2022年10月28日(金)
今回は京急本線の横須賀中央駅へとやってきました。名前の通り横須賀市の中心にあり、快特・特急のいずれでも品川から50分程度の距離にあります。
無数の鉄道路線が張り巡らされた首都圏。その駅名一つ一つには、ほとんどの場合「漢字」が使用されています。一方で近年新たに開業した路線・駅等においては「ひらがな」や「カタカナ」が用いられることもあります。
では「アルファベット」はどうでしょうか。
関西にお住まいの方であれば、「JR難波」「JR五位堂」「JR俊徳道」のようにJR線と私鉄線の駅を区別するための表記としていくつか思い浮かぶ方もいらっしゃるかもしれません。しかし首都圏を含めその他の地域では「JR」を冠する駅は存在せず、実際にアルファベットを含む駅名は全国広しといえどほとんどないのが現状です。
しかし、京急にはあるんです。
運賃表の三崎口方面へ視線をずらしていくと、横須賀中央から6駅のところに…ありました。「YRP野比」という駅です。読み方はそのまま「わいあーるぴーのび」です。
なお、東日本でアルファベットを含む駅はこの1か所だけとなっています(副駅名等を除く)。巷では「高輪ゲートウェイ」などという横文字駅名が山手線にそぐわないとして賛否両論あるようですが、アルファベットともなるとカタカナの比ではないくらいの異彩を放っています。
果たしてどんな駅なのか、駅の近くには何があるのか…気になるので行ってみることにします。
横須賀中央駅の下りホームへとやってきました。京急はこの先堀ノ内で浦賀方面(京急本線)と三崎口方面(京急久里浜線)へと分岐しますが、YRP野比駅はどうやら久里浜線の方にあるようです。横須賀中央13時24分発の快特 京急久里浜行へと乗車することにします。
程なくすると列車が入線。2ドア車として知られる2100形がやってきました。
横須賀中央駅は2面2線ながら全ての旅客列車が停車する主要駅です。一方で京急久里浜線へは基本的に「快特」「特急」しか直通しませんので、乗り間違えないよう注意が必要です。
列車は定刻通りに横須賀中央駅を発車。首都圏では珍しいクロスシート車両です。ただし関西圏の新快速等と異なり、乗客自ら座席の向きを変えることはできません。
県立大学駅は通過し、堀ノ内駅に到着。この先は終点まで各駅に停車していきます。
堀ノ内で本線と分かれ、快特は右の線路を進みます。都心方面からの直通列車も含め快特・特急はだいたい三崎口方面へ直通するためこちらが本線であると勘違いされがちですが、実は本線ではなくて支線なのです。
北久里浜~京急久里浜駅間には「京急ファインテック久里浜事業所」があり、多数の留置線が広がります。何本か列車が停車していました。
13時33分に終点の京急久里浜駅へと到着。しかしYRP野比はまだ先ですから、向かいのホームに停車する13時34分発の快特 三崎口行へと乗り換えます。この列車は1本前を走っていたものですが、京急久里浜で後続列車からの接続を取るため10分ほど待機していたものです。
無事に乗り換えが完了し、列車は定刻通りに京急久里浜を発車。この先は単線区間もあり、京急といえどだいぶ都心から離れていることを感じます。
京急久里浜の次の駅が、いよいよ今回の目的地である「YRP野比」です。車内に設置されたLCDの表示でも、漢字の並びの中にあるアルファベットは異彩を放っています。
そして13時38分、ついにYRP野比駅へと到着!
降りる人はまばらか…と勝手に思い込んでいましたが、平日日中にも拘らずかなりの数の人が降りていかれました。
ホームは一般的な2面2線の相対式で高架駅となっており、上部には大きく開放的な屋根も取り付けられています。平日朝に運行される「モーニング・ウィング号」以外の全ての旅客列車が停車し、8両分の有効長が設けられています。
単線区間にある駅ですが、列車の行き違いも可能です。行き違い待ちの列車が遅延するとすぐに久里浜線全体、ひいては都心方面へも遅延が拡大するおそれがあります。
改札内コンコースには、横須賀リサーチパークの大きな広告があります。
そう、「YRP」とはまさにこのことで、Yokosuka Research Parkの頭文字を取ったものです。名前の通りここには電波情報通信技術に関する研究を行う企業の施設が集まっており、その玄関口がこのYRP野比駅なのです。
余談ですが、この広告の右の方にある京急路線図の羽田空港付近に目を向けてみると「国際線ターミナル」「国内線ターミナル」という2020年までの駅名がそのまま残っています。また京急蒲田での本線との合流の仕方も実態とはかけ離れたものになっており、鉄道ファンとしてはやや気になるところです(笑)。
改札口は1か所のみで、すぐ横にはセブンイレブンもあります。大きくはありませんが、改札内外どちらからも商品を購入できる構造となっているのが便利なところです。
この駅は1963年に久里浜線の当時の終点「野比駅」として開業しました。その3年後に津久井浜駅まで延伸開業したことで途中駅となり、やがて久里浜線は三崎口まで開業し現在の姿となります。1998年に横須賀リサーチパークが開園したことで駅名が「YRP野比駅」へと改められました。
駅から500メートルほどのところには野比海岸があり、またすぐ近くには三浦半島をぐるっと一周するように走る国道134号も通っています。
駅前に高い建物は少ないですが、コンビニや民家のほか個人商店等が並んでいます。平坦というよりは坂が多い印象です。
高架下にはロータリーがあり、路線バス乗り場は4つ。全て京浜急行バスです。
久里浜・衣笠のほか山を隔てて三浦半島の反対側にある横須賀市民病院へ向かうバス等が発着しています。
せっかくここまで来ましたので、特に用事はありませんがYRPへと行ってみることにします。駅から歩けない距離でもありませんが、①番乗り場からバスが出ているので乗車することにします。
YRP野比駅からの時刻表はかなり特徴的で、平日朝に限り本数がとても充実しています。特に8時台だけでYRP方面へ16本もの運行があり、研究施設への通勤需要の大きさが窺えます。
そのほか平日日中は1時間に3~4本程度、土日・祝日は1時間に概ね2本程度となっています。
バスがやってきたので、乗り込むことにします。前面の行先表示は切れてしまって見にくいのですが、大きくアルファベット3文字で「YRP」と表示されています。「横須賀リサーチパーク」でなくとも、これで通用するくらい利用者にとって深く浸透している略称なのでしょう。
14時ちょうど、バスは定刻通りにYRP野比駅を発車。乗客は私のほかに1人だけです。
バスは起伏の激しい道を進みながら駅前市街地を抜け、やがて大きく右折し「光の丘隧道」というトンネルへと入ります。このトンネルを抜けた先がいよいよ「YRP」となります。
乗車すること約5分。トンネルを抜け、「YRPセンター」へと着きました。YRP内には多数のバス停があるためどこで降りればよいのかはよくわかりませんが、ここで下車することにします。もうお一人の乗客の方もここで下車されていました。
横須賀リサーチパーク(YRP)の広さは58.8haで、東西方向約1.7kmに渡り各種企業の研究施設が集まっています。市街地から少し高い丘陵地にあり、周辺一帯は「光の丘」と呼ばれています。
園内の様子はまるでニュータウンのようで、その雰囲気は同じ三浦半島内にある「湘南国際村」とも似ています。日中それほど歩行者の往来があるようには感じられず、時折自動車が走るほかは都会の喧騒を離れ静寂に包まれた空間となっています。
観光地ではなくあくまでも研究施設なので、私のように用事のない人が来ても特に見て面白いような名所等はありませんが、カフェレストラン「ローズテリア」は営業時間内であれば一般の人も利用できるようです。
またそのほか、園内には京急グループのホテル「京急EXイン」もあり、まるで園全体で一つの大きな街のようになっています。
各企業のロゴが入ったビル等は遠目から見るだけでもカッコよく、これを見るためであれば駅から足を伸ばして来る価値はあるかもしれません。知らんけど。
というわけで、今回は東日本で唯一アルファベットを含む駅名「YRP野比駅」についてご紹介しました。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。