わたかわ 鉄道&旅行ブログ

乗り鉄&旅好きの20代男子が全国を巡る!

【22年ぶり】中央線に蘇った座席夜行…E257系特急アルプス号の旅[新宿→白馬]

 

2024年7月12日(金)

今回は新宿駅へとやってきました。時刻は23時を過ぎ、駅周辺は家路を急ぐ人々が行き交います。

現在の新宿の気温は23℃、ここ数日ではやや涼しめといったところでしょうか。

新宿駅に隣接するバスターミナル「バスタ新宿」からは、各方面へ向かう夜行バスが発着しています。三連休前夜とあって満席の便も多数、ロビーは多くの人でごった返しており大変な混雑です。

今や「夜行」といえばすなわち「夜行バス」と同義であるというくらいには、夜間の移動手段として高速バスが一般的な時代になりました。一方で、鉄道においてもかつては「夜行列車」が全国各地へ運行網を張り巡らせ、人々の夜間の移動需要をがっちりと支えていたものです。

寝台列車」とは別に座席夜行列車もかつては多数運行されていましたが、これらは次々に廃止され、現在日本国内で定期運行されているものは1本もありません。「ムーンライト」シリーズの最後の生き残りであった、東海道本線の夜行快速「ムーンライトながら」も2020年春の臨時運行をもって運行を完全に終了する形となりました。

しかし、今夜の新宿駅はいつもと一味違います。

コンコース上の発車標を見ると、そこには「特急 アルプス」の文字が!!!

かつて国鉄・JRは、東京都内と篠ノ井線大糸線方面を結ぶ夜行列車を多数設定していました。夏は登山やハイキング、冬はスキーの需要がとても大きく、その中央本線の夜行列車の歴史は1948年に運行を開始した臨時夜行準急2403・2404列車から始まります。この列車はその後定期列車化され、1951年に準急〔アルプス〕命名されました。中央本線優等列車において列車名が付与されるのはこれが初のことです。

1960年には急行〔アルプス〕へと格上げされ、その後中央本線では様々な愛称の特急・急行列車が運行されるようになります。様々な列車名の統廃合が進む中でも急行〔アルプス〕は生き残ってきたものの、ついに時代の流れには逆らえず2002年に廃止となりました。後継列車としては快速〔ムーンライト信州が運行されていましたが、これも2018年を最後に設定取りやめとなっています。

多くの鉄道ファンが待ち構える中、新宿駅7番線に颯爽と姿を現したのはE257系2000番台(9両編成)。かつて「0番台」として2001年から中央本線の特急〔あずさ〕〔かいじ〕で運用され、2020年からは塗装や仕様を変更し東海道本線の特急〔踊り子〕として使用されています。

通常〔踊り子〕として使用される時には伊豆急下田方を1号車として4号車がグリーン車となっていますが、今回は号車番号が通常と逆向きに振られており、白馬方の先頭が9号車となっているためグリーン車は6号車です。

前面・側面ともに表示器は「特急」の文字のみで、「アルプス」の表記はありません。やや残念ではありますが、臨時列車ゆえ致し方ないことでしょう。

本日は昼頃に大月~初狩駅間で鉄道施設火災があり、この時間帯でもなお中央線のダイヤの乱れは続いていました。そんな中でも特急〔アルプス〕は運休になることなく、無事に新宿駅を発車できそうです。

youtu.be

23時58分、列車は時刻通りに新宿駅を発車。特急ホームの9・10番線ではなく、7番線ホームからの発車となりました。

発車間際には普通車で直前キャンセルが発生したことがSNS上でもつぶやかれていましたが、車内放送では「全て発売済み、満席」とのこと。案の定パッと周りを見た限りでは空席はなさそうで、その大半は鉄道ファンです。

途中停車駅は立川、八王子、松本、信濃大町のみ。かつて〔ムーンライト信州〕は深夜帯の山梨県内でもこまめに客扱い停車をしていましたが、今回はないようです。

まずは中央本線複々線区間を直線的に走行していきます。0時過ぎなのでまだ快速線緩行線とも列車の運行があり、前の列車に追いつかないようゆっくりとした走行になります。

客室内に設置された表示器は号車の表示のみで、指定席・自由席のいずれも点灯することはなく、また文字のスクロールも一切ありません。なお当然ながら、今回の特急〔アルプス〕は全車指定席です。

0時33分、立川駅に到着。降りる人がいないのはもちろんのこと、新宿を出る時点で既にほぼ満席ですので乗る人もほぼいませんでした。

ホーム上では列車を待っている人の姿が多数ありますが、これは特急〔アルプス〕の約3分後にやってくる高尾行の最終列車を待っている人と思われます。

続いて、0時43分に八王子駅へ到着。八王子を出ると翌朝の松本までドアが開かないため、「次の停車駅は松本です!! ご注意ください」と繰り返し注意喚起のアナウンスが流れていました。

八王子を出た後、0時51分頃、車内の照明が落とされました。かつての「ムーンライト」シリーズの座席夜行列車等では、防犯上等の観点から一晩中車内は明るいままだったと記憶していますので、今回こうした対応が行われたのは少し驚きです。なお完全に真っ暗ということではなく、一部の明かりはついたままです。

1時過ぎ、ようやく車内検札が回ってきました。近頃では車内検札を行う列車は極めて少なく、また感染症の影響もあって入鋏印を押されることも極めて稀でしたので、こうした細かなサービスからも往年の座席夜行列車らしさをくみ取ることができます。

なお新宿~白馬駅間の特急料金はA特急料金が適用されます。300キロまでのA特急料金は通常2,950円で、7月12日は繁忙期につき+200円となるため3,150円になっています。同区間で特急〔あずさ〕を利用した場合の2,550円(通年同額)と比較すると少し割高になっています。

高尾を過ぎると列車の運行はなくなります。山の中を走行するため窓の外から差し込む光もほぼなく、いよいよ非日常感が高まってきました。

1時25分頃、大月駅を通過。運転停車さえしていませんでしたので一瞬の通過でしたが、ホーム上の明かりはつけたままであることがはっきりと確認できました。全ての通過駅で明かりがついたままかどうかは不明ですが、てっきり深夜帯はどの駅の照明も落とされるものだと思っていたので驚きました。

2時15分頃、列車は甲府駅に到着。ここでは約15分間の運転停車が行われます。

新宿を出てから初めての長時間停車となるのがここ甲府駅。ここでもやはりホーム上の照明は灯っています。ただし改札口はおそらく閉まっているはずで、この点はムーンライト信州の頃と異なる部分でしょう。

2時30分頃に甲府駅を発車。お客さんの多くがお休みになられています。

3時18分頃、富士見駅に到着。いよいよ長野県に入り、ここで2回目の運転停車となります。

富士見駅では何と約53分間の運転停車を行います。さすがにホーム上の明かりも一部を除きほぼ落とされているようでした。ここで時間調整を行うことで、松本に到着する時刻が朝早すぎないように調整する役割もあるのでしょう。

4時11分頃、富士見駅を発車。車内はまだ減光されたままで、お客さんの多くはお休みになられています。

このまま松本まで一気に…といきたいところですが、4時25分に上諏訪駅へ到着。ここで3回目の運転停車となります。

上諏訪駅の手前、および停車中には反対側の線路を回送列車(E353系)が何本も新宿へ向け走っていきました。これはおそらく午前中の新宿発下り特急列車に充当される編成で、三連休初日の午前中で特急が増発されていることもあり、数分間隔で次々と回送されていくのが見えました。

窓の外に目をやると、まだ薄暗いものの次第に明るくなってきていることがよく分かります。朝はもうすぐそこまできているようです。

4時37分頃、上諏訪駅を発車。なお上諏訪駅の初電は下り5時40分発、上り6時04分発ですのでいずれもまだ1時間以上先となります。

上諏訪駅の手前から岡谷駅までは単線区間ですが、上諏訪駅で時間調整をしっかりと行ったことでその先は快調な走りを見せてくれます。

中央東線中央西線が合流する塩尻駅を通過し、ここから先は篠ノ井線へと入ります。

5時03分、松本駅に到着。八王子駅以来、約4時間20分ぶりの客扱い停車です!

停車時間が7分ほどあるため、私を含め鉄道ファンの方が多数車外へ出られていました。撮影目的のほか、長時間の乗車で凝り固まった体をほぐす目的もあったことでしょう。

松本駅の発車標には、何とE257系2000番台のドット絵が表示されています!

松本駅にE257系がいること、これ自体はかつて毎日の光景でしたからそれほど珍しいというわけでもありません。改造され武田菱ではなくペニンシュラブルーのE257系が、しかも夜行列車として松本駅にやってきていることが凄いことなのです。

すっかり明るくなった朝の松本駅からは、この特急〔アルプス〕からの接続を取る形で臨時列車が運行されています。松本電鉄上高地線は通常松本6時31分発が始発ですが、それよりも早い松本5時10分発の臨時快速を設定しました。上高地線の終点である新島々駅からは上高地・平湯方面へのバスが出ており、乗り継ぐことで朝早い時間から現地入りすることができる設定です。

時を同じくして、こちら特急〔アルプス〕も5時10分に松本駅を発車。ここで篠ノ井線と分かれ、大糸線に入ります。

松本駅の手前で車内の照明も再びつき、ここから先の車内は起きている方が多数といった状況になりました。

車内販売の営業はありませんので、夜のうちに新宿駅構内のNewDaysで買っておいたパンを食べます。新宿駅コンコース内のNewDaysは特急〔アルプス〕の発車間際でも普通に営業しているので有難い限りです。

5時38分頃、信濃松川駅に到着。通算4回目となる運転停車です。ここで上下列車の行き違いのため5分間ほど停車しました。

豊科駅・穂高駅は通常の特急〔あずさ〕であれば停車しますが、今回の特急〔アルプス〕は通過となっています。

5時52分、信濃大町駅に到着。ここは客扱いの停車を行います。

信濃大町駅は、室堂・立山方面へと続く「立山黒部アルペンルート」の玄関口の駅の一つ。ここで下車すると、ちょうど信濃大町駅6時15分発の扇沢行のバスへ乗り継ぐことができ、東京を始発の新幹線で出発するよりも早い時間からアルペンルート横断へ出かけることができます。

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実際に鉄道ファンの方、そうでない方を含めこの特急〔アルプス〕を信濃大町駅で降りてアルペンルートに入った方はかなりの数がいらっしゃったようで、この特急〔アルプス〕がそうした集客に一定の成果を上げたことは間違いないでしょう。

信濃大町駅を発車し、その先信濃木崎駅を通過すると左手には木崎湖が見えてきます。雲がたちこめ、その雲が湖面に反射する様子は幻想的です。

松本・信濃大町で一定の方が降りていかれましたので、車内には少し余裕があります。窓側・通路側を問わずあちこちに空席が見られる状態です。

白馬駅はもう目と鼻の先…! というところですが、6時21分頃に神城駅で5回目の運転停車。ここでも普通列車との行き違いを行います。

手前の南神城駅付近で動物が発生したのか、少しの間徐行運転をしている時間があり、どうも少し遅れて神城駅に到着しているようです。

6時29分頃、定刻(6時22分着予定)よりも7分ほど遅れて終点の白馬駅に到着!

新宿駅からの約6時間半の夜行列車の旅となりました。

やはり乗客の割合としては終点白馬まで乗り通した方が多いようで、皆様ぞろぞろと降りていかれます。

白馬駅から先はいくつも乗り継ぐルートがあり、引き続き大糸線に乗って南小谷糸魚川方面に抜けるほかバスに乗り換えて猿倉・栂池方面に乗り継いだり、長野駅方面へ抜けたりすることができます。

特急〔アルプス〕は8月・9月も運行が予定されており、今回と同様に特急券は争奪戦となることが予想されます。運行日は新宿発時点で8月9日・9月13日・9月20日ですので、乗車される方は是非!

 

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。