わたかわ 鉄道&旅行ブログ

乗り鉄&旅好きの20代男子が全国を巡る!

【さらば北陸特急】大阪→金沢直通2時間31分の最速達便に乗車。サンダーバード金沢行いよいよ終焉へ…

 

2024年3月3日(日)

本日は大阪駅へとやってきました。

これから特急サンダーバード号にて、金沢へと向かいます。

いよいよ目前に迫った、2024年春のダイヤ改正

今年最大の注目は、何といっても北陸新幹線 金沢~敦賀駅間開業です。

2024年3月16日より、ついに東京~敦賀駅間が新幹線のレールで結ばれます。その一方で並行在来線は経営分離が行われ、今日まで特急街道として名を馳せた北陸本線第三セクター鉄道として新たな歴史を刻み始めることになります。

大阪駅「11番線」は、幾多の駅改良工事が行われつつも長らく北陸特急のホームとして君臨してきました。また、北陸よりもさらに先の東北日本海側・北海道方面へ向かう夜行列車も使用してきた歴史あるホームです。

かつてはこのホームから富山へも乗り換えなしで行くことができていましたが、2015年の新幹線金沢開業時に金沢以東の在来線特急が廃止され、富山へは途中の金沢で在来線特急から新幹線に乗り換える方式となりました。ホームへと上がる頭上の看板は富山の部分にのみ「金沢のりかえ」の表記がありますが、これも2024年3月16日からは福井・金沢・富山の全ての都市に対して「敦賀のりかえ」ということになります。

私が最後の乗り納めとして選んだ列車は、大阪17時42分発の特急〔サンダーバード37号〕金沢行です。途中停車駅は新大阪、京都、福井の3駅のみで、新幹線の終着駅となる敦賀さえも通過してしまいます。

途中停車駅が新大阪・京都・福井のみのサンダーバードは1日3往復設定されていますが、その中でも今回私が乗車する「37号」は最も所要時間の短い「真の最速達便」。何とわずか2時間31分で267.6kmを走破するため、表定速度は約106km/hとなっています。

使用車両は681系・683系特急電車で、本日この列車は堂々12両編成で運行されます。何もこの車両が新幹線開業で引退するわけではなく、また「サンダーバード」という列車自体も大阪~敦賀駅間で引き続き運行されるわけですが、これが福井・金沢・富山のいずれの都市へも直通しなくなってしまうというところに鉄道ファンは寂しさを覚えるわけです。

私自身はこれまで何度かサンダーバード号に乗車したことがありますが、首都圏在住からか新幹線で金沢へ向かい、その先の上り(金沢→大阪)で乗ることが多く、大阪発の下り列車にはほとんど乗ったことがありません。大阪駅11番線から発車する特急で金沢へ、という体験は私にとってとても貴重な経験です。

今回は普通車指定席を利用します。最後なので贅沢にグリーン車の利用も考えましたが、やはり最後こそこれまで何度も乗ってきた普通車で締めくくりたいという思いがあります。

17時42分、列車は定刻通りに大阪駅を発車。梅田の建物群を横目に、一路金沢を目指します。

すぐに次の新大阪駅へ停車するため、この時点ではまだ詳しい放送などはかかりません。車内は大半が空席です。

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新大阪を発車し、「北陸ロマン」の車内チャイムの後、改めて自動放送による停車駅の案内等がなされます。新大阪発車後のためこの後の途中停車駅は京都・福井の2駅のみで、終点の金沢を含めても3駅のみのアナウンスは非常にあっさりとしています。大阪駅新大阪駅発車時に車掌さんより「この列車は停車駅の非常に少ないサンダーバード号です、停車駅にご注意ください」と繰り返しアナウンスがありました。

ちなみに最も停車駅の多い〔サンダーバード〕の途中停車駅は新大阪、高槻、京都、片田、近江今津敦賀、武生、鯖江、福井、芦原温泉加賀温泉、小松、松任の計13駅です。

列車は先頭から順に1号車がグリーン車、5・6号車が自由席、そのほかの号車は全て指定席です。今回のダイヤ改正に合わせ、〔サンダーバード〕でも自由席を廃止し全車指定席となることが発表されています。

今回はJR西日本インターネット予約「e5489」より、WEB早特15を利用しています。大阪~金沢駅間を特急の普通車指定席で移動すると通常7,790円(乗車券4,840円特急券2,950円ですが、それぞれ約15%割引となり6,610円(乗車券4,110円特急券2,500円で乗ることができています。乗車券と特急券がセットになったインターネット予約限定商品で、チケットレスではないため乗車前に必ず発券する必要があります。

大阪駅を出てから30分かからずに、列車は京都駅に到着。日曜日の夜とあってか京都駅からの乗車は大変に多く、多くはスーツ姿のビジネス客や週末を関西で過ごした行楽客等のようでした。京都駅停車中も車掌さんは「停車駅にご注意ください、次は福井です」と繰り返しアナウンスし、注意喚起を図っていました。

18時09分、列車は京都駅を発車。車内の表示器にも「次の停車駅は、福井です。」とスクロールが流れます。

京都~福井駅間は148.1km。東京~富士・沼田・韮崎等にあたります。これほどの距離をノンストップで走り抜ける在来線特急はそうそうないはずです。

京都駅から車内は満席に近くなり、車内のあちこちで缶ビールを開ける「カシュッ」という音が聞こえてきます。観光客も一定数乗っているとは思いますが、大勢・大声で騒ぐような人はおらず、混雑こそあれど平穏な車内です。

山科駅を通過すると列車は湖西線へ入ります。外はすっかり暗くなり、車窓はほとんど見えません。

ここで私も夕食としたいと思います。というのも「大阪駅11番線にある駅弁売場で買った駅弁を金沢行のサンダーバードの車内へ持ち込んで食べる」という経験を一度でもしてみたかったのです。なお選んだのはサンダーバード沿線とは全く関係ない「姫路城 鶏のり弁」(1,180円)です。

開けると姫路城の写真が立体的に飛び出すしかけがついており、なかなか手の込んだ掛け紙です。姫路城の世界文化遺産登録30周年を記念した商品のようです。

中にはおかずがぎっしり詰まっており、総面積の3分の1ほどを占める大きなちくわの磯部揚げのほか、鶏肉の照り焼き、にんじん、小松菜、玉子焼きなどなど。一つ一つおかずを味わっていくうちにご飯と海苔が姿を現します。

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駅弁に舌鼓を打っているうちに、列車は滋賀県を抜けていよいよ福井県へ。そしてちょうど19時頃、敦賀駅を通過します。暗いため非常に分かりにくいですが、ちょうど在来線ホームの向こう側に大きな新幹線駅舎があり、そのそばを颯爽と通過していくのです。

敦賀駅は決して小さな駅ではありません。今回開業する新幹線の終着駅となることが何よりの証拠ですし、1日3往復の速達サンダーバード号を除いた全ての定期旅客列車が停車しています。しかし逆にこの敦賀駅を通過することによって、驚異の大阪~金沢2時間31分という記録を打ち出すことができているのもまた事実。それほどに関西と北陸は、切っても切れない関係にあるわけです。

武生・鯖江ももちろん通過し、19時29分に福井駅へと到着。京都駅を出てから、ちょうど1時間20分ぶりの停車となります。降車される方も多数いらっしゃいました。

金沢駅については引き続き七尾線方面の特急〔能登かがり火〕があるためわずかながらJRの特急が残りますが、福井駅に関しては特段そのような列車もないため3月16日からJRの特急は一切やってこないことになります。「新幹線開業後もサンダーバード敦賀止まりではなく福井まで走らせてほしい」という声もあるようですが、実現には至っていません。

福井駅を発車すると、次の終点金沢駅までは40分ほど。

サンダーバードの車内には、北陸新幹線敦賀開業を知らせる広告があります。大阪~金沢駅間は最速2時間9分となるようで、現在のこの列車から22分の短縮となります。

一見するとそれほど大きな短縮に見えないかもしれませんが、これはこれで大きな意味があると思うのです。というのも、2015年の新幹線金沢開業時に東京~金沢駅間が約2時間半で結ばれたことで、金沢からは「東京も大阪もだいたい同じ」時間で出られるようになりました。これがきっかけで北陸地方の「東京志向」が強まりつつあり、長らく経済的・文化的に結びつきの強かった関西方面とのつながりが相対的に弱まったような印象を与えてしまっていた側面があります。

しかし今回の新幹線敦賀開業によって、わずかではありますが金沢からは再び「東京へ出るよりも大阪へ出る方が近い」という状況に戻ることになります。新たに敦賀駅での乗り換えが生じるため一概に比較するのは難しいかもしれませんが、関西と北陸の結びつきを再び強く取り戻したい、そんな矜持さえ感じる今回の新幹線敦賀開業でもあると思います。

石川県に入り、まもなく終点金沢が近づいてきました。

北陸本線で特急の運行が始まったのは、遡ること63年前の1961年。サンロクトオ改正(S36.10.1)にて大阪~青森・上野駅間を金沢経由で結ぶ特急〔白鳥〕の運行が開始されました。またその後1964年には大阪~富山駅間で特急〔雷鳥、名古屋~富山駅間で特急〔しらさぎがそれぞれ運行を開始し、今日に至る北陸特急の原型はちょうど60年前につくられました。

特急〔白鳥〕はその後大阪~青森駅間のみの運行となり、やがて2001年に廃止となります。かつては大阪~金沢・富山に限らずその先の新潟までを結ぶ優等列車も多数存在していた北陸本線ですが、時代とともにその数は徐々に減っていきました。

特急〔サンダーバード〕の名称が登場したのは1995年。大阪~富山・和倉温泉駅間で運行する特急〔スーパー雷鳥〕に括弧書きで(サンダーバード)の愛称が付けられました。しばらくの間は〔雷鳥〕と〔サンダーバード〕が混在する時代が続きましたが、2011年をもって〔雷鳥〕は廃止され、いよいよ関西~北陸間〔サンダーバード〕一強の時代となります。

2015年に新幹線が金沢まで開業したことで金沢以東での特急が全て廃止となりましたが、引き続き金沢まで走る〔サンダーバード〕はまだ北陸特急としての意地を見せ、表定速度100km/h超の速達便をはじめ1日1往復限定で和倉温泉発着便も残されていました。

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しかし石川県・福井県まで運行されてきた〔サンダーバード〕もいよいよ終わりを迎えようとしています。

厳密には敦賀駅福井県ですから、今後も〔サンダーバード〕は北陸地方に一応乗り入れはします。しかし敦賀駅の北にある「北陸トンネル」が実質的には北陸圏と関西圏の境目となっている側面もあり、今後大阪~敦賀駅間でのみ運行される〔サンダーバード〕は「関西完結特急」の感すらあるものです。

半世紀以上に渡り連綿と続いてきた”北陸特急”、まもなく終焉です。

20時13分、定刻通り列車は終点の金沢駅へと到着。時刻表通り、確かに大阪~金沢駅間を2時間31分で駆け抜けてくれました。本当に頼もしい特急でした。

2024年3月16日より、この広大な金沢駅在来線ホームは全て「IRいしかわ鉄道」のものとなります。毎日当たり前のように〔サンダーバード〕〔しらさぎ〕がやってきていた金沢駅ですが、それも過去の光景となるのです。

金沢駅の在来線コンコース内には、各方面の列車の発車時刻がコンパクトにまとめられた発車標があります。今日まで「京都方面大阪」「名古屋」といったごく当たり前の行先が表示されてきましたが、これらの都市は全て金沢駅から発車する列車の行先ではなくなります。また特急〔ダイナスター〕〔おはようエクスプレス〕〔おやすみエクスプレス〕は新幹線の開業区間と完全に重複するため、今回の改正で完全に廃止となります。

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訪問時はまだ金沢駅構内にも「北陸線」の文字が随所に残っていますが、おそらく簡単に剥がせるシールのようなものなので、もしかすると既に下にはIR仕様の新しい表記の案内が準備されているのかもしれません。

2015年以前は自動改札機すらなかった金沢駅ですが、新幹線金沢開業に合わせ設置されました。9年の時を経て、今度はこれもIRのものになるということなのでしょう。頭上には大きく「JR線(北陸線七尾線)・IRいしかわ鉄道のりば」とあります。

在来線改札前には「ありがとう北陸本線」と書かれたメッセージボードが用意されています。非鉄道ファンと思われる地元の方々も足を止めて見ていたり、実際にメッセージを書いて貼り付ける光景も見られ、やはり並々ならぬ思いがあることを感じます。

一方でIRいしかわ鉄道にとっては、金沢~大聖寺駅間が新たにJRから経営分離されることで晴れて「全線開業」を迎えることにもなります。IRいしかわ鉄道やハピラインふくいにとっては、優等列車の制約を受けることなく利便性の高い普通列車のダイヤを組むことができるため、運賃こそ上がれど日常利用においては使い勝手がよくなる場面も多いではないでしょうか。

いよいよ、北陸3県全てが東京と繋がる日がやってきます。一人の鉄道ファンとして、もちろん大阪までの1日も早い北陸新幹線全線開業を願っているところではありますが、まずは今回の敦賀開業に大きな期待をするところです。

ありがとう、北陸特急。

ありがとう、サンダーバード金沢行。

 

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。