2022年9月30日(金)
今回は東京駅へとやってきました。これから新幹線に乗車し、北海道の新函館北斗駅へと向かいます。
2016年に開業した北海道新幹線。2011年に東北新幹線で運行を開始した〔はやぶさ〕の一部列車が青函トンネルを通り東京~新函館北斗駅間862.5キロを結んでいます。
〔はやぶさ〕は東北新幹線における最速達の種別…という位置づけにはなっているものの、その細かい停車駅は便ごとに異なります。
全ての列車が必ず停車する途中駅は上図の黒く塗られた駅のみ。〔はやぶさ〕が「最速達種別」であることは事実ですが、明らかにそうであると言えるのははあくまでも列車種別の豊富な東京~仙台駅間のみで、仙台以北の駅はどんな小規模な新幹線駅でも1日1本以上〔はやぶさ〕が停車することになっています。
そこで今回は、通常ダイヤにおける東京~新函館北斗駅間最速達列車の一つである、東京9時36分発の〔はやぶさ13号〕新函館北斗行へと乗車していきます。
途中停車駅は大宮、仙台、盛岡、新青森のみ。まさに先ほどの図における「黒く塗られた駅」にのみ停車していく便です。新函館北斗までの所要時間はわずか3時間57分となっています。
〔はやぶさ〕の中には、秋田新幹線〔こまち〕と連結して東京~盛岡駅間を運行するものが多く存在します。しかしこの最速達便は〔こまち〕を連結することなく、E5系単独10両編成での運行です。最大17両編成での運行も可能なJR東日本の東京駅ホームを大きく余らせ、南寄りに停車しています。
いざ乗り込み、列車は定刻通り9時36分に東京駅を発車。予約しておいた、普通車3人掛けの窓側に腰掛けます。
車内はそこそこの乗車率。平日ということでビジネス客が多く、週末よく見かけるような家族連れや大人数のグループ客の姿はあまりありません。
この先北海道新幹線へも直通していく列車ですが、東京駅発車時の車内放送は「本日も東北新幹線をご利用くださいましてありがとうございます」でした。
東京を発車するやいなや、前方の電光掲示板に表示された文字は「次の停車駅は大宮です」。図でもお見せした通り、この新幹線は上野駅さえも通過してしまいます。
上野駅の新幹線ホームは地下にあり、〔はやぶさ13号〕は速度を落としつつも停車することなく通り過ぎていきました。
長らく東北方面への長距離列車のターミナルであった上野駅。しかし新幹線の発達によってそれらは姿を消し、在来線の地平ホームは閑散としています。「上野駅を通過する列車が運行されている」という事実は、国鉄時代の人に言ってもまず信じてもらえない気がします。
とはいえ、上野駅を通過する新幹線はごく一部のみ。加減速や停車時間に必要な数分を削ってでも所要時間を縮めることで、この新幹線はJR東日本にとって重要な広告材料になっています。
上野を通過すると列車は再び地上へと出ます。車窓右手に広がる東京下町のビルやマンション群の中には、明らかに新幹線客へ向けてアピールしていると思われる「萩の月」の広告も。仙台での定番土産ですから、東京都内のうちから宣伝をしておくことで仙台に降り立ってから買ってもらおうということでしょう。
荒川を渡ると、列車は埼玉県に入ります。遠くの方にはタワマン群が見えますが、方角的に川口あたりでしょうか。見晴らしがよいのでかなりくっきりと確認することができます。
赤羽~大宮駅間では、埼京線と並走して走ります。市街地のため最高速度は130km/hに制限されており、在来線よりも「気持ち速い」程度でしかありません。その代わり車窓をじっくりと楽しむことができ、さいたまスーパーアリーナの辺りを通過する頃にはかなり減速していたように感じます。
最初の途中停車駅は埼玉県の大宮駅。新幹線・在来線を含め全ての列車が停車する「鉄道のまち」です。1982年に東北新幹線が開業した際の始発駅でもあり、上野~大宮駅間はリレー列車で結ばれていました。
9時59分に大宮駅を発車。これより先、列車の最高速度は275km/hへと引き上げられ、いよいよ本領発揮の区間となります。外は快晴で、景色も抜群です!
さて、今や東北新幹線の主力車両でもあるE5系。座席は一見すると直角で座り心地が悪そうですが、これはリクライニングをして使う前提で設計されたものと言われています。また今回乗車した編成ではコンセントが全席に完備されていましたが、編成によっては窓側のみしかコンセントがないものもあるそうなので、必ずコンセントが使いたいという場合には窓側の予約にこだわると安心かもしれません。
〔はやぶさ〕の最大の魅力でもあるのが、大宮~仙台駅間ノンストップ運行。宇都宮以北では最高速度が320km/hへと引き上げられ、停車パターンに関わらず途中小山、宇都宮、那須塩原、新白河、郡山、福島、白石蔵王の7駅を必ず通過します。
特に宇都宮や福島といった県庁所在地にとって「最速達の新幹線が通過する」という事象はあまり快くない部分もあるかもしれませんが、東海道新幹線〔のぞみ〕が静岡を通過して名古屋へ至るように、東北新幹線の仙台にも絶大な求心力があるため、遠近分離を図ることは極めて妥当という気がします。特に東京~仙台駅間においては〔やまびこ〕が充実しており、少なくとも本数の面で不便さを感じることはあまりないように思います。
さて、まもなく見えてくる大都会が杜の都・仙台です。郡山や福島等も駅周辺に建物が多く大きな街ではありますが、仙台到着前の風景はそれらとは比べものになりません。
1時間以上のノンストップを経て、11時06分に宮城県の仙台駅へと到着。ここで乗客の大半が降りていき、それとは逆にここから乗車してくる乗客はごく少数です。
東海道新幹線〔のぞみ〕では、名古屋を過ぎてもその先京都、新大阪、広島、博多など大都市が続々ありますので常に車内は混雑します。一方で東北新幹線の仙台以北では仙台と肩を並べるほどの大都市はなく、この「東京~仙台駅間」の需要が非常に大きいと言えます。
11時07分に仙台駅を発車。しばらく走り市街地を抜けると民家や建物も少なくなり、線路脇の壁が低くなるため車窓をたっぷりと楽しむことができるようになります。
仙台を出ると、次の停車駅は岩手県の盛岡。途中にある古川、くりこま高原、一ノ関、水沢江刺、北上、新花巻の6駅を通過します。
車内が空いたことからも明らかな通り、仙台以北では必ずしも「停車駅が少なく、速い新幹線」ばかりが望まれているだけではありません。東京~仙台駅間を中心に運行されている〔やまびこ〕の一部は盛岡へと乗り入れますが、その際仙台~盛岡駅間は必ず各駅に停車します。また〔はやぶさ〕の一部に盛岡発着便も設定されており、その場合も多くが仙台~盛岡駅間では各駅停車となります。
そして盛岡が近づいてくると、仙台の時のようにたくさんの人がデッキへと進んでいき、客室内はますます空いていきます。
11時46分に列車は岩手県の盛岡駅へと到着。仙台からの所要時間は40分ほど、東京を出てからもまだ2時間10分しか経過していません。速い、速すぎる…。
盛岡駅では多くの〔はやぶさ〕が秋田新幹線〔こまち〕との切り離し作業を行います。しかし冒頭でも述べた通り、この〔はやぶさ13号〕は〔こまち〕を連結していません。というのも〔こまち〕との切り離し作業を行うには盛岡駅で5分ほど停車する必要があり、その分の時間を取ってしまうと東京~新函館北斗駅間で4時間を切れないのです。
東京~広島駅間等でも謳われるように、新幹線にとって「4時間の壁」は飛行機との熾烈な争いの基準の一つとなります。停車時間もそこそこに、列車は11時47分に盛岡駅を出発。いやぁぁ停車時間短ぇぇぇ…。
盛岡を出ると次の停車駅は新青森。途中にあるいわて沼宮内、二戸、八戸、七戸十和田の4駅を通過します。
中でも存在感があるのは、2002年から2010年の8年間に渡り東北新幹線の終着駅であった青森県の八戸駅。当時をよく知る人にとって「はやて 八戸行」は東北新幹線速達列車としておなじみの文字の並びだったことでしょう。
2010年に東北新幹線が新青森まで全線開業したことにより、八戸駅は途中駅となりました。現在もなお停車本数はある程度維持されているものの、一方で〔はやぶさ13号〕のような最速達便ともなれば容赦なく通過していきます。
盛岡以北で運行されている新幹線は、朝夕に数本設定されている〔はやて〕以外全て〔はやぶさ〕です。〔はやぶさ〕〔はやて〕とも全車指定席のため、盛岡~新函館北斗駅間では自由席を連結した新幹線が1本も存在していないのです。
このため同区間では「特定特急券」が発売されており、座席の指定を受けることなく指定席の空席を利用することができます。ただしその席を予約している乗客がみえた際は他の席へ移る必要があり、あくまでも「その席を予約している乗客」に優先権があります。
まもなくすると、車窓に青森の市街地が見えてきました!
白い大きな橋は青森駅の真上に架かる「青森ベイブリッジ」、そのすぐ右にある三角形の建物は「アスパム」という観光物産館です。いかにも青森らしい景色にテンションが上がります!
12時34分に列車は新青森駅へと到着。東京を出てからわずか2時間58分です。
地理的な都合などで残念ながら青森駅への直接の乗り入れが叶わなかった東北新幹線ですが、新青森~青森駅間は普通列車で1駅、5分程度の距離。新大阪~大阪駅間と同じ感覚です。もちろん普通列車の本数は大阪ほど多くはありませんが、不自由しない程度には設定されており、この区間に限り在来線特急の自由席にも追加料金なしで乗ることができます。
新青森でさらにごっそりと降り、車内はますますがらんとした雰囲気に。しかし決して誰もいないということはなく、少ないながら少人数の観光客らしき姿もあります。ビジネスで東京~函館間を移動する場合は飛行機に軍配が上がるというのが正直なところでしょうから、ビジネス客の姿はあまりないように思えました。
12時36分に新青森を発車し、ここから先は2016年に開業した北海道新幹線の区間。管轄もJR東日本からJR北海道へと変わります。「本日も北海道新幹線をご利用くださいましてありがとうございます」という車内放送に変わりました。
新青森の次の停車駅は、いよいよ終点の新函館北斗。途中にある奥津軽いまべつと木古内の2駅を通過します。「たった2駅か」と侮るなかれ、その2駅の間には長大な青函トンネルがあり、新青森~新函館北斗駅間は150キロ近く離れています。
本州を抜ける直前、線路が2本から3本へと増えました。これは「三線軌条」と呼ばれ、線路幅の異なる新幹線と在来線の両方を走らせられるようになっているのです。とはいっても現在の青函トンネル内で在来線旅客列車の定期運行はなく、主に貨物列車のためのものということになっています。
12時53分頃、いよいよ列車は青函トンネル内へ!
本州側から青函トンネルへ入る時刻、また北海道側へ出る時刻は車内放送で案内があります。また客室内の電光掲示板には青函トンネルに関する情報も表示され、特急〔スーパー白鳥〕時代も行われていたサービスを受け継いでくれています。
トンネル内は基本的に真っ暗ですが、途中には「竜飛海底駅」「吉岡海底駅」の2駅が見えます。いずれも新幹線開業に先立って廃止されていますが、今でも緊急時の避難設備として明かりがついていますので、窓の外をよーく観察していると通過する瞬間が分かるかと思います。
青函トンネル内は貨物列車と共用のため、新幹線の最高速度が160km/hに抑えられています。トンネル内で貨物列車とすれ違う際にコンテナが衝撃で損傷するのを防ぐためで、物流の面でもこのトンネルが大きな役割を果たしていることを実感します。
13時16分頃、トンネルを抜けていよいよ北海道へと入りました!
在来線との共用区間を抜けると最高速度は260km/hへと引き上げられます。区間はそれほど長くないとはいえ、北海道内を高速列車で駆け抜けることのできる瞬間です。
遠くに見える海は津軽海峡です。海のすぐそばを走る瞬間はあまりありませんが、防音壁が低めに設置されているところではタイミングが合えばオーシャンビューを楽しむことができます。
遠くにこんもりと見える山は、函館の市街地にある函館山です。しかし新幹線は函館の市街地を遠くに望みながらいったん通過してしまいます。
手前に「いい旅を!北斗市」という緑色の看板が出ていることからも分かる通り、新函館北斗駅は函館への玄関口でありながら函館市内にはありません。函館市内からはやや離れた位置にあるため、在来線へ乗り換えてさらに移動することになります。
そして東京を出てから3時間57分、13時33分に終点の新函館北斗駅へと到着です!
いやぁ…本当に4時間を切るタイムで新函館北斗へと降り立つことができてしまいました。かつて青函連絡船で青森~函館を移動するのにかかっていた時間が3時間50分程度だったと思いますので、それとほぼ同じ時間で東京から移動してくることができるのです。信じられません。
ホームの反対側には、線路を敷くことのできるスペースが用意されています。札幌方面への延伸工事も着々と進められているところですので、じきにこの部分にも線路が敷かれることでしょう。
さて、先ほども述べた通り新函館北斗駅は函館市内ではなく北斗市内にあります。これは札幌方面への延伸を考慮したためで、函館方面へは在来線のリレー列車へと乗り換える必要があります。
新函館北斗駅から乗り継ぐのは、13時49分発の快速〔はこだてライナー〕函館行です。
余談ですが、北海道新幹線が開業するまでここ新函館北斗は「渡島大野」という名の静かな無人駅でした。それが今となっては立派な駅舎を構え、東京行の新幹線や札幌行の特急までも発着する一大ターミナル駅へと大出世を遂げたことになります。
はこだてライナーは在来線ホーム1番線から発車します。新幹線ホームの11番線(東京方面行発車ホーム)と同一平面上で乗り換えられる構造になっており、「はこだてライナー→新幹線」と乗り継ぐ場合には便利な構造です。
一方で今回のように「新幹線→はこだてライナー」と乗り継ぐ場合には新幹線が12番線へと入線するため、エスカレーター等を使って改札階へ上がる必要があります。
新幹線開業に合わせ函館~新函館北斗駅間は電化され、はこだてライナーは全て「電車」での運行となっています。前面には専用のヘッドマークが掲げられており、特急車両のような風格がありますが、あくまでもオールロングシートかつ全車自由席の快速列車です。
列車は定刻通りに新函館北斗駅を発車。はこだてライナーには「普通」と「快速」がありますが、今回乗車しているのは「快速」なので途中停車駅は五稜郭のみです。
なお、道南のJR各線では交通系ICカードを利用することができません。また「東京都区内」「大阪市内」のような特定都区市内の制度もないため、新幹線を利用する際に乗車券の区間が「新函館北斗駅まで」となっている場合には必ず新函館北斗駅で新たにきっぷを買い直す必要があります。
せめてSuicaくらい使えてくれれば…とは思うところですが、2022年現在はこうするしかありません。
ちょうど車内には、先日開業したばかりの西九州新幹線の中づり広告がありました。北海道の地で九州の文字を見るのは何とも不思議な気分です。
乗車時間16分の後、14時05分にようやく函館駅へと到着。新幹線のみだと4時間を切るところですが、はこだてライナーへの乗り継ぎも含めると東京~函館駅間では4時間29分を要しています。
せっかく開業したのに「時間がかかる」「料金が高い」「乗り換えが手間」といった様々な理由からなかなか敬遠されがちな北海道新幹線。1日も早く札幌へ繋げ、その時間短縮効果を存分に発揮してほしいところです。
なお、東京~新函館北斗駅間を3時間57分で結ぶ最速達の〔はやぶさ〕は上表の通り1日下り2本、上り1本のみとなっています。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
おまけ
函館に来たらやっぱりラッキーピエロは外せませんね!
王道の「チャイニーズチキンバーガー」と「ラキポテ」のセットをいただきました。
バーガーはとんでもない大きさでびっくりしました…本当にずっしりしている…
ラキポテはミートソースとチーズのかかったフライドポテトです。美味くないわけがない!!!