わたかわ 鉄道&旅行ブログ

乗り鉄&旅好きの20代男子が全国を巡る!

特急つばめ号16年ぶり復活!? 黒い787系「36ぷらす3」木曜コース”赤の路”の旅【2020-12鉄道トレンド旅3】

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みなさんこんにちは! わたかわです。

2020年の鉄道界を彩った列車を乗り継ぐ旅ということで、今回はJR九州の新たなD&S列車【36ぷらす3】に乗車してきましたのでその様子をご紹介します!

 

12月10日(木)

おはようございます。本日の旅は、九州最大のターミナル「博多駅」からスタートです。

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画角に入りきらないことでおなじみの博多駅()

巨大な駅ビルを構える博多駅は、言わずもがな九州地方最大のターミナルということで、毎日数多くの列車が発着しています。新幹線やら在来線やら、私もこれまでに何度も利用してきました。

今回乗車するのは、2020年10月にデビューした九州の新たなD&S列車「36ぷらす3」です。これは「新たな九州一周の旅」と題して、5日間かけて九州を一周する長距離観光列車で、車両は水戸岡鋭治さんがデザインした「黒い787系」が使用されます。

曜日ごとに運行ルートが決まっており、クルーズトレイン「ななつ星in九州」のように沿線各所でおもてなしを受けられますが、5日間通して一気に乗る必要はなく、きっぷは1日ごとに区切って発売されます。クルーズトレインよりもリーズナブルに、かつ気軽に列車の旅を楽しめるのです。

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木曜ルート図(https://www.jrkyushu-36plus3.jp/

5つあるルートの中で、今回私が乗車したのは木曜ルート「赤の路」です。これは博多から鹿児島本線で南下し熊本・八代へ、その先は肥薩おれんじ鉄道にも乗り入れながら鹿児島中央に至るという壮大なルートになっております。2011年に九州新幹線(鹿児島ルート)が全通し、在来線については福岡/熊本/肥薩おれんじ鉄道/鹿児島のそれぞれエリアごとに設定されている普通列車の運行が大半を占めますが、新幹線開業前は博多~西鹿児島駅間の特急〔つばめ〕が高頻度で運行されていました。

今回「36ぷらす3」のために改造された列車は、まさに2004年まで特急つばめ号で活躍していた787系で、その豪華な設備とともに「特急つばめの復活」として鉄道ファンからも大きな期待が寄せられました。

しかし今年7月、九州を襲った豪雨災害の影響で、木曜ルートの一部であった「肥薩おれんじ鉄道」が大きな被害を受け、木曜ルートのみ運行を休止した状態で36ぷらす3がデビュー。10月15日に木曜ルートからデビューするはずだったのですが、一番列車が運休となり、翌10月16日の鹿児島中央から宮崎へと向かう金曜ルート「黒の路」からのデビューとなったのです。

それから遅れること約1ヵ月、11月に入り肥薩おれんじ鉄道が全線で運行を再開し、11月19日に満を持して木曜ルート「赤の路」の運行も開始しました! 各ルート週1回のみの運行ですから、鉄道ファンからの人気も高い「赤の路」のチケットをゲットするのは至難の業でしたが、今回たまたまJR九州のネット予約から座席を確保することができたのです!

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博多駅在来線に「鹿児島中央」の文字!

博多駅の出発は9:52で、終点の鹿児島中央までは約6時間半かかります。どう考えても移動手段としては効率が悪いわけで、早く行きたいなら新幹線を使えというわけですが、もちろんそこはあえてゆっくり進みながら列車の旅を楽しめるということで、新幹線とはまた違った役割があるわけです。

博多駅の電光掲示板にはもちろん「鹿児島中央」という行先が示されています。2004年の新幹線開業後、博多駅から鹿児島中央駅までを結ぶ在来線列車は運行されたことがなかったはずですし、さらに新幹線開業前まで鹿児島中央は「西鹿児島」という駅名でしたので、博多駅の在来線ホームで「鹿児島中央」という行先を見れるのはこの「36ぷらす3」が歴史上初となります。

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みずほ並みの停車駅

ホームに上がり、列車の入線を待ちます。私は今回「6号車」を利用しますが、36ぷらす3は1週ごとに先頭車両が1号車の日と6号車の日があり、今回は6号車が先頭の日でした。実はこれ、博多から博多へ、九州を反時計回りに一周する途中、門司港で一度だけ列車のスイッチバックを行うために、博多駅をスタートして次に博多駅に戻って来る時に列車の先頭車両と最後部車両が逆になってしまうためなんです。

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今週の乗車位置は「B」

そのため博多駅6番線には「A」と「B」の2種類の乗車位置目標があり、Aは1号車が先頭の日、Bは6号車が先頭の日の乗車位置案内としての役割を果たします。これまでの長い鉄道史を振り返れば、スタート地点からぐるっと一周してまた同じ駅に戻ってくる列車は数多くありますが、その際に先頭車両が運行日によって異なるという例はまずありません

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黒い787系眩しすぎる!!

そして先行の普通列車が発車した直後、6番線に入線してきました!! 真っ黒に光り輝くこの列車こそ、博多9:52発の特急〔36ぷらす3〕鹿児島中央となります。顔の形はおなじみ787系ですが、車体の黒色が従来よりも濃くなっており、光沢があります。ギラリと光り輝くライトもあって、何だかラスボス感が物凄いです(笑)。

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行先表示はとっても見やすい

列車の側面には、フルカラーの行先表示器が取り付けられていてとても見やすいです。列車名の表示はもちろん「36ぷらす3」。まさか電光掲示板で足し算をする日が来るとは思いもしませんでした(関西の某大物鉄道系YouTuber風)。

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ピカピカすぎてめっちゃ反射する

それにしても車体の光沢が凄いですね…。ホームにいる人の姿がわりかしはっきりと映ります(笑)。

36ぷらす3は全車グリーン車で、6・5号車がグリーン座席、2・1号車がグリーン個室となっています。4号車はマルチカー、3号車には何とビュッフェも備えた豪華編成です。

今回は6号車なので、グリーン席となります。この列車は旅行商品と一般発売の2通りでの乗車方法がありますが、一般発売で乗車可能なのはグリーン席のみとなっています。旅行商品では豪華な食事つきのプランがあるようですが、私は今回乗車のみのプランを選択しました。

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畳敷きの床!

それではいざ、6号車へ。何といってもまず驚いたのは、床が畳敷きになっており、靴を脱いで上がる仕様になっている点です。これは編成中でも1号車と6号車のみのようで、かなり運がよかったです!

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下足箱さえも美しい…

6号車の後方にある下足箱はこんな感じ。座席番号ごとに一つずつ小さな蓋つきの箱になっており、他の人と取り違える心配もありません。靴を脱いで過ごす列車といえば”お座敷列車”を思い浮かべますが、まさかリクライニングシートの定期特急列車でもそのようなスタイルの列車が登場するとは驚きです。

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800系のような座席

座席はご覧の通り、800系新幹線を思わせる華やかなモケットです。2+1列の座席配置なのでかなりゆとりがあり、リクライニングもかなり深く倒れます。肘掛けが大きいので、隣の人と譲り合う必要もありません。

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たくさんのポケットがついた背面

座席背面はご覧の通り。背面テーブルはなく、代わりにドリンクホルダーとたくさんのポケットがついています。そのポケットには、ビュッフェのメニューが入っていますね…! 後程ご紹介します。

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設備は最新特急並み

また、各座席にはコンセント、読書灯、インアームテーブルも完備されており、フリーWi-Fiも接続可能です。787系自体は登場から30年近い車両ですが、今回の改造を受けて設備は最新特急車両並みといえそうです。

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窓には障子

窓を見てみると、障子があり、その障子を開けるとフリーストップ式の簾が設置されています。一つひとつの細工が本当に細かいというのと、和を感じる内装がとても新鮮です。障子は左右にスライドするため、最大でも外の景色が窓の半分程度しか視界に入らず、窓がやや小さくなってしまうというのが若干難点のようにも思いますが、まぁ景色を見る上で不自由することはありません。

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九州新幹線の下を走る

9:52、列車は定刻通り博多を出発。これより鹿児島本線でひたすらに南下していきます。車窓左手には福岡の市街地と九州新幹線の高架橋が見え、いかにも都市部らしい風景が広がります。

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何もない場所で運転停車!?

しかし十数分もすれば、車窓には畑も見えてきました。何と水城~都府楼南駅間の線路上で運転停車を行い、後続の特急を追い越したようでした。恐らく博多9:55発の特急〔かもめ13号〕長崎行かと思います。

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リーフレットが配られる

まもなくするとアテンダントさんがご挨拶に回り、手のひらサイズのリーフレットが配られます。沿線の見どころや記念スタンプのスペースがあり、これを見ればルートの魅力を余すところなく知ることができます。

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鳥栖は重要な分岐点

博多を出て約30分、10:19に列車は鳥栖運転停車となります。熊本・鹿児島方面と佐賀・長崎方面の分岐点にあたる超重要な駅ですが、客扱いはなく扉は開きません。これも鉄道史的に見てかなり珍しいことなのではないでしょうか。

4分ほどの運転停車をしたのち、鳥栖駅を発車。続いて筑後川を渡り、その先には久留米駅がありますが、ここは運転停車さえもすることなく颯爽と通過していきます。未だかつて久留米駅に停車しない在来線の列車があったのでしょうか…。新幹線でさえも「さくら」と「つばめ」の全列車が停車する主要駅ですから、これも36ぷらす3ならではの体験です。

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大牟田駅にも運転停車

博多を出てから1時間、10:52には大牟田に到着。ここでも扉は開かず、3分間ほどの運転停車となりました。

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黒光りがハンパないデッキ

ここで少し、車内探検に出てみます。デッキにはコロナ対策として消毒用のジェルが置かれていますが、それ以外は何だか全体的に光沢のある真っ黒で異様な空間です(笑)。壁や扉、窓などいろんなところに自分が反射している気がします。

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マルチカー

4号車は「マルチカー」と呼ばれる号車になっており。木をふんだんに使ったデザインのラウンジスペースとなっています。乗客はだいたいいつでも利用できるほか、隣のビュッフェカーで買った飲食物をここで食べながら過ごすこともできます。WEST EXPRESS銀河のフリースペースとは異なり、席数の制限やパーテイションの設置等は行われていないみたいです(銀河は乗ったことありませんが)。

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表示は「次は、玉名」

デッキと客室の間の扉の上部には、次の停車駅を表示する電光掲示板があります。これは改造前から引き続き使われているものだと思いますが、そこに表示されているのは「次は、玉名」の文字。時刻表上、この36ぷらす3「赤の路」の途中停車駅は熊本のみのはずなんですが…。

これはどういうことかというと、実は玉名駅で停車し、ホームに降りて地元の方々からのおもてなしを受けることができるというわけなんです!

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787系が玉名にやってきた!

11:10、博多を出てから約1時間20分で熊本県玉名駅へと到着です! 現在では特急の発着が1本もなくなった玉名駅に、787系が停車しております!

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特産品や地域の魅力をPR

ホーム上では、地元の皆様による特産品の販売や観光PR等が行われておりました。こういうのを見てしまうと、20分間の停車どころではなく数時間滞在してじっくりその土地を見て回りたいと思ったりもするわけですが、せめて玉名にお金を落としていこうと思い、ハニーローザショートブレッド(300円)を購入しました(後程ご紹介します)。

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玉名駅の発車標にも表示が!

玉名駅は、時刻表上では一応通過扱いということになっているので、この駅から乗車することはできないのですが、発車標にはしっかりと「36ぷらす3」が表示されていました! 玉名駅に特急の文字…何とも感動的です。しかも「鹿児島中央」ですからね。新幹線は玉名駅ではなく少し離れた「新玉名」という駅を通るので、玉名駅から鹿児島方面へ抜けられるのもおそらく2004年以来ということになるのではないでしょうか。

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編成全体を映せる!

ホームの反対側に移動し、改めて編成全体を眺めてみます。恐らく特急つばめ号時代に、この玉名駅は停車駅になっていたと思いますから、その際に787系が頻繁に発着していたと思いますが、しかし今回の「黒い787系」となると話は変わってきます。やはりかなりの存在感ですよね。

発車3分前になると、アテンダントさんが鐘を鳴らし、乗り遅れないよう促します。そして11:30に、定刻通り玉名を出発。次の停車駅は、熊本となります。発車時に車掌さんが「それでは、列車の旅を続けましょう」と渋い声でアナウンスしたのがとても印象的です。

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ハニーローザショートブレッド

車内では、先ほど玉名駅のホームで購入した「ハニーローザショートブレッド」をいただきます。ハニーローザというのは玉名市を含む熊本県玉東地域で採れる”すもも”のことで、他のフルーツにはなかなかない独特の甘みがとっても美味しかったです! パイの実よりもひとまわり大きいくらいのサイズが2個入りで300円ですからややお値段は高めですが、玉名に関する知識がまた一つ増えたと思えば安いものです。

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建物が見えてきたら熊本

玉名から熊本までは比較的近く、気がつけば西南戦争の激戦地である田原坂をあっさりと通過していきます。そして車窓には熊本市街地の建物群や高いマンションが見えてきました。

博多を出てから約2時間、11:50に列車は途中の熊本へと到着です!

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ここが唯一の客扱い駅

先ほども申し上げた通り、「赤の路」ではこの熊本駅が唯一客扱いを行う停車駅となります。要はこの駅を出発、または到着とする特急券については発売可能というわけです(博多→熊本、熊本→鹿児島中央)。大半の人は博多から鹿児島中央まで全区間乗り通すようですが、ここ熊本での入れ替わりもわずかながらありました。

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熊本駅高架ホームに787系

熊本駅では、2011年に新幹線が開業した後、在来線ホームについても2015年以降順次高架化されていき、2018年に全面高架化が完了しました。この駅を787系が現役で発着していた頃は地上ホームだったため、熊本駅の高架ホームに787系が入線する光景は非常に貴重なものといえそうです。それもただの787系ではなく「黒い787系」ですからね。

隣には、三角線に入る気動車が停車していました。古臭さを感じさせる昔ながらの鈍行気動車と、豪華なピッカピカの特急電車が並ぶギャップは何ともたまりません。

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熊本駅での停車時間はわずか

熊本駅での停車時間はわずか10分で、ここでは特に玉名駅のような物販は行われません。ただ、地元の方々が横断幕を掲げて全力でお見送りをしてくださいました! ありがとうございます。

区切りよくちょうど12:00となり、列車は熊本駅を定刻通り出発。これより九州地方南部へと差し掛かっていきます。本州民からすると、熊本は博多と鹿児島中央のちょうど中間地点のような気もしてしまいますが、実際はこの先、熊本~鹿児島中央駅間の在来線は海に沿ってくねくねと走る区間が長く、所要時間でいえばまだ3分の1程度となっています。

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博多彩時記弁当(1,000円)

熊本駅を出発したところで、いよいよお昼ご飯タイム! 私は乗車のみのプランということで豪華な食事が提供されるわけではないので、今回は事前に博多駅で買っておいた駅弁「博多彩時記弁当」をいただきます。ちょうど税込1,000円ということで、地域共通クーポンで買いました。

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ご、豪華すぎるぅぅぅぅ!

蓋を開けてみると…おおお! 幕の内の超豪華バージョンといったところでしょうか。おせちのように華やかなお弁当です。海老、煮物、焼き鯖、白身フライのマリネ等、全体的に和風なテイストが強いですね。お肉系はミートボールや鶏のから揚げ、そして豚肉と玉ねぎの串カツなど、とにかく本当に品数が多いです。おそらく博多駅に行けばいつでも買える駅弁なのかなとは思いますが、36ぷらす3の車内で食べるとより一層特別感が増し、とっても美味しいです!

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八代駅からはいよいよ「肥薩おれんじ鉄道」へ

熊本から先もしばらくはJRを走り、12:27に八代へと到着。ここでは約11分間の運転停車の後、いよいよ「肥薩おれんじ鉄道」へと入っていきます。

2004年の九州新幹線新八代鹿児島中央駅間先行開業にあわせ、JR鹿児島本線の八代~川内駅間が経営分離され第三セクター鉄道肥薩おれんじ鉄道」となりました。この区間では基本的にすべての列車が気動車での運行となっていますが、電化設備は貨物列車のために現在も維持されています。電化設備に関してはJR貨物が維持費を負担することでおれんじ鉄道は経費削減に努めているということで、旅客列車でおれんじ鉄道線内の電化設備が使われることはまずないわけですが、今回36ぷらす3の運行があるということで久しぶりにそれが使われたということになります。

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ハニーローザアイスクリーム(390円)

また、12:30から13:30までの1時間は、ビュッフェカーへの立ち入りが禁止となります。これは「各号車でゆっくりとお食事をお楽しみいただくため」ということで、グリーン個室ならグリーン個室で、グリーン席ならグリーン席で過ごす時間ということのようです。ビュッフェカーに立ち入れない代わりに、この時間帯はビュッフェカーで販売している商品の一部を車内販売としてアテンダントさんが巡回しています。私は食後のデザートとして「ハニーローザアイスクリーム(390円)」を購入。先ほどのショートブレッドよりもさらに甘いです! とても美味しいので、少々お値段は張りますが是非ご賞味あれ。

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右手に不知火海

ちょうどその頃、列車は運転停車していた日奈久温泉を出発し、車窓右手に不知火海が見えてきました! これからおれんじ鉄道線内では断続的にオーシャンビューを楽しめる車窓がありますが、まさにこれこそが新幹線では味わえない旅の楽しみの一つといえそうです。私の座席は進行方向左側だったので、すぐにデッキに出て海を眺めます。この上田浦駅付近はそこそこ長い時間海岸沿いを走るので、やはりオススメは進行方向右側の座席です。

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水俣駅

続いて、水俣、袋、出水、野田郷と列車は立て続けに運転停車をしていきます。いずれも上下列車の行き違いや時間調整のためですが、この辺りは特に高頻度で運転停車をするあたり、ダイヤにねじ込む苦労を感じます。かつて運行されていた寝台特急北斗星〕と青い森・IGRの関係のように、JRの長距離列車が第三セクターに乗り入れることで、自然に運賃収入が増えるという良い面もありますが、乗務員やダイヤの調整が簡単ではないという一面もありそうです。

おれんじ鉄道線内では、単線ということもあって全体的にかなりゆっくりとした走りで進んでいきます。D&S列車ということを考えればさほど違和感はないのですが、やはり往年の特急つばめ号ほど勇ましい走りではないというのが率直なところ。それでも787系で三セク区間に乗車するという経験はそうそうできることではないので、一瞬一瞬を楽しみながら進んでいきます。

そしていよいよ、列車は2回目のおもてなし停車駅「牛ノ浜」に到着です!

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牛ノ浜に到着!

時刻は14:27、博多を出てから約4時間半が経過しました。牛ノ浜では約18分間停車しますが、ホームが短いため後方3~1号車はドアカットされます。よりにもよってグリーン個室のお客さんの車両がカットされるとは…仕方ないですが(笑)。

牛ノ浜駅はホームのすぐ目の前まで海が迫る無人駅で、玉名駅のような物販に加え、地元の方々による演舞の披露もあり、普段人気(ひとけ)の少なそうな無人駅がこの瞬間だけかなり賑やかになります。今年はコロナ禍で数々のイベントやお祭りが中止され、人の盛り上がりや賑わいというのを目にする機会がなかなかありませんでしたが、こうして町のみなさんが全力で歓迎してくださるのを目の当たりにすると感動です!

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なかなか訪れる機会もない

少しばかり買い物をして、列車に戻ります。今後いつかこの牛ノ浜駅に来る機会があるかはわかりませんが、肥薩おれんじ鉄道には他にも魅力的な駅や列車がたくさんありますから、また改めてじっくり訪れられたらと思います。

14:45に牛ノ浜駅を発車。次にドアが開くのは鹿児島中央となります。

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ビュッフェカー復活!

鹿児島中央まであと1時間半ほどに迫ったところで、忘れぬうちに「ビュッフェカー」も堪能しておきます! ドーム状の屋根が特徴的な3号車は、特急つばめ時代に供食設備を備えた「ビュッフェカー」として、いわば立ち食いレストランともいえる車両が連結されていたそうなのですが、新幹線開業後の787系ではこれが廃止され、3号車も座席車となっていました。しかし36ぷらす3として改造されるにあたり、再び大きなカウンターを備えた「ビュッフェカー」として復活したのです!

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名物のお酒やジュースがずらり

ビュッフェカーの一角には冷蔵ケースがあり、飲み物も豊富に取り扱っています。こういうのって普通はコンビニや居酒屋にあるやつですよね…! 列車の車内に積んでいるとは驚きです。

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かなり豊富なビュッフェカーのメニュー

各座席に入っているメニューはご覧の通り。お菓子・おつまみや飲み物、オリジナルグッズ等が中心ですが、何と往年の食堂車を彷彿とさせる「軽食」もあるのだとか! 既にお昼ご飯は食べ終えていてそこまでお腹は空いていなかったのですが、せっかくの機会なので「五島手延べうどん『七椿』」(450円)を注文。

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細い麺が特徴的

容器は使い捨てですが、確かに温かいうどんがでてきました! 五島手延べうどん「七椿」はそうめんのように細い麺が特徴で、揚げ玉と海苔がのっています。車内にキッチンがあるわけではなさそうなので、おそらくレンチンだとは思いますがやっぱり美味しいです。昼食後でもするするっと完食しました。

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大迫力の海を見ながらの食事…

ビュッフェカーの窓から広い海を眺める…こんな贅沢を2020年にできるなんて、誰が想像したでしょうか。

牛ノ浜出発後、4号車マルチカーでは予約制の車内イベントが開かれていたようなのですが、今回は参加を見送ります。鹿児島中央まで、最後のひとときをじっくり味わうことにしました。

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上川内でも運転停車

肥薩おれんじ鉄道の終点一つ手前となる上川内駅では、何と14分も運転停車。14分もあるならドアを開けてくれてもいいのに…とも思いますが、一度乗客をホームに解き放つとアテンダントさんの業務が増えてしまいますし、仕方ないですね。

そして川内駅でもわずかながら運転停車を行い、列車は再びJRへと入っていきます。

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港町たい焼き(300円)

忘れないうちに、牛ノ浜駅のおもてなし停車中に買った「港町たい焼き(300円)」もいただきます! さっきからお前どんだけ食うんだよって感じですが、あまり時間を置いてしまうと味が落ちてしまうと思いますから、鹿児島中央到着前に美味しくいただきました。尾びれのところに「39」と書かれた焼き印がしてありますが、これは恐らく「36+3=39」ということでしょう。とってもボリュームがあって美味しかったです!

鹿児島本線の末端で現在もJRの区間となっている川内~鹿児島中央駅間は、今でこそ普通列車のみの運行ですが、数年前までは通勤客向けの特急〔川内エクスプレス〕というのが走っていました。今回36ぷらす3が設定されたことで、川内~鹿児島中央駅間の在来線特急というと数年ぶりということになるのでしょう。新幹線なら1駅ですが、在来線は険しい山越え区間となるためかなりの距離があります。

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終点・鹿児島中央に到着!

そしていよいよ、列車は16:24に終点の鹿児島中央駅へと到着。博多から317.1km、6時間半にも及ぶ往年の特急「つばめ号」の旅も、ついにここまでとなります。

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787系はやはり九州の顔

今回の旅を通じて、改めてこの「36ぷらす3」という列車の凄さを、身をもって実感することができました。長距離を走る特急列車が全国的にも減少傾向にある中で、この列車は既に新幹線が高頻度で運行されている博多~熊本~鹿児島中央駅間に新たな在来線特急列車としてデビューしたわけです。そこにあるのは、単なる移動「手段」としての長距離特急ではなく、移動そのものが「目的」となる2020年代の新たな特急の姿にも思えます。一見全く新しい発想にも思えますが、その中には往年の鉄道史に刻まれてきた数々の名列車の存在を感じさせ、やはり鉄道の歴史というものは今日まで1日たりとも途切れることなく刻まれ続けてきた、しかしまたその中でも進化を続けてきたのだというのを強く実感しました。

新型コロナウイルス感染症が再び拡大を続ける昨今、遠くへ出かけることや時間・お金をかけた旅行というものをしづらいと考える人も少なからずいらっしゃると思います。ですからすぐにとは言いませんが、みなさんもご予定が合えば、是非とも一度この「36ぷらす3」に乗ってみていただきたいと強く感じます。特急つばめ号の足跡を辿る木曜日コース以外にも、曜日によって日豊本線長崎本線でのコースも設定されていますから、是非気になるコースを36ぷらす3で巡ってみてはいかがでしょうか。今まで何度も九州に足を運んだことがあるという方も、そうでない方も、必ずや新たな発見があるはずです。

今はまだデビュー後間もない時期ということで発売直後に満席となってしまうこともあるようですので、ご旅行の計画はお早めに!

▼最新情報は以下のリンクからもご覧いただけます!

www.jrkyushu-36plus3.jp

 

今回は大変長い記事となりましたが、最後までお読みいただき誠にありがとうございました!

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