。

連結完了後、すぐにドアが開き乗車開始。入線から発車までの時間が非常に短いこともあり、乗車時にWing Ticketの確認は行われません。4両のうち後2両分のドアが全て開き、乗客は次々に車内へと入っていきます。ホーム上ではプラカードによる案内も行われ、誤乗防止に努めていました。

なお行先表示器でお分かりの通り、イブニング・ウイング14・16号は金沢文庫止まり。文庫より先ではホームの最大有効長が8両となりますので、致し方ありません。尤も、イブニング・ウイング号の降車駅として特に需要が大きいのは上大岡駅金沢文庫駅ですから、無理に三浦半島まで運行させる必要は薄いのかもしれません。

乗車すると、目の前には驚きの光景が。何とモニターに表示されている号車番号とドアに貼り付けられている号車番号が異なるのです。

今回の場合、信用すべきはドアに貼り付けられた方。というのも、Wing Ticketには1~4号車の番号が印字されており、それに合わせてドアに号車番が貼り付けられているためです。

Wing Ticketは3番線ホーム上および跨線橋上に設置された券売機から購入することができます。1番線に券売機は設置されていませんので、時間に余裕をもって品川駅に到着する必要があります。金額は2100形で運行される場合と同じ、一律300円です。

21時19分、列車は定刻通り品川駅を発車。2ドアではなく3ドアのため1両あたりの座席数は2100形よりも少ないものと思われます。しかし窓側でも一部空席があるような状態でした。

座席の形状は京急でもトップクラスに高級感がありますが、残念ながらリクライニングできるようでできません。また背面テーブル・インアームテーブル等の設備もなく、車内にWi-Fiの設備もなさそうです。強いて言うなら各席にコンセントはありますので、充電は可能です。

品川駅を発車後、放送がかかるまでに少し時間がありました。確か京急では車内放送を一部の号車のみに限定して流すことができるはずですので、まずは前8両の乗客向けに放送をしていたのでしょう。

イブニング・ウイング号の次の停車駅は上大岡です。モニター上の路線図には「京急蒲田」や「京急川崎」等の快特停車駅も含め、ずらりと通過のマークが並びます。しかし前方に快特列車を連結していますので、実際には停車してしまうのです。

イブニング・ウイング号の乗客に向けては特に何の放送もなく減速しながら、京急蒲田京急川崎等に停車。もちろん後4両はドアが開かず、ホームドアさえも開きません。

意外だったのは、ホーム上でこの増結4両の位置で並んで待っている乗客の姿が全然見当たらなかったこと。というのも、この列車の1本後(品川21時30分発の快特)は同じく12両編成で、イブニング・ウイング号を連結せず12両全ての車両に乗車券のみで乗車できます。時間差は10分ほどですので、後続列車を待つべくこの位置で並んでいる乗客もいるかと思っていましたが、そのような光景はありませんでした。いずれも三崎口行ですから、1本見送るということもなく皆さん先発の快特に乗車するのでしょう。ホーム上で誘導をするスタッフの方も見当たりませんでした(たまたま見えなかっただけで実際にはいるのかもしれません)。

そしてこれは偶然なのかデフォルトなのか不明ですが、快特停車駅発車後に何と後4両のモニターに表示される路線図が毎度毎度品川駅スタートにリセットされる仕組みとなっていました。京急蒲田京急川崎、横浜…と運転停車を繰り返すたびに、路線図上では振り出しに戻されるようです。そのため走行区間と表示の区間が一切一致せず、京急蒲田以南ではあてになりませんでした(笑)。

なお京急蒲田京急川崎・横浜の3駅において、この列車は「8両」と案内されています。あくまでもその3駅から乗車する場合に乗車可能となる車両が8両分しかないためですが、ホームでこの列車をよく観察すると12両編成であることが分かりますので、待っている人からすると少し不思議な感覚かもしれません。

神奈川県内に入ると、ドアに貼り付けられていた号車番号の紙が手作業で剥がされていきました。

21時49分、列車は上大岡駅に到着。上大岡の発車標では「12両編成の快特」として案内され、上大岡~金沢文庫駅間は後4両も乗車券のみで利用できます(行先表示器はWingのまま)。10分にも満たない区間ではありますが、コンセントのついたクロスシート車両に乗車券のみで乗車できる「乗り得区間」となっています。

 

というわけで、今回はダイヤ改正で登場した不思議なウイング号をご紹介しました。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

【建設中止】幻の新幹線新駅「南びわ湖駅」現地はどうなっている…?

 

2024年1月2日(月)

今回は、滋賀県草津市にやってきました。人口約14.8万人、県庁所在地の大津市(34.5万人)に次ぐ県内第2の都市です。

中心駅は、JR西日本草津駅琵琶湖線東海道本線)が通り、草津線が分岐します。

実はかつて、この近くに東海道新幹線の駅を設置する計画があったのをご存知でしょうか。

その名も「南びわ湖駅」。東海道新幹線草津線が交差する位置に設けられる予定で、草津線草津手原駅間に在来線としての接続駅も併せて設けられる方向でした。

駅所在地は、草津市ではなく隣の栗東市。現在どうなっているのか、今回は実際に現地へ行ってみることにしたいと思います。

草津駅栗東駅から徒歩は距離があり困難なので、今回は草津駅14時55分発の帝産湖南交通 トレセン西住宅行のバスに乗り込み「上鈎(かみまがり)」まで乗車します。草津駅東口から発車、運賃は230円、交通系ICカードは使えませんので現金払いです。

草津駅を発車し、ものの数分で前方に見えてきた黒い高架。これがまさに東海道新幹線です。東海道新幹線に乗っていると、駅間は緑豊かな車窓が印象的ですが、ことこの付近においては完全に市街地の中を走っています。

草津駅からわずか5分、15時00分頃に上鈎(かみまがり)バス停へと到着。周囲は完全なる住宅地です。

バスを降りた後は、600mほど歩くと現地に到着します。地図上で見てみると、ちょうどマクドナルド・コメリの付近にロータリー状の道路があるのが分かります。

上鈎の交差点を直進し、メルセデスベンツの横を通り抜けて草津線の線路を跨ぐ陸橋を渡ります。

10分ほど歩き、コメリの高い看板が見えてくると到着です。

この場所が、東海道新幹線南びわ湖駅」建設予定地でした。

地図上でも確認した通り、ロータリー状の道路の中央にマクドナルドが鎮座しています。推測ですが、おそらくこのロータリー状の道路こそ「南びわ湖駅」建設に先立って整備されていた駅前ロータリーなのではないかと思われます。

現在ここは公道で、主にコメリマクドナルドの駐車場へそれぞれ出入りする自動車のみが通行します。このロータリー内には「下鈎口」というバス停もあり、こちらは栗東駅東口~コミュニティセンター金勝間を結ぶ帝産湖南交通のバスが平日1日3往復のみ通ります(土休日は運休)。

この「南びわ湖駅」ですが、実は1969年の時点で新駅誘致のための特別委員会が設置されていました。当時は「栗東新駅」のみならず「近江八幡新駅」なるものも誘致を計画していたようですが、その後1990年代頃までには「栗東新駅」を優先して設置する方針が固まったとされています。

というのも、東海道新幹線米原~京都駅間は70km近く離れており、当時は全国の新幹線の中で最も駅間距離の長い区間であったためです(現在も引き続き東海道新幹線においては最長駅間距離)。

1996年、促進協議会において新駅名称を「びわ栗東(仮称)」とすることが決定。2002年にはついに滋賀県栗東市・促進協議会・JR東海の4者間において新駅設置が正式に決定され、その後の2006年には駅名を「びわ」として協議が進められていました。

しかし同年に行われた滋賀県知事選において、南びわ湖駅建設凍結派の嘉田由紀子氏が当選。たちまち計画に暗雲がたちこめ、度重なる協議の末2007年に建設は正式に中止となりました。現地には「南びわ湖駅2012年開業予定」と書かれた大きな看板があったことでも知られていますが、これも併せて2007年の年末までに撤去されています。

もとより、この「南びわ湖駅」設置の是非については、様々な議論がありました。人口の多い草津栗東地域への新駅設置は一定の需要が見込めるとする賛成派と、仮に開業しても「のぞみ」が停車する予定はないため地域住民は京都駅を利用すると考える反対派に分かれており、まさに「賛否両論」状態。想定では「ひかり」の一部と「こだま」が停車し、岐阜羽島米原と同列の駅となる見込みでしたが、これ自体も実際もし開業していたらどうなっていたか分かりません。

来た道を戻ってバスで草津駅に帰る…ことも可能ですが、ここはせっかくなので草津線手原駅まで歩いて移動してみたいと思います。

草津線は単線電化路線で、草津柘植駅間を結びます。最も列車本数の多い草津貴生川駅間は日中1時間に1~2本程度のため、うまく時間を合わせられれば南びわ湖駅で「ひかり」「こだま」と接続を取ることができそうです。

特に南びわ湖駅へ停車する「ひかり」は東京~名古屋駅間を速達で運行(小田原または豊橋のみ停車、静岡県内全通過)すると考えてみます。東京~米原駅間は2時間15分、東京~京都駅間は2時間40分ほどですから、間を取って東京~南びわ湖駅間は2時間30分程度でしょうか。もちろん後続の「のぞみ」に乗り、名古屋駅で対面乗り換えを行うことでこれよりもさらに時間を短縮することは可能ですが、乗り換え不要な列車があればそれを選びたいとする需要はどの路線でも一定数あるものですので、「東京から直通2時間半で栗東へ」と銘打てば街のアピールとして大いに効果を発揮することでしょう。

上鈎北の交差点で国道1号と交差しますが、そちらへは入らずに細い路地へ入ります。ちょうど手原駅近くは東海道中山道が合流する場所で、現在も国道1号国道8号が線路のすぐ反対側で合流します。

また、その先へ歩くと「東経136度子午線」の碑もあります。24時間=1440分なので、1440分÷360度=4分/度ずつ南中時刻がずれることになり、東経135度の日本標準時子午線が通る兵庫県明石市と比べてちょうど4分だけ南中時刻が早いことになります。碑にも「午前11時56分」と刻まれており、まるで小学生の頃に勉強したことの答え合わせをしているようです。

そして手原駅に到着。思っていたよりも駅舎は立派で、それもそのはず手原駅栗東市役所の最寄駅。加えて東海道中山道が合流する、歴史的な交通の要衝とあればこれほど立派なのも頷けます。

駅前ロータリーにも「東経136度の通る駅」と刻まれた碑があり、それ以外にもたくさん文字の刻まれた石碑が並んでいます。

駅構内には観光案内所もあります。三が日だからか閉まっていましたが、観光面においてもここ手原駅は中心的役割を果たしているようです。

栗東市は最近まで「栗東町」でしたが、2001年に市制を施行。一見すると琵琶湖線栗東駅の方が市の中心のようにも見えますが、栗東駅の方は何と1991年に開業した比較的新しい駅だそうです。加えて草津市南草津駅も1994年の開業となれば、栗東市草津市周辺ではここ30年ほどで一気に新駅設置が進んでいることにもなります。この勢いにのって南びわ湖駅も開業…となるかに思われましたが、現実はそう甘くなかったということでしょう。

自動改札機の台数は多くないものの、交通系ICカードもしっかりと利用できます。こんなシンプルな駅ですが、1日平均乗車人員は約3,000人ほど。首都圏のJR駅で比較すると、常磐線友部駅総武本線銚子駅よりも多くなっています。

草津方面の行先は基本的に「草津行」ですが、一部時間帯では京都方面へ直通する列車も運行されています。

手原駅近くには大手企業の工場や関連施設、また高速道路のインターチェンジもあり、のどかさとは対照的な存在。草津線=ローカル線、の感覚でいると、この辺のギャップには驚かされます。

手原16時12分発の草津線 草津行に乗車。1駅進み、草津駅へ戻ります。

前面展望にて、再度南びわ湖駅建設予定地付近を通過。ちょうど新幹線が目の前を通過していき、実際にこれがもし停車列車であれば草津線の列車とこのような位置関係で接続を取ったのかもしれない…等と思いを馳せます。

5分ほどで草津駅に到着。そのまま新快速に乗り換え、京都方面へと移動しました。

 

ということで、今回は東海道新幹線の未成駅「南びわ湖駅」をご紹介しました。

今後建設の方向に動く可能性は限りなく低いですが、同じく駅間距離の長い区間(新横浜~小田原)を有する神奈川県出身の私としては非常に興味深い事例であると感じました。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。