2023年8月26日(土)
いよいよ芳賀・宇都宮LRT営業運転開始の時刻が近づいてきました。本日は栃木県にお邪魔しています。
今回は芳賀・高根沢工業団地から発車する芳賀・宇都宮LRT上り一番列車に乗車してきましたので、その様子をお届けしていきます。
既に各報道等にもある通り、宇都宮駅東口からの下り列車に関しては15時の営業運転開始後約2時間について乗車人数を制限するための整理券が早朝から配布されておりました。
一方で芳賀・高根沢工業団地からの列車に関してはそのような対応は特になく、停留場にて先着順で乗車できることになっています。
私は芳賀バスターミナルより徒歩で芳賀・高根沢工業団地停留場へとやってきました。到着したのは営業運転開始35分前の14時25分頃でしたが、既に歩道上には長蛇の列ができています。
改めまして、本日(8月26日)の開業初日の営業運転開始時刻は15時ちょうど。宇都宮駅東口/平石/芳賀・高根沢工業団地の各停留場を15時00分に発車する便からスタートとなります。
芳賀・高根沢工業団地停留場のそばの歩道に形成された乗車待機列では常時人数がカウントされており、私はどうやら85人目あたりだったようです。
14時35分頃、一番列車へと充当される送り込みの回送列車が芳賀・高根沢工業団地停留場のホームへと入線。HU300形という3両編成の車両で、昔懐かしい単行の路面電車とは大きく雰囲気を異にします。
入線後も列はさらに長く延びていきます。
通常は概ね12分間隔での運行となりますが、本日は「開業日ダイヤ」として15分間隔での運行になっています。芳賀・高根沢工業団地停留場からは毎時00分・15分・30分・45分の発車となる予定で、列に並んでいる人の中でも混雑を回避する目的で2番目の列車への乗車を希望する場合は申し出るようアナウンスがありました。
また、現地では下野新聞の号外も配布。午前中に宇都宮駅周辺で行われたパレードやセレモニーの様子が記事になっているようです。
やがて列の前方より停留場内へと誘導されていきます。120名ずつというアナウンス通りの誘導であれば85人目の私はおそらく乗車できると思いますが…果たしてどうなるでしょうか。
無事に停留場内へと案内していただきました!
大変な人数ですが、何とか乗車はできそうです。
種別は「各停」と表示されており、現時点では開業日ダイヤ・通常ダイヤを問わず全列車が各駅停車として運行されます。ただし将来的には快速運転が予定されており、これを見越して途中2ヵ所に待避設備が設けられています。
乗車人数120名ということで、芳賀・高根沢工業団地停留場を発車する時点での混雑は上の画像くらいです。乗車率は高いですが、人と人が密着するほどではありません。途中の停留場からの乗車も想定し、あえて余裕を持たせているのだそうです。
発車5分前ほどで120名全員の乗車が完了したため、発車時刻前でしたがドアが閉まりました。ただし発車時刻を早めるわけにはいかないので、約5分間はドアを閉めた状態で停車したまま待機という不思議な体験をすることができました。
そして15時00分、ついに、ついに、芳賀・高根沢工業団地を発車。
わが国75年ぶりの新規開業軌道線がいよいよ営業運転を開始しました!!
多数の撮影者やお見送りの方々から手を振っていただき、いよいよ宇都宮駅東口までの14.6キロ、1時間5分の旅のスタートです。
芳賀・高根沢工業団地を出てしばらくは車道の中央に設けられた併用軌道を走ります。次のかしの森公園停留場では芳賀・高根沢工業団地2本目の発車となる列車の送り込み回送とすれ違いました。
各ドアの上部には横長のモニターがあり、次の駅を表示しています。また車両の天井部分には大きなモニターがあり、こちらでは路線図や乗降方法のほか沿線の広告等も流されています。
つり革は長方形をしており、これまでにあまり見たことのないパターンですがとても掴みやすいです。また、車内にはフリーWi-Fiも整備されています。
急勾配を抜けて右折すると芳賀町工業団地管理センター前停留場へと到着します。ここには芳賀工業団地トランジットセンターが設けられており、各方面のバスへ乗り換えられる旨も車内でしっかりとアナウンスされます。
芳賀町工業団地管理センター前には15時06分頃到着しましたが、本日限定の開業日ダイヤとしては15時09分到着・09分発になっています。すなわち定刻よりも3分早着したということになりますが、これは開業初日につき各停留場にて乗降に時間を要することが予想されるため設けられた余裕時分かと思われます。ルールの浸透により乗降がスムーズに行われるようになれば徐々にスピードアップも図られる予定です。
ちなみに芳賀・宇都宮LRTの乗降ルールですが、欧州をはじめ諸外国でもスタンダードとなっている「信用乗車方式」が導入されています。交通系ICカードで乗車する場合は編成内のどのドアからでも乗車・降車ができ、各ドアの入口部分にある「乗車」「降車」のそれぞれのタッチ機にカードをかざすのみでOKです。現金の場合はホーム上にて整理券を取り、降車時に編成最前部にて精算する必要があります。すなわち現金の場合も乗車はどのドアからでも可能ですが、降車は必ず一番前のドアからとなります。
道路上には自動車の信号機と並んで「電車用」と書かれた黄色い矢印の信号機があります。併用軌道区間では自動車と並んで走りますから、交差点を安全に通過するためこれに従わなければいけません。そのため停留場以外でも時折停止します。
途中区間でも地元の方や運営スタッフの方がこちらに手を振ってくださるので、お互いに振り返します。なお折しも本日は両国国技館で年に一度のチャリティー番組がありますが、こちら宇都宮でスタッフさんが着ていらっしゃる黄色いTシャツはそれとは全く無関係です。
始発停留場では比較的車内スペースに余裕のあった(あえて余裕が出るよう乗車人数を制限していた)車内ですが、途中の各停留場からの乗車もあり次第に車内は混雑を増していきます。なお途中の停留場で待っていたのはどこも若干名ずつで、基本的に皆様乗車できていたようです。
列車は順調に進み、ゆいの杜中央停留場を発車。芳賀・宇都宮LRTにおける英語表記の特徴として、必ずしもローマ字にこだわることなく「中央」→「central」など意味を的確に捉えた英訳を積極的に用いている点が挙げられます。
停留場のみならず街中にも芳賀・宇都宮LRTの開業を祝福する幟があちこちで立てられており、街全体を挙げて今回のLRT開業が盛り上がりを見せていると感じます。
ゆいの杜西を発車後、一瞬専用軌道のような区間となります。ここでちょうど平石を15時ちょうどに発車した下り一番列車と行き違いました。
グリーンスタジアム前や清原地区市民センター前付近では一応道路と同じ高さに敷かれた軌道の上を進みます。ただし幹線道路ではなく、道幅もそれほど広くないので、道路の片側に2本とも寄せてあり、かつバラストも敷かれた「専用軌道」状態となっています。
そして清陵高校前を出ると、宇都宮駅東口を15時ちょうどに発車した下り一番列車と行き違い。すなわちこの付近がおおよそ全区間の中間地点にあたるということになります。あちらは長時間の熾烈な整理券争いを勝ち抜いた猛者の方々が乗車されているということになります。
飛山城跡を発車し、列車は鬼怒川を越えていきます。この区間は正真正銘、専用軌道の敷かれた高架区間となっており、高い位置からの絶景は一見の価値ありです。少なくとも路面電車の車窓とは思えません。
太陽がキラキラと照らす鬼怒川の眺めも大変美しく、川遊びをしている方々からもお手振りをいただきました。
列車は平石停留場へと到着。ここはLRTの車両基地があり、ホームは2面4線構造で待避も可能となっています。とりわけここからの乗車はやはり多く、ともすると積み残しが出ていたかもしれません。
ただし先ほどまでの各停留場では乗車しているこの列車が正真正銘の上り一番列車でしたが、平石始発で宇都宮駅東口方面へも15時ちょうどから運行されているので、この列車は平石15時45分発、すなわちここから先は4本目の上り列車となります。
ダイナミックにカーブを描き、いよいよ列車は宇都宮の市街地中心部へと入っていきます。
宇都宮大学陽東キャンパス停留場からは、終点の宇都宮駅東口まで全て併用軌道となります。「宇都宮大学陽東キャンパス」はいかにも大学を前面に押し出した停留場名ですが、大学のキャンパスよりも近い位置に大型商業施設「ベルモール」があり、週末などは特にこちらへの需要がメインとなるような気もします。
普段であれば終点の一つ手前、東宿郷停留場からの乗車などなかなかないでしょうが、本日は短い区間だけでも記念に乗車しておきたいという乗客が多く、ここでも待っている乗客が何名かおりました。ただし実際はあまりの混雑によりこの列車への乗車を見送られていた方もいたようです。
いよいよ列車は、宇都宮駅東口へ。運賃表の最上段には「400円」と表示されています。全区間通して乗車してこの金額です。
これは従来の路線バスと比べると遥かに安く、その安さが普及の後押しになってくれれば幸いです。
芳賀・高根沢工業団地を出て1時間5分、16時05分に列車は定刻通り終点の宇都宮駅東口へと到着。
折り返しは16時15分発の下り列車になるということで、ホーム上では乗客が待機しています。ホーム上は大変狭いため、安全のためにも降車後すぐにエスカレーターを上がりペデストリアンデッキ上へと移動しました。降車時にICカードをタッチすればよいので、降りた先に改札口がない点はむしろスムーズでとても合理的だと感じました。
あす8月27日(日)より通常ダイヤでの運行が予定されている芳賀・宇都宮LRTですが、8月中は夏休みということもあって混雑が予想されます。時間帯によっては1本見送る必要もあるかもしれませんが、基本的に12分間隔ですので乗車される際には余裕を持った行程を心がけましょう。また、紙のきっぷはありませんので、特別な事情がない限りは交通系ICカードの利用を強くオススメします!!
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。