わたかわ 鉄道&旅行ブログ

乗り鉄&旅好きの20代男子が全国を巡る!

【まもなく廃止】長崎本線ほぼ全線走破! 「鳥栖発長崎行」全区間乗車

 

2022年8月11日(木)

今回やってきたのは佐賀県鳥栖駅。福岡市内方面へ直通する普通・快速列車が多数発着することもあり「福岡県」と勘違いされることがありますが、あくまでも佐賀県です。

本日はここ鳥栖駅を起点として佐賀・長崎方面へと続く長崎本線」のほぼ全区間を走破するロングラン普通列車へと乗車していきます。

長崎本線は、鳥栖長崎駅間を結ぶ西九州エリアの主要幹線。長崎県内の喜々津~浦上駅間は線路が二手に分かれており、長与経由(北側)の旧線と市布経由(南側)の新線があります。

鳥栖駅の改札口をくぐると、まさに「交通の要衝」と呼ぶにふさわしい多方面への列車の発車標がありました。「かもめ」「白いかもめ」「肥前山口」などなど、西九州新幹線開業によりまもなく見納めとなってしまう文字も随所に見られますが、その中でも今回私が乗車していくのは鳥栖15:44発の長崎本線 長崎行です。

鳥栖長崎駅間(市布経由)の営業キロは125.3km。これは東京~沼津駅間、東京~渋川駅間などに相当します。この距離だけ聞くと、「そこまでロングランでもないのでは?」「もっと長い距離を走る普通列車は世の中にたくさんあるだろ」と思われるかもしれません。

確かに、125kmという距離が全国的に見てとりわけ長いというわけではありません。しかし、実はこの列車の魅力は単なる「運行距離」そのものではないのです。

2022年9月23日、いよいよ西九州新幹線が武雄温泉~長崎駅間で開業します。現在は長与経由の旧線区間を除きほぼ全線が電化されている長崎本線ですが、この新幹線開業に伴い肥前浜~長崎駅間の電化設備が撤去され、非電化路線となってしまうのです。

このため、新幹線開業後は電化区間と非電化区間の境目である肥前浜駅にて普通列車の運行系統が分かれることになります。一部の気動車は電化区間にある江北(肥前山口)駅まで乗り入れる予定のようですが、これ以上佐賀・鳥栖方面へと直通してしまうと限りある気動車を非電化区間内で効率よく運用することができないため、いずれにせよ鳥栖長崎駅間を直通する普通列車というものはもうじき過去のものになります。

現在、鳥栖長崎駅間を直通する普通列車は上記の通りとなります。下り4本・上り2本で、所要時間はいずれも3時間前後となっています。

その中において、今回乗車する鳥栖15:44発を見てみると、何と長崎まで4時間近くかかっています。「どうせ乗るならば」ということで、今回はこの所要時間が最も長い鳥栖15:44発の長崎行に乗車していこうというわけです。

使用車両は817系(2両編成)。2001年にデビューした車両で、九州全土で広く活躍しています。長崎12:34発→鳥栖15:32着からの折り返し運用となっており、この日は若干の遅れをもって鳥栖駅へ入線してきました。

列車は定刻通り、15:44に鳥栖駅を発車。この先新鳥栖肥前麓、中原、吉野ヶ里公園、神崎、伊賀屋、佐賀、鍋島、久保田、牛津、肥前山口肥前白石、肥前竜王肥前鹿島、肥前浜、肥前七浦、肥前飯田、太良、肥前大浦、小長井、長里、湯江、小江、肥前長田、東諌早、諫早、西諌早、喜々津、市布、肥前古賀、現川、浦上、終点長崎33駅へと停車していきます(言いたかっただけ)。

車内は転換クロスシートで、頭の部分と腰の辺りは革張りになっています。鳥栖駅を出発する時点ではまだ沿線人口もかなり多い地域ですので、車内は立ち客もちらほらいるくらい混雑していました。

記念すべき(?)最初の停車駅は新鳥栖駅。2011年の九州新幹線全線開業時に長崎本線との乗換駅として設置されました。将来的には西九州新幹線の分岐駅としても計画されていますが、果たして実現するかは怪しいところです。

吉野ヶ里公園駅はその名の通り、吉野ヶ里歴史公園への玄関口となる駅。車窓右手には遺跡のようなものもちらほら見えました。歴史の授業で習った遺跡や寺社仏閣等の歴史的建造物を実際目の前にすると、謎の感動が生まれるものです。

鳥栖駅を出て約30分、16:12に佐賀駅へと到着。2面4線の高架駅で、特急も含め全ての旅客列車が停車します。

ここ佐賀駅では、8分間の停車時間があります。後続の特急〔みどり・ハウステンボス17号〕佐世保ハウステンボス行(佐賀16:17発)を先に通すためです。

2番線に姿を現したみどりテンボスは堂々の8両編成。このように、普通列車の旅では途中駅で特急の待避を行う場面が何度も出てきます。

無事に特急を先に通し、16:20に佐賀駅を発車。どんどん進んでいきます。

鍋島~久保田駅間には、「バルーンさが駅」があります。毎年10~11月に開催されている「佐賀インターナショナルバルーンフェスタ」の開催期間中のみ営業される臨時駅ですが、折からの感染症の影響で2020年はイベント中止、また翌2021年は無観客開催となっており、バルーンさが駅の営業は2019年を最後に行われていません

しかしながら、2022年は現時点で有観客開催が予定されており、このままいけば今年の秋は2019年以来3年ぶりの開設となりそうです!

唐津線が分岐する久保田駅の一つ隣、牛津駅の駅舎には何やら不思議なキャッチコピーが。はじめはどういう意味かさっぱり分からなかったのですが、どうやらここ牛津はかつて長崎街道の宿場町として多くの商人で賑わい、その際にこのようないわれがあったそうです。

16:35に列車は肥前山口駅へと到着。ここでは11分間の停車時間が設けられています。

長崎本線佐世保線の分岐駅であるここ肥前山口駅は、新幹線開業のタイミングに合わせ駅名を町名と同じ「江北(こうほく)」へと変更することが大きな話題になっています。また30年以上に渡り「最長片道切符」の終着駅として全国的にも有名な駅でしたが、新幹線開業に伴い大幅なルートの変更が発生することからゴール地点ではなくなってしまうことも注目を集めています。

長崎方面へと向かう〔かもめ〕と佐世保ハウステンボス方面へ向かう〔みどり〕〔ハウステンボス〕はここで分かれていくことになります。わずか10分ちょっとの停車時間のうちに下りは〔かもめ17号〕、上りは〔みどり・ハウステンボス22号〕がそれぞれ発車していきました。

ホーム上に売店や立ち食いそば等はありませんが、自販機があったので九州産の温州みかんを使用したジュースを購入。果肉の粒感をしっかり感じることができ、もはや四捨五入してみかんの丸かじりです。

肥前山口16:42発予定だった〔かもめ17号〕が7分ほど遅れていたため、その巻き添えを喰らうかたちで私の乗る鳥栖発長崎行の普通列車も定刻から4分ほど遅れ16:50頃の発車となりました。特急〔かもめ17号〕からの接続を取った16:45発予定の佐世保線早岐普通列車も定刻から数分遅れてこちらとほぼ同時に肥前山口駅を発車したため、地方の路線では珍しい「駅出発直後の並走」を見ることができました。ここからは佐世保線と分かれ、私の乗る列車は海沿いを進んでいきます。

肥前山口諫早駅間では、駅名に「肥前」とつく駅がとても多いのが特徴です。のっけから肥前山口肥前白石→肥前竜王肥前鹿島→肥前七浦→肥前飯田と6駅連続で到来します。土地勘のない人にとっては降りる駅を間違えてしまいそうになります。

肥前竜王駅では、上り〔かもめ94号〕と行き違いを行いました。鳥栖肥前山口駅間は複線でしたが、その先肥前山口諫早駅間は単線となるため頻繁に行き違いが生じます。上下線どちらか片方でも遅延が起これば、すぐに上下線全体へと遅れが波及してしまいます。

この辺りでは有明海に面した海沿いが広大な干潟となっており、遠くまで遮るものがありません。空の広さを実感することができます。

鹿島市の中心である肥前鹿島駅は、特急列車も停車する主要駅。ここではかなりの乗降がありました。新幹線開業に合わせ特急〔かもめ〕廃止後の代替列車である特急〔かささぎ〕はここ肥前鹿島駅を始発・終着として運行されるため、9月23日以降は博多駅でも「肥前鹿島」の文字を多く見ることができそうです。

watakawa.hatenablog.com

次の肥前浜駅には定刻よりも3分ほど遅れ、17:10頃に到着(定刻17:07着)。駅名標の真上に大きく掲げられている通り、ここは古い街並みが残る肥前浜宿観光の玄関口となる駅になっています。

冒頭でもご紹介した通り、ここ肥前浜駅より先の区間は電化設備が撤去され非電化になることが決定しています。現在乗車している817系電車ももちろんこの先へは進めませんので、「鳥栖発長崎行の普通列車」などまさに幻となる日はもうすぐそこまで来ています。

ここでも10分以上の停車時間があるため、いったん駅の外に出てみました。観光地の玄関口らしく、駅舎も味のあるデザインです。特急〔36ぷらす3〕の月曜日ルートは博多~長崎駅間を往復するものとなっており、その途中にあるここ肥前浜駅では長時間停車しておもてなしが行われています。新幹線開業後は電車特急である787系も長崎方面への乗り入れが不可能となるため、代わりに長崎ではなく博多~佐世保駅間の往復となりますが、その途中にわざわざ江北~肥前浜駅間を往復するかたちで肥前浜駅へも乗り入れるダイヤが組まれており、36ぷらす3のおもてなし停車は継続される予定となっています。

この肥前浜駅では、下り特急〔かもめ29号〕の待避および上り特急〔かもめ30号〕との行き違いを行いました。ここまでの遅れも回復させ、定刻通り17:22に肥前浜駅を発車。いよいよ非電化予定区間へと進んでいきます。

肥前七浦駅では、上りの普通列車と行き違いを行いました。鳥栖駅を出る頃は立ち客がわんさかいた車内ですが、この辺りまで来ると乗客はだいぶ少なくなっています。

多良駅では10分ほど停車し、上り〔かもめ32号〕との行き違いを行います。数駅おきに特急との行き違いor待避が行われており、これほどならば複線でもよいのでは…と思いましたが、そもそも新幹線開業後この区間にはほぼ特急が走らなくなるため、今さらその必要もなさそうです。

この辺りからは、いよいよ車窓左手に有明海の絶景が見えてきます。若干雲はあるものの晴れており、最高の眺めです!

17:54に佐賀県内最後の駅である肥前大浦駅へと到着。ここでは12分間の停車時間があり、上りの特急〔かもめ34号〕および普通列車肥前山口行)の行き違いを行いました。あっちも電車、こっちも電車…架線が張られた当たり前の光景が見られるのもあとわずかです。

18:06に肥前大浦駅を発車し、いよいよ長崎県内へと入ります。

長崎県に入って最初の駅は「小長井駅」。海に非常に近く、ちょうど駅からは真正面に雲仙岳の立派な姿を見ることができます。島原半島の象徴でもある雲仙岳では今から30年以上前の1991年に大規模な火砕流が発生しており、島原市内にはその時の災害遺構もいくつか残されています。

湯江駅でも10分弱停車します。ちょうど到着するタイミングで反対側のホームでは特急〔かもめ76号〕が運転停車をしており、さらにこの後下りの特急〔かもめ31号〕もやってきます。「特急どうしの上下行き違い」と「特急の待避」を同時にしてしまうという何とも神業的なダイヤが組まれています。

18:38には肥前長田駅へと到着。いよいよ諫早の市街地へと近づいてきて、駅前には次第に建物も増えてきたように感じます。

ここでの停車時間はわずか3分ほどですが、上りの特急〔かもめ38号〕との行き違いを行います。単線区間に入って以来「ついさっきも行き違いをしたばかりでは…」という光景が繰り返されており、明らかに普通列車よりも特急列車の方が本数が多いことは言うまでもありません。

そして18:48に諫早駅へと到着。肥前鹿島以来1時間45分ぶりの特急停車駅で、今度開業する西九州新幹線も全列車が停車します。上の画像では分かりにくいですが、ここからは発車標に「市布経由」という文字が現れました。ホーム上に貼ってある36ぷらす3のポスターが目立ちますが、もうすぐここ諫早駅に36ぷらす3はやって来れなくなります。

諫早より先、喜々津~浦上駅間ではルートが二手に分かれています。長らく長与経由の旧線ルートが使用されてきましたが、これに代わり新たなメインルートとして1972年に市布経由の新線ルートが完成しました。現在は新線のみ電化されていますが、この架線もまもなく剥がされ、電車の乗り入れは不可能となります。

新線ルートはあくまでも時間短縮が目的なので、途中にそれほど大きな駅はなく沿線人口も多くありません。市布駅では3分ほどのわずかな停車時間の中で上り特急〔かもめ40号〕との行き違いを行いました。

次第に辺りも暗くなってきたところで、19:12に現川駅へと到着。ここが最後の長時間停車となります。

既に長崎市内へと入っていますが、異国情緒あふれる街並みとは程遠い山あいの無人駅。辺りはうっそうとしており、駅名標国鉄時代のものからほとんど手が加えられることなく現在も使用されています。

現川駅は相対式ホームが配置されて列車交換が可能な上、その間には通過線があるため多くの列車が少なくとも数分間停車して行き違いや待避を行います。ちょうどこの時も上りの普通列車(小長井行)が停車しているところに、下りの特急〔かもめ33号〕が後ろからやってきました。現川駅でのこうした光景も、まもなく過去のものとなってしまいます。

さらに現川~浦上駅間には、全長6km以上にも及ぶ「長崎トンネル」があり、そのトンネル内にある肥前三川信号場でも列車の行き違いがしばしば行われます。今回はここで上り特急〔かもめ42号〕との行き違いを行いました。

トンネルを抜けるとすっかり長崎の市街地が見えてきます。最後の停車駅は浦上駅で、ここは全ての特急列車が停車する主要駅。しかしここに新幹線のホームは設けられておらず、新幹線開業後に博多~浦上駅間を移動する際は最低でも2回の乗り換えが必要となります。

いよいよ次が終点の長崎。運賃表には長崎本線のみならず佐世保線大村線からの運賃も示されており、西九州エリアの経路の複雑さが見て取れます。

鳥栖駅を出てから3時間53分、ついに終点の長崎駅へと到着です!!

途中何度か遅れがあったものの、最終的には定刻通り19:37の到着となりました。

お気づきかと思いますが、何といっても目立つのはやはり特急列車との行き違い・待避の多さ肥前山口駅を出てから、下りは〔かもめ29・31・33号〕の3本に追い越され、上りは〔かもめ94・30・32・34・76・38・40・42号〕の8本と行き違いを行いました。表定速度は約32.3kmで、かなりゆっくりと走ることは数字を見ても明らかです。

西九州新幹線開業後にこれらの特急が全廃されれば所要時間の大幅な短縮が図れることは間違いなく、沿線の方にとっても利便性向上が期待できそうです。

新幹線開業はとかくそれ自体の所要時間や特急の運行体系の変化にばかり目がいきがちですが、並行する在来線の所要時間短縮や速達化が図られる例も往々にして存在します。今回は長崎本線も経営分離されることなく引き続きJRの路線として存続し続けますが、電車で長崎まで行けるのはあとわずかですので乗りたい方はお早めに!

【おまけ】

夕食は長崎駅ビル内にある「ニッキー・アースティン」で名物のトルコライスをいただきました。メニューがとんでもなく多いのでかなり悩みましたが、とっても美味しかったです!!

 

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。