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2022年5月5日(木)
5月1日に仙台駅からスタートした「特急リレー最長片道切符の旅」。
ここまで数々の在来線特急のみを乗り継いでやってきましたが、いよいよ最終日を迎えることとなりました。
本日のスタートは愛媛県の松山駅。すじ状の雲は出ていますが、最終日の今日も晴れて穏やかな初夏の陽気です。
通算17本目にして今企画のアンカーとしてバトンを繋ぐのは、松山10:18発の特急〔宇和海9号〕宇和島行です。この5日間、ひたすらこの「宇和島」の文字を目指して長距離移動を続けてきましたが、ついにここでその文字を見ることができました。
現在はホーム・駅舎とも全て地上にある松山駅ですが、その背後では着々と高架化工事が進められています。ホームは現在の位置の真上ではなくややずれた位置に設置されるようで、足場等が組まれ太い柱の並ぶ様子がホーム上から確認できます。
松山駅は、岡山・高松方面と宇和島方面を結ぶ特急の接続駅でもあります。
そこで乗客の利便性を考慮し、〔しおかぜ・いしづち〕と〔宇和海〕がどちらも同じ1番線に入線するようになっています。今回は〔宇和海〕の方に乗車するため、改札口を入り左へ進みます。
しばらく待っていると、列車が入線。JR四国の2000系特急気動車が今企画のアンカーを務めます。かつて四国全土で活躍した車両で、銀色の車体にこれまで様々な色を施した編成が登場してきました。今回乗車する編成は青と赤の2色があしらわれ、「宇和海」のヘッドマークも掲げられています。
1番線では、これくらいの距離感で〔しおかぜ〕と〔宇和海〕が停車します。同一平面上で乗り換えられるのは大変便利ですが、箇所によってはそれほどホームが広くないので安全に十分気をつける必要があります。松山駅高架化と同時にこの光景も見れなくなってしまう可能性がありますので、今のうちにしっかり目に焼き付けておきましょう。
この車両は松山10:10着の上り〔宇和海8号〕からすぐ〔宇和海9号〕として折り返す運用となっており、停車時間はわずか8分間しかありません。この間に全ての乗客の降車を確認し、車内を清掃するのですから、もはや神業です。GW中ということで3両編成の車内には乗客がぎっしり詰め込まれていたようで降車に相当な時間を要し、清掃作業が終了したのは発車のわずか1分前でした。
無事に全ての乗客の乗車が完了し、ほぼ定刻通りに松山駅を発車。最後部の3号車のみが指定席で、1・2号車は自由席です。グリーン車はありません。
3号車の混雑具合は見たところ50%程度。一応予讃線は幹線ではあるものの、松山以西という支線的な区間であり、1時間に1本の特急が運行されていながらこれほどの乗車率であることを考えるとかなり混雑している方ではないでしょうか。
途中停車駅は伊予市、内子、伊予大洲、八幡浜、卯之町、伊予吉田です。最近は感染症対策等の観点から車内の検札が省略されがちですが、松山駅には自動改札機がないため有人改札で綺麗な入鋏印を押していただきました。特に指定席特急券に入鋏されていることなど、今の時代にはかなり貴重かもしれません。
松山駅を出てすぐ、車窓右手には「坊っちゃんスタジアム」が見えてきます。市坪駅の目の前に位置し、イベント開催時等はかなり混雑するようです。
松山を出て最初の停車駅は伊予市。予讃線の電化区間はここまでで、これより先へは電車が乗り入れることはできません。
そして次の向井原駅を通過した後、線路が左右二手に分かれています。〔宇和海〕は左側の線路を進んでいきます。
向井原~伊予大洲駅間では、海沿いを通るルートと山の中を突き進むルートの2種類があり、山の中を通る方は「内子線」と呼ばれています。海側よりも距離が短く、線路が直線的なため〔宇和海〕は全て内子線経由で運行されています。
一方で、海沿いの通称「愛ある伊予灘線」の方では観光列車〔伊予灘ものがたり〕が運行されており、海のすぐ目の前にホームがあることで有名な「下灘駅」もこちら側にあります。〔伊予灘ものがたり〕はこの春よりちょうど特急列車に格上げされたところですので「最長距離」にこだわるという意味では内子線経由よりも愛ある伊予灘線経由の方が距離が長くなるため乗車すべきかとも思いましたが、あちらは定期列車ではなく臨時列車という扱いなので今回の乗車対象からは外すことにしました。
かつては予讃線の五郎駅から分岐し、内子駅までを結ぶ盲腸線だった内子線。しかし1986年に向井原~内子駅間および新谷~伊予大洲駅間が開業し、優等列車の通る幹線ルートへと生まれ変わりました。
現在は途中駅となった内子駅。高架になっており、かなり立派です。乗降客もちらほらですがいたように見えました。
伊予大洲駅にて海沿いルートと再び合流し、予讃線を進んでいきます。ちょうど反対側のホームには特急〔伊予灘ものがたり〕が停車していました。快速時代にも一度も乗れず、特急化されてからもまだ一度も乗車したことがないので、是非いつか乗りたいですね。
伊予大洲駅を出発してすぐ車窓左側には大洲城が見えてきます。街の中にあるお城を見る機会はしばしばありますが、こんな山の中に造られた天守閣もなかなか立派なものです。
伊予大洲や八幡浜などでそれなりの降車があり、車内は次第に空いてきました。
特急停車駅周辺ではそれなりに人や建物が多いですが、それ以外の区間ではのどかな景色が広がります。
〔宇和海〕という列車名ではありますが、実は車窓から海が見える区間はそれほど多くありません。かなりじっくりと車窓を凝視していないと、一瞬でオーシャンビューの区間を通り過ぎてしまいます。
もう間もなくすると、列車は終点の宇和島駅へと到着します。到着を前に、この5日間の思い出がいろいろとこみ上げてきました。
今回、私がこの「特急リレー最長片道切符の旅」実施に踏み切ったのには、主に2つの理由があります。
その一つは「昨夏の最長片道切符の旅の追体験をするため」。昨年の夏、稚内から肥前山口まで46都道府県を通る日本一周旅行をしましたが、その際に得られた成功体験を忘れることができず、それに近い達成感を味わいたいと考え、何とか短い日程で昨夏の追体験ができないかと考え、この企画の実施に至りました。日数は最長片道切符の旅の7分の1程度ですが、全国各地で昨夏の思い出を振り返ることができ、良い5日間であったと感じています。
そしてもう一つは「2022年の今でもこんな素晴らしい長距離特急の旅ができるのだ」ということをみなさんに実感してもらいたいため。これが2つ目にして最も大きな理由です。
鉄道開業150周年の節目の年となる2022年。この150年間で全国各地へ鉄道網が張り巡らされ、技術は格段に進歩しました。しかしその一方で、戦後の我が国においては新幹線や航空機等の発達により、長距離を走る在来線特急列車が減少傾向にあります。
在来線を走る特急列車に旅情を求める鉄道ファンは多く、その運行距離が年々短くなる傾向にあることを嘆く鉄道ファンは決して少なくありません。私自身もその一人です。
しかし、この5日間を思い返してみてください。鉄道の衰退が叫ばれる昨今ではありますが、各地で在来線特急列車が時代に合わせた活躍ぶりを見せているではありませんか。今の時代には「今の時代なりの在来線特急の魅力」がたくさん詰まっていると思うのです。
残念ながら、一つひとつの特急列車の運行距離は数十年前より短くなってきているかもしれません。しかしそうした列車をいくつも繋ぎ合わせ、順に乗り継いで旅をしていけば、こんなにも素晴らしい景色をたくさん見ることができるのです。鉄道には、特急には、まだまだ無限の可能性が秘められていると信じています。私の今回の旅を通じ、それが少しでもみなさんに伝わっていれば、こんなに嬉しいことはありません。
11:40、列車は定刻通りに終点の宇和島駅へと到着。〔宇和海〕の終点であると同時に、予讃線の終点でもあります。この先に線路は続いておらず、まさに「最果ての地」という感じがします。
無事に無効印を押していただき、これにて「仙台→宇和島」の出札補充券の全行程が終了。
「特急リレー最長片道切符の旅」2522.2km、完遂です!!
完遂記念に、宇和島駅前の「かどや本店」へ。最長片道切符の旅の道中でも訪れた、思い出のお店です。
いただくのはもちろん、宇和島名物「南予の鯛めし」。新鮮な鯛のお刺身と海藻を特製たまごだしに絡めてご飯にかける、いわば「日本一豪華なTKG」です(笑)。
これが本当にたまらない美味しさで、もはやこのためにはるばる仙台から長旅をしてきたといっても過言ではありません。特段「食」がテーマの旅ではありませんが、今回も様々なご当地グルメを味わうことができました。
というわけで、「特急リレー最長片道切符の旅」これにて完結!
最後までお読みいただきありがとうございました。