わたかわ 鉄道&旅行ブログ

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【帰ってきた185系】往年の名列車に思いを馳せて駆け抜ける魂の2時間48分[桐生→大船]

 

2023年5月5日(木)

本日は、群馬県にあるJR両毛線桐生駅に来ています。

これから「奇跡の復活を遂げたとある車両」を使用した臨時列車に乗車していきます。

4月から5月にかけて、栃木県足利市にある「あしかがフラワーパーク」では藤の花が見頃を迎えます。特に週末や大型連休の間は多数の来場者が見込まれることから、JR東日本では毎年東京近郊からの直通臨時列車を運行しています。

2023年1月20日付で公式に発表された、今年の春の臨時列車情報。そこには何と…

185系」の文字が!!!!

185系は、1981年にデビューした特急・急行型車両です。主に伊豆方面の特急〔踊り子〕や上毛方面の特急〔草津〕等で活躍しましたが、老朽化により2021年春に〔踊り子〕全列車がE257系リニューアル車両へ置き換えられるタイミングで定期運用からは退いていました。

watakawa.hatenablog.com

その後もしばしば首都圏近郊の臨時列車に充当されてはいたものの、最近ではほとんどその動向を耳にする機会も減っていました。旅行会社主催の団体列車として仕立てられることはあっても、一般発売されることはないだろうと思われていたのです。

しかし今回、このような形で185系が再登板される形となりました。

大藤まつり関連の臨時列車に185系が充当されるのは実に2年ぶり。当時はまだ「臨時快速」としての運用でしたが、今回は特急へ格上げされました。今回は桐生から大船まで、全区間乗車していこうと思います。

桐生駅の改札口付近には、臨時列車運行の旨を知らせるポスターがありました。

首都圏からの直通列車は1日1往復の特急〔あしかが大藤まつり号〕のみですが、このほか多数の臨時普通列車両毛線内で運行されています。

4番線のホームへと上がりしばらくすると…185系がゆっくりと入線してきました!

「回送」幕はすぐに「臨時特急」へと変わり、発車20分前には既に準備完了といった様子です。

この列車は桐生始発の大船行、すなわち「あしかがフラワーパーク」で藤の花を観賞した後の乗客の帰宅の足として設定されているものになります。両毛線は小山へ出ることで宇都宮線東北本線)へ、また逆に高崎へ出ることで高崎線へ接続しいずれのルートでも東京都心方面に出ることができますが、この列車は小山経由(宇都宮線経由)での運行となります。

列車は6両編成で、前から順に1号車、2号車…となっています。塗装は晩年の〔踊り子〕等でもおなじみの緑色のストライプ柄で、東海道線をよく使用する私としてはとても懐かしいものがあります。

本日は祝日ということもあり、ホーム上は大変多くの鉄道ファンで賑わっています。入線から発車まで比較的時間があるということもあり、ホーム上では互いに配慮しあいながら撮影することや周囲の乗客の迷惑となることのないよう注意喚起の放送が繰り返し流れていました。

車内は全車普通車指定席で、グリーン車や自由席はありません。特急列車としての運用ということもあってか、各座席には白いヘッドカバーが掛けられています。

車内の広告は〔踊り子〕時代の伊豆のものがそのまま差し込んであり、年季が入っていることもあって色あせています。右下には伊豆急行2100系「アルファ・リゾート」、185系「踊り子」、251系「スーパービュー踊り子」の3形式の画像がありますが、全て過去のものとなってしまいました(2100系→「THE ROYAL EXPRESS」へ改造、185系→定期運用引退、251系→廃車)。

また、185系の大きな特徴の一つは「窓が開く」ということ。近年の特急車両では窓が開けられるものはほとんどありませんが、この185系ではほぼ全ての窓を下から上に持ち上げて開けることができます。上の画像のようなつまみが1窓につき2ヵ所あり、両方を同時につまんでうまく上げることで外の空気を取り入れることができるようになっています。

桐生から大船までの特急料金は3,130円で、これは151~200キロまでのA特急料金が通常2,730円であるところに、大型連休期間ということで最繁忙期(+400円)の加算が行われた結果になっています。

全車指定席の快速列車として運行されていた時代はまだ最繁忙期の設定がなく、全区間通して乗っても指定席料金はわずか530円であったことを踏まえると約6倍の大幅値上げとなります。A特急料金といえば首都圏では成田エクスプレス等ごく一部の特急列車にのみ適用されている高額な特急料金制度で、それと同じ水準の車内環境がこの国鉄特急車両185系に備わっているかと言われると間違いなくそんなことはないわけですが、しかしそれでも乗りたい鉄道ファンは集まるわけですから、近年におけるJR東日本のコンテンツとしては十分強力なものになっていることでしょう。

14時14分、列車は定刻通りに桐生駅を発車。これから2時間48分かけて大船駅へと向かいます。

桐生駅を発車した時点での車内の乗車率は約7割程度で、見る限りはほぼ100%鉄道ファンといったところでしょう。

185系については当ブログでも繰り返しご紹介していますので今さら…かもしれませんが、一応車内設備も見てみましょう。

各座席には背面テーブルが備わっており、お弁当や飲み物等を置くことができます。大きさは決して大きくないので、パソコン作業にはやや不向きかもしれません。

また残念ながら、車内にはコンセントやWi-Fiといった設備は一切ありません。1981年デビューの車両ですから無理もないことですが、完全引退も近いであろうこの車両に今さら改造が施されることもないかと思います。

山前駅では3分ほどの運転停車を行い、対向の普通列車との行き違いを行いました。特別塗装車両「矢絣色(やがすりいろ)」の編成で、時刻表を見る限りどうやらあちらも臨時列車のようです。

列車は最初の途中停車駅である足利駅を発車。沿線の田んぼの間には、ぽつぽつと撮り鉄の方の姿も見られます。

14時35分、列車は大本命(?)のあしかがフラワーパーク駅へと到着。ホーム上は大変な人だかりになっています。

もちろんここに今見えている乗客の方の全てがこの列車に乗り込むというわけではないでしょう。一方で今年のゴールデンウィークは例年にも増して観光地各所の混雑が話題となっている中で、ここ「あしかがフラワーパーク」も決して例外ではないことを思い知らされます。

あしかがフラワーパーク駅を発車し、車内はいよいよ満席に。一部ちらほらと空席もありますが、鉄道ファンで正当に特急券を購入した上で、車内音声の録音等のためにデッキに立っている方の席といった感じです。

両毛線は単線区間が続くため、この先もこまめに上下列車の行き違いが行われます。富田駅では約1分、思川駅では約6分停車し、列車の行き違いを行いました。なお、富田駅を出た辺りでちょうど石川県能登地方を震源とする最大震度6強の強い地震があったようですが、こちら栃木県内では特に揺れを感じることはなく、また列車が緊急停止をしたり乗客のスマートフォン緊急地震速報が鳴ったりする等といったことは起こりませんでした。

列車はまもなく、宇都宮線と合流する小山駅に入ります。両毛線の列車は通常であれば目の前に見えている6・8番線ホームへと入るのですが、今回はその手前でポイントを渡り、宇都宮線ホームへと入ります。

小山駅では9・10番線が下り(宇都宮方面)、12・13番線が上り(上野方面)となっていますが、この列車は上り列車にもかかわらず9番線へと入線しました。一時的に”逆走状態”になるようです。

小山駅では2分ほど運転停車を行い、その後発車。再びポイントをガチャガチャと渡り、一時的に下り線の線路を塞ぐことでようやく上り線の線路へと入ることができました。ダイヤを組む上での制約が決して小さくない直通列車であると感じます。

宇都宮線に入ると、列車は一気にスピードを上げ、100km/h前後での走りを見せるようになります。臨時列車ですから前後の定期普通列車の支障とならないように走る必要があり、必然的に往年の東北本線優等列車の雰囲気を追体験することができます。

宇都宮線185系を使用した列車といえば、2014年まで〔ホームライナー古河〕がありました。しかし〔ホームライナー鴻巣〕〔中央ライナー〕〔湘南ライナー〕等と異なり特急へ格上げされることはなく、宇都宮線内で着席を保証する在来線定期列車は運行されていないのが現状です。

また、この列車が快速列車として運行されていた時代には蓮田、久喜、栗橋等の駅にも停車していましたが、今回のダイヤでは小山~大宮駅間で一切運転停車・客扱い停車をすることなく駆け抜けていきます。

宇都宮線内には有名な撮影スポットも多く、撮り鉄の方もかなり多く集まっていることが分かります。本日は天候もとてもよく、多くの方が集まるのも頷けます。

鉄道唱歌の車内チャイムが流れ、列車は15時49分に大宮駅へと到着。あしかがフラワーパーク駅以来、1時間以上ぶりの客扱い停車となります。

ここでの乗降はかなり多く、鉄道ファンでない方(≒あしかがフラワーパーク駅から乗車された方)のほとんどはここで下車されていたように見えます。また、それによる空席を狙って大宮駅からの指定席を押さえた鉄道ファンの方も大勢おり、結果的にここ大宮でそれほど車内の混雑率が大きく緩和されるということはありませんでした。

続いて15時55分、列車は浦和駅に停車。湘南新宿ラインの方ではなく、宇都宮線高崎線の使用するホームです。

後続の上り列車を待っていたホーム上の乗客の方も、見慣れない車両に少々驚いているようでした。

川口駅付近では、何とカシオペアの客車とすれ違い。一瞬ではありましたが、その鮮やかな帯の巻かれた客車は乗客の視線を一挙に集めるものとなりました。

荒川を渡り、列車はいよいよ東京都へと突入します。しかし浦和の次の停車駅は横浜ですから、東京都内で列車のドアが開くことは一切ありません。

尾久車両センターには、豪華クルーズトレイン「TRAIN SUITE 四季島」の姿も。

かつて特急〔草津〕〔あかぎ〕〔水上〕等としても使用されていたことのある185系ですから、尾久駅の通過も10年ほど前までは毎日見ることのできていた光景です。

無数の線路を眺めながら、列車は北の玄関口である上野駅へ。「特急に乗って上野駅へ」と聞くともう終着駅であるかのような錯覚に陥りますが、今回は終着駅でないどころか乗客の乗り降りさえもできません。乗務員交代のために運転停車を行うのみです。

上野駅での運転停車は2分程度。ここでもホーム上の乗客の視線を集めていました。

考えてみると、この185系高崎線特急として使われていた時代の発着ホームは基本的に13~17番線(頭端式地上ホーム)の方であることがほとんどだったでしょうから、東京方面へ直通することのできるこの高架ホームに185系が入線する光景も非常に珍しいものといえるかもしれません。

東京都内に入ると、通過する各駅ホーム上でも多くの鉄道ファンの方がカメラを持って待ち構えています。並行する山手線・京浜東北線とは抜きつ抜かれつの走りを見せていきます。

そしてこの列車の最大(?)の目玉でもあるのが、東京駅の通過

東京駅は先ほどの上野駅と異なり、運転停車さえもすることなく一瞬で通過していきます。

東海道線ホーム10番線の通過ということでかなり徐行しながらではありますが、営業列車であるか否かにかかわらず「東京駅を通過する」という光景はわが国の鉄道151年の歴史上決して頻繁に見られたものではないことは間違いありません。

「(物理的に)東京駅って通過できるんだ…」という驚きとともに、列車は宇都宮線から東海道線へと入ります。

東海道線に入れば、この列車の走りっぷりはまさに往年の特急〔踊り子〕そのもの。「臨時列車だから」とスピードを緩めていては後続の普通列車が詰まってしまいますから、やはりこの東海道線内でも100km/h前後を維持しながらの走りとなります。

品川駅を通過し、列車は川崎方面へと向かいます。

2018年に私がこの列車に乗車した際(快速時代)は、横浜~品川駅間を横須賀線品鶴線)経由で運行していましたが、今回はまさに往年の〔踊り子〕を彷彿とさせる東海道線ルートでの走行です。

川崎駅にいたっては、もはやスピードが緩む気配すらありません。185系時代の〔踊り子〕は原則必ずこの川崎駅にも停車していましたから、その頃の光景と比べてみると少し不思議な感覚です。

車内の乗客の9割以上は鉄道ファンですが、特に大きなトラブルが起こったり騒がしくなったりすることはなく、車内の治安は良好に保たれています。快速時代と比べ料金を高めに設定していることや、途中大回り乗車の拠点となる駅を限界まで「通過扱い」にしていることなどが功を奏している部分はあると思います。

16時46分、列車は横浜駅に到着。〔踊り子〕のみならず〔ムーンライトながら〕やその他の臨時列車等で185系が毎日のように多数発着していた東海道線ホームに、再びこの車両が入線している光景は感動せずにはいられません。

列車は横浜駅を発車。終着駅である大船を目指します。

冒頭にも書きましたが、私はこの185系が一般発売の営業列車として復活したことはある意味”奇跡的”としか言いようがないものであると感じています。背景には、2023年3月のダイヤ改正高崎線特急〔あかぎ〕〔草津・四万〕にE257系リニューアル車両が投入されたことで一時的に波動用特急車両が不足していたことによるものですが、まさか185系の座席に再び腰掛けることができるようになるとは思ってもいませんでした。

185系」という車両は、世代によって、人によって、さまざまな捉え方があります。

つい10年ほど前までは、185系というと183系・189系485系583系等のいわゆる代表的な「国鉄特急顔」な車両の陰に隠れていた印象の薄い国鉄車両だったかもしれません。

そうした車両に何度も乗っている一定年齢以上の鉄道ファンの方からすると「たかが185系ごときで」と感じる節があることは理解しているつもりです。実際、私も鉄道趣味に興じ始めた頃はまだそれほど185系の魅力に取りつかれることはありませんでした。

しかし時代は変わり、より高性能で快適な鉄道車両が当たり前になった現代の世の中においては、この「少しばかり昔の雰囲気を肌で感じることのできる」185系の存在は極めて貴重なものであることに違いありません。ですから「185系の定期運用時代に一度も乗車することのできなかった」という若い鉄道ファンの方なども、是非興味があればこの機会に一度185系に乗車してみていただきたいのです。

「定期運用時代に一度も乗ることができていないから」と後ろめたく思う必要はありません。むしろそういう方こそ、一度でも乗っておくべき車両であると思います。自分が「乗りたい」と思う車両に対して、一度も乗らずに完全引退を迎えるよりも、一度でも乗っておくことでその記憶と記録をしっかり残すことの方が、必ずやその後の趣味人生において貴重な財産となります。

そんな思いを胸に、17時02分。列車は定刻通り、終点の大船駅へと到着しました。

東海道線ホーム(4番線)への到着です。方向幕はすぐに「回送」へと切り替わりました。

さて185系ですが、「あしかが大藤まつり号」としての運行はあす5月6日までとなります。

その後6月には大宮~越後湯沢駅間を結ぶ臨時列車の運用にも入る予定となっておりますので、興味ある方は是非乗車してみてください。

なお、6月の運行についても全車指定席とはなりますが、乗車1ヵ月前の午前10時の発売開始と同時に満席となった場合でも、その後空席をこまめに確認するとキャンセルが出ることがあります。実際私の今回の「あしかが大藤まつり号」の空席もそのようにして予約できたものになりますので、是非チェックしてみてください。

▼春の臨時列車の運転について - JR東日本https://www.jreast.co.jp/press/2022/20230120_ho02.pdf

 

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。