わたかわ 鉄道&旅行ブログ

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【祝再開】新潟・福島豪雨から11年…奇跡の復活を遂げた「只見線」全区間乗車[会津若松→小出]

 

2023年7月19日(水)

今回は福島県会津若松駅へとやってきました。福島県会津地方の中核をなす、人口約11万人の都市です。

これより、奇跡の復活を遂げたとあるローカル線に乗車していきます。

交通の要衝である会津若松駅からは、主に4方向に線路がのびています。郡山~新津駅間を結ぶ「JR磐越西線」はここ会津若松駅で運行系統が分かれており、線路がV字になっていることが分かります。

このほか乗り入れているのが「JR只見線」と「会津鉄道会津線」です。両者は2駅先の西若松駅まで同じルートを辿り、その先で分かれていきます。会津鉄道会津線はかつて「国鉄会津線」であった路線で、現在もJRの会津若松駅まで乗り入れています。

今回乗車するのは、会津若松13時05分発の只見線 普通 小出行です。会津若松駅から発車する只見線の列車は1日7本のみで、しかもこのうち終点の小出駅までたどり着ける列車は1日わずか3本のみ(6時08分発・13時05分発・17時00分発)となっています。

JR只見線および会津鉄道会津線の列車が発着する4・5番線ホームへ向かうと、ちょうど列車が入線してきました。2両編成で、先頭はキハ40系東北地域本社色塗装が施されたキハ110形です。

車体側面の濃淡のある緑色も忠実に再現されている一方、行先表示器はフルカラー式の最新のものに取り換えられています。途中の只見駅まではワンマン運転となっており、行先表示器にも「ワンマン」の文字があります。

会津若松小出駅間135.2キロを結ぶ只見線。最後まで不通となっていたのは、その途中にある会津川口只見駅間27.6キロです。福島県新潟県の県境は只見~大白川駅間にあり、只見以東では「会津」を冠する駅名が非常に多い(17駅)ことでも知られています。

13時05分、列車は定刻通りに会津若松駅を発車。出発時点でどの区画にも乗客が着席してはいるものの、ロングシート部分は比較的空いており、立っている乗客も数えるほどしかいない程度です。

会津若松を出てすぐの七日町・西若松からは立て続けに高校生が多数乗車し、車内の混雑率はかなり高めです。西若松駅にて会津鉄道会津線と分岐しますが、ここを出ると次は終点の小出駅まで他の鉄道路線との接続が一切ありません

西若松駅を出ると、次第に右方向へカーブを描きながら進んでいきます。沿線の風景は住宅地から徐々に田園風景へと変化していきますが、進行方向右側を見ると遠くの方に会津若松市街地を望むことができます。

途中には「根岸」という駅があります。横浜市民であればやはり根岸線根岸駅を思い浮かべてしまうところでしょうが、もちろん全く別物です。駅を出ても首都高やプールはなく、見渡す限りの田んぼです。

13時40分、列車は会津坂下駅に到着。名前の通り福島県会津坂下町の中心駅で、会津若松市街地を出て最初の主要駅です。

高校生の大半はここで一気に降りていきました。

ここでは列車行き違いのため、7分間ほど停車します。夕方に1往復だけ当駅折り返しの列車が設定されており、会津若松市内からの通勤通学需要もそれなりにあるようです。只見線の途中駅では唯一の「みどりの窓口」設置駅となっているそうですが、近年の閉鎖ラッシュを見ていると営業終了はもはや時間の問題でしょうか…。

対向の会津川口始発・会津若松行の普通列車がやってきました。あちらのホームでも大勢の乗客が列車を待っており、やはり会津若松市内との往来にはこの只見線が多く使われていることが分かります。

13時47分、会津坂下駅を発車。まだ小出までは100キロ以上あります。

列車は開けた土地から、次第に山間部へと入っていきます。

会津坂本駅の駅舎、何だか違和感あるな…と思ったら、どうやら使われなくなった貨車を駅舎(待合室?)として再活用しているようです。カラフルに塗られていますので一瞬気づきにくいですが、よく見ると側面の形状が貨車そのままです。

只見線全線運転再開を祝う看板の設置された会津柳津駅からは、ツアー客と思われる団体の方が大勢乗車されました。私が乗車していたのは前寄りの車両ですが、団体の方は後寄りの車両へと移動されましたので、幸いにも私の周辺が急激に混雑するということはありませんでした。

列車は只見川の支流、滝谷川を渡ります。

この先列車は只見川と並走するように走り、その途中で何度か川を跨ぎます。第一只見川橋梁から第八只見川橋梁までいくつも橋が連続しており、このうち第五~第八只見川橋梁が会津川口只見駅間にあります。特に第五・第六・第七は被害が甚大で、復旧には大幅な時間を要した橋です。

第一・第二只見川橋梁を渡り、列車は会津宮下駅に到着。ここで先ほど会津柳津駅から乗車した団体ツアー客の皆様は一斉に降りていかれました。

会津宮下駅には古くからの貴重な駅名標もいくつか残されているようで、そのレトロな雰囲気を感じるべく一度下車してみたい駅の一つです。

会津宮下早戸駅間にあるのが、第三只見川橋梁です。あいにくの天候ではありますが、多くの乗客が窓の外の景色にカメラを向けていました。

さて運転再開以降、青春18きっぷシーズンを中心に只見線は連日多くの鉄道ファンで混雑している様子がSNS等でも多数投稿されています。しかし本日(7月19日)は青春18きっぷ利用開始日の前日にあたり、かつ平日ということもあって車内がそれほど激しい混雑になっている様子はありませんでした。もちろん私を含め鉄道ファン・旅行客と思われる方は何名も乗車されていますが、どの乗客もゆとりをもって着席することができ、ゆったりとしたローカル線の旅を楽しむことができています。

14時58分、列車は会津川口駅に到着。只見川のほとりに佇む駅で、ここでは列車行き違いのため30分ほど停車します。東京では考えられないほどの長時間停車です。

福島県金山町の中心駅となっている会津川口駅。駅舎内にはJAや簡易郵便局も併設されており、しっかりと街の拠点として機能しているようです。

駅構内にみどりの窓口や自動券売機はありませんが、どうやら有人の出札窓口がありきっぷが買えるようです。また駅舎内には売店もあり、こじんまりとしながらもいろいろ揃っています。

せっかくなので、只見線応援団とコラボした特別なラベルの「天然水」(110円)を購入。売上の一部が只見線復興支援に充てられるそうです。

車内の乗車率ですが、編成全体で計10~15名ほどといったところです。特に後寄りのE120系は比較的新しいこともあり、ほとんど乗車されていませんでした。ここ1年ほど混雑ばかりしている印象を受けましたが、18きっぷ期間外かつ平日ともなれば平穏な日常の一幕に立ち会うことができるようです。

15時29分、定刻通りに会津川口駅を発車。会津川口駅停車中に次第に雨が強まり、いよいよ本降りとなってきました。会津川口駅構内には転車台もあり、かつて只見線でSLが運行されていた際に使用されていたものかもしれません。

ここからはいよいよ、2022年10月1日にようやく運行再開を果たした区間となります。まずは会津川口駅を出てまもなく「第五只見川橋梁」を渡ります。2011年7月の新潟・福島豪雨で特に甚大な被害を受けた橋梁の一つです。

本名駅の待合室には「祝再会 おかえり只見線」と書かれた寄せ書きのプレートが展示されています。只見線全線運転再開に対する、沿線の皆様の熱い思いが溢れた一枚です。

さらに雨は激しさを増し、その雨粒の勢いはまさに12年前のあの夏の日を思い起こさせます。

2011年7月の豪雨災害時、私は長野県のとある山間部を訪れていました。只見線の走る会津からは少し離れていますが、そちらでも連日の豪雨に見舞われたのをよく覚えています。

今回もよもや運転見合わせになどなるまい…と思いながらも、もし本当に雨が激しく降り続け、結果としてここで足止めを喰らってしまった場合、どのようにすれば東京へ帰れるのだろうか…などという不穏な想像が頭を駆け巡るほどでした(結果、何事もなく列車は定刻で走りました)。

只見駅の一つ手前、会津蒲生駅には無数の黄色いハンカチが飾られています。詳細は不明ですが、おそらく幸せへの願いがこめられているものでしょう。

16時21分、列車は只見駅に到着。福島県内最後の駅で、東北地方全体で最も西に位置する鉄道駅ともなっています。

細い1面2線のホームに停車し、列車はここで10分間ほど停車します。

つい先ほどまで激しく降っていた雨ですが、只見駅に到着するタイミングで一気に弱まり小康状態に。「山の天気は変わりやすい」とはいうものですが、まさにそれを体現するかのように目まぐるしく変化しています。

実は今からおよそ5年前の2018年9月、当時まだ会津川口只見駅間が代行バスであった頃に私は一度只見線を列車と代行バスで乗り通しています。その際は今回とは逆方向で小出から会津若松へと向かう中で、小出から乗車したキハ40系を終点只見で降り、代行バスまでの待ち時間に只見町内をレンタサイクルであちこち巡ったのをよく覚えています。只見町の観光協会の皆様にとてもよくしていただき、その時の記憶が今回の只見線再訪のきっかけの一つでもありました。

今回は会津若松小出駅間を1本の列車で乗り通すため只見駅にて途中下車をすることはできませんが、また近いうちに再訪させていただき、改めて沿線の魅力をたっぷりゆっくりと味わいたいと思います。

16時31分、列車は定刻通り只見駅を発車。ここから先は車掌さんの乗務する区間となりまして、旅客案内からも「ワンマン」の文字が消えます。

只見駅構内では、「おかえり只見線」の横断幕が目立つ位置に飾られています。只見駅自体は2022年以前も新潟県側から列車が運行されていたわけですが、やはり会津若松から小出までが1本のレールで結ばれることは沿線の皆様にとっても悲願であったということがよく伝わります。

福島県を出る直前、車窓左手には田子倉が広がります。この湖のほとりにはかつて「田子倉」という駅がありました。かつては常設駅でしたが2001年に臨時駅へ降格し、2013年のダイヤ改正時に正式に廃止となりました。駅周辺に集落等はなく、元々利用者数はほぼゼロに等しい秘境駅でしたが、そこに新潟・福島豪雨がとどめをさした形でしょうか。

県境を越えて新潟県へと入り、最初の停車駅は大白川駅です。(臨)田子倉駅の廃止もあり只見~大白川駅間は1駅でありながら駅間が極めて長く、その距離は何と20.8キロにも上ります。

時刻表上では17時00分ちょうどの到着ですが、どうも2分ほど早着したようです。単線区間を約30分間走り続けるだけですから、それくらいの誤差は出るというものなのでしょうか。遅延でもないので特に早着して困る人はいなさそうです。

大白川駅では列車交換があり、所定4分間ほどの停車時間が設けられています。対向の列車は17時01分に発車する会津若松行で、本日大白川駅から只見・会津川口方面へと走る最終列車となります。終点の会津若松に到着するのは約4時間後の20時55分で、何と次の只見駅で30分間ほどの停車時間があるようです。なお、この後も夜にかけて小出発大白川行の列車が平日2本・土休日1本設定されています。

私の乗る列車は17時04分に大白川駅を発車。またも雨が降っていますが、さっきまでほど強くはなさそうです。

只見線において新潟県内を走る区間はそれほど長くなく、もう終点の小出駅はすぐそこまで迫っています。会津坂下以降、長らく只見川に沿ってくねくねと険しい地形の中を進んでいましたが、こちら新潟県側では比較的開けた土地を進むことになります。一応近くには「破間川」という川が流れていますが、県境付近で峠を越えましたので先ほどまでの只見川とは全くの別物です。

そして只見駅までの区間では飽きるほど見てきた「会津○○」という駅名ですが、現在は新潟県内ということで「越後○○」という駅名に変わっていることが分かります。

最後に魚野川を跨ぎ、列車は大きく左へカーブを描きます。川の向こうに見えるのが新潟県魚沼市中心市街地です。

17時47分、ようやく終点の小出駅に到着!

会津若松駅を出てから実に5時間42分、私自身としても久しぶりのロングラン普通列車の旅となりました。

小出駅では上越線と接続しており、駅構内は広々としています。かつては首都圏と日本海側を結ぶ特急列車や長距離列車も停車していたであろうことを思うと、これまた一抹の寂しさを覚えるものです。

小出から東京方面へ出るには、上越線普通列車浦佐駅もしくは長岡駅へ移動し、上越新幹線へと乗り換えるのが一般的です。長岡駅の方が新幹線の停車本数は多いですが、浦佐駅の方が所要時間が短い場合が多いため、どちらを選択するかは注意が必要です。

只見線普通列車が直接浦佐駅等へ乗り入れることがあれば首都圏からの来訪の利便性も向上するわけですが、現在は只見線の全ての列車がきっちり小出駅までの運行となっています。

まもなく全線運転再開から1年となる只見線、今後とも応援していきたいと思います!

 

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。