わたかわ 鉄道&旅行ブログ

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[6]崩落が進むタウシュベツ川橋梁を間近で見学! ぬかびら源泉郷で旧国鉄士幌線廃線探訪【2024GW北海道ひとり旅】

 

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2024年5月1日(水)3日目

北海道ひとり旅、3日目の朝は帯広からスタート。

宿泊していた「ホテルパコ帯広駅前」を早朝にチェックアウトし、駅前へとやってきました。

現在の時刻は朝6時半過ぎ、人通りは少ないですが既に太陽は高く昇っています。

1日目・2日目は概ね鉄道路線に沿ったルートで移動してきましたが、3日目の本日はいったんJRから大きく離れる行程を取りたいと思います。

腹が減っては戦(?)はできぬ、ということで本日の朝食も安定のセイコーマート

今回はおにぎり3品とバナナミルクコーヒーです。

コンビニおにぎりも近頃全国大手では150円以上の商品が珍しくない中、セコマは税込129円ほどのものばかり。「北海道産とうきび」は何と税込118円、まるでセコマだけ10年ほど前の時間軸を生きているかのようです。

さて、本日のメインイベントはズバリ「タウシュベツ川橋梁」の見学です。旧国鉄士幌線の有名な鉄道遺構が残っており、これを見るべくこれからぬかびら方面へと向かいます。

乗車するのは、帯広駅バスターミナル7時05分発の十勝バス51系統 ぬかびらスキー場前行です。帯広から音更・士幌・上士幌の市街地を経由してぬかびら源泉郷へと至ります。

この十勝バス51系統は1日4往復のみの運行で、ぬかびら方面行はこの7時台の便を逃すと次は13時台までありません。「タウシュベツ川橋梁」を見学するツアーに参加するためには何としてもこの7時台のバスに乗らなければいけないのです。

7時05分、定刻通り帯広駅バスターミナルを発車。ぬかびら源泉郷まで60キロほど移動していきます。

車内の乗客は大半が高校生の様子。GWとはいえ本日は祝日と祝日に挟まれた平日、しっかりと通学需要を担います。

まずは帯広駅より、市街地を北へと進みます。碁盤の目のように計画的に整備されているので見通しがよく、途中の各停留所でも頻繁に乗降があります。

十勝川に架かる十勝大橋を渡り、音更町へと入ります。帯広市音更町は別の自治体ですが、市街地としてはほぼひと続きになっているようです。

国道241号線に沿ってロードサイド型の店舗が並び、帯広への通勤通学圏としての地位を確立している音更の町。私の乗るバスは帯広からどんどん遠ざかっていますが、この音更町内からも多数の高校生が乗車してきました。

音更川を渡り、引き続きバスは国道241号線を北上していきます。

北海道は食料自給率が200%以上(47都道府県中1位)となっており、中でもここ十勝地方単体で見ると驚異の1100~1200%ほどとなっています。市街地と市街地の間は広大な田畑・農場が広がり、豊かな自然に囲まれているこの風景を見ると十勝地方の自給率の数値も頷けます。

士幌町の市街地を通り、その後上士幌町へと入ってバスは上士幌高校前に到着。

進むにつれて立つのもやっとなほどの混雑ぶりでしたが、ここで車内の全ての高校生が降りていき、車内はほぼ貸切状態となりました。帯広市内からここまで約1時間、東京ではなかなかない距離での路線バス長距離通学です。

上士幌交通ターミナルは2回経由するようになっており、2018年に完成した新しい待合室が印象的です。

上士幌の市街地を抜けるとバスは国道273号線へと進みます。この先は市街地らしい市街地はなく、十勝平野はまもなく終わりこれから大雪山系の山の中へと入っていきます。

ぐんぐん山を上っていく途中、車窓には士幌線の遺構(第三・第四音更川橋梁など)が見えます。第四音更川橋梁は中央の部分が撤去されてしまっていますが、両端のアーチ橋の部分はしっかりと残されています。

8時52分、ぬかびら温泉公園前に到着。帯広駅からの乗車時間は約1時間50分、運賃は1,330円でした。

さて、これからいよいよタウシュベツ川橋梁へ…といきたいところですが、実は橋梁を間近で見学するためには「ひがし大雪自然ガイドセンター」の主催するツアーを予約しなければなりません。ツアーは1日複数回開催されており、今回私は12時開始の回を予約しているため、それまであと3時間ほど時間が空きます。

もっと接続の良い交通手段はないものか…と様々検討もしましたが、せっかく「ぬかびら源泉郷」へ来たのですから、ここは是非とも温泉に浸かりつつのんびりと過ごすことにします。

ぬかびら源泉郷は、大雪山国立公園内に位置する山の中の静かな温泉地。糠平湖のほとりにいくつか宿が集まっており、草津・箱根・有馬等に代表される全国的に知名度の高い温泉地とは一線を画します。

まずやってきたのは、バスを降りてすぐのところにある「糠平温泉 中村屋」さん。ここでは7時30分~10時00分/14時00分~20時00分で日帰り入浴が可能です。

館内は古民家風のレトロな内装が特徴的で、その先の長い通路を歩いていくと温泉があります。

日帰り入浴は大人700円で、男女別の内湯のほか混浴の露天風呂があります。9時過ぎの入館でしたが、こじんまりとした旅館のようでぞろぞろとたくさんの人が一斉に入りに来るわけでもなく、まずは内湯にのんびりと浸かります。濃さのあまり温泉成分が湯舟にこびりついており、これだけでも大変満足度の高いものです。

露天風呂は内湯とは離れた場所にあるため、いったん服を着て細長い通路を歩きます。脱衣所は男女で分かれていますが湯舟は混浴で、他に人がいるかもと少し緊張しましたが幸いにも貸切状態。とはいえ念のため写真撮影は控えておきましたが、涼しい風に吹かれながらのとても素晴らしいお湯でした。

露天風呂の目の前は地続きで小高い丘のようになっており、野生のシカが何匹もうろついています。こちらは入浴中につき無防備な状態なので(笑)、もし今襲われたら…と思うと少しヒヤヒヤしましたがもちろん全く問題はありませんでした。大変素晴らしい宿でしたので、次は是非とも宿泊させていただきたいものです…!

続いて、体がぽかぽかの状態でやってきたのは「上士幌町鉄道資料館」。これまたこじんまりとした建物で、入館料は100円です。

館内には、旧国鉄士幌線の歴史を物語る貴重な写真や当時のきっぷ類等が展示されています。映像にて当時の士幌線の前面展望を区間別に視聴することもでき、思わず見入ってしまいました。

士幌線は、帯広~十勝三股駅間約80キロを結んでいた旧国鉄の路線です。まず1925年に帯広~士幌駅間が開業、その後延伸開業を繰り返し1939年に全線開業しました。当時十勝三股付近は林業がさかんで、木材の搬出を担う路線としても活躍したほか、糠平は温泉・スキー場など観光地としても賑わっており、十勝平野での生活路線としての需要のみならず観光・貨物など多方面での活躍を見せた路線でもあります。

しかし戦後、森林資源の枯渇により木材の輸送需要は激減。十勝三股駅付近にあった集落はなくなり、貨物輸送需要がほぼ壊滅。国鉄は1978年より糠平十勝三股駅間を代行バスによる運行へと切り替えました。一時は三国峠を越えて上川方面への鉄道延伸の構想もあった区間ですが、その夢は絶望的な状況となります。

加えて糠平以南でも道路の整備が進み、観光客は次第に大型バスの利用へ移行していったことから観光需要も減少の一途を辿ることに。国鉄分割民営化を目前に控えた1987年3月、ついに帯広~十勝三股駅間の全線が廃止となりました。

帯広~糠平駅間は十勝バス・北海道拓殖バスによる代替路線バスが整備され、今日に至るまで運行されています。糠平までの便は先ほどご紹介した1日4往復のみですが、このほか音更まで・上士幌まで等の区間便が多数設定されており、地域の生活を支えています。

一方で糠平十勝三股駅間の代替バスはわずかな登山客の需要がありつつも生活利用の実態はほぼなく、2003年に代替バスまでも廃止。現在は同区間を走行する都市間バスが停留所を設けることで代替しています。

戦後、糠平ダムの建設に伴いそれまでの糠平駅は糠平湖の底に沈むこととなり、士幌線は湖の西岸を迂回する新線ルートへと切り替えられます。現在、旧線ルートの大部分は湖の底に沈んでしまっていますが、その途中にあるのがこれから向かう「タウシュベツ川橋梁」です。

現在、上士幌町鉄道資料館のある場所こそがまさに移転後の「糠平駅」の位置です。現地には復元された駅名標が設置されているほか、しっかりとレールが敷設されています。このレールは廃線跡を「ひがし大雪高原鉄道」と呼ばれる観光トロッコ路線として活用していたものですが、2019年を最後に運行を取りやめています。

線路は途中から剥がされていますが、その先も遊歩道として歩くことができます。自然の音に耳を澄ましながら歩いていくと…何と目の前にシカの群れが!

先ほどの露天風呂でもそうでしたが、どうもこの辺りは人間の生活環境とシカの生息域が重なっているようで、町のいたるところでシカを見かけます。観光地でのシカといえば奈良公園広島県の宮島などは有名ですが、あちらは人間と触れ合うことに慣れた個体の集まり。対してこちらは北海道の大自然でのびのびと暮らす野生のシカで、もし襲われでもしたらひとたまりもありません。あいにく私は野生動物への知識がないので、野生のシカに人を襲う習性があるのかどうかは定かではありませんが、万が一のことが起こった際に対処できる自信がなかったのでいったん遊歩道から離れることにしました。

少し回り道をしながら、やってきたこちらは「糠平川橋梁」。この橋もかつて士幌線が走っていた線路の跡地で、現在は丈夫な柵が取り付けられ歩けるようになっています。

(すぐ背後に先ほどのシカの群れがいます)

橋の上からの眺めはなかなかよく、50年ほど前まではこの景色を士幌線の車窓として眺めることができていたのでしょう。

糠平川橋梁は下から見上げることもでき、美しいアーチ構造が綺麗に残されています。

橋の上を渡った先はすぐに士幌線のトンネル跡地となっており、この先は立入ができなくなっています。高い柵が取り付けられているので、間違って入ってしまう心配はありません。

その後、ぬかびら温泉公園へと戻ってきました。中央には足湯がありますが、現在使用を停止しているようでお湯は張られていませんでした。

さて、集合時刻が迫ってきましたのでこれよりツアーへ参加するべく「糠平温泉文化ホール」へとやってきました。受付で予約者の氏名を伝え、ツアー代金を現金にて支払います。お値段は1人4,500円です。

www.guidecentre.jp

参加者は1回あたり15名ほどが上限のようで、本日この回は17名が参加。多くはご夫婦で、年齢層はやや高めです。鉄道ファンらしき方もいらっしゃいましたが、そうでない旅行者の方も多いようでした。

貸し出しの長靴へと履き替え、3台の車に分乗して文化ホールを出発。糠平湖の西岸を走る国道273号線を進んでいきます。

途中には「タウシュベツ展望台」があり、こちらであれば誰でも無料でタウシュベツ川橋梁を眺めることができます。ただし湖の対岸から眺めるだけなので距離は遠く、このツアーでは立ち寄りません。

途中で国道273号線を外れ、ここからは狭い林道を走行していきます。この林道を通行するには事前の申請が必要で、上士幌町観光協会の承認を得た許可車両のみ進入が可能となっています。個人での申請も可能ですが、私のようなひとり旅であれば本ツアーへの参加がオススメです。

kamishihoro.info

林道は舗装のされていない砂利道で、途中からは士幌線の旧線の跡地がこれにあたります。

文化ホールから30分ほどで車を降り、その先は車さえも入れないほどの悪路を歩きます。流木が豪快に道を塞いでおり、それを跨いだり避けたりしながら10分ほど歩くと、開けた場所へと到着します。

ついに…やってきました、こちらが旧国鉄士幌線タウシュベツ川橋梁」です!

全長130メートルほどのコンクリート製のアーチ橋で、1937年に完成し1939年から1955年まで士幌線の鉄道橋として使用されていました。

線路の切り替えから約70年が経過した現在、橋梁は崩落が続いています。糠平湖の水位が上がるとこの橋梁は湖の底に沈み、冬の間は結氷します。液体の水が固体の氷になると体積が膨張するのは小学校の理科でもおなじみですが、その膨張によってコンクリートに強い力が加わり、劣化が進んでいるのだそうです。

劣化は年々進行しており、また2003年に発生した十勝沖地震でも大きなダメージを受けています。危険な状態のため橋の上を歩いて渡ることはできず、周辺にはロープが掛けてあります。

橋の真下をくぐることはできないものの、至近距離まで近づいて橋を見学することができるのがこのツアーの最大の醍醐味。季節によっては水位が上がることで橋を見上げることができない場合もありますが、本日は橋の周りをぐるっと一周歩くことができました。ツアーでは40分ほど滞在時間が設けられており、ゆっくりじっくり観察する余裕があるので大変有難い限りです。

ここ数年は特に劣化のスピードが激しく、毎年のように橋の一部分が崩落しています。このままだとアーチ橋の形で繋がっている姿を見られるのはあとわずかと言われており、実際に橋の付け根を触ってみるとちょっと撫でただけでぽろぽろと崩れてしまいます(ガイドの方の許可をいただいています)。

また、橋梁の情景以外にも大雪山系の景色は大変美しく、幸い天候にも恵まれ最高の時間を過ごすことができました。目の前の川は足をじゃぶじゃぶと浸けて渡っていくもので、貸出の長靴が大きな効果を発揮します。

大満足でタウシュベツ川橋梁の見学を終え、再び来た道を車で戻ります。

なおこの許可制の林道はかつて申請等の必要もなく自由に立ち入ることができたそうですが、2008年にJRの「フルムーン夫婦グリーンパス」のポスターにタウシュベツ川橋梁が採用されたことで訪問者が急増し、翌2009年からは現在の通り許可制になったそうです。

このツアー、これで終わりではありません。ここからは第五音更川橋梁・幌加駅跡地へと向かいます。

こちらは幌加駅の北側にある「第五音更川橋梁」。先ほどのタウシュベツ川橋梁と同じくコンクリートアーチ橋ですが、川に架かる部分のみアーチ構造の直径が大きくなっているのが特徴です(ここだけ23メートル、他は10メートル)。

タウシュベツ川橋梁と同じ時期に鉄道橋として使用されていたものですが、こちらはタウシュベツ川橋梁と異なりそれほど激しく崩落・劣化している様子はありません。最大の差はやはり「湖の底に沈んで凍結するか否か」の違いであり、このほかのアーチ橋も同様に原型を綺麗に留めるものが多いのはそうした理由のようです。

そして幌加駅の跡地にやってきました。国道沿いに位置しているためマイカーでの訪問も容易で、タウシュベツ川橋梁と異なり特段の申請等は必要ありません。

見ると、駅構内で線路が二手に分かれており、列車の行き違いが可能な構造となっています。

駅名標は当時を再現したレプリカですが、ホームは現役当時の造りがそのまま残されています。旅客ホームとしては1面1線でしたが、その奥にある少し短いホームが貨物線用のホームだったそうです。1970年には貨物輸送が終了し、鉄道駅としての機能は1978年を最後に失われています。

最盛期には駅前に民家や商店も多数存在していたとされており、その様子はガイドさんが当時の貴重な写真を元に詳しく解説してくださいます。集落の名残は現在ほとんど見られず、スマホの電波さえ届かない圏外ですが大変勉強になり満足度の高い解説でした。

なお、ツアー中にも何度かシカと遭遇し、またこの数日前には何とヒグマの姿もあったようです。単独行動で徒歩にて訪問するのは極めて危険なエリアで、このツアーのありがたみもまた感じる次第となりました。

最後は「五の沢橋梁」を横目に見ながら、文化ホールへと戻ります。五の沢橋梁は新線の廃線跡で、今日ツアー内で見た橋の中では最も新しいものです。

アーチ橋の廃線跡は、私のような鉄道ファンからすると大変心躍るものがあります。しかしオーバーツーリズムが叫ばれる昨今でありながら、このツアーへの参加者に外国人観光客の方はほぼいらっしゃらないとのこと。その理由として、このアーチ橋がそもそもまだ海外の方に知られていないだけでなく、西洋風の建築のため「わざわざ日本に来てまで見たいと思うものではない」と考えられているとガイドの方がお話されていました。本ツアー客は年間約5,000人にも上るそうですが、このうち海外の方の参加は数えるほどしかなく、実際ゴールデンウィーク期間中も海外の方の予約はゼロだそうです。

14時30分頃に文化ホールへと帰着し、長靴を返却して解散。ひがし大雪自然ガイドセンターの皆様、ありがとうございました!

遅めのお昼は、ぬかびら温泉公園の近くにある「大和みやげ店」さんで購入したパンです。ぬかびら源泉郷内で営業しているレストランは数少なく、どこも営業していないタイミングだったようなのでこのお店に救われました。「みそぱん」はかなりボリュームがあり、一度では食べきれなかったので残りは次の日の朝食にでもしたいと思います。

 

この後はバスでさらに北へと移動していきますが、その様子は次回。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。