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2日目 2022年5月2日(火)
2日目のスタートは愛知県の名古屋駅から。今日も在来線特急だけを乗り継ぐ生活が始まります(笑)。
雨模様の昨日とは異なり、2日目の今日は気持ちの良い晴れ。昨夏の最長片道切符でも天候には散々振り回されましたので、やはり長期旅行において天候を味方につけておくに越したことはありません。
東海地区最大のターミナル駅である名古屋からは、実に様々な方面へと特急が発車していきます。JRでは飛騨高山方面への〔ひだ〕、北陸方面への〔しらさぎ〕、昨日乗車した長野方面への〔しなの〕等…。また今回の企画ではあまり関係ありませんが、近鉄では大阪や伊勢志摩方面へ、名鉄は中部国際空港方面等へそれぞれ有料特急が運行されています。
数ある特急の中でも今回私が乗車していくのは、名古屋10:01発の特急〔南紀3号〕紀伊勝浦行です。今回は特急のみを乗り継ぐ「最長ルート」での移動ですので、壮大な遠回りをするべく名古屋から大阪方面へ紀勢本線経由で向かっていきます!
〔南紀〕に使用される車両はキハ85系と呼ばれる特急車両で、今企画開始以来初の気動車となります。主に〔南紀〕〔ひだ〕で運用されていますが、運用開始から30年以上が経過しており新型車両のデビューも決定していますので、引退はそう遠い話でもなさそうです。
三重方面には〔南紀〕だけでなく普通・快速など様々な列車が発車していきますが、中でも〔南紀〕は他の列車とは比べ物にならないくらいのロングラン。車内に自動販売機などもなく、また長時間停車はありませんので必要に応じて食料等は乗車前に調達しておく必要があります。
〔南紀〕は時間帯や日によって両数が異なりますが、今回は5両編成。このうち先頭5~2号車が指定席で、自由席は1号車の1両のみです。車内に入ってみると座席が通路から1段高くなっており、より良い眺めを楽しめるよう工夫がされています。
ワイドビューチャイム、最高では#特急リレー最長片道切符の旅 pic.twitter.com/6PoBbfkMu0
— わたかわ (@e235yokoso) 2022年5月2日
列車は定刻通り10:01に名古屋駅を発車。
たくさんの線路を横目に見ながら客室内で流れるこのチャイムは通称「ワイドビューチャイム」とも呼ばれ、JR東海各線で運行される特急車両の代名詞ともなっていました。しかし今年春のダイヤ改正をもって列車名に冠していた「ワイドビュー」の呼称が取りやめとなり、この音色もやがては過去のものになるかもしれません。
発車してすぐ、車窓右手には広大なJRの車両区が広がっています。その中には、デビューを目前に控えた最新型の特急車両「HC85系」の姿も。本年7月1日より特急〔ひだ〕で運行開始予定ですが、あちらの車内ではワイドビューチャイムが流れないようです。
途中の停車駅は桑名、四日市、鈴鹿、津、松阪、多気、三瀬谷、紀伊長島、尾鷲、熊野市、新宮。どれも市町村の中心駅ばかりで絞られてはいるものの、それでもこの多さというところに運行距離の長さを感じます。今回は乗り継ぎの関係上、終点の一つ手前の新宮で降りることにします。
名古屋を出てしばらく、列車は関西本線を走行していきます。名古屋から亀山・加茂・奈良を通り大阪の天王寺方面へと繋がっていますが、現在全線を走破する列車の運行はなく、ほぼ普通・快速列車のみの運行で亀山と加茂では必ず乗り換えが必要になります。
桑名の手前で、列車は一気に3本の大きな川を跨ぎます。「木曽川」「長良川」(「揖斐川」通称”木曽三川”)と呼ばれ、木曽川と長良川の間には「ナガシマスパーランド」や「なばなの里」等の観光レジャー施設が集結しています。
近鉄の線路とは何度も近づいたり交差したりを繰り返します。JRの方は単線ですが、近鉄は複線で流石大手私鉄という感じがします。
四日市は、県庁所在地の津をも凌ぐ三重県の主要都市の一つ。JRの駅と近鉄の駅はやや離れており、JRの駅の方が海に近いため車窓からコンビナート群を望むことができます。広大な駅構内はまさに昔からの光景という感じですが、街の中心はJRではなく近鉄の駅の方になっています。
四日市を出てすぐの河原田を通過すると、線路が二手に分かれています。片方は引き続きJR関西本線で亀山方面へと向かうもの、もう片方は第三セクターの伊勢鉄道へと向かうものです。この先の津、および鳥羽・新宮方面へはJRでも線路が繋がっているものの、亀山経由では遠回りとなる上に亀山駅で列車の進行方向を変えなければならなくなるため、特急〔南紀〕および快速〔みえ〕は全列車が伊勢鉄道経由で運行されています。
伊勢鉄道は1973年に国鉄伊勢線として開業し、その後1987年の国鉄分割民営化直前に第三セクターへと転換された路線。関西本線・紀勢本線等と比べるとまだ新しく、ほぼ全線が高架になっていて車窓も抜群に良いです。
今回使用している「出札補充券」の経路では、この伊勢鉄道を「通過連絡運輸」として経路に組み込んでいます。今回は「JRの在来線昼行特急を乗り継ぐ最長ルート」ではありますが、この通過連絡運輸の規定に従い途中に定められた私鉄・第三セクター鉄道等を1社のみ組み込むことができるため、ここで利用することにしました。
なお直通運転が多く、JRと一体的に扱われることの多い伊勢鉄道ですが、運賃体系は別となっているため、ちょうどこの伊勢鉄道線内を走行中に検札がありました。河原田~津駅間の運賃は520円で、乗車券券面にてこれが確認できない場合には車内精算が必要となるようです。
名古屋を出て約1時間、10:59に列車は津へと到着。三重県の県庁所在地であると同時に「日本一短い駅名」としても有名です。
列車はここ津から再びJR東海へと戻り、いよいよ紀勢本線へと入ります。津駅ではJRと近鉄で駅構内が一体となっており、発車間際に「JRの特急列車です、近鉄線ではございませんのでご注意ください」というアナウンスも入っていました。
津を発車した先の高茶屋付近には「イオンモール津南」があります。「津南(つなん)→新潟県では!?」と一瞬思いましたが、どうやら「つみなみ」と読むそうです。
ここで少し早いですが、お腹が空いたのでお昼ご飯。松阪の有名な駅弁屋さん「駅弁のあら竹」さんの「黒毛和牛牛めし」(1,500円)です!
この駅弁は乗車前に名古屋で購入したわけではなく、事前に電話をして「積み込み」をしていただいたもの。前もって乗車する列車・号車と購入したいお弁当を電話で伝えておくと、松阪駅でのわずかな停車時間の間にスタッフの方が乗車口まで駅弁を届けてくれるとってもありがたいサービスです。2年前の「JR東海最長片道切符」の際にもこのサービスを利用して駅弁を購入したところ感動的な美味しさで、今回もお願いすることにしました。
当日朝の電話でしたが快く対応していただき、しかも何と出来立てアツアツを届けてくださいました! 赤ワインで柔らかく煮込んだ牛肉はご飯との相性抜群で、気がついたら完食してました。本当に美味しかったです!
11:28には多気へと到着。ここからは伊勢市・鳥羽方面へと向かう参宮線が分岐していきます。また津方面からの普通・快速列車の多くが参宮線方面へと発車していくため、このさき〔南紀〕が通るルートは一気に列車本数が少なくなります。近鉄も伊勢志摩方面へと向かう線路のみですので、これより先は並走したり交差したりすることもありません。
多気を過ぎると列車は険しい山の中を進んでいきます。トンネルも多く、川の流れに沿う様にくねくねと進むためあまりスピードを出すことはありません。
特に梅ケ谷駅付近の峠越え区間は「紀州への玄関口」とも呼ばれるそうで、現在は山を貫く直線的な長いトンネルによって難なく通りすぎていきます。
険しい地形ですがその分車窓は美しく、早くも夏の訪れすら感じさせるほど青々とした木々が車窓に映ります。
紀伊長島駅手前では、少しですが海も見えます! 何とものどかな港町という雰囲気がしてとても良いものです。
紀伊長島駅は紀北町の中心駅。先ほど桑名付近でも「長島」という地名がありましたが、あちらと関係はあるのでしょうか…? 同一県内に全く関係のない「長島」が2つあるとしたらかなりややこしい気がします。
その先は少し海が見えたり、また山に入ったりを繰り返します。「NAGASHIMA SHIP YARD」という文字が見えますが、あれは造船所か何かでしょうか。
尾鷲から少し進んだ「新鹿(あたしか)」という駅の近くでは、車窓左手に美しい砂浜も見えました。透き通るような青い海と白い砂浜の美しさは列車内からでもはっきりと分かるほどで、私を含め多くの乗客が窓越しにカメラを向けていました。
そんな景色に見とれていると、次が新宮とのこと。「やっとか」と「あっという間だったなぁ」という2つの思いが入り混じります。
熊野川を渡ると、ようやく三重県を脱出。逆に言えば桑名よりも手前の木曽川の辺りから実に3時間以上かけて三重県を縦断してきましたので、その大きさを実感せずにはいられません。
列車は定刻通り、13:37に新宮駅へと到着。ここで列車を降りていくことにします。
次の終点・紀伊勝浦へ向け発車する列車をお見送り。以前修学旅行でも利用した思い入れのある特急車両ですので、少しでも長く活躍してほしいものです。
さて、新宮駅は約半年ぶり5回目の訪問。熊野三山への玄関口ともなる街で、いわば「世界遺産の街」というわけです。南国感漂う駅前はいつ来ても暑いイメージがあり、特に昨晩の松本駅(長野県)と比べると寒暖差で体がおかしくなりそうです。
また、新宮といえば長距離路線バス「八木新宮線」の終点でもあります。ここから和歌山県・奈良県の山の中を通って近鉄線の大和八木駅まで路線バスが繋がっていると思うと、改めて凄いことだと感じます。
熊野三山とは「熊野本宮大社」「熊野那智大社」「熊野速玉大社」の3つを総称した言い方で、全てまとめて「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界文化遺産に登録されています。この3つの中で最もマイナーでありながら駅から圧倒的に近いのが速玉大社で、新宮駅から徒歩わずか20分程度で着いてしまいます。8年前に一度来訪しているはずですが、ほとんど記憶がないため今回空き時間を使って無事再履修することができました。
また、駅に戻ってきたところであまりにも暑くて溶けそうだったので那智黒ソフトを購入。名物の那智黒飴をたっぷり練り込んだソフトクリームで、独特のこってりとした甘さを味わうことができます!
さて、ここからは紀伊半島一周後半戦。乗車するのは、新宮15:04発の特急〔くろしお30号〕新大阪行です。
新宮駅の改札口付近には、GWらしく指定席の発売状況を掲示するホワイトボードも。くろしお号のグリーン車が混雑しているようですが、普通車であれば名古屋方面・新大阪方面とも余裕はあるようです。むしろその先の新幹線の方が混雑は激しい…?
改札口を入ると、先ほど〔南紀〕を降りたのと同じ1番線ホームに列車が停車中。新宮駅は〔くろしお〕の始発駅となっています。
ここからはJR西日本へと入り、キリっとした目が印象的な287系特急電車へと乗り込みます。
車内はJR西日本のごく一般的な仕様。新宮駅を発車する時点では6両編成で、前から順に6号車、5号車…となっています。終点の新大阪まで乗車していきます。
定刻通りに新宮駅を発車すると、すぐに車窓左手には広大な海が!!
線形が良くないのか、単線だからなのか分かりませんが、比較的ゆっくりと走るため雄大な車窓をじっくり眺め続けることができます。
〔くろしお〕は全車指定席。かつては自由席もありましたが、今年の春に廃止されました。改正後初の繁忙期ということもあってか、車内アナウンスでもこの列車が全車指定席である旨を繰り返しアナウンスしていました。新大阪までは何と4時間以上もかかります。
途中停車駅は紀伊勝浦、太地、古座、串本、周参見、白浜、紀伊田辺、御坊、海南、和歌山、日根野、天王寺です。新宮~紀伊勝浦駅間のみ〔南紀〕と〔くろしお〕の運行区間が重複していますが、JR東海からJR西日本へと切り替わるのは先ほどの新宮駅です。
紀勢本線自体は亀山から紀伊半島をぐるっと一周して和歌山(市)へ至る路線ですが、JR西日本区間は「きのくに線」という愛称が付けられています。このきのくに線の魅力といえば長い区間に渡って続くオーシャンビューで、その美しさは〔南紀〕の車窓から眺めるもの以上の感動があります。
湾の形や岩場の質感等も駅間によって様々で、実に変化に富んでおり見ていて飽きません。あっという間に時間が過ぎていきます。
15:57に串本駅へと到着。ここ串本は本州最南端の駅となっており、近くには台風のニュースでもよく耳にする「潮岬」があります。
周参見駅の駅前には、津波発生時の避難施設がありました。海に面する街ですから、いざという時の備えも欠かせません。
16:50に白浜駅へと到着。観光の拠点ともなっているこの駅からは多くの乗車があり、あわせて前方に3両増結しここからは堂々9両編成で新大阪へと向かっていくことになります。なお、連結面の通り抜けはできないようなので乗車する際は注意しましょう。
白浜を出てからも、引き続き美しい海岸沿いを走っていきます。時折内陸へと入る瞬間はあるものの、ちょうどこの時間帯だと太陽が傾きつつある時間帯でこれまた美しいものがあります。
印南町の風早海岸付近を最後にオーシャンビューとも分かれ、気づけば海南駅へと到着。ここまで来ればもう和歌山の市街地はすぐそこです。
海南駅周辺はかなり建物も多く、久しぶりに街へとやってきた実感が湧いてきます。
18:18に和歌山駅へと到着。考えてみれば新宮駅を出てから早3時間以上、それでもまだ抜け出せないとは…和歌山県もかなりの大きさであると実感します。
和歌山駅で紀勢本線は終わり、ここからは阪和線へと入っていきます。
和歌山駅からはかなりの乗車があり、車内は満席に近い状態へ。連休中の需要というよりは、日頃から阪和線内のみでの〔くろしお〕のニーズがかなりあるということなのでしょう。時間帯によっては和歌山~新大阪駅間のみでの〔くろしお〕も運行されているようなので頷けます。
大阪府内に入り、日根野を出ると高架区間が多め。列車本数の多い阪和線ですが、猛烈なスピードで各駅を通過していきます。あっという間に車窓左手にはあべのハルカスが見えてきました。
新宮駅を出て約4時間、19:03に天王寺駅へと到着。かつての優等列車はここが終点でしたが、現在はこの先大阪環状線へと直通します。
大阪環状線へと入ると、新今宮、今宮、芦原橋…と各駅をゆっくり通過。そして大阪駅へ入る直前で…何と分岐し、貨物線へと入っていってしまいました。西日本最大級のターミナル駅であるはずの大阪駅を横目に颯爽と通過してしまいます。
実は〔くろしお〕や〔はるか〕といった阪和線方面からの特急列車は、大阪駅を通ることなく新大阪方面へと抜けることのできる「梅田貨物線」を通るルートで運行されています。大阪駅の北側に広がる広大な鉄道用地の端をかすめるような形なので車窓をじっくり見ていれば大阪駅の大屋根も見えるほど近く、来る2023年にはこちらの梅田貨物線上にも大阪駅の旅客ホームが開業する予定になっています。
そんなわけで無事に(?)大阪駅を神回避したところで、定刻通り19:20に終点の新大阪駅へと到着。2日目の移動はここまでです。
#特急リレー最長片道切符の旅 pic.twitter.com/lcqXcz6EjQ
— わたかわ (@e235yokoso) 2022年5月2日
新大阪駅では多数のフォロワーさんにお出迎えいただき、夕食もご一緒させていただきました!
いもたけくん(@imotake_com10)をはじめ、駆けつけてくださったみなさん本当にありがとうございました!!
2日目の宿は「ホテルリブマックス大阪淀屋橋」。淀屋橋と本町の中間地点にあり、じゃらんクーポンを利用して何と1泊2,100円で泊まることができました。
ここまでに頂いた差し入れ(これでも一部です!)をつまみながらホテルで過ごす、この時間が長旅の疲れを癒してくれるものです。
今回はここまで。
次回は3日目の様子をお届けしていきます。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。