2022年8月4日(木)
今回やってきたのは、神奈川県川崎市にある小田急線の新百合ヶ丘駅。東西に長い川崎市において、その西側でひときわ大きなターミナル駅です。
新宿~小田原駅間を結ぶ小田急小田原線の主要な途中駅であるほか、ここから多摩センター・唐木田方面へと繋がる小田急多摩線も分岐しており、1日の乗降人員は約9万人にも上ります。将来的には横浜市営地下鉄ブルーラインが現在の終点であるあざみ野からここ新百合ヶ丘まで延伸する計画も存在していたりします。
本日はここ新百合ヶ丘駅から、平日朝7時台に新宿・千代田線方面へと発車していく怒涛の朝ラッシュの模様をお届けしてまいります!
新百合ヶ丘駅は3面6線の構造で、このうち新宿・千代田線方面へと発車していくのは5・6番線のみ。駅自体は大きいですが、その東側では線路が上下1線ずつとなっており、ごく一般的な複線の線路が続きます。2018年に代々木上原~登戸駅間が複々線として開業しましたが、今のところその複々線はここ新百合ヶ丘までは到達していません。
各方面の発車案内が表示された橋上駅舎では、朝早くからたくさんの人が行き交います。こんな大きな駅でも、みなさん慣れた様子で自分の向かう方面のホームへと降りていかれます。
5・6番線ホーム上にある平日の時刻表を確認してみると…恐ろしい本数です。日中でも15本/時が運行され流石はターミナル駅といった様子ですが、朝の時間帯を見てみるとその比ではありません。特にこれから観察する7時台は欄のギリギリまで数字で埋め尽くされており、断トツで多くの列車が運行されていることが分かります。
それもそのはず、新百合ヶ丘駅には何と全種別(快速急行・急行・通勤急行・準急・通勤準急・各駅停車)に加え一部のロマンスカーまで停車するのです(平日朝の上りでは急行・準急の運行なし)。他にこれほど多くの種別が停車する途中駅は存在せず、この新百合ヶ丘駅が小田急線の運行においていかに重要な駅であるかがお分かりいただけることでしょう。
それではちょうど7時になりましたので、これから新百合ヶ丘駅5・6番線ホームを発車していく列車を1時間観察していきたいと思います。
さっそく発車標には7:01発から順に3本の列車が表示。先に7:03発の各駅停車 新宿行が6番線へと入線し、緩急接続を行います。
まず7時台記念すべき1本目、5番線に7:01発の快速急行 新宿行が入線してきました。2021年にデビューした小田急最新の5000形で、キリっとしたフォルムが印象的です。
まだ朝ラッシュのピーク時間帯というほどではありませんが、それでも車内は混雑している模様です。これからどんどんホーム上も車内も混雑していくことでしょう。
驚くべきはこちら。何と7:01発の快速急行のドアが閉まる前から、既に5番線には次の列車の乗車列ができているのです。
これらは全て、次に5番線から発車する7:05発の通勤急行を待つ人の列。快速急行・通勤急行のいずれも新宿まで向かう速達種別のため、停車駅に違いはあれど所要時間はほとんど変わりません。
その快速急行の後を追うように、7:03発の各駅停車 新宿行が6番線から発車。快速急行と比べるとかなり空いており、この時間帯であっても新百合ヶ丘からの着席は容易なようです。
そしてその7:03発の各駅停車がホームから消え去ったかと思えば、すぐに5番線・6番線両方にほぼ同時に列車が入線してきます。5番線は7:05発の通勤急行 新宿行、6番線は千代田線に直通する7:07発の通勤準急 北綾瀬行です。
なぜ複々線でもないのに同時入線が可能かといえば、通勤急行は多摩線方面からやってくる列車であり、通勤急行は小田原線方面からやってくるため。多摩線方面から6番線への入線は不可能なため、この通勤急行をしっかりと5番線に入れることによって列車どうしが間一髪衝突することなくスレスレで入線することができるのです。
どちらにも「通勤」とつくので速そうですが、実際には通勤急行の方が格上。通勤急行のこの先の停車駅は向ケ丘遊園、下北沢、代々木上原のみで、快速急行が停車する登戸を通過するのが大きな特徴です。
短い停車時間の中で相互乗り換えが図られ、特に通勤準急から通勤急行へと乗り換える人がかなり多いように見えました。
7:07発の通勤準急がホームからいなくなる前に、既に隣の5番線には次の7:09発 快速急行 新宿行が入線。ついさっき同じホームから通勤急行が出たばかりのはずですが、この快速急行の方にもたくさんの人が乗車していきます。
そして追われるように7:07発の通勤準急が発車。このように1~2分差で後続の列車がどんどん入線してくるため、5番線と6番線を交互に使いわけてうまく列車を捌いています。
次に5番線側に姿を現したのは、「GSE」の愛称で親しまれている最新型ロマンスカー70000形。秦野を6:30に発車した特急〔モーニングウェイ74号〕新宿行とみられます。町田を7:01に発車した後は新宿までノンストップのため、ここ新百合ヶ丘の5番線を颯爽と通過していきました。
朝夕は県央・県西方面からの着席通勤手段として人気の高いロマンスカーですが、実は新百合ヶ丘駅上りホームに平日朝7時台に停車する便は1本も存在しません。6:24発の次は何と8:50発まで2時間半ほど開き、この間のほとんどの列車が手前の町田駅を最後に新宿までノンストップで運行されているのです。尤も、新百合ヶ丘はロマンスカー停車駅として最も新宿から近い駅にあたりますので、遠近分離の意味もあるのかもしれません。
次に6番線にやってきたのは7:13発の各駅停車 新宿行。先ほどのモーニングウェイ74号に鶴川で道を譲ったものと思われます。各駅停車が6番線に入るということは緩急接続があるのか…!? と思うかもしれませんが、この朝の時間帯にそんな呑気なことをしている暇はありません。乗降終了した列車からどんどん発車させていかないと、2つしかない新百合ヶ丘のホームはすぐに人で溢れかえってしまいます(既に溢れかえっているが)。
そこからほぼ間髪おかずに、続いて7:16発の快速急行 新宿行が姿を現します。
ここまで見てきた中だと、同じ快速急行でも01発と09発は5番線を使用していました。しかしこの16発の快速急行は隣の6番線へと入線しています。
その理由がこちら。直後に7:17発の通勤急行 新宿行が5番線へと入線するためです。
この列車は例によって多摩線からの直通列車ですので、5番線へしか入線することができません。そこで16発の快速急行はいったん6番線へと逃がし、17発の通勤急行が入線できるようにしているのです。
案の定、16発の快速急行がホームからいなくなる前に17発の通勤急行が到着。というか通勤時間帯の2大優等種別が1分差で発車していく光景がそもそも意味不明なんですけどね…。
しかもこれ、快速急行が先行するから成り立つのであって、もし通勤急行が快速急行よりも1分先に発車するようでは次の向ヶ丘遊園ですぐに列車が詰まってしまうに違いありません。本当によくできたダイヤです。
7:17発の通勤急行が無事にドアを閉め、5番線を発車しようとしているまさにその瞬間、画面奥の方からもう1つ迫ってくる列車が…!!
こちらが7:19発の通勤準急 我孫子行です。もちろん5番線からはまだ17発の通勤急行が完全にいなくなっていませんので、隣の6番線へと入ります。千代田線やJR線の車両で運行されるイメージの強い千代田線直通列車ですが、このように小田急線の車両も充当されています。
その19発の通勤準急がまだ6番線にいるというのに、隣の5番線には次の7:21発の快速急行 新宿行が接近。つい数分前に快速急行と通勤急行が立て続けに発車していったというのに、この21発の快速急行を待つ人が既にホーム上にわんさかいるというのは本当に恐ろしいことです。
そして恐ろしいことはさらに続きます。21発の快速急行と同じホームに、後続の7:23発の各駅停車 新宿行を入線させてしまうのです。発車標を見てみると、このあと7:27に通勤急行が入線予定であることが分かります。通勤急行は5番線からしか発車できませんので、ここを基準に逆算していった結果がこの頭のおかしい(褒め言葉)番線振り分けになっているのかもしれません。
続いて7:25発の快速急行 新宿行が6番線に登場。
え…!?!?!?
7:21に快速急行が1本発車していったばかりでは!?!?!?!?
7:21に快速急行が発車した後、わずか4分後にもう1本別の快速急行がやってくるカオスすぎる展開。しかもそのさらに1本後には通勤急行もありますから、これでもかというくらいに優等種別が立て続けに発車していくことになります。
そして7:27発の通勤急行 新宿行が5番線へと入線。多摩線の線路からゆっくりと入ってきます。
快速急行のわずか2分後なのに乗る人なんかいるのか…?と思ってしまいますが、これがたくさんいるんですよ。これだから首都圏の通勤ラッシュは凄まじいと言われるのです。
27発の通勤急行が5番線から完全にいなくなる前に、お隣6番線には7:29発の通勤準急 我孫子行が入線。今度は東京メトロの16000系でやってきました。小田急線内での速達種別に充当されることはあまりありませんが、小田急やJRの車両と異なり東京メトロのフリーWi-Fiサービスを利用できるため、設備面では意外なアタリ車両だったりします。
ここでいったん、発車標を見てみることにします。直近で乗車扱いを行う列車は7:29発と7:32発でいずれも6番線から発車し、その合間に5番線を通過する列車が1本あります。
この情報だけ見てみると「分かる範囲で直近で乗車可能な上り列車は全て6番線から発車」ということになりますので、誰も5番線側には並ばないはずです。しかし上の画像を見ていただければ分かる通り、実際には5番線側にも列ができています。あまりにも列車の運行間隔が短すぎるあまり、このように1本でも合間に通過列車があると発車標に表示できる情報量が減少し、せいぜい5分後に発車する列車でさえ表示できなくなってしまうのです。新百合ヶ丘の発車標が3行はどう考えても少ないです。4~5行あると利便性が一気に増すことでしょう。
今回の「通過」ももちろんロマンスカー。小田原を6:33に発車した特急〔モーニングウェイ76号〕新宿行です。運用車両は日によって異なりますが、この日はEXEαでした。海老名を出ると新宿までノンストップというとんでもない列車で、相模大野にも町田にも停車しません。
その後を追うように、6番線にやってくるのは7:32発の快速急行 新宿行。停車駅はロマンスカーよりも多いですが、実際の所要時間はロマンスカーも快速急行もそれほど大差ないと思います。
観察開始から30分が経過し、かなりホーム上・列車内とも混雑が増してきました。上りの快速急行は、まだ新百合ヶ丘に入線する時点では流石に乗車不能というほどの混雑ではありませんが、しかし号車によっては少し身をよじらせて乗り込む人の姿も見受けられます。新百合ヶ丘の時点でこれですから、この先代々木上原から上りの快速急行に乗り込もうなどできるはずがありません。
続けて5番線側には7:34発の各駅停車 新宿行が入線。発車標を見てみるとこの後の運行間隔は特に過密で、次々発の通勤急行を待つ人が既に相当数5番線側のホームで並んでいるであろうことは想像に難くありません。
後に続いて7:36発の快速急行 新宿行が6番線に入線。もはや快速急行が4~5分間隔で入線することに慣れてしまい、それほど驚きを感じなくなり始めました。7:34発の各駅停車からの乗り換え客がかなり多く、そうした需要を着実に拾っていきます。
快速急行の次の停車駅は登戸ですが、新百合ヶ丘~登戸駅間の途中駅で列車の待避を行うことができるのは向ヶ丘遊園のみ。何と2分先行して新百合ヶ丘を発車した先ほどの各駅停車は、少なくとも向ヶ丘遊園まで逃げ切ることができるのです。
そして見慣れるあまりもはや何も驚かなくなった「快速急行の1分続行で走る通勤急行」。7:37発の通勤急行 新宿行がくねくねと入線してきます。
その後を追うように6番線に入るのは、7:39発の通勤準急 我孫子行。37発の通勤急行のドアが閉まるか閉まらないかの頃には、既にその背後に迫っていました。
7時台20本目を数えるのは、7:41発の快速急行 新宿行。発車標を見てみるとその4分後にも快速急行がやってくることが分かります。
実はこの41発の快速急行が入線する前から、5番線と6番線の両方に快速急行の乗車列ができていました。すなわち、41発の快速急行に間に合うようにホームに降りてきても41発へ乗ることは事実上不可能に近いので、それを諦め45発に確実に乗り込めるよう先回りして並んでおこうという思考がはたらいているものと思われます。
41発と同じホームに、7:43発の各駅停車 新宿行が入線。ここまで発車標を見ていただいて分かる通り、小田急線において新宿を発着する列車はほとんどが10両編成ですが、各駅停車は一部8両編成が混在しています。8両編成の場合は少し手前に停車するため、この時点で10両編成の乗車位置に並んでいる人は確実に次々発の通勤急行を待つ人ということになります。
その合間に、6番線には7:45発の快速急行 新宿行。もはや何本目かすらわからないほどたくさんやってきている快速急行ですが、これまたたくさんの人が乗り込んでいきます。
7:47発の通勤急行 新宿行は多摩線からの列車なので5番線に入線。そろそろ出社時刻に間に合う通勤可能エリアが限られてくるところですが、とりわけ乗客の数が減っているかといえばそんなことはなく、だからこその快速急行&通勤急行の続行運転ともいえるでしょう。
通勤急行の後を追う様に、今度は6番線に7:49発の通勤準急 綾瀬行が入線してきました。綾瀬といってももちろん神奈川県の「駅なし市」の綾瀬ではなく、東京都内にあるそれなりに大きな規模の駅です。実はここでは快速急行の列車間隔が7分と比較的長く空いていることもあってか、5・6番線ともそれほど多くの人が待ち伏せしている様子はありませんでした。
ちょっとでも時間が空いたら、その間を縫ってロマンスカーが通過していきます。7時台3本目のロマンスカーは秦野を7:10に発車した特急〔モーニングウェイ78号〕新宿行。2本目と同じくEXEαが充当されていました。1本前を走る列車が通勤準急(登戸まで各駅に停車)なので、かなり徐行しているようでした。
7時台も終わりに差し掛かっていますが、列車本数は相変わらず多いまま。この後も4分間隔で快速急行が入線してくるようです。
7:52発の快速急行 新宿行は6番線に入線。7分ぶり(?)の快速急行ということもあってか他の列車と比べても混雑が酷いようで、発車間際になっても乗客の手やかばん等がなかなか引っ込みませんでした。
7:54発の各駅停車 新宿行は5番線に入線。この列車は8両編成ということで少しホームを余らせて停車しますが、この後に続く7:56発の快速急行や7:57発の通勤急行へと乗り換えるべく、各駅停車から降りてきた乗客が10両乗車位置へ我先にと並び始める大移動が起こっていました。
そしてそれを待ち構えるかのごとく、7:56発の快速急行 新宿行が6番線へと入線。先頭車両付近でもこの混雑ですから、階段に近い車両などはおそらく阿鼻叫喚でしょう。首都圏の鉄道会社で「少しでも空いている乗車口へおまわりください」というフレーズが飛び交う理由もよく分かります。
その直後、多摩線からやってきた7:57発の通勤急行 新宿行は5番線に入線。ホームを端から端まで見渡してみて、これほど人が多いのにみな点字ブロックの内側で整然と並んでいる光景はさすが日本だなと感じます。
7時台最後の列車は、7:59発の通勤準急 我孫子行。メトロ車でやってきました。この後8:01に快速急行がありますので、そちらへ乗り換える乗客が相当数いるのでしょう。
この通勤準急の発車を見届けて、1時間の観察が無事終了。
ただの複線路線にもかかわらず、何と1時間に29本もの列車が発車していくというとんでもない結果になりました。ロマンスカーの通過を含めれば32本にもなります。
改めて、新百合ヶ丘駅を7時台に発車する列車をまとめると上図の通り。繰り返しになりますが、これが複々線ならまだしも、単なる複線でしかないということを考えれば、いかに頭のおかしい(褒め言葉)本数であるかがよくお分かりいただけるでしょう。際優等種別である快速急行だけで何と1時間に11本も運行されており、それとほぼ同等の役割を果たす通勤急行も含めると新宿への速達手段が何と1時間に17本も存在していることになります。
1時間観察してみて感じたことですが、こんな過密ダイヤであっても流れるように次々列車を捌いていく凄さはもちろんのこと、発車していく列車はほとんどが新宿行ですから、こんな数分間隔で到着する列車を全て受け入れて折り返し運行ができる新宿駅のキャパシティの凄さも実感しました。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。