わたかわ 鉄道&旅行ブログ

乗り鉄&旅好きの20代男子が全国を巡る!

【過酷】東京都内→長野を乗り換えなしで結ぶ普通列車「高尾発長野行」全区間乗車

 

2022年9月9日(金)

今回やってきたのは、中央線の高尾駅。東京都西部に位置する駅で、高尾山への玄関口として知られるほか、東京23区内でも「高尾行」という文字を見る機会はかなり多いと思います。

今回はこの高尾駅から、1日1本限定で運行されている超ロングラン列車へと乗車していきます。

中央線のロングランと聞いて、特急「あずさ」を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。もちろん特急なのでロングランといえばそれはそうなのですが、実はこの高尾駅に特急は1本も停車しません

 

…もう分かりますね…?

 

そう、今回はここ高尾始発で運行される地獄のロングラン普通列車に全区間乗車していくことになります。何てこったい…。

というわけで乗車するのは、高尾14時09分発の中央本線 長野行です。

高尾駅を始発として運行される中央本線の下り列車といえば、よく聞く行先は「大月」「甲府」「小淵沢」「松本」等々。松本でもかなりのロングランですが、今回はそれよりもさらに先へ向かう列車に乗車していくことになります。

いくら自然豊かな高尾といえど、東京は東京です。上り列車は揃いも揃ってみんな東京行、目の前のホームに停車している車両は首都圏のJRを象徴するオレンジ色のE233系。ましてや京王線ホームへの行き方まで示されているような駅から、まさかあの「長野」行の普通列車が発車していくなんて、まさかそんなことあるわけ…

あった。

 

本当に、高尾駅で「長野」の方向幕を掲げる車両があった…。

どうやら幻ではなかったみたいです。

使用される車両はJR東日本211系。今回の列車は6両編成となります。オレンジ色の中央線のイメージとは大きく異なり、路線図等で使用されるラインカラーもオレンジではなく青っぽい色になります。

車内はロングシートのみで、平日昼間の割にはそこそこ混雑しているように見えます。中央本線の211系にはボックスシートを主体とした編成も存在しますが、数が少ないのか今回のようなロングシート編成の方を引き当てる確率の方が圧倒的に高いです。

高尾~長野駅間の距離は245.0キロ。これは東海道本線の東京~磐田駅間に匹敵します。そして所要時間は驚異の4時間44分。発車前からその数字の並びの不吉さに恐怖を覚えます。

14時09分、列車は定刻通りに高尾駅を発車。右に見えるのは京王高尾線高尾山口方面です。

高尾を発車するとすぐに県境を跨ぎ、東京都を抜け出して神奈川県へと入ります。最初の途中駅は相模湖駅で、高尾~相模湖駅間は何と9.5キロも離れています。

大変な長距離を走るこの普通列車ですが、相模湖や藤野でもかなりの数の人が下車していき、車内は早くもガラガラになりました。

上野原駅からは、いよいよ長い山梨県へと入ります。まだ何とか、東京都内への通勤客はいないこともないといった距離でしょうか。

四方津駅の駅前からは長いエスカレーターが山の頂上へとのびています。これは「コモアしおつ」と呼ばれるニュータウンへ続いているらしく、一度行ってみたいと思い気になっています。

まだ高尾を発車して30分程度ですが、辺りには大自然が広がります。ちなみに東京駅を発車する”オレンジ色の中央線”の一部は大月駅やその先の河口湖駅へと直通していますので、都会で見慣れたあの通勤車両はこんな大自然の中も走っているということになります。

14時44分、列車は大月駅に到着。富士急行線が分岐する主要駅で、富士山・河口湖方面への玄関口となっています。

ちょうど反対側のホームからは新宿行の特急が発車。特急いいなぁ…快適そうだなぁ…。

しかしそんな思いも虚しく、すぐに大月駅を発車。まだまだ長野までの旅は序章にすぎません。

大月の次の初狩駅は、かつてスイッチバック構造でした。しかし1968年にホームの位置が現在の場所となり、その構造は解消。駅舎(1951年完成)がホームから大きく離れているのはそのためで、ここも一度降りてみたい駅の一つです。

15時04分、列車は甲斐大和駅に到着。ここでは8分間ほど停車があり、後続の特急〔あずさ29号〕を待避します。

トンネルとトンネルに挟まれたこの駅、かつては「初鹿野(はじかの)」という駅名でした。1993年に現在の「甲斐大和」へと改められましたが、現在も「甲州市大和町初鹿野」としてその地名が残っています。

15時12分甲斐大和駅を発車。車窓からは中央自動車道も見えます。中央本線・中央道ともに山あいをくねくねと走ることが特徴で、東海道本線東名高速道路と比較するとその差は歴然です。

勝沼ぶどう郷駅を発車すると、車窓左手には広大な甲府盆地を見渡すことができます。この景色が見えると、いよいよ甲府が近づいてきたという感じです。

春日居町のホームには「日本一の桃源郷」と書かれた看板がありました。桃源郷とは俗世を離れた別世界のような意味合いですが、確かに私が今目指しているのは「過酷な直通列車を乗り通した先に待っている長野」というある意味での別世界なのかもしれません(何を言っているのかよく分からない)。

酒折を出ると、車窓左手から身延線が合流。ぴったりと並走するように走っていますが、その途中の金手駅に中央本線の列車は停車しません。

15時42分、列車は甲府駅へと到着。全ての列車が停車する、山梨県の県庁所在地です。

特急〔かいじ〕の終点でもありますので、通常東京都内からであればほとんどの人が特急を利用するくらいの距離は移動してきました。高尾駅を出てから1時間30分程度ですが、まだ全区間の半分も来ていません。というかよく考えたら、高尾~長野駅間って〔かいじ〕どころか〔あずさ〕の新宿~松本駅間よりも長いらしく、、、、戦慄ものです。

列車はすぐに甲府駅を発車。ここで多数の乗車があり、再び乗車率は高尾駅発車時と同じくらいになりました。

雲が多くて分かりにくいですが、目の前には大きな山が見えています。方角的に赤岳ではなさそうで、地図を見てみると山梨県と長野県の県境に位置する「金峰山」だそうです(間違っていたらすみません)。

一部の特急も停車する韮崎駅勝沼ぶどう郷から続いてきた、甲府盆地らしい景色はこの辺りまでとなります。

韮崎のほか日野春で少しずつ乗降がありつつ、車内は次第に空いていきます。長坂駅は、かつて運行されていた急行〔アルプス〕の停車駅を踏襲するかたちで特急〔あずさ〕が1日上下1本ずつ停車していましたが、2017年のダイヤ改正でそれもなくなり、今では普通列車のみが停車する駅となりました。

16時22分、列車は小淵沢駅へと到着。上野原から長く続いた、山梨県内最後の駅です。3分ほどの停車時間があったため、車外に出て伸びをするくらいの余裕はありました。

ここまでご覧いただいてお分かりかと思いますが、実はこの「高尾発長野行」ってまともな長時間停車がほとんどないんです。せいぜい甲斐大和での8分間の停車時間くらいのもので、これ以外は長くても2~3分程度。特に中央本線内はほとんど全線複線化されていることもあり、普通列車としての表定速度はかなり高そうです。

信濃境からは終点の長野までずっと長野県内を走ります。ホーム上にはかなり年季の入った駅名標が残されていました。

富士見の辺りなどはウトウトしておりましたが、気づけば茅野駅に到着。特に他の路線との接続はありませんが、全ての特急が停車する主要駅です。ここ数年は停車駅の変遷が目まぐるしい中央線特急ですが、最近みどりの窓口が廃止されたことでも話題の茅野はいつまで「全列車停車」を堅持し続けられるかも気になるところです。

16時52分に上諏訪駅へと到着。ホーム上に足湯があることでも有名な駅ですが、ここでは発車が定刻よりも4分ほど遅れることになりました。実はこの辺りは特急が通る幹線でありながら単線区間となっており、ここ上諏訪では特急列車との行き違いを行わなければなりません。しかしその上りの特急列車が遅れていたためこちらの発車も遅れることとなりました。

茅野や上諏訪といった主要駅を次々に通り、車内はかなり混雑。特に夕方の時間帯に差し掛かってきたこともあり、乗客の多くを占めるのは帰宅する高校生です。あまりの混雑ぶりに、車内の様子を写すことも儘ならないほどです。

17時06分頃(定刻+4)に岡谷駅へ到着。接続する17時08分発の快速〔みすず〕飯田行へは何とか間に合い、接続を取るようです。

岡谷駅を発車すると、線路が二手に分かれます。しかしどちらも中央本線で、どちらを通っても塩尻方面へは行くことができます。

長らく中央本線は辰野経由で岡谷~塩尻駅間をU字に結ぶルートでしたが、1983年に短絡ルートとしてみどり湖経由の新線が開業。旧線も廃止されることなく今日まで営業が続けられていますが、特急列車・普通列車ともほとんどが新線経由での運行になっています。今回乗車している普通列車も御多分に洩れずみどり湖経由での運行となります。

長い塩嶺トンネルを抜け、みどり湖駅を出るとまもなく塩尻が近づいてきます。高尾駅を発車してから実に約3時間、半分は過ぎましたがまだまだ先は短くありません。

そして列車は塩尻駅へと到着。回復運転のおかげで、少しは遅れ時分が縮まったようです。

JR東日本JR東海分水嶺にあたるこの塩尻駅。これより先も中央本線は名古屋方面へと続きますが、この列車は中央本線を離れ、この先は篠ノ井線へと入っていきます。

引き続き時間帯もあってか車内は相当な混雑で、途中の各駅での乗降も多くありました。山あいを抜けて比較的線形もよく、列車はかなりのスピードで飛ばしていきます。

17時31分、列車は松本駅へと到着。ここで完全に遅れを回復し、定刻での到着となりました。

松本駅篠ノ井線のほか大糸線松本電鉄上高地線が乗り入れる長野県中部最大のターミナル駅。各方面からの普通列車でもここを始発・終着としているケースがかなり多く、また特急〔あずさ〕ほぼ全列車の始発・終着駅となっています。

しかし私がここで降りるわけなどありません。まだまだ終点へはあと1時間以上かかります。ほとんど全ての乗客が入れ替わったところで、列車は定刻通りに松本駅を発車していきます。

こちらはがんか…ではなく明科駅。9月ですが次第に空が暗くなってきました。

そして冠着を過ぎると、まもなく次の姨捨へと到着します。日本三大車窓の一つとしても知られる姨捨の夜景にちょうど照準を合わせたかのような運行時間でしたので、外を見てみると…!

ベストタイミングでした!

あいにく雲は多かったですが、姨捨の棚田とともに善光寺平の夜景を一望することができました。思えば高尾駅を出る時点では真っ昼間であったことを思うと、いかに長い時間この列車に乗っているかを実感します。

なお、スイッチバック構造をじっくりと観察したい場合は、明るい時間帯の列車に乗られることをオススメします。

このあと桑ノ原信号場という場所では名古屋行の特急〔しなの〕との行き違いのため、再びスイッチバックを行いました。

数々のトンネルや山々を抜けて、18時31分に篠ノ井駅へと到着。篠ノ井線はここまでで、この先わずかな区間のみ厳密には「信越本線」へと入ることになります。かつては高崎~長野~新潟を結ぶ長大な幹線であった信越本線は、1997年の長野新幹線開業時に横川~軽井沢駅間が廃止され、軽井沢~篠ノ井駅間は経営分離されて「しなの鉄道」へと移管されました。その後2015年の北陸新幹線金沢開業時に長野以北が経営分離されましたが、間に挟まれた篠ノ井長野駅間は今でも「信越本線」ということになっています。

高尾駅から揺られ続けること実に4時間44分、18時53分にようやく終点の長野駅へと到着です!!!

いや~、長かった。本当に長かった。

ちなみに計算してみると、この列車の表定速度は245km÷4.73h≒約52km/h。実は何とこれ、京急快特とほぼ同水準なのです。そう考えるとかなりのスピードであることが窺えると思います。

いくら「東京都内から長野まで直通!」とは言ってもあまりに時間がかかりすぎますから、普通に長野へおでかけの際は是非とも新幹線をオススメしたいところですが、興味のある方は是非乗り通してみてください!

 

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。