わたかわ 鉄道&旅行ブログ

乗り鉄&旅好きの20代男子が全国を巡る!

【13年の歴史に幕】「リゾートあすなろ」釜石線で迎える最後の夏。

 

2023年8月13日(日)

本日は岩手県盛岡駅へとやってきました。大きな駅舎が特徴的です。

北東北最大級のターミナル駅である盛岡は、東北新幹線秋田新幹線の分岐駅であるほか、東北本線・山田線・田沢湖線IGRいわて銀河鉄道が乗り入れます。最近ではNYタイムズが選ぶ「2023年に行くべき52ヵ所の旅行先」において、第1位のロンドンに続き何と盛岡市が世界第2位に選ばれたことでも大きな話題となりました。

今回はそんな盛岡駅より、とある臨時観光列車に乗車していきます。

盛岡駅をはじめ、北東北エリアでは2023年5月27日に交通系ICカードの利用を開始。自動改札機は最新のものに置き換えられており、利便性が大幅に向上しました。

乗車するのは、盛岡10時40分発の快速〔さんりくトレイン釜石〕釜石行です。盛岡~花巻駅間は東北本線を走行し、花巻から釜石線へと直通します。

使用車両は、HB-E300系「リゾートあすなろ」。2010年12月の東北新幹線新青森開業に合わせ、北東北エリアを運行する観光列車としてデビューしました。2両編成のハイブリッド車両で、電化・非電化を問わず走行できます。

しかしJR東日本では、新たな観光列車として「ひなび」「SATONO」の2列車デビューを発表。現在の「リゾートあすなろ」を改造してこれらの車両に充てる予定ということで、車両自体は残りますが「リゾートあすなろ」としての姿は今夏をもって見納めということになります。

車内には在来線特急にもあるようなリクライニングシートが並びます。座席の設置箇所は通路部分から一段高くなっており、眺望を考慮してのものと思われます。

そして何といっても座席の前後間隔が非常に広く、これについては特急列車よりも遥かに贅沢なスペースの使い方をしていると感じます。各座席には背面テーブル・ドリンクホルダー・フックもあり、割と何時間でも快適に過ごせそうな車内です。

なお残念ながら、Wi-Fiやコンセントはありません。こればかりは快速列車ですから仕方のないことでしょう。2010年頃というと新幹線や特急列車によってはコンセントが当然の如くあったりもする頃でしょうが、ちょうど過渡期であいにくタイミングが合わなかったのかもしれません。

10時40分、列車は定刻通りに盛岡駅を発車。まずは東北本線を南下し、花巻へと向かいます。

盛岡駅およびその周辺には建物や民家が並びますが、そこから少し走ると線路沿いは広大な田園風景が広がります。

今回の「さんりくトレイン釜石」としての運用も含め、リゾートあすなろは基本的に「全車指定席の快速」としての運用になっています。なので運賃に加え必要なのは530円の指定券のみで、設備の充実さに対してかなりコストパフォーマンスの良い列車であるといえるでしょう。

なお余談ですが、今回は岩手県内のJR各線が1日乗り放題となる「いわてホリデーパス」(2,500円)というものを使用しています。盛岡~釜石駅間の普通運賃は2,310円ですからこの区間の乗車のみではギリギリ元が取れないものの、このほかに数駅程度乗車すれば元が取れるのでとてもお得です。

11時09分、花巻駅に到着。ここで列車の進行方向が変わるため、6分間停車します。

花巻駅は2面3線の構造で、釜石線の列車および東北本線釜石線を直通する列車が駅舎に最も近い1番線を使用することになっています。

11時15分、列車は花巻駅を発車。いよいよ本命、ここから釜石線へと入ります。

さて車内の混雑率ですが、2両編成ながらまだまだ窓側でも空きが見られます。乗客層としてはやはり私を含め鉄道ファンが多い印象です。

北上川を越え、続いて列車は新花巻駅に停車。ここは東北新幹線との乗換駅です。スーツケースを抱えた乗客の方も多数乗車され、混雑率は一気に上がりました。観光客のような方もいらっしゃいますが、それよりもちょうどお盆休みですから帰省客らしき方の方が目立つように思います。

リゾートあすなろ」の客室内上部にはモニターが設置されており、何と前面展望を楽しむことができます。釜石線は基本的に単線ですが、周囲を険しい山々に囲まれる場面もあり、見ていて飽きません。

新花巻を出ると、土沢、宮守と停車します。土沢はかつての東和町の中心となる地域ですが、2005年に合併され現在は「花巻市東和町」にその名を残しています。

単線路線でありながら途中駅での列車交換も特になく、「快速」の名に相応しい快調な走りをしてくれます。

12時07分に列車は遠野駅へと到着。遠野駅は釜石線の途中駅としては最大の主要駅で、ここでは何と24分間も停車します。どうやら釜石方面からの列車との行き違いを行うようです。

今回「さんりくトレイン釜石」という列車名で運行しているこの列車ですが、「あすなろ」(=ヒバ)という列車名からも分かる通り元々は青森県内を中心に運用される観光列車でした。青森駅新青森駅を拠点に下北・大湊方面や蟹田三厩方面といった青森県内のローカル線での運用が多く、実際私自身もそのイメージが強いというのが正直なところです。

しかし岩手県内での運用がメインとなっていた観光列車「kenji」が2018年をもって引退すると、これを引き継ぐ形で近年は岩手県内での運用が多い状態となっていました。特に山田線の盛岡~宮古駅間を結ぶ「さんりくトレイン宮古」での運用が多く、これこそまさに以前は「kenji」が担っていた運用でもあります。

一方で「リゾートあすなろ」の釜石線への乗り入れ機会は滅多になく、私の知る限りでは「さんりくトレイン釜石」という名称の列車がこれまでに運行されていたことはないと記憶しています(何かの機会にあればすみません)。「リゾートあすなろ」としての運行は8月20日団体臨時列車をもって終了となりましたが、最後のお盆にまさか釜石線を走ってくれるとは思いもしませんでした。

「民話のふるさと」として知られる遠野。24分間もの停車時間がありますが、あいにくホーム上で特産品の販売等が行われているわけではなさそうでした。なお改札口係員の方に申し出ると、いったん改札の外へ出ることも可能なようでした。

なお長時間停車が設けられていた理由としては、対向の快速〔はまゆり54号〕盛岡行との行き違いを行うためだったようです。この列車は本来ですと遠野駅を12時18分に発車しますが、この日は始発駅の釜石で車両点検が行われたらしく、何と40分以上の遅れをもって運行されているようでした。私の乗る〔さんりくトレイン釜石〕はこの列車の到着を待つことなく発車するようです。

特にどの列車との行き違いを行うこともなく、12時31分に定刻通り遠野駅を発車。せっかくなので、停車時間中に遠野駅前の観光案内所で販売していた「遠野ミルクジェラート」をいただきます。

味は様々あるようですが、今回は「クリームチーズ&遠野ブルーベリー」(400円)をチョイス。ミルクの濃厚さとブルーベリーの酸味が絶妙にマッチしていてとても美味しく、一口頬張るごとに幸せな気持ちになれます。

さて「リゾートあすなろ」の最前部と最後部には展望スペースがあり、それぞれ前面展望・後面展望を楽しむことができます。正面・左右の3方向に窓があるので、流れる景色をダイナミックに楽しむことができます。

遠野駅から4駅進んだ、途中の足ヶ瀬駅では約3分間の運転停車がありました。ここで遅れていた上り〔はまゆり54号〕盛岡行とようやく行き違いが完了です。おそらく足ヶ瀬駅での運転停車は本来行われないものなのだろうと思います。

この先の上有住駅を通過したあと、列車は釜石線最大の難所「仙人峠」を越えていきます。地図上で見るとただ意味もなく遠回りをしているように見えるかもしれませんが、このようにあえて遠回りをしながら坂道を下っていくことで勾配を緩和しているのです。

釜石市に入ってすぐ、列車は北向きに進行方向を取り、ゆっくりと坂を下っていきます。陸中大橋駅までの区間はトンネルが多いものの、その合間からはこの後通る線路がはっきりと確認できました。ひと続きになっている線路をこのような角度から見ることは通常あまりできないので、何とも不思議な感覚です。

やがて列車は陸中大橋に到着。ここで上り普通列車と行き違いを行います。私の乗る列車は遠回りをしながら坂を下ってきたので、あちらは逆にこれから上っていくということになります。

陸中大橋の次、洞泉駅を過ぎたあたりから車窓にはまた少しずつ建物が見えるようになってきます。この辺りまで来るともうほとんど開けた土地で、少し前までのような山間部を縫って走るような様子は全くありません。

盛岡駅を出て約2時間40分、13時23分に終点の釜石駅へと到着。

釜石線のほかに三陸鉄道リアス線も乗り入れる、この地域のターミナル駅です。

ちょうどお昼時でしたので、釜石駅構内の立ち食いそば店で名物の「釜石ラーメン」(500円)を注文。シンプルな醤油ラーメンで、あっさりとした味わいがたまりません!

というわけで今回はここまで。

快速〔さんりくトレイン釜石〕は盛岡~釜石駅間を1日1往復のみ、2023年8月10~15日の6日間限定での運行でしたので、引退目前の「リゾートあすなろ」に乗車できる機会としては大変良いものとなりました。繰り返しになりますが、「リゾートあすなろ」はこの後8月20日青森県内で運行される団体臨時列車での営業運転をもって現行の姿は見納めとなりました。

一時期と異なり近年はJR東日本で人気の観光列車のデビュー頻度が下がっているような気がしますが、今後登場する新型塗装「ひなび」および「SATONO」の活躍にも期待したいと思います。特に「SATONO」については主に南東北での営業運転が中心となる見込みですので、従来の「リゾートあすなろ」からすると行動範囲がぐっと広がることになります。「リゾートあすなろ」の引退は惜しいですが、一方で新型車両のデビューもこれまた大変興味深い話題です。

今後も東北地方から目が離せません!

 

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。