わたかわ 鉄道&旅行ブログ

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【1962年に廃止】かつての東北の大動脈を徒歩で踏破! 利府→品井沼17km廃線探訪

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みなさんこんにちは! わたかわです。

今回はかつて宮城県にあった旧東北本線(利府~品井沼駅間)の廃線跡をご紹介していきます。

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現在、東北本線と言えば仙台を出ると岩切・塩釜・松島を経由して小牛田方面へと向かうのが一般的です。朝夕は東北一の主要都市である仙台への通勤通学需要も大きく、またかつては東京~東北・北海道を結ぶ数々の優等列車がこの線路を通りました。現在その役割は新幹線へと移り、在来線は主に普通列車を中心としたダイヤが組まれています。

しかし今から約60年前の1962年まで、岩切~品井沼駅間は通称「山線」と呼ばれる旧線ルートが存在していました。

1890年に東北本線の岩切~一ノ関駅間が開業した際、この区間は利府を経由する通称”山線”のルートが採用され、東北地方の大動脈の一部をなしていました。しかし名前の通りこの区間は山岳地帯となるため勾配がきつく、その角度は16.7‰にも及んだとされています。列車の遅延や運休が頻発したことから新たに海側を通る通称”海線”での新線が計画され、塩竃線(岩切~陸前山王)を品井沼方面に延伸する形で1944年に東北本線の新線が開業します。

新線は初めのうちは貨物営業のみでしたが、やがて優等列車を中心に旅客営業も行われるようになり、旧線の利府~品井沼駅間は1962年に廃止。今回はこの区間を徒歩で歩いていこうと思います。

 

2021年10月8日(金)

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まずは仙台駅から12:45発の普通列車に乗り込みます。日中は仙台方面~利府駅間の直通運転がないため、途中の岩切駅での乗り換えが必要となります。

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岩切駅にて乗り換え、13:04に終点の利府駅へと到着。岩切~利府駅間は今でこそ”利府線”と呼ばれることもある支線ですが、60年前まではさらに先へと線路が続いていたわけです。

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反対側のホームへと移動してみると、すぐそばの駐車場を跨ぐように架線柱が設置されています。これはかつてこの駐車場の付近にも多数の線路があったことを示しており、全盛期の利府駅構内は今よりもずっと広大だったであろうことが想像されます。鉄道用地が駐車場に転用されるというのもよくある話ですよね。

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それでは前置きが長くなりましたが、いよいよここ利府駅から品井沼駅まで廃線跡を歩いていきます。出発時刻は13:15、徒歩距離は17kmほどです。

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まずは駅を出て右に曲がり、住宅が並ぶ路地を歩いていきます。進行方向右側に見える駐車場はまさに線路があった跡ですが、その先を見てみるとちょうどかつて線路が敷かれていた場所の上にも住宅が建っています。

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利府自動車学校のすぐそばにあるこちらのバスロータリー(?)もかつて線路が敷かれていた場所を活用してスペースが設けられ、バスが3台ほど停車しています。廃線跡のすぐ右を通る道路を引き続き歩いていきます。

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バスロータリーのすぐ隣は「森郷児童公園」になっています。ここには何と機関車が2両保存されており、その様子を間近で見ることができます。残念ながら屋根もなく吹きさらしなので状態はあまりよくないようですが、かつてここに鉄道が通っていたことを今に伝える貴重な遺構と言えそうです。

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森郷児童公園を抜けた先は、線路跡がそのまま道路として転用されている区間に入ります。「道路」と言ってもこの地域の幹線道路はすぐ近くを走る県道8号線なので、こちらの廃線跡の道路は交通量が極めて少なく、人も車もほとんど通りません。

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勿来川に架かる橋は車が1台やっと通れるくらいの幅しかありませんが、その下をよく見てみると鉄道橋時代の橋脚がそのまま使用されている部分があります(写真左側、対岸)。

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線路跡の道路沿いにはあまり民家や建物が多くなく、両脇は茂みが続いています。かつて生活道路ではなく線路だったために、この道路に面した建物が多くないのは当たり前のことです。

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少し進むと道幅が狭くなり、車両進入禁止の文字がありました。この先しばらくは歩行者のみが通れるようになっているみたいです。

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そこから数分歩いたところで、廃線跡の道路はいったん途切れています。目の前を見てみるとちょうど三陸自動車道との交点にあたり、その下には県道8号線も交差しています。無理やり突っ切るのは厳しそうなので、ここでいったん廃線から少し離れ県道に出たいと思います。

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ちょうどこの廃線跡との交点の辺りには三陸自動車道の「利府中IC」があります。三陸自動車道は1980年代以降に建設された高速道路なので、その際に鉄道遺構のようなものはあらかたなくなってしまったのでしょう。

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利府中ICを越えた先では線路跡の生活道路が復活するので、引き続きここを歩いて行きます。気づけば上り勾配がかなりきつくなっており、歩いていてもだんだん息が切れてきます。戦前はここが東北本線の難所であったことは想像に難くありません。

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左右に草木が生い茂り、人も車も全く姿がありません。すぐ近くを三陸自動車道や県道8号線が通っているはずですが、その喧噪を全く感じさせない緑のトンネルが続きます。

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しばらくすると県道8号線と合流する大きな交差点に出てきました。1時間以上歩きっぱなしだったので、ちょうど左にあるファミリーマート利府赤沼店でアイスでも買って、ここらで一休みすることにします。

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20分ほど休んだ後、再開していきます。すぐ隣に歩きやすい県道8号線がありますが、なるべく線路跡に忠実にいきたいので砂利道のようなところを歩いていきます。こちらの方がより正確な廃線跡ということです。一見私有地のようにも見えて歩くのが躊躇われるかもしれませんが、Googleマップ上で公道として表記されているので多分大丈夫でしょう。

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そこから数分歩くと、開けた田園風景が広がっています。ここにはかつて赤沼信号場と呼ばれる信号場がありましたが、路線の廃線よりも少し早く戦後間もない1950年に廃止されました。すぐ右側には三陸自動車道が走っており、ちょうどこの赤沼信号場の跡地にあたる場所に松島海岸ICが設置されています。

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松島海岸IC付近では県道8号線と県道144号線が交差しており、交通量も多くなっています。ICの名前の通り松島海岸の近くまで来ているようですが、まだ3kmほど離れており、この赤沼の辺りの景色は日本三景とは程遠いものです。

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松島海岸ICを越えて県道8号線の下を廃線跡の道路が交差して潜り抜けると、その先は進行方向の右側に県道8号線を見ながら歩いていくことになります。

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Googleマップで見てみると、廃線跡の道路は県道8号線よりも細い線で表記されているものの、蛇行する県道8号線に比べ比較的線形が良く滑らかであることが分かります。この細い道路をひたすらに歩いていくしかありません。

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私が歩いている方の線路跡の道路は、車両通行禁止というわけではなさそうですが狭隘なためかなり運転はしにくそうです。それよりも走りやすい県道8号線がすぐ右隣を走っているわけですから、線路跡の道路は実質的に遊歩道のような状態です。

とはいえ特にこの道路上に鉄道遺構やモニュメントのようなものもなく、突然ここを歩いてもここにかつて鉄道が通っていたことなどなかなか想像もつかない気がします。況や東北の大動脈としての活躍をや…。

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そこからしばらく進むと、再び廃線跡の道路が高速道路により途切れました。ここはちょうど松島大郷ICがある辺りで、松島町営バスの「上初原住宅前」停留所もあります。利府駅からここまで約10km、時刻は16時を迎え疲労も溜まってきていたのでここで再びひと休みすることに。まだまだあと7kmほどあるわけですが、かなりしんどくなってきました。

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再出発して歩き続けると、右側に何やら赤い建物が見えてきました。ワイナリーか観光施設の類かと思いきや、水道施設のようです。何でこんな派手なデザインなんだ…?

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その先で県道8号線、廃線跡の道路、三陸自動車道は全て右に大きくカーブを描きます。森郷児童公園の辺りからここまでずっと車1台分ほどしかなかった狭い廃線跡の道路でしたが、ここにきて一時的にだいぶ道幅が広くなりました。人や車の往来もあり、しっかり生活道路としての役割を果たしている気がします。

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まもなくすると利府駅周辺以来の住宅街へと入っていきます。ここからは見えませんがすぐ右を県道8号線が走っているので、こちら側は完全に裏路地といった雰囲気です。

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その裏路地を歩き進めていくと、クリーム色の建物が見えてきました。実はここにちょうど旧線の松島駅があり、上の画像はちょうど旧松島駅のホームがあった場所なんです。

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建物の正面(県道8号線側)に回ってみました。この赤い屋根の建物こそ、旧松島駅の駅舎として使用されていたもので、現在は改装されデイサービスセンターとして使用されています。「松島駅」は今もなお東北本線上にありますが、かつては別の位置にあったというわけです。

建物の前には広大なスペースがあり、現在おそらくデイサービスセンターの駐車場として使われているのでしょうが、もしかするとここが駅前のロータリーだったのかもしれません。ちょうど施設の正面が県道8号線に面しているので、旧線が現役だった頃は街の中心として賑わいを見せていたことでしょう。

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旧駅舎の裏手側に戻り、再び線路跡の道路を歩いていきます。住宅の建設により一時的に廃線跡が途切れているので、ここで再び県道8号線に出ることにします。

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県道8号線上に再びファミリーマート宮城松島あたご店があったので、ここで小休憩。利府駅を出てから早くも3時間半以上、だんだんと陽が傾き始めています。このファミマの裏手側から再び廃線跡の道路が続いています。

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ファミマからすぐのところでトンネルをくぐります。そのトンネルの真上にある駅こそ「愛宕駅」。東北本線の新線ルート上に設けられた駅です。ここで旧線と新線が合流するのか…と思いきやそうではなく、ここでは一時的に交差するのみ。

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実はこの愛宕駅は、先ほどご紹介した旧松島駅の代替駅として1962年に開業した駅なのです。この付近はそれなりに住民が多く、旧松島駅が多くの人に利用されていましたが、旧線の廃止に伴い近くに鉄道の駅がないのでは困るということで偶然にも新線との交点付近にこの愛宕駅が設けられたのです。現在の松島駅は旧松島駅から直線距離で2kmほど離れており、これが代替駅としての役割を果たせるとは言い難いです。

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愛宕駅付近を過ぎてからは、新線のすぐそばを旧線が走っています。左側の少し高くなっている部分が現在の東北本線(新線)ですが、特に柵などもないので入ろうと思えば入れてしまいそうです(もちろん危険なので絶対に入ってはいけません)。

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途中の高城川に架かる橋では新線と旧線が並ぶのがよく分かります(写真左側が仙台方面、右側が品井沼方面)。廃線跡の方の橋は歩行者専用となっています。

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利府駅をスタートしてから4時間余り。時刻は17時を過ぎ、いよいよ夕暮れ時といった様子です。歩道がないものの2車線ある廃線跡の道路は比較的交通量が多く、車が通る度にやや恐怖さえ感じます。

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しばらく歩くと、トンネルがありました。利府駅からここまでにいくつかトンネルをくぐってきましたが、今回のこの「根廻トンネル」はそれらとは一味違います。何と旧線が現役時代に使用していた鉄道トンネルが今もそのまま道路のトンネルとして残されているのです。

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トンネルの中は古くから変わっていないと思われるレンガ造りで、陽が沈んだこの時間に通るのは肝試しのような雰囲気でスリルがあります。車1台分の幅しかないため歩く際には注意が必要です。線路があった時代も単線だったものと思われます。

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利府駅を出てから約4時間30分、17:45頃に大菅踏切へと到着。辺りに民家や建物の類は一切ないため本当に真っ暗なのですが、この付近で旧線が新線に合流していたものと思われます。

ということで、これにて旧線踏破完遂! いや~長かった、本当にヘトヘトです。まだ日中の明るい時間帯に利府駅を出たのが遥か昔のことのようです。

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大菅踏切より先はそのまま道なりに歩き続け、18:00頃に品井沼駅へと到着。明かりに照らされた駅舎が見えた瞬間、本当に救われるような思いです。

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この後は品井沼18:10発の上り普通列車へと乗り込み、(もちろん)新線ルートで仙台駅へと戻りました。

今回は約17kmもの徒歩ということで真夏・真冬は特に危険ですが、自転車や自動車など徒歩以外の足をお持ちの方でしたら是非春や秋にでも挑戦してみてください。

 

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。