わたかわ 鉄道&旅行ブログ

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【今月で廃止】広島を走る新交通システム「スカイレール」に乗車&代替EVバスと乗り比べ!

 

2024年4月5日(金)

本日は、広島県広島市安芸区にある山陽本線瀬野駅へとやってきました。

広島駅からは普通列車で糸崎方面へ乗車すること約20分、広島市内中心部への通勤通学圏内に位置しています。

本日ご紹介するのは、2024年4月30日限りで廃止となる広島短距離交通瀬野線、通称「スカイレール」です。

スカイレールは、みどり口~みどり中央駅間1.3キロを結ぶ新交通システム。瀬野駅の北側に広がる住宅地へのアクセスを目的として、1998年に開業しました。起点駅であるみどり口駅は瀬野駅と隣接・直結しています。

JR瀬野駅とスカイレールみどり口駅を結ぶ連絡通路からは、みどり口駅の駅舎とそこから丘の方へと延びていくレールを確認することができます。懸垂式のゴンドラリフトが麓から丘の上へと走行する方式で、一般的な鉄道路線とは大きく異なります。

今回はなぜ廃止になってしまうのかにも触れつつ、この「スカイレール」乗車を楽しんでいきたいと思います。

現地では、シンプルな「スカイレール」という呼称が広く用いられているほか「スカイレールサービス」「スカイレールみどり坂線」等様々な呼ばれ方をします。JR瀬野駅からは屋根伝いで雨にも濡れることなく、1~2分で乗り換えることができます。

スカイレールみどり口駅の改札口はこちら。自動改札機が2機並び、その右には有人窓口と自動券売機があります。

スカイレールの運賃は一律大人170円で、原則として交通系ICカードは利用できません。ただし定期券・回数券は独自に発行する「スカイレールパス」(チャージ不可)やICOCAにて発行できるようです。

きっぷは二次元コードが印字されたもので、裏が白く磁気を帯びてはいません。二次元コードの部分を自動改札機にかざすことで入場することができます。

自動券売機の頭上には時刻表が掲出されており、運行時間帯は6~22時で通常の鉄道と比べるとやや短め。平日・土休日とも日中は15分間隔ですが、平日朝夕はぐっと本数が増え、特に平日の18~19時台は驚愕の5分間隔での運行です。

自動改札機をくぐり階段を上がると、全面ガラス張りのホームがあります。出発の準備を整えたゴンドラが乗車口で待機しており、乗車口は1機につき1ヵ所のみです。

他のお客さんがいるのでゴンドラの中の撮影はできませんでしたが、中には椅子が8名分あり、最大乗車可能人数は37人となっているようです。

発車時刻が近づくにつれ車内には続々人が乗り込み、15名ほどを乗せて11時30分にみどり口駅を発車。感覚としてはスキー場のゴンドラに近く、鉄道路線図に載る路線であるとは信じがたいというのが率直な感想です。

ゴンドラはぐんぐん高度を上げていき、背後の瀬野駅はもうあっという間に遥か彼方。車内では特段アナウンスやBGM等はなく、いたって静かです。

発車後1分ほどで車窓には住宅街が広がります。この住宅地一帯は「スカイレールタウンみどり坂」と呼ばれ、スカイレールと同じく1998年に完成しました。

まもなく、ゴンドラは唯一の途中駅である「みどり中街駅」に到着。みどり口駅のホーム上は無人でしたが、こちらの駅のホームには係員の方がいました。車内アナウンスも駅名標も一切なく、あくまでもこの地域を知っている地元の方のみが利用する前提の交通機関ということなのでしょう。

みどり中街駅ですれ違ったゴンドラも、こちらと同じく混雑している様子。私もそうですが、廃止が近いということで惜別乗車をする地元民以外の方もそれぞれ一定数いるのだろうと思います。

みどり中街駅を発車すると、ゴンドラはさらにぐんぐん上昇。後方を見ると、みどり中街駅からもさらに線路がぐっと上っていることが分かります。

住宅地は線路の両側に広がっており、瀬野の町の周りは辺り一帯を山に囲まれています。JR山陽本線と並走して瀬野川が流れ、その近くには国道2号線も通っているはずですが、いずれもここからはっきりとは見えません。

みどり口駅からわずか5分、終点のみどり中央駅に到着。

反対側のホームにはこれまた別のゴンドラがスタンバイしています。

到着後は乗客全員が速やかに降車した後、ホームから捌けていきます。このホームはどうも降車ホームのようなので、ここで乗車を待つ人はいません。

ホーム上からみどり口駅方面を見渡すと、この短い距離でありながら高くまで上ってきたことがよく分かります。高低差は160m、最大勾配は263‰となっており、これはとても普通鉄道のレールを敷けるような坂ではありません。

降車時は自動改札機はなく、代わりに使用済みの乗車券を回収箱に投入します。透明な造りになっているのは、ごみや関係ないものの投入を防いでいる側面があるのかもしれません(勝手な推測です)。

みどり中央駅の改札口付近も、みどり口駅と大きくは変わりません。往復乗車券の設定はないので、往復で利用する場合はまたここの自動券売機で170円の乗車券を購入する必要があります。

1.3キロという距離自体は歩けなくもないですが、これはスカイレールにて最短距離に近いルートで移動してきているからで、道路を辿るとおそらくこれ以上の距離になるはずです。また何より高低差を考えると、宅地造成に合わせて交通機関が整備されるのも頷けます。

みどり中央駅は三方を住宅に囲まれ、残り一方には「みどり坂中央公園」があります。眺めは良いものの、あくまでもこの地域の方の憩いの場といった雰囲気で観光地感はありません。

それにしても、なぜスカイレールは2024年4月30日限りで廃止されてしまうのでしょうか。

なにも、この住宅地自体がなくなるわけではありません。廃止の理由は単純で「維持・管理に多額の費用がかかるため」です。

当然ながら地元の方にとってJR瀬野駅とを結ぶ交通手段は必要で、スカイレール廃止に先立ち2024年3月30日に「みどり坂タウンバス」の運行が始まりました。当初スカイレール廃止は2023年12月を予定していましたが、そこから約4か月延期となったのはこの代替バスの整備の遅れの影響とされています。

往復スカイレール利用…でもよいのですが、せっかくならばスカイレールとみどり坂タウンバスの両方が共存しているこのわずかな時期ならではの体験をしてみたく、帰りはこのバスでJR瀬野駅まで帰ることにします。

みどり坂タウンバスは「芸陽バス」により運行されており、路線図を見るとスカイレールに比べ停留場が多く、運行経路もやや複雑でPの字を描いています。急行便や区間瓶なども記載がありますが、今回は最も一般的な「循環便」を利用します。

みどり中央11時49分発のバスがやってきましたので、これに乗車します。瀬野駅からずっと丘を上ってきて、これからみどり中央駅周辺をぐるっと一周し下山していきます。

このバスはいわゆる「電気バス(EVバス)」で、内装も一般的な路線バスと比べると新しくスタイリッシュです。

乗客の方は数名いらっしゃいましたが、皆様地元の方の様子。なお全国相互利用の交通系ICカードも利用でき、運賃は200円です。

みどり中央を出ると「瀬野西五丁目東」「みどり坂第七公園前」「瀬野西五丁目西」「瀬野西五丁目南」「みどり坂中央公園西」「みどり坂小学校北」…と、どれも長い停留場名ばかり。スカイレールよりもきめ細かい需要に対応できるメリットの一方で、似たような名前の停留場も多く、慣れるまでは正しい停留場で降車できるかという関門が待ち受けています。

「みどり坂第七公園前」で乗客全員が降車し、車内は私一人のみに。ここがちょうどJR瀬野駅から最も離れた”分水嶺”にあたるようで、ここから先は山上りから山下りに転じます。

瀬野西五丁目南から少しずつ乗車客がおり、その後はスカイレールの線路に沿ってぐんぐん山を下っていきます。バスの車内から営業運転期間のスカイレールの線路が眺められるのも今の時期だけです。

スカイレールみどり中街駅は北口と南口がありますが、バスが停車するのは北口側です。

みどり坂第一公園北を通過し、ここで右折してJR瀬野駅方面へと向かいます。

いったんスカイレールの線路の真下をほぼ直角にくぐり、スーパーマーケットの目の前を通過するといよいよJR瀬野駅は目の前です。

12時00分、終点のJR瀬野駅北口に到着。このバスは程なくして次の便への発車準備を整え、再び山を上っていきます。

ぐるっとループするルートのためスカイレールよりは少しだけ時間がかかりますが、よほどの混雑や渋滞でもない限りはおおむね定時での運行が可能であると見られ、そうするとスカイレールの代替交通機関としては十分に役割を果たせそうです。むしろ1台あたりに乗車可能な人数はゴンドラよりもバスの方が多いので、その意味ではこの街にはバスの方がより適しているのかもしれません。

いずれにせよ、その答えは2024年5月以降に明らかになることでしょう。

 

スカイレールの最終運行日は2024年4月30日。ラストランはみどり口駅・みどり中央駅をそれぞれ正午に発車する便となる予定です。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。