わたかわ 鉄道&旅行ブログ

乗り鉄&旅好きの20代男子が全国を巡る!

【建設中止】幻の新幹線新駅「南びわ湖駅」現地はどうなっている…?

 

2024年1月2日(月)

今回は、滋賀県草津市にやってきました。人口約14.8万人、県庁所在地の大津市(34.5万人)に次ぐ県内第2の都市です。

中心駅は、JR西日本草津駅琵琶湖線東海道本線)が通り、草津線が分岐します。

実はかつて、この近くに東海道新幹線の駅を設置する計画があったのをご存知でしょうか。

その名も「南びわ湖駅」。東海道新幹線草津線が交差する位置に設けられる予定で、草津線草津手原駅間に在来線としての接続駅も併せて設けられる方向でした。

駅所在地は、草津市ではなく隣の栗東市。現在どうなっているのか、今回は実際に現地へ行ってみることにしたいと思います。

草津駅栗東駅から徒歩は距離があり困難なので、今回は草津駅14時55分発の帝産湖南交通 トレセン西住宅行のバスに乗り込み「上鈎(かみまがり)」まで乗車します。草津駅東口から発車、運賃は230円、交通系ICカードは使えませんので現金払いです。

草津駅を発車し、ものの数分で前方に見えてきた黒い高架。これがまさに東海道新幹線です。東海道新幹線に乗っていると、駅間は緑豊かな車窓が印象的ですが、ことこの付近においては完全に市街地の中を走っています。

草津駅からわずか5分、15時00分頃に上鈎(かみまがり)バス停へと到着。周囲は完全なる住宅地です。

バスを降りた後は、600mほど歩くと現地に到着します。地図上で見てみると、ちょうどマクドナルド・コメリの付近にロータリー状の道路があるのが分かります。

上鈎の交差点を直進し、メルセデスベンツの横を通り抜けて草津線の線路を跨ぐ陸橋を渡ります。

10分ほど歩き、コメリの高い看板が見えてくると到着です。

この場所が、東海道新幹線南びわ湖駅」建設予定地でした。

地図上でも確認した通り、ロータリー状の道路の中央にマクドナルドが鎮座しています。推測ですが、おそらくこのロータリー状の道路こそ「南びわ湖駅」建設に先立って整備されていた駅前ロータリーなのではないかと思われます。

現在ここは公道で、主にコメリマクドナルドの駐車場へそれぞれ出入りする自動車のみが通行します。このロータリー内には「下鈎口」というバス停もあり、こちらは栗東駅東口~コミュニティセンター金勝間を結ぶ帝産湖南交通のバスが平日1日3往復のみ通ります(土休日は運休)。

この「南びわ湖駅」ですが、実は1969年の時点で新駅誘致のための特別委員会が設置されていました。当時は「栗東新駅」のみならず「近江八幡新駅」なるものも誘致を計画していたようですが、その後1990年代頃までには「栗東新駅」を優先して設置する方針が固まったとされています。

というのも、東海道新幹線米原~京都駅間は70km近く離れており、当時は全国の新幹線の中で最も駅間距離の長い区間であったためです(現在も引き続き東海道新幹線においては最長駅間距離)。

1996年、促進協議会において新駅名称を「びわ栗東(仮称)」とすることが決定。2002年にはついに滋賀県栗東市・促進協議会・JR東海の4者間において新駅設置が正式に決定され、その後の2006年には駅名を「びわ」として協議が進められていました。

しかし同年に行われた滋賀県知事選において、南びわ湖駅建設凍結派の嘉田由紀子氏が当選。たちまち計画に暗雲がたちこめ、度重なる協議の末2007年に建設は正式に中止となりました。現地には「南びわ湖駅2012年開業予定」と書かれた大きな看板があったことでも知られていますが、これも併せて2007年の年末までに撤去されています。

もとより、この「南びわ湖駅」設置の是非については、様々な議論がありました。人口の多い草津栗東地域への新駅設置は一定の需要が見込めるとする賛成派と、仮に開業しても「のぞみ」が停車する予定はないため地域住民は京都駅を利用すると考える反対派に分かれており、まさに「賛否両論」状態。想定では「ひかり」の一部と「こだま」が停車し、岐阜羽島米原と同列の駅となる見込みでしたが、これ自体も実際もし開業していたらどうなっていたか分かりません。

来た道を戻ってバスで草津駅に帰る…ことも可能ですが、ここはせっかくなので草津線手原駅まで歩いて移動してみたいと思います。

草津線は単線電化路線で、草津柘植駅間を結びます。最も列車本数の多い草津貴生川駅間は日中1時間に1~2本程度のため、うまく時間を合わせられれば南びわ湖駅で「ひかり」「こだま」と接続を取ることができそうです。

特に南びわ湖駅へ停車する「ひかり」は東京~名古屋駅間を速達で運行(小田原または豊橋のみ停車、静岡県内全通過)すると考えてみます。東京~米原駅間は2時間15分、東京~京都駅間は2時間40分ほどですから、間を取って東京~南びわ湖駅間は2時間30分程度でしょうか。もちろん後続の「のぞみ」に乗り、名古屋駅で対面乗り換えを行うことでこれよりもさらに時間を短縮することは可能ですが、乗り換え不要な列車があればそれを選びたいとする需要はどの路線でも一定数あるものですので、「東京から直通2時間半で栗東へ」と銘打てば街のアピールとして大いに効果を発揮することでしょう。

上鈎北の交差点で国道1号と交差しますが、そちらへは入らずに細い路地へ入ります。ちょうど手原駅近くは東海道中山道が合流する場所で、現在も国道1号国道8号が線路のすぐ反対側で合流します。

また、その先へ歩くと「東経136度子午線」の碑もあります。24時間=1440分なので、1440分÷360度=4分/度ずつ南中時刻がずれることになり、東経135度の日本標準時子午線が通る兵庫県明石市と比べてちょうど4分だけ南中時刻が早いことになります。碑にも「午前11時56分」と刻まれており、まるで小学生の頃に勉強したことの答え合わせをしているようです。

そして手原駅に到着。思っていたよりも駅舎は立派で、それもそのはず手原駅栗東市役所の最寄駅。加えて東海道中山道が合流する、歴史的な交通の要衝とあればこれほど立派なのも頷けます。

駅前ロータリーにも「東経136度の通る駅」と刻まれた碑があり、それ以外にもたくさん文字の刻まれた石碑が並んでいます。

駅構内には観光案内所もあります。三が日だからか閉まっていましたが、観光面においてもここ手原駅は中心的役割を果たしているようです。

栗東市は最近まで「栗東町」でしたが、2001年に市制を施行。一見すると琵琶湖線栗東駅の方が市の中心のようにも見えますが、栗東駅の方は何と1991年に開業した比較的新しい駅だそうです。加えて草津市南草津駅も1994年の開業となれば、栗東市草津市周辺ではここ30年ほどで一気に新駅設置が進んでいることにもなります。この勢いにのって南びわ湖駅も開業…となるかに思われましたが、現実はそう甘くなかったということでしょう。

自動改札機の台数は多くないものの、交通系ICカードもしっかりと利用できます。こんなシンプルな駅ですが、1日平均乗車人員は約3,000人ほど。首都圏のJR駅で比較すると、常磐線友部駅総武本線銚子駅よりも多くなっています。

草津方面の行先は基本的に「草津行」ですが、一部時間帯では京都方面へ直通する列車も運行されています。

手原駅近くには大手企業の工場や関連施設、また高速道路のインターチェンジもあり、のどかさとは対照的な存在。草津線=ローカル線、の感覚でいると、この辺のギャップには驚かされます。

手原16時12分発の草津線 草津行に乗車。1駅進み、草津駅へ戻ります。

前面展望にて、再度南びわ湖駅建設予定地付近を通過。ちょうど新幹線が目の前を通過していき、実際にこれがもし停車列車であれば草津線の列車とこのような位置関係で接続を取ったのかもしれない…等と思いを馳せます。

5分ほどで草津駅に到着。そのまま新快速に乗り換え、京都方面へと移動しました。

 

ということで、今回は東海道新幹線の未成駅「南びわ湖駅」をご紹介しました。

今後建設の方向に動く可能性は限りなく低いですが、同じく駅間距離の長い区間(新横浜~小田原)を有する神奈川県出身の私としては非常に興味深い事例であると感じました。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。