わたかわ 鉄道&旅行ブログ

乗り鉄&旅好きの20代男子が全国を巡る!

【リアルきさらぎ駅?】存在しない名前の駅へと向かう不思議な列車に乗車…

 

2022年10月28日(金)

さて、今回は京急の起点である品川駅へとやってきました。

なんでもこの京急では、「存在しない名前の駅」へと向かう列車があるそうなんです…。

列車の行先表示器や駅の発車標等に案内される「○○行」の文字は、一般的に「その名前の駅」へ行くものであることは言うまでもありません。「東京行」であれば東京駅が終点であるはずですし、「上野行」と案内されているのに新宿駅が終点になったりすることはありません。

しかし、京急線品川駅の発車標を見上げてみると「存在しない名前の駅」へと向かう列車は既にたくさん表示されていました。

 

そう、「羽田空港」です。

 

何を言っているんだ、と。

そう思われることでしょう。

しかし実はこの列車が行先として表示している駅名は、本当に存在しないのです。

発車標と同じく、側面の行先表示器にも確かに「エアポート急行 羽田空港」と表示されています。しかし繰り返しますが、そんな名前の駅はこの世に存在しないのです。

何はともあれ終点まで乗ってみないとその真偽は分かりませんので、ちょうどやってきた品川9時34分発のエアポート急行羽田空港行”へと乗車していくことにします。

列車は定刻通りに品川駅を発車。JR各線の複々線を一気に跨ぎ、南下していきます。

車内のモニターにも確かに「羽田空港行」と表示されており、その下にはひらがなで丁寧に「はねだくうこうゆき」とふりがなまでふってあります。しかししつこいようですが、そんな名前の駅は存在しません

列車は青物横丁、立会川、平和島…と順に停車していきます。1本前を走るのは特急 三崎口で、品川を3分早く発車しているはずですが、青物横丁で追いつきそうになってしまいました。

程なくすると列車は京急蒲田に到着。”蒲田要塞”の異名で知られる大きな駅で、私の乗る列車は3階ホーム1番線へと入線しました。

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ここで本線と離れ、ここからは空港線へと入っていきます。ホームの途中から分岐していく光景は京急蒲田ならではです。

ゆっくりと坂を下り、糀谷方面へと進みます。エアポート急行は、空港線内では全ての駅に停車します。

 

そしてここで、ついに真相が明らかとなる瞬間がやってきました…!

 

終点までの残り駅数が少なくなると、モニターには全ての停車駅が表示できるようになります。それを見ると、どうやら終点の駅は「羽田空港駅」ではなく「羽田空港第1・第2ターミナル駅」なのだそうです…!!

やはり本当に「羽田空港駅」という名前の駅は存在していないようです。

そして終点の一つ手前にあるのは羽田空港第3ターミナル駅。国際線利用者はこちらで下車するよう案内がありました。

そしてその数分後、真の終着駅である羽田空港第1・第2ターミナル駅へと到着。利用する航空会社によって出口が異なるため、到着前にその旨が丁寧に案内されていました。

実は元々この駅、1998年11月の開業から約12年間は正真正銘の「羽田空港駅」でした。しかし2010年10月の羽田空港本格国際化に伴い、新たに「国際線ターミナル」が開業。京急ではそれまでの「羽田空港駅」の手前に新たに「羽田空港国際線ターミナル駅」が開業し、併せて羽田空港駅は「羽田空港国内線ターミナル駅」へと名を改められました。

それから約10年後、2020年3月には旅客ターミナルビルの名称変更に伴い、現在の「羽田空港第1・第2ターミナル駅」「羽田空港第3ターミナル駅」に再変更されています。

実は京急における羽田空港アクセスの歴史を紐解くと非常に興味深く、時代により様々変化しています。1956年に開業した羽田空港駅(初代)は現在の天空橋駅よりもさらに手前に設置されており、ここが空港線の終点でした。空港は川の対岸にあり、駅へ降り立った乗客は連絡バスでターミナルビルまで移動するという方式が採られていました。

1993年に空港線が現在の天空橋駅まで延伸され、それまで30年以上に渡り使用されてきた羽田空港駅(初代)は廃止となります(1991年より休止扱い)。当時の駅名は「羽田」で、依然としてターミナルビルまではバスやモノレールへの乗り継ぎを強いられる状態でした。

そして1998年、ついに京急が空港直下への乗り入れを開始。この時開業したのが「羽田空港駅」(2代目)で、羽田駅は「天空橋駅」へと名を改め空港アクセスとしての役割を終えることになります。

列車の行先表示器や駅の発車標で「羽田空港第1・第2ターミナル行」と案内しても間違いではありません(列車の行先としてはむしろより正確)。しかしそもそも駅名が長すぎて入りきらなくなる恐れがあるほか、初心者にとって「第3ターミナルは通るのか否か」という疑問さえも生みかねません。

そうなるくらいなら、2010年以降も列車の行先は「羽田空港行」と案内し、その上で利用するフライトによる降車駅の違いに関しては到着前に車内で詳しく案内する、という現在の方式はとても理に適っているように感じます。

そして京急だけでなく東京モノレール羽田空港へと乗り入れており、2020年3月以降は上図のようになっています。東京モノレールの各種ターミナル駅はそれまで「羽田空港第○ビル駅」という呼称でしたが、現在では京急の呼称に揃えられています。

せっかくなので、今いる第1・第2ターミナル駅から一つ戻り第3ターミナル駅も見に行ってみることにします。第1・第2ターミナル駅のホームドアには列車の種別や行先等を表示するモニターが設置されており、非常に分かりやすいです。

羽田空港第1・第2ターミナル10時14分発のエアポート急行 逗子・葉山行へと乗車。ちなみに「逗子・葉山」という駅名も同じく2020年3月に「新逗子」から改称されたものになります。

ものの数分で羽田空港第3ターミナル駅へと到着。かつての「羽田空港国際線ターミナル駅」です。

2面2線の相対式ホームを構える駅ですが、そのホームがとにかく広いことに衝撃を受けます。ちょっとした運動会くらい開催できるレベルです(危ないので絶対にやめましょう)。

開放的な造りの第3ターミナルは、駅名改称後の現在も基本的に「国際線のターミナル」として機能しています。辺りを見渡すと様々な言語が飛び交い、まさに「日本の玄関口」であることを実感させてくれます。

京急の3タミ駅に関して特徴的なのは、上りと下りの改札口が完全に分離されている点です。基本的にこの3タミからは京急蒲田方面への乗車が想定されているため、「品川・東銀座・浅草方面/横浜方面」と示されている改札口の方は各種案内が充実しています。

一方で、それと完全に雰囲気の異なる殺風景な改札口が「羽田空港第1・第2ターミナル行専用改札」です。改札を通ってから反対側のホームへ移動することはできないため、その旨が看板でも記されています。

「3タミ降車ホーム」的な位置づけが強いこの1番線ですが、一応乗車することもできるようにはなっています。ターミナル間を移動する無料連絡バスもある一方で、国際線乗り継ぎのために1・2タミ~3タミ間で京急に乗車する場合は運賃が無料になる特例が存在するため、一応はそうした需要が考慮されているのだろうと思います。

そして驚いたのは、この第3ターミナル駅においても発車標の行先が「羽田空港」と表示されていることです。もちろん実際にはこれが「第1・第2ターミナル駅」を指しているわけですが、「今いる場所が既に羽田空港なのに…」と少々困惑してしまいます。列車種別としては「エアポート快特」「快特」「特急」「エアポート急行」「普通」の5種類がやってきますが、もはや次が終点で種別などどうでもよいので、発車標には表示されていません。

 

というわけで、今回は京急で見られる「存在しない名前の駅が行先」となる不思議な列車をご紹介しました。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。