わたかわ 鉄道&旅行ブログ

乗り鉄&旅好きの20代男子が全国を巡る!

【指定席】西九州新幹線&リレー特急で長崎から博多へ。乗り心地が良いので一日も早い全線開業を!

 

2022年9月23日(金)

今回は長崎駅へとやってきました。これから西九州新幹線の指定席に乗車していこうと思います。

ちょうどこの日は西九州新幹線開業初日ということで、駅前では様々な催し物も開かれ、長崎の街はお祝いムード。2020年に在来線ホームが高架化され、その跡地は再開発が進められているものの、新幹線開業からは少し遅れて商業施設等がオープンするようです。

watakawa.hatenablog.com

開業速報に関しては当日夕方頃に記事を公開しておりますが、かなりの突貫工事で公開した記事であり、かつ想像を絶するほど混雑した自由席への乗車でしたので、今回は改めて落ち着いた状態で今後の展望等も分析しつつ、長崎から武雄温泉方面へと指定席で移動する様子をお届けしていければと思います。

乗車するのは、長崎17:42発の〔かもめ48号〕武雄温泉行。しかし長崎駅の発車標では行先が「武雄温泉」ではなく「博多」と示されています。

SNSでも話題になったこの表記ですが、これは武雄温泉駅で乗り継ぐ在来線特急〔リレーかもめ〕の行先を示したものです。かつて運行されていた在来線特急〔かもめ〕であれば長崎~博多駅間を乗り換えなしで結べていたところ、西九州新幹線はまだ部分開業の段階にあり直接博多駅へ乗り入れることはできません。しかしここで正直に「武雄温泉」という行先のみ表示してしまっては「博多が遠くなった」という印象を抱きかねませんので、行先に関しては在来線特急〔かもめ〕の時代と同じように博多行として表示されています。

開業初日となるこの日は朝から晩までほとんど全ての新幹線の指定席が満席となるほどの盛況ぶりでしたが、運良くこの列車に関しては乗車直前に空席を見つけることができました。

長崎駅の新幹線ホームは11~14番線で2面4線構造。これは東京駅の東北・上越・山形・秋田・北陸・北海道新幹線のホームと同じ容量であり、いささかオーバースペック感は否めません。現在、西九州新幹線の1時間あたりの運行本数は1~2本程度ですから、おそらく理論上は1面2線くらいでも十分だろうと思いますが、将来的に博多・新大阪方面へ直通した際のことも想定してということかもしれません。

ホームへ上がると、既に列車は停車中。西九州新幹線開業に合わせデビューしたN700Sです。同形式の車両は2020年に東海道・山陽新幹線でもデビューしていますが、基本設計は同じでありながらもその細かなデザインは異なっています。前面の鼻先にはかもめのエンブレムがあしらわれ、存在感のあるライトがとても印象的です。

車両側面の行先表示器も東海道・山陽新幹線のそれと基本的には同じで、こちらもやはり行先は「武雄温泉」ではなく「博多」と示されています。その隣には毛筆体で書かれた「かもめ」の文字があり、これまた存在感があります。

西九州新幹線の列車愛称は「かもめ」の1種類のみですが、行先表示器の色はの2種類があります。は1つ以上の通過駅がある「かもめ」、は各駅に停車する「かもめ」です。諫早には必ず全ての列車が停車しますが、新大村と嬉野温泉は”赤いかもめ”の一部が通過となっており、中には「新大村には停車するが嬉野温泉は通過するかもめ」というのも存在するため注意が必要です。

とはいえ「停車駅によって行先表示器の色を変える」という試みを他の地域の新幹線で聞くことはあまりありません。ひとまず「赤いかもめに乗る時は停車駅に注意!」と覚えておきましょう。なお、赤いかもめ青いかもめを追い越すことはありません(追い越し設備のある駅が途中に1つもありません)。

それでは発車時刻も近づいているので、いよいよ車内へ。

西九州新幹線は全列車6両編成で、このうち長崎寄りの1~3号車が指定席、武雄温泉寄りの4~6号車が自由席となっており、グリーン車はありません。かつて長崎へ直接乗り入れていた在来線特急〔かもめ〕ではグリーン車がありましたが、これに代わる現在の鉄道での最優等種別である新幹線〔かもめ〕にグリーン車がないというのは不思議な感じがします。

しかし上の画像を見れば分かる通り、指定席は非常にゆとりがあり、それまでのN700Sのイメージとは大きく異なります。あくまでも普通車ですが2+2列の配置となっており、主に〔みずほ〕〔さくら〕等で活躍するN700系の指定席を踏襲したものになっています。

列車は定刻通り、17:42に長崎駅を発車。客室内のドア上部に取り付けられた大きなディスプレイは東海道・山陽新幹線のN700Sで見慣れたものと同じ仕様のようで、ここに「のぞみ」「ひかり」等ではなく「かもめ」と表示されているのは新鮮な気分です。

やはり車内放送等においても「博多行」と案内はされるものの、併せて「武雄温泉駅にて同じホームに停車中の博多行特急リレーかもめ号にお乗り換えです」という旨の案内もしきりになされていました。窓枠の形等も東海道・山陽新幹線のN700Sと大差ないものの、座席背面の形状からJR九州らしさを感じることができます。

なお注意点として、指定席の各座席には背面テーブルがありません。肘掛けから取り出せるインアームテーブルは一応ありますが、ノートPCはおろか駅弁さえも困難なほど小さいです。現時点では乗車時間が短いためやむを得ずといったところでしょうが、もし将来的に博多まで直通するようになるのであれば立派な背面テーブルが欲しいところ。ちなみに自由席にはしっかりとした大きさの背面テーブルがあります

あれやこれやと物色しているうち、列車はすぐに次の諫早駅へと到着。トンネルが多いため、まるで瞬間移動したかのような気分です。

諫早駅は西九州新幹線で唯一の地上ホームとなっています。最速達便も含め全ての列車が必ず停車する駅で、この点は在来線特急〔かもめ〕の頃から変わりません。

諫早駅を出発。ところによっては防音壁がそれほど高くなく、外の景色も楽しむことができます。

以前にもご紹介した通り、1934年12月に有明東線と有明西線が繋がってからはこちらが「長崎本線」として博多~長崎駅間を結ぶメインルートになりました。一方でそれ以前は現在の佐世保線大村線こそが「長崎本線」であり、実はこちらの方が沿線人口が多いというメリットがあります。

西九州新幹線においては、そのどちらとも異なるルートでありつつ、どちらかといえば1934年までの旧長崎本線に近いルートが採用されました。ある意味では88年前までの「本線ルート復活」とも言える、とても象徴的な出来事なのです。

…と思っていると、列車はあっという間に次の大村駅へと到着。諫早~新大村駅間はわずか12kmほどしか離れておらず、乗車時間はわずか6分程度です。ちなみに同区間を走る在来線快速列車でもわずか15分ほどの距離ですので、大変近い位置にあることが分かります。

大村駅は、新幹線開業にあわせ新設された駅。並行する大村線の諏訪~竹松駅間に在来線駅も設置されており、乗り換えることができます。

この新大村駅の大きな特徴は、長崎空港へのアクセス駅としての機能が期待されている点にあります。海の上に浮かぶ長崎の空の玄関口、長崎空港までは新大村駅からおよそ5kmほどとなっており、この区間では予約制乗合タクシーが運行されています。一般的な路線バスではなく「予約制」というところから若干の敷居の高さは感じるところですが、これまで長年の課題でもあった長崎市内~長崎空港間の移動の選択肢が増えたことは決して悪い事でもないはずです。

一方でこの新大村駅と、この後通過する隣の嬉野温泉駅の2駅には指定席券売機が設置されていません。両駅ともみどりの窓口は設置されているものの、その営業時間は7:00~19:00のみ(一部時間帯を除く)であり、これ以外の時間帯に新大村駅嬉野温泉駅にて指定席特急券を購入することはできません。またインターネットにて予約したきっぷの受け取りもみどりの窓口または指定席券売機が必要となりますので、新幹線駅でありながら7:00~19:00以外の時間帯ではネット予約の発券が一切できないということになります。当然ながら7:00より前や19:00以降に発着する列車もありますので、これは由々しき事態です。せめてチケットレスサービスがあれば…と思うところですが…。

何はともあれ新大村駅を発車。車窓左手には大村車両基地が見えます。大村線では新たに竹松~松原駅間に「大村車両基地駅」が設置されており、全国的にも非常に珍しい”車両基地”と名の付く駅名が誕生しました。

これより先、列車は山の中を走行する区間が多くなるため、車内を物色。

洗面台もとても清潔感のあるデザインで、列車の中とは思えません。

デッキには沿線の伝統工芸品を展示するスペースもあり、目的地に着く前から我々の心を楽しませてくれます。もちろんひとつひとつ固定されているのでしょうが、260km/hで走る新幹線の車内でも倒れたり崩れたりしないのは不思議な感じがします。

新大村~嬉野温泉駅間は、特に山の険しい区間。ちょうど長崎県佐賀県の県境付近には、一時期SNSでも話題になった「凄い法面トンネル」があります。現代の土木技術の結晶ともいえる法面補強が、西九州新幹線建設において大きな役割を果たしています。

このトンネルをくぐるとまもなく、列車は嬉野温泉を通過。嬉野温泉駅は西九州新幹線で唯一の新幹線単独駅で、それまで長年に渡り鉄道のなかった嬉野の街に新幹線がやってくるとあって地元は大きな盛り上がりを見せています。

停車するのは青いかもめのみで、その本数は44本中25本。他の駅と比べて停車本数は最も少ないですが、是非ともこの新幹線開業を観光の起爆剤としてほしいところです。

そして嬉野温泉駅から5分ほどで、武雄温泉駅に到着します。

武雄温泉は、間違いなくこの列車の終点のはず。しかし車内では「終点/Terminal」とは案内されません。車掌さんが車内放送で誤って「終点、武雄温泉です」と言ってしまい、それを後から被せて訂正していました。それほど、この武雄温泉はあくまでも「途中駅にすぎない」ということをJR九州は必死にアピールしたいのだろうと思います。

しかし現実問題として、この新幹線に乗り続けていても博多へ行くことはできません。ディスプレイにはしっかり「博多行き特急」へ乗り換えが必要な旨も示され、その列車が同一ホームで待機している旨もしっかりと放送されます。

18:10に列車は定刻通り武雄温泉駅へと到着。ここでリレー特急へ乗り換えとなります。

新幹線ホーム側の駅名標は、次の駅が「江北」と示されており、やはり新幹線の終点であることは感じさせません。

そして驚くべきことに、ここまで約30分間乗車してきた新幹線〔かもめ〕の行先表示器は「博多」ではなく「武雄温泉」へと変わっていました!

これには一瞬驚きましたが、よく考えてみれば当たり前のこと。つまり、武雄温泉駅では在来線ホーム側に「博多行」のリレー特急が停車しているわけです。にもかかわらず新幹線の方にも「博多行」と示しては、いったいどちらに乗ればよいのか分からなくなってしまうでしょう。実によくできているなと感じました。

武雄温泉駅から乗車するのは、在来線特急〔リレーかもめ48号〕博多行。ついにこの列車こそが、本当に博多駅まで乗り入れる列車となります。新幹線とリレー特急の号数は揃えてあり、分かりやすくなっています。

なお、この武雄温泉駅の10番線はあくまでも新幹線と接続する「リレー特急」のみの専用ホームです。このほかに在来線特急〔みどり〕〔ハウステンボス〕が在来線ホーム側から発車しますが、何ともややこしいことにこれらの中にも新幹線と接続して「リレー特急」の役割を果たすものが混在しており、同じ〔みどり〕でも新幹線接続があるか否かによって使用するホームはおろか改札口さえも異なります。次々発に表示されている「みどり(リレーかもめ)」などはまさにそのパターンです。またその上の次発は下りの〔みどり〕で、ここ武雄温泉駅で新幹線〔かもめ47号〕長崎行へと接続を取ることになっています。

在来線特急〔リレーかもめ〕に使用される車両は787系(8両編成)および885系(6両編成)です。長崎へのメインルートの一部区間を担い、在来線特急〔かもめ〕開業後も活躍することは嬉しいですが、どちらもそれほど新しい車両ではないはずですので、一体いつ頃まで走るのかは気になるところです。

車体側面には〔かもめ〕ではなく〔リレーかもめ〕の文字。この48号の乗り換え時間は5分ほどあり比較的余裕がありますが、ほとんどの列車はここ武雄温泉駅での乗り換え時間が3分しかありませんので、乗り遅れには注意が必要です。

無事に乗り換えが完了し、列車は定刻通り18:15に武雄温泉駅を発車。こちらでも指定席を利用していきます。

新幹線と比べると車体の幅が狭く、同じ2+2列の座席とはいってもそのゆとりには大きな差があります。そして武雄温泉駅発車直後から感じるのは、新幹線と比べて乗り心地がそれほど良くないという点です。どうしても在来線なので仕方ない部分なのですが、新幹線とリレー特急を乗り比べてしまうと、やはりどうしても新幹線の静粛性と快適性に敵うものはないと感じてしまいます。

今回はJR九州インターネット予約で購入可能な「かもめネットきっぷ」にて乗車しています。新幹線指定券、(リレー特急)指定券、乗車券の計3枚が発券される仕組みで、特急券が「長崎→【武雄温泉乗り換え】→博多」と1枚の券面になるわけではありません。指定席・自由席とも同額でお値段は4,200円となっており、高速バスの通常運賃(2,900円)よりも1,300円ほど高くなっています。しかも高速バスのWEB回数券であれば1回分あたり2,250円で長崎~福岡間を移動できると考えると、新幹線の割高感は否めません。

一方で、所要時間の面では明らかに新幹線に軍配が上がります。また渋滞にも巻き込まれることなく時間に正確ですから、ビジネス客からのニーズは大きそうです。

武雄温泉を出て最初の停車駅である江北は、かつて「肥前山口」として100年以上に渡り営業していましたが新幹線開業を機にその駅名が改められ、町名と同じものになりました。

車窓が暗かったこともありこの後はウトウトとしていましたが、無事定刻通り19:14に終点の博多駅へと到着。長崎駅からの移動時間は約1時間30分で、このうち3分の2の時間をリレー特急に乗車していたことになります。

なお車内放送では、車掌さんが何度か「リレーかもめ」と間違えて「リレーつばめ」と案内していました。声から察するにベテランの車掌さんのようで、2004年から2011年まで博多~新八代駅間で運行されていたリレー特急の頃の癖が抜けないのだろうと思います(笑)。

到着した列車はまもなく回送となり、驚くことに側面の行先表示器には「KAMOME」のロゴが登場しました! 在来線特急〔かもめ〕は廃止されてしまいましたが、この車両が確かにかつて長崎駅へ直接乗り入れていたことの証と言えます。

 

さて、華々しく開業した西九州新幹線

しかし今のところ運行区間は武雄温泉~長崎駅間のみで、全国に張り巡らされた新幹線網からは孤立した形となっています。

JR九州や多くの長崎県民は「一日も早く博多まで全線開業させたい・してほしい」と願うところかと思います。大幅な時間短縮効果が期待でき、何より武雄温泉駅での乗り換えの手間が省けることは大きなメリットとなります。

一方で間に挟まれた佐賀県にとって、この新幹線開業におけるメリットがそれほど大きくないのも事実。博多~佐賀駅間は現行の在来線特急でもわずか40分ほどで、新幹線が必要とされるほど長い距離ではありません。もちろん新幹線が開業すればその所要時間は短縮されますが、かけた費用に対するメリットが小さいというところでしょう。また、県内には2011年の時点で「新鳥栖駅」が開業しており、既に佐賀県内から直接博多・新大阪方面へ新幹線での移動が実現しているというのもあります。

私は佐賀・長崎いずれの出身でもありませんので「余所者」にすぎません。しかしそんな余所者のいち鉄道ファンの意見としては、やはり一日でも早く博多まで全線開業してほしいと願う気持ちが大きいのが正直なところです。

現在新幹線の線路が繋がっていない新鳥栖武雄温泉駅間の距離は50kmほど。今回開業した西九州新幹線区間よりも短いのです。現状ルート決定や用地買収といった具体的な話は上がっていませんが、もし概ね在来線と沿うような形で建設されるのであれば、この区間は平野が続いており難工事となりそうな箇所もありません。途中「江北」と「佐賀」の2ヵ所に新幹線の駅を設置できれば、現行の在来線特急とほぼ同じ停車駅となり、浦上駅のように「特急廃止により大都市へ直通する優等列車がなくなる」ということもありません。

そして何よりも、新幹線は「静かで快適」です。いくら在来線特急の乗り心地が改善されようとも、この点は絶対に在来線特急が新幹線に勝つことのできないポイントです。

今回武雄温泉駅での対面乗り継ぎ方式として開業したことで、多くの乗客が無意識にも「新幹線」と「在来線特急」の乗り心地を比べざるを得ない運行形態となりました。これまで在来線特急が最も快適な移動手段であったのであればそれに乗るしかありませんが、それよりも遥かに快適な「新幹線」という乗り物ができても、なお佐賀県の方は「在来線特急の方がよい」と感じるのでしょうか。隣県にできた真新しい「西九州新幹線」に乗ってみて「これが自分の県にもあったらいいのに!」と感じる人が一人もいないとは思えません。

あくまでも一人の”鉄道ファン”としての意見ですから、決して中立的な見解とはならないことをどうかお許しください。日頃から新幹線の身近な地域に住んでいる私でさえ西九州新幹線の乗り心地には深く感動するものがあったわけで、現地の人にとってはなおさらその思いは大きいはずです。

近年は「唐津ルート」や「佐賀空港ルート」等も一部で議論されていますが、やはり何よりも新幹線は沿線人口の多い地域を通って多くの人にメリットをもたらしてほしいところ。少しでもこの問題が解決に向け前進することを願っています。

 

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。