わたかわ 鉄道&旅行ブログ

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【特急レベルの座席】驚愕の4社直通快速「AIZUマウントエクスプレス」全区間乗り通し

 

2023年7月19日(水)

本日やってきたのは、東武鬼怒川線鬼怒川温泉駅。浅草・新宿方面からの多くの特急列車の終着駅となっており、東京都心からもほど近い観光地・温泉地として人気があります。

東武鬼怒川線普通列車は、その多くが自社線内で完結をしています。しかし1日1往復限定で存在する、とある特殊な運用の列車があるのをご存じでしょうか。

それが、鬼怒川温泉9時37分発の快速〔AIZUマウントエクスプレス1号〕会津若松です。鬼怒川温泉会津若松駅95.0キロを走破する快速列車で、所要時間は驚異の2時間20分となっています。

その運行距離・時間もさることながら、最も特徴的なのが「直通する事業者数の多さ」鬼怒川温泉を出るとまずは新藤原までが東武鉄道、その先会津高原尾瀬口までが野岩鉄道、さらにその先西若松までが会津鉄道で、最後のわずかな距離はJR東日本となっています。会津鉄道の途中にある「会津田島」という駅を境に南側が電化区間・北側が非電化区間となっており、AIZUマウントエクスプレス気動車を用いて運行されます。

自動券売機を見ると、野岩鉄道会津鉄道線内までのきっぷは発売されていますが、どうもその先のJR東日本までのものは発売されていないようです。もちろん野岩鉄道方面への会社間を跨ぐ交通系ICカードの利用はできませんので、特急券の販売窓口で「会津若松までの片道乗車券を」と申し出て購入する必要があります。

ホームへ入ってみると、既に列車は入線していました。4社を跨いでの運行ともなると果たしてどの事業者の車両が使用されるのか…というのは気になるところでしょうが、選ばれたのは会津鉄道でした。

実は特急列車であれば、浅草~会津田島駅間を直通運転する特急〔リバティ会津〕が1日4往復運行されています。しかしこれはあくまでも電車特急のため、会津若松方面へと乗り入れることはできません。普通列車においてもほぼ必ず会津田島での乗り換えが必要となります。会津鉄道線内では、時間帯によっては会津田島を跨いで運行される普通列車も存在していますが、こちらは会津高原尾瀬口以南へ乗り入れることはなく、したがって会津高原尾瀬口会津田島の両方を跨いで運行する列車はAIZUマウントエクスプレスのみ」ということになります。

車内に入ってみますと…何とそこには、特急列車顔負けのリクライニングシートが並んでいるではありませんか!!

各座席には特急列車と同等のリクライニング機構や背面テーブルが備わっており、さらには窓の下から持ち上がる形の細長いテーブルもあります。また車内にはフリーWi-Fiまで整備されており、これを追加料金なしで利用できるとは信じられません。もちろん全車自由席です。

ちなみにリクライニングシートが備わっているのは後寄りのあかべこ塗装の車両で、前寄りの車両は転換クロスシートでした。首都圏ではこれまた貴重な代物で、リクライニングシートと比べるとやや見劣りはするものの設備としては十分です。

車内には、沿線各地の自治体のPR広告が所狭しと掲示されています。各自治体それぞれ個性にあふれたデザインで、これも一つの見どころと言えそうです。

鬼怒川温泉駅の有人窓口で購入した乗車券は上のようになっています。運賃は3,350円で、これは単純に4社それぞれの運賃を合算したものです。「4社連絡片道乗車券」という名称が付されており、東武鉄道の浅草・とうきょうスカイツリー・北千住・春日部・栃木・新鹿沼下今市東武日光鬼怒川温泉とJRの会津若松でのみ購入できるものとなっています。

隣の1番線には、浅草からやってきた鬼怒川温泉止まりの特急〔リバティきぬ105号〕が到着。この列車からの接続を取って発車します。乗り換える乗客も一定数おりましたので、確実に座席を確保するならリバティきぬ105号が入線する9時35分よりも前に着席しておきましょう。

9時37分、列車は定刻通りに鬼怒川温泉駅を発車。まずは進行方向左手に鬼怒川温泉の廃墟ホテル群を望みながら、東武鬼怒川線を進んでいきます。取り壊されるわけでもなく、かといって修繕され復活するわけでもなく、雨風にさらされ為すがままになるかつての立派な建物を見ると何ともいえない複雑な思いが湧いてきます。

鬼怒川温泉とよく似た駅名として、一つ隣に「鬼怒川公園」という駅があります。車内では、交通系ICカードの利用が新藤原まで(東武線内のみ)となっている旨の注意喚起のアナウンスが繰り返しなされています。

9時45分、列車は新藤原駅に到着。ここで早くも1社目の「東武鉄道区間は終了し、ここからは「野岩鉄道」へと入ります。東京近郊ではあまり聞き馴染みのない駅名ですが、ここが東武鉄道最北端の駅となり、普通列車は多くがここで折り返し運転を行っています。

野岩鉄道に入ると、まずはしばらくトンネル区間が続きます。正しい読み方は「やがん」鉄道ですが、しばしば「のいわ」と誤読されるケースがあることでも知られています。東京近郊で聞き馴染みがある路線名かというとそうではありませんが、1日4往復運行されている特急〔リバティ会津〕はまさにこの野岩鉄道を経由しており、すなわち全線電化されているということになります。

川治温泉駅を出発した列車は、鬼怒川を越えてどんどん進んでいきます。東武線内と比べ、野岩線内ではだいぶ自然の豊かさが増したような印象です。

野岩鉄道線内の駅名の特徴として、「温泉にまつわる駅名が多い」というものがあります。新藤原~会津高原尾瀬口駅間の9駅(起終点を含む)のうち、川治温泉・川治湯元・湯西川温泉中三依温泉上三依塩原温泉口と実に5駅が温泉にまつわる駅名となっており、しかもこの5駅は連続しています。もちろん駅によって温泉地までの距離は異なりますが、なかなかここまで温泉駅が連続していることはそうそうありません。

湯西川温泉駅を出てすぐ、湯西川橋梁を渡る際には車窓左手に注目。山々に囲まれた川の雄大な景色が望めます。

ところで気になるのは乗車率。リクライニングシート車両の方の混み具合ですが、窓側でも空席がいくつかある模様でした。もっとも、よく見てみるとこのリクライニングシートが窓割と合っておらず、眺望の期待できない座席がいくつかあることが分かります。平日ですので全く着席できないというほどではありませんでしたが、週末に途中駅からの乗車ともなると立席での乗車も覚悟しなければいけなくなるかもしれません。

なお、野岩鉄道線内では車内改札が行われました。鬼怒川温泉駅にて会津若松駅までの4社連絡片道乗車券を購入している私は問題ありませんが、特急列車から乗り換えてこの列車を利用している人の中には下車駅までの乗車券を所持していない方もいらっしゃったようで、車内精算が行われていました。

上三依塩原温泉口駅では、野岩鉄道の所有する車両と行き違い。その駅名からも分かる通り、塩原温泉への玄関口となっています。ただし「塩原温泉」ですから、駅前に温泉があるというわけではありません。バスに乗り換え、南東方向に進んでいくと塩原温泉にたどり着きます。

上三依塩原温泉口会津高原尾瀬口駅間には「男鹿高原」という駅がありますが、AIZUマウントエクスプレスはここを通過します。この列車の種別は「快速」ですが、実は鬼怒川温泉から会津若松に向かう途中で通過駅となっているのはこの男鹿高原駅のみ。これ以外は全て停車しますので、速達性の期待できる快速というわけではありません。

10時20分、列車は会津高原尾瀬口駅に到着。2社目の「野岩鉄道」はここまでとなり、この先は3社目「会津鉄道」となります。

会津高原尾瀬口駅は、2006年に「会津高原」から駅名を改称。かつて西若松会津高原駅間は「国鉄会津線」でしたが、1987年7月に第三セクター鉄道へと移管し「会津鉄道会津線」となりました。国鉄分割民営化が1987年4月ですから、わずか3ヵ月間ほどだけは「JR会津線」として存在していたことになります。

会津鉄道線に入ってからの車窓の変化としては、開けた平地を走る区間が増えたと感じます。野岩鉄道線内は険しい山々の間を縫って走るような区間も多くありましたが、会津高原尾瀬口を過ぎてからの車窓はとにかく田んぼだらけ。トンネルも少なめです。

10時42分、列車は会津田島駅に到着。鉄道会社の境界地点というわけではありませんが、電化・非電化の境界のため運行管理上は非常に重要な駅です。隣のホームには出発を待つ3両編成の東武特急〔リバティ会津〕が停車しており、こんな会津のローカル線の駅でも「浅草」の文字を見られることに感動さえ覚えます。

会津鉄道線と並走し、ときどき交差するのは鬼怒川ではなく阿賀川新潟県へ入ると「阿賀野川」へ名称を変え、日本海へと注ぎます。

会津鉄道における温泉駅といえば「湯野上温泉」「芦ノ牧温泉」。湯野上温泉駅は温泉地であるのみならず、近年人気の観光地「大内宿」へと向かうバスの発着する玄関口でもあります。

門田駅では、対向の普通列車と行き違い。あちらは会津高原尾瀬口行のようです。

11時49分、列車は西若松駅へと到着。ホーム上の案内サインからも分かる通り、長かった会津鉄道もここまで。ここからは4社目「JR東日本」へと入ります。

西若松会津若松駅間わずか3.1キロは、新潟県の小出から長く続く「JR只見線」の末端の一部分です。すなわち「会津鉄道はJR只見線に乗り入れている」という言い方をすることもできなくはありませんが、一般的にAIZUマウントエクスプレスを含め会津鉄道の列車内で「JR只見線直通」という案内がなされることはありません。

11時57分、列車は終点の会津若松駅へと到着。「快速」とは名乗るものの男鹿高原を除く全ての駅に停車した結果、実に2時間20分を要する形となりました。

また運行日によっては、この先JR磐越西線喜多方駅へと直通する場合もあります。その場合の運行距離は111.6キロにも上り、これは中央本線の新宿~山梨市駅間とほぼ同じです。

会津若松駅への到着はちょうどお昼時ですので、今回は駅構内にある「会津山塩食堂」にて会津山塩ラーメンとミニソースかつ丼のセット(1,300円)をいただきました。あっさりしたスープが麺によく絡み絶品で、ソースかつ丼の方は「ミニ」でありながらかなりボリュームがあり、とても美味しかったです!

なおAIZUマウントエクスプレスですが、近年はダイヤ改正の度に減便や運行区間短縮が繰り返されており、もはや風前の灯です。座席指定列車として〔リバティ会津〕もあるわけですし、個人的には近いうちに廃止されてしまう可能性もあるかも…? という気がしています。

4社直通という、ローカル線ではなかなかないロングラン運用ですので、興味ある方は是非足を運んでみてください。

 

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。