わたかわ 鉄道&旅行ブログ

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【のどか】東北新幹線乗車人員ワースト1位「いわて沼宮内駅」には何がある?

 

2023年8月14日(月)

本日は青森県八戸駅へとやってきました。

八戸駅東北新幹線青い森鉄道・JR八戸線が乗り入れる県南部最大のターミナル駅で、一時期は新幹線の終着駅となっていたことでも知られています。

今回はここ八戸駅を出発し、向かう先は「東北新幹線で最も利用者数が少ない駅」です。新幹線駅というと大抵はどこでも数千数万人規模の利用者数がいるというイメージをお持ちの方も多いかもしれませんが、東北新幹線における利用者数ワースト1位の駅はいったいどんな様子なのでしょうか。

乗車するのは、八戸17時06分発の〔はやぶさ38号〕東京行です。東北新幹線盛岡駅以北で運行されている新幹線はほとんど全てが〔はやぶさ〕であり、列車によって停車駅が異なります。県庁所在地規模の駅にのみ停車する速達タイプのものから、細かい需要を拾っていく停車タイプまで様々です。

あいにく本日はお盆のUターンラッシュのピークとも重なり、ホーム上は首都圏方面を目指す乗客でごった返しています。大きな荷物を抱えた人も多いですから、各駅での乗降にはそれなりに時間を要するかもしれません。

いよいよ、新青森始発の新幹線〔はやぶさ38号〕が入線してきました。この列車は新青森から盛岡までの全ての新幹線駅に停車し、盛岡を出ると仙台・大宮・上野・終点東京の順に停車します。

17時06分、列車は定刻通り八戸駅を発車。通常の同時間帯と比べると混雑はしていそうですが、とはいってもこれから盛岡や仙台で多くの乗車があるため、まだ八戸時点では車内は満席というほどではありません。

さて、それではここでいよいよ私が今回向かっている「東北新幹線で最も利用者数が少ない駅」の正体をご紹介します。

その名も「いわて沼宮内」です。八戸駅からは新幹線で2駅、名前からも分かる通り岩手県内にあります。

今回はお盆につき、新幹線は「最繁忙期料金(通常期+400円)」での発売となっているので、節約のため座席の指定を受けた特急券ではなく「特定特急券」というものを購入しています。これは東北新幹線の盛岡以北に自由席を連結した新幹線が運行されていないことに伴い、座席の指定を受けない代わりに全車指定席の新幹線の空席を利用することができるというものになっています。

八戸駅を出発して数分はデッキに留まり、指定席の交付を受けているお客さんが着席するのを待ってみました。その上で、窓側座席にも若干の余裕があったため、他にお客さんが来ないことを確認した上でひとまず座席に腰掛けることができました。

岩手県に入り、列車は次の二戸駅に到着。八戸駅を出る時点でもう普通車の空席はわずかなものになっていたことから、何となく「もしや私の腰掛けている座席は二戸あたりで本来の指定席のお客さんがお見えになるのでは…」という予感がしたので、いったん荷物をまとめて席を離れました。案の定、その数分後には二戸駅から乗車されたお客さんの中にその座席の指定を受けている方がいたようで、これは離れておいて正解だったと感じました。制度の本質としては首都圏の在来線特急に設けられている「座席未指定券」とほぼ同じものですが、東北新幹線には座席上方に発売状況を色で知らせるランプがないので注意が必要です。

二戸→いわて沼宮内も大した距離ではありませんので、新幹線ならばあっという間の到着です。青森県内は雨模様でしたが、岩手県内では青空が見えています。

17時31分、列車はいわて沼宮内駅に到着です。「○○ない」という駅名は北海道を彷彿とさせます。

いわて沼宮内駅があるのは「岩手岩手岩手町」。所在地を説明するだけでも岩手のゲシュタルト崩壊を起こしそうなので、ひらがなで表記されているのはかなり有難いことかもしれません。

駅の歴史は古く、1891年に日本鉄道の盛岡~青森駅間が開業した際に「沼宮内」駅として設置されました。戦後は日本国有鉄道として、また1987年の分割民営化に伴ってその運営はJR東日本へと引き継がれたものの、駅名は長らく「沼宮内」のままでした。

大きな転機となったのは、2002年の東北新幹線八戸延伸開業です。新幹線の駅が設置されるのに合わせて「いわて沼宮内」へと改称され、同時に在来線は第三セクターの「IGRいわて銀河鉄道」へと経営分離されました。

新幹線ホームはガラス張りになっています。こういう時、大抵はその街並みが見渡せるものですが、新幹線いわて沼宮内駅上りホームの場合は「」そのもの。どうやらこちら側は街の中心ではないようです。

階段を降り、新幹線コンコースへとやってきました。スペースは最小限といった様子で、改札口は1ヵ所のみ。新幹線改札内に駅弁屋はおろか、コンビニすらもありません。

有人通路を除くと、自動改札機は2機のみ。みどりの窓口指定席券売機はありますが、いずれも営業時間は7時00分~22時50分(みどりの窓口は一部時間帯のみ)となっています。昨今の情勢を見るに、みどりの窓口はいつ廃止されてもおかしくありません。

というのも、このいわて沼宮内駅の1日平均乗車人員(2022年度/JR東日本)はわずか57人で、全865駅中何と841位。周辺順位の駅はいずれもローカル線の駅ばかりで、特にいわて沼宮内駅は新幹線駅ということもあり定期利用者の割合が小さいことも分かります。

停車する新幹線の本数は、1日に上下8本ずつのみ。日中は概ね2時間に1本程度となっており、当然ながら通過する列車の方が圧倒的に多いことになります。

新幹線改札口の近くには待合室もあり、この辺りの設備は他の新幹線駅とさほど大きく変わらないようです。しかし繰り返しになりますが、この駅から新幹線に乗る乗客は1日平均57人しかいないわけで、この57人のうちいったい何人がこの待合室を利用するのでしょうか。

いわて沼宮内駅の出口は「東口」と「西口」に分かれていますので、まずは東口からご紹介します。駅の入口はこじんまりとしていて人気(ひとけ)もなく、とても新幹線駅の出入口とは思えません。東口を出てすぐのところは駐車場となっており、それ以外に一切の人工物はありません。

コンコースへと戻り、今度は西口へ向かいます。

どうもこのいわて沼宮内駅がある「岩手町」はちょうど北緯40度のところにあるようで、街全体をあげてこの「北緯40度」をかなり推しているようです。

西口へ向かう途中にあるのが、IGRいわて銀河鉄道いわて沼宮内駅です。こちらの1日平均乗車人員(2022年度)は713人となっており、実に新幹線の12倍以上の利用者がいることが分かります。このうち約半数を占めるのが通学定期券利用者で、主に盛岡方面への通勤通学需要はしっかりとIGRが握っていることが見てとれます。

IGR改札に自動改札機はなく、また有人のきっぷうりばの営業時間は7時00分~17時00分ですが、この隣に自動券売機が営業しており、きっぷ自体はいつでも買えます。

駅の傍らには「展望デッキ」なるスペースもあります。ここもやはり人は全然いませんが、立派なプラレールの展示も行われています。

展望デッキから見渡せるのは、西口の中心市街地の様子です。東口に比べると建物が多くありますが、高い建物はほとんどなく、やはり新幹線駅の駅前という雰囲気はありません。

展望デッキはちょうど駅舎から出っ張るように設けられており、左を向くと西口のバスロータリーが見渡せます。後ほど降りて見に行きたいと思います。

改札外にはわずかながら土産物品店や喫茶店もあります。駅舎からそのまま岩手広域交流センター「プラザあい」へ繋がっている構造で、このお店もその一部です。

西口側はやはり東口と比べると駅の構造も立派で、横の部分には「IGR開業20周年」の垂れ幕も確認できます。

先ほどからご覧に入れている画像でもお分かりの通り、このいわて沼宮内駅は岩手町の中心駅としての機能を果たしています。他県民からするとその認知度は極めて低いというのが実際のところでしょうが、JR東北本線沼宮内駅時代から一部優等列車も停車しており、現在IGRでも当駅を始発・終着として盛岡方面を結ぶ区間列車が何本も存在するくらいには重要な役割を果たしている駅なのです。

バスロータリーは1~4番乗り場があり、1番乗り場は盛岡~久慈間を結ぶJRバス東北「白樺号」が発着します。便によっては東京方面からやってくる新幹線に10~15分程度で乗り継ぎ久慈方面へ向かうことのできる便利な時間帯もあり、その場合は盛岡で乗り継ぐよりも効率よく移動できるかもしれません。ただし大前提として東京~いわて沼宮内よりも東京~盛岡の方が新幹線の運行本数は圧倒的に多く、利便性は担保されていそうです。

また、駅前一等地に構える駐車場は激安で、これはいかにも地方の新幹線駅らしいポイントです。岩手町のみならず、八幡平市葛巻町といった周辺自治体から自動車でこの駅までやってきて新幹線に乗り継ぐ、という需要は少なからず存在するでしょう。

また興味深いことに、駅周辺の道路看板には「いわて沼宮内駅」の文字とともに200系新幹線のイラストが描かれています。新幹線八戸開業当初、200系はまだ営業運転こそしていたものの、2002年当時の盛岡以北での主力車両はE2系で、200系の盛岡以北での定期運行はありませんでした。しかし「新幹線」をイメージするイラストとしては、この団子鼻が最適だったのかもしれません。

ここまで駅構内や駅周辺を見てみますと、こんなのどかで静かな町でもやはり「新幹線」という世界最高峰の高速鉄道をもって東京から1本で結ばれることの意義は極めて大きいと感じます。「2時間に1本しか停車しない」というと少なくて不便にも聞こえますが、実は在来線時代を振り返ってみますと1993年の急行〔八甲田〕廃止を最後に当時の沼宮内駅からは定期優等列車の客扱い停車が全くない状態となっており、10年近くに渡ってこの駅は普通列車のみがやってくる細々とした駅であったことが窺えます。

新幹線が開業したからといって、必ずしも急激に町が発展を遂げるわけではないかもしれません。しかし東京から1本で、しかも高速で結ばれることで、駅や街の存在を幅広い層にアピールでき、また地元の方にとっても長距離移動の利便性が大幅に向上するのであれば、1日わずか数十名の利用者であってもその意味は十分にあるのではないでしょうか。

 

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。