こんにちは。わたかわです!
今回から何回かに分けて、先日実施した「特急リレー最長片道切符の旅」の様子を書き記していこうと思います。
JR各線では、毎日多彩な在来線特急列車が運行されています。都市と都市を繋ぐもの、都市から観光地へお客さんを運ぶもの、通勤通学に使われるもの…など、その顔は様々です。
今回はそんな全国各地のJR在来線昼行特急のみを乗り継ぎ、一枚の片道乗車券として発券可能な最長経路を編み出しましたので、それに従って乗車券を発券し実際に旅行してきました。スタートは宮城県の仙台駅、そしてゴールは愛媛県の宇和島駅となります。
詳しいルールは下記の通りとなります。
- JR在来線の昼行特急のみを乗り継ぎ、一枚の片道乗車券として発券可能な最長経路で移動する。
- 経路上を走る普通・快速列車等は利用できない。また、新幹線は経路に含まれない。
- 私鉄・第三セクター等との直通運転を行う特急も乗車可能。ただし通過連絡運輸の規定に基づき、券面経路に含むことのできる会社線は1社のみとなる。
- 分岐駅通過特例が適用される区間を往復で乗車することも可能。
- 定期特急列車の運行がない線区は通ることができない。
昨夏の「最長片道切符の旅2021」のように複数回に分けて記事にしていこうと思います。合間に他のネタが挟まることもあると思いますが、最後までどうかお付き合いいただけたらと思います。
1日目 2022年5月1日(日)
というわけで、やってきたのは杜の都仙台。ここが「特急リレー最長片道切符の旅」のスタート地点となります。
今回この企画を実施するにあたり用意した乗車券の区間は「仙台→宇和島」。その経由路線があまりにも多すぎるため、昨夏の最長片道切符と同様に出札補充券にてご準備いただきました。発券作業にあたってくださったJR東海の新横浜駅の皆様、誠に有難うございます。この場をお借りして感謝申し上げます。
この乗車券を携え、これから約2500kmもの旅へと出ることになります。運賃は25,100円で、株主優待等の各種割引は利用せず定価で購入しました。
仙台駅からまず乗車する記念すべき1本目の特急は、10:14発の〔ひたち14号〕品川行です。2020年3月より常磐線特急が1日3往復のみ仙台駅への乗り入れを再開したことで、この企画も仙台駅からスタートできるということになります。
車両は首都圏でもおなじみのE657系10両編成。首都圏~東北の移動といえば新幹線が当たり前の今の時代に、在来線特急列車が細々ながら東京都心~仙台間で運行されているのは鉄道ファンとして何とも喜ばしいことです。2022年春のダイヤ改正からは仙台発着のひたち号の全列車が東京・品川まで乗り入れるようになりました。
10:14、列車は定刻通りに仙台駅を発車。いよいよ「特急リレー最長片道切符の旅」スタートです!
途中の停車駅は相馬、原ノ町、浪江、双葉、大野、富岡、広野、いわき、湯本、泉、勿来、高萩、日立、常陸多賀、大甕、勝田、水戸、上野、東京です。福島県内や茨城県北部では数多くの駅に停車するものの、水戸を出ると上野までノンストップとなりますのでひたち号らしい走りを見せてくれそうです。
常磐線特急は全車指定席なので、今回私も予め指定席特急券を購入しておきました。全車指定席化に際して特急料金が値下げされていますので、震災前の仙台発着のひたち号の普通車指定席よりは少し安いのではないでしょうか(正確なことは分かりませんが)。
また指定席特急券と同額の「座席未指定券」も発売されており、かつての自由席のように座席の指定を受けず乗車することもできます。各座席の上部には空席状況を知らせるランプが取り付けられており、緑→発売済み、オレンジ→まもなく発売済み区間、赤→空席、を示しています。座席未指定券で乗車する際は原則として赤ランプの座席であれば着席可能となるわけです。
仙台駅を発車した時点では、赤ランプ(すなわち空席)が多いものの、緑やオレンジもかなり目立ちます。私は過去数回この仙台発着のひたち号に乗車したことがありますが、普段は空気輸送が珍しくない区間ですので、繁忙期であることを実感します。
岩沼駅を通過すると東北本線と分かれ、いよいよ常磐線へと入っていきます。この日はあいにく朝から天気があまり良くなく、日中でも薄暗い曇り空ではありますが、何とか天気は持ちこたえているようです。
途中の山下駅・坂元駅の辺りは2011年の東日本大震災による津波の被害も特に大きく、線路を内陸に移設して駅舎やホームは全く新しいものがこしらえられました。山下駅では普通列車とすれ違います。
駒ヶ嶺駅を通過した次の瞬間、何と列車が急停車。数分ですぐに運転を再開しましたが、どうやら線路内に人が立ち入ったようです。まだまだ東京都心までは長いですが、先が思いやられます(笑)。
仙台駅を出て最初の停車駅は相馬。さっそく福島県へと入りました。先ほどの急停車の影響で、相馬駅を3分遅れで発車していきます。
原ノ町駅は、2011年の東日本大震災発生時にちょうど当駅始発の上野行特急スーパーひたち号(651系)が被災し、それから2016年まで約5年間に渡り駅構内に留置されたままの状態であったことも知られています。現在は撤去されており、全線再開した今では首都圏と同じE531系の普通列車が活躍しています。まだまだ東北地方なのですが、早くも首都圏へと突入したような気分になります。
桃内駅ではドアが開かない運転停車。ここで品川駅を7:43に発車した特急〔ひたち3号〕仙台行と行き違いを行います。
浪江駅からもそれなりの乗車があり、もうこの時点で既に窓側がかなり埋まってきているなという印象を受けました。まだまだ大混雑というほどではないものの、思っていたよりも序盤からかなり乗車率が高いです。
双葉駅では、元々上り線として使われていた駅舎側の線路が剥がされ、実質棒線式の単線構造になっています。上下列車とも元下り線のホームへと入線するため、列車の行き違いはできなくなっています。
そして双葉駅を出てからしばらくの区間でも、引き続き元上り線の線路が敷かれていた土地は舗装道路となり、単線構造が続きます。これは震災から11年が経過した現在も双葉町の大部分、ならびに大熊町、浪江町、南相馬市、富岡町、飯舘村の一部の地域が帰還困難区域に指定されているためで、万が一この区間を走る常磐線の列車で事故や立ち往生等があった際に緊急車両が列車のすぐそばまで駆けつけられるようにしているのです。JRの線路上は優先的に除染作業が進められたことで2020年の全線運転再開にこぎつけましたが、その周辺の町は今も線量が高い状態です。
町内のほぼ全域が帰還困難区域に指定されている大熊町。その中心に位置する大野駅にも特急は停車します。福島第一原発の最寄り駅でもあり、島式であったと思われるホームは棒線駅に姿を変えています。
広野駅を発車すると、短い時間ですが車窓左側に太平洋が望めます。どこまでも続く水平線には美しさを覚える一方、この海が11年前に猛威を振るったと思うと複雑な思いがするものです。
仙台駅を出てから約2時間、12:16に列車はいわき駅へと到着。これより先は特急の本数が一気に増える区間となります。
震災前の651系スーパーひたち号は「基本編成7両+付属編成4両」だったため、ここいわき駅で増解結を行っていたようです。しかし現在のE657系ひたち号は10両固定編成のため、仙台~品川駅間の全区間を10両編成で走行します。いわき駅での停車時間も短めです。
相馬の辺りで生じた遅延も、この頃になるとすっかり回復。定刻通り12:18にいわき駅を発車し、続いて湯本、泉、勿来…と停車していきます。掛詞に用いられた「勿来(な来そ)」は難読駅名の一つにも数えられます。
ここでちょうど時間的にも良い感じなので、車内でお昼ご飯をいただくことにします。やはり仙台からスタートしたということで何か仙台らしいものを食べたいと思い、仙台駅構内で購入した牛たん弁当(1,580円)を購入しておきました。なかなか良いお値段がするものですが、ひもを引っ張ることでご飯とお肉が温められ、最高の状態でいただくことができるように工夫がなされています。駅弁の牛たんというとどうしても薄っぺらいイメージがあったのですが、お店で食べるのと遜色ないくらい分厚くてとても美味しかったです!!
美味しい牛たんを味わっている間にも列車はどんどん都内へ向けて進んでいきます。いわき以降からも多くの乗車があり、気づけば車内は通路側も含めかなり満席に近い状態です。各駅到着時に車掌さんが懸命に「この先多くのお客様がご乗車になります。お降りの際は座席のリクライニングを元の位置にお戻しください」と繰り返しアナウンスされていました。
勝田駅からはひたち号の合間に停車タイプの「ときわ号」も運行されており、特急の運行本数がほぼ2倍になります。ご丁寧に(10両)と表示されていますが、先ほども述べた通りひたち号・ときわ号は現在全て10両編成での運行です。
仙台駅を出て3時間余り、13:26に茨城県の県庁所在地である水戸駅へと到着。ここでついに私の隣席も埋まり、いよいよ車内はほぼ満席になりました。おそらく指定席が取れず、やむなく座席未指定券でデッキに立席乗車をされていた方もいらっしゃったことと思います。
水戸駅では急を要する車内清掃が入ったらしく、定刻よりも1分ほど遅れて発車。そして何と水戸を出ると次は上野までノンストップで駆け抜けます。
列車は最高時速130kmに近い状態で線形の良い区間を走り抜けていきます。相変わらず窓の外はまずまずの天候ですが、「これぞ常磐特急」と言わんばかりの速さと快適な乗り心地です。
石岡や土浦などそれなりに主要な駅も全て通過し、取手を通過すると列車はまもなく千葉県へと入ります。ここで進行方向左側に新たに2本の線路が登場しました。こちらは常磐線各駅停車(緩行線)というもので、取手以南では快速線と緩行線で線路が分かれており路線別複々線になっています。
緩行線ではホームのある駅も、快速線は容赦なく通過。簡易ホームドアがあるところを見ても、やはり東京が近づいてきていることを実感します。
やがて東京都内へと入り、沿線はどんどん建物に囲まれていきます。特に北千住駅を通過する際は、JR・私鉄・地下鉄を問わず無数の列車が行き交い、複雑に線路が立体交差していくので東京らしさを実感します。雲が厚くあまり鮮明ではありませんが、車窓にはまもなく開業10周年を迎える東京スカイツリーの姿も見えました。
定刻通り14:35に上野駅へと到着。水戸駅からは約1時間のノンストップでやってくることができました。ここでかなりの数の方が降りていかれます。
かつての651系スーパーひたちは上野駅で終点でしたが、2015年に開業した上野東京ラインのおかげで今ではほとんどの常磐特急が東京・品川へと乗り入れるようになりました。列車は秋葉原周辺のビル群を横目に、さらに南下していきます。
上野~東京駅間は2015年まで数十年に渡り山手線・京浜東北線のみの運行でしたので、今回のようなルートで特急の最長乗り継ぎができるのも上野東京ラインのおかげというわけです。
そして仙台駅を出てから4時間28分、14:42に東京駅へと到着。新幹線での移動が当たり前となっている仙台~東京駅間を、常磐線回りの特急列車で移動してくることができました!
東京駅は10番線ホームの到着です。かつては東京から西日本・九州方面へと向かう数々のブルートレインも発着した伝統のホームで、姿は違えどその時代を彩る長距離特急でこの地に降り立てることには何か運命的なものを感じます。
しかし、そんな感傷に浸っている場合ではありません。初手からロングランすぎる乗車でしたので忘れかけていましたが、今回は宇和島まで「特急リレー」をしていくのです。限られた時間の中で特急から特急へと乗り継いでいかなければ予定が崩壊してしまいます。
東京駅の東海道線ホームから足早に移動し、地下総武ホームへと移動します。2本目の列車は、東京14:49発の特急〔成田エクスプレス26号〕新宿行です。
急いでホームへと降りると、ちょうど列車が入線してきました。2009年に営業運転を開始した「E259系」です。
成田空港からやってきたこの列車は、ここ東京駅で切り離し作業を行うため数分間停車します。成田空港~東京駅間は12両編成ですが、この先前6両が大船行、後6両が新宿行となっています。私は新宿方面へと向かわねばなりませんので、切り離し作業を見届け次第後寄りの車両へと乗り込みます。
列車は少し遅れて入線したこともあり、東京駅を2分ほど遅れて14:51頃に発車。新型コロナウイルス感染症の影響で乗車率が低迷していることに加え、東京駅で降りてしまう人も多いですから車内はガラガラ。ほぼ貸切状態です。
東京駅から新宿駅までの特急料金は何と驚きの1,690円。実は同じ「特急」とはいっても首都圏では料金体系が3種類あり、また繁閑の価格変動ルールもそれぞれ異なるのです。
上の図は、JR東日本の在来線特急料金のルールを一部抜粋してまとめたもの。長らく首都圏では「A特急」「B特急」の2段階での特急料金体制が敷かれていましたが、2014年の〔スワローあかぎ〕運行開始を皮切りに全車指定席化が進められており、これらにはB特急料金よりもさらに安いJR東日本独自の特急料金が新設・適用されています。この特急料金は他とは異なり繁忙期・閑散期等での価格変動がなく、通年同額で発売されています。
成田エクスプレスも自由席がなく全車指定席の特急ですが、この列車に限っては例外的に割高のA特急料金が適用されています。A特急料金・B特急料金には繁閑に±200円の価格変動が発生するルールとなっており、さらに2022年4月より新たに「最繁忙期」という割増料金が設定されました。これはGW・お盆・年末年始といったハイシーズンに通常料金+400円となる高額の割増料金が発生するルールで、東京~新宿駅間といった短い区間でも通常期の1,290円に400円が加算されることで1,690円というとんでもないブルジョワチケットが生み出されてしまったのです。
そんなことに気を取られているうちに、列車は地下区間を抜けて品川駅を通過していきます。「成田エクスプレスは品川駅にもとまるのでは?」と思ったかもしれませんが、大船発着の編成は品川駅にも停車しますが、ごく一部の例外を除き新宿発着の編成は品川駅を通過してしまうのです。このため先ほどの〔ひたち14号〕に終点の品川駅まで乗車してしまうと、その先新宿方面へと繋がる特急がなく早速企画崩壊となってしまうのです。
品川駅を通過した列車はその先山手貨物線へと入り、ゆっくりと右にカーブを描いて進んでいきます。山手線の普通列車が走る線路と並走はしていますが、さすがに高頻度で運行される山手線の合間を縫って全く同じ線路へ入っていくことは現実的ではありませんので、ここも複々線のような状態になっています。
やがて列車は大崎駅のそばを通過していきます。湘南新宿ラインなどは大崎駅のホームがある線路を走りますが、品川方面からつながる線路にはホームがないためここは通過せざるを得ません。昨年10月の山手線工事運休の際に、当時運休中だった成田エクスプレスのスジを用いて設定された通称”品川新宿ライン”もこのルートだったことから、大崎駅には停車できないということになっていました。
成田エクスプレス26号は渋谷駅に停車し、その次が終点の新宿駅となります。車内には空港特急らしく4ヵ国語に対応したモニターが設置されていますが、国際線需要がそれほど戻っていない今の時代はなかなかその真の力を発揮しきれていないような気もします。
とはいえ、成田エクスプレスは2020年春以降長らく新型コロナウイルス感染症の影響で日中の運行が休止されていたところ、この春約2年ぶりに運行再開へとこぎつけました。まだまだ需要の回復は道半ばではありますが、いつの日かまた再びE259系の車内が大勢の観光客で賑わう光景を見てみたいものです。
今回のような乗り継ぎも、ちょうどこの春から日中の運行が再開されたことで実現したもの。改めてJR東日本さんには感謝してもしきれません。
列車は15:11頃に終点の新宿駅へと到着。東京駅からの遅れは回復することなく、やはり約2分遅れでの到着となりました。まぁここでの乗り継ぎは時間に追われているわけでもないので大した問題ではありません。
世界一の乗降客数を誇る一大ターミナル「新宿駅」。隣接する「バスタ新宿」からは昼夜を問わず全国各地へ無数の高速バスが発車していきます。
今回はここまで。まだこの先も1日目の移動が続きますが、その様子はまた次回お届けします。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。