わたかわ 鉄道&旅行ブログ

乗り鉄&旅好きの20代男子が全国を巡る!

【指定席】西九州新幹線&リレー特急で長崎から博多へ。乗り心地が良いので一日も早い全線開業を!

 

2022年9月23日(金)

今回は長崎駅へとやってきました。これから西九州新幹線の指定席に乗車していこうと思います。

ちょうどこの日は西九州新幹線開業初日ということで、駅前では様々な催し物も開かれ、長崎の街はお祝いムード。2020年に在来線ホームが高架化され、その跡地は再開発が進められているものの、新幹線開業からは少し遅れて商業施設等がオープンするようです。

watakawa.hatenablog.com

開業速報に関しては当日夕方頃に記事を公開しておりますが、かなりの突貫工事で公開した記事であり、かつ想像を絶するほど混雑した自由席への乗車でしたので、今回は改めて落ち着いた状態で今後の展望等も分析しつつ、長崎から武雄温泉方面へと指定席で移動する様子をお届けしていければと思います。

乗車するのは、長崎17:42発の〔かもめ48号〕武雄温泉行。しかし長崎駅の発車標では行先が「武雄温泉」ではなく「博多」と示されています。

SNSでも話題になったこの表記ですが、これは武雄温泉駅で乗り継ぐ在来線特急〔リレーかもめ〕の行先を示したものです。かつて運行されていた在来線特急〔かもめ〕であれば長崎~博多駅間を乗り換えなしで結べていたところ、西九州新幹線はまだ部分開業の段階にあり直接博多駅へ乗り入れることはできません。しかしここで正直に「武雄温泉」という行先のみ表示してしまっては「博多が遠くなった」という印象を抱きかねませんので、行先に関しては在来線特急〔かもめ〕の時代と同じように博多行として表示されています。

開業初日となるこの日は朝から晩までほとんど全ての新幹線の指定席が満席となるほどの盛況ぶりでしたが、運良くこの列車に関しては乗車直前に空席を見つけることができました。

長崎駅の新幹線ホームは11~14番線で2面4線構造。これは東京駅の東北・上越・山形・秋田・北陸・北海道新幹線のホームと同じ容量であり、いささかオーバースペック感は否めません。現在、西九州新幹線の1時間あたりの運行本数は1~2本程度ですから、おそらく理論上は1面2線くらいでも十分だろうと思いますが、将来的に博多・新大阪方面へ直通した際のことも想定してということかもしれません。

ホームへ上がると、既に列車は停車中。西九州新幹線開業に合わせデビューしたN700Sです。同形式の車両は2020年に東海道・山陽新幹線でもデビューしていますが、基本設計は同じでありながらもその細かなデザインは異なっています。前面の鼻先にはかもめのエンブレムがあしらわれ、存在感のあるライトがとても印象的です。

車両側面の行先表示器も東海道・山陽新幹線のそれと基本的には同じで、こちらもやはり行先は「武雄温泉」ではなく「博多」と示されています。その隣には毛筆体で書かれた「かもめ」の文字があり、これまた存在感があります。

西九州新幹線の列車愛称は「かもめ」の1種類のみですが、行先表示器の色はの2種類があります。は1つ以上の通過駅がある「かもめ」、は各駅に停車する「かもめ」です。諫早には必ず全ての列車が停車しますが、新大村と嬉野温泉は”赤いかもめ”の一部が通過となっており、中には「新大村には停車するが嬉野温泉は通過するかもめ」というのも存在するため注意が必要です。

とはいえ「停車駅によって行先表示器の色を変える」という試みを他の地域の新幹線で聞くことはあまりありません。ひとまず「赤いかもめに乗る時は停車駅に注意!」と覚えておきましょう。なお、赤いかもめ青いかもめを追い越すことはありません(追い越し設備のある駅が途中に1つもありません)。

それでは発車時刻も近づいているので、いよいよ車内へ。

西九州新幹線は全列車6両編成で、このうち長崎寄りの1~3号車が指定席、武雄温泉寄りの4~6号車が自由席となっており、グリーン車はありません。かつて長崎へ直接乗り入れていた在来線特急〔かもめ〕ではグリーン車がありましたが、これに代わる現在の鉄道での最優等種別である新幹線〔かもめ〕にグリーン車がないというのは不思議な感じがします。

しかし上の画像を見れば分かる通り、指定席は非常にゆとりがあり、それまでのN700Sのイメージとは大きく異なります。あくまでも普通車ですが2+2列の配置となっており、主に〔みずほ〕〔さくら〕等で活躍するN700系の指定席を踏襲したものになっています。

列車は定刻通り、17:42に長崎駅を発車。客室内のドア上部に取り付けられた大きなディスプレイは東海道・山陽新幹線のN700Sで見慣れたものと同じ仕様のようで、ここに「のぞみ」「ひかり」等ではなく「かもめ」と表示されているのは新鮮な気分です。

やはり車内放送等においても「博多行」と案内はされるものの、併せて「武雄温泉駅にて同じホームに停車中の博多行特急リレーかもめ号にお乗り換えです」という旨の案内もしきりになされていました。窓枠の形等も東海道・山陽新幹線のN700Sと大差ないものの、座席背面の形状からJR九州らしさを感じることができます。

なお注意点として、指定席の各座席には背面テーブルがありません。肘掛けから取り出せるインアームテーブルは一応ありますが、ノートPCはおろか駅弁さえも困難なほど小さいです。現時点では乗車時間が短いためやむを得ずといったところでしょうが、もし将来的に博多まで直通するようになるのであれば立派な背面テーブルが欲しいところ。ちなみに自由席にはしっかりとした大きさの背面テーブルがあります

あれやこれやと物色しているうち、列車はすぐに次の諫早駅へと到着。トンネルが多いため、まるで瞬間移動したかのような気分です。

諫早駅は西九州新幹線で唯一の地上ホームとなっています。最速達便も含め全ての列車が必ず停車する駅で、この点は在来線特急〔かもめ〕の頃から変わりません。

諫早駅を出発。ところによっては防音壁がそれほど高くなく、外の景色も楽しむことができます。

以前にもご紹介した通り、1934年12月に有明東線と有明西線が繋がってからはこちらが「長崎本線」として博多~長崎駅間を結ぶメインルートになりました。一方でそれ以前は現在の佐世保線大村線こそが「長崎本線」であり、実はこちらの方が沿線人口が多いというメリットがあります。

西九州新幹線においては、そのどちらとも異なるルートでありつつ、どちらかといえば1934年までの旧長崎本線に近いルートが採用されました。ある意味では88年前までの「本線ルート復活」とも言える、とても象徴的な出来事なのです。

…と思っていると、列車はあっという間に次の大村駅へと到着。諫早~新大村駅間はわずか12kmほどしか離れておらず、乗車時間はわずか6分程度です。ちなみに同区間を走る在来線快速列車でもわずか15分ほどの距離ですので、大変近い位置にあることが分かります。

大村駅は、新幹線開業にあわせ新設された駅。並行する大村線の諏訪~竹松駅間に在来線駅も設置されており、乗り換えることができます。

この新大村駅の大きな特徴は、長崎空港へのアクセス駅としての機能が期待されている点にあります。海の上に浮かぶ長崎の空の玄関口、長崎空港までは新大村駅からおよそ5kmほどとなっており、この区間では予約制乗合タクシーが運行されています。一般的な路線バスではなく「予約制」というところから若干の敷居の高さは感じるところですが、これまで長年の課題でもあった長崎市内~長崎空港間の移動の選択肢が増えたことは決して悪い事でもないはずです。

一方でこの新大村駅と、この後通過する隣の嬉野温泉駅の2駅には指定席券売機が設置されていません。両駅ともみどりの窓口は設置されているものの、その営業時間は7:00~19:00のみ(一部時間帯を除く)であり、これ以外の時間帯に新大村駅嬉野温泉駅にて指定席特急券を購入することはできません。またインターネットにて予約したきっぷの受け取りもみどりの窓口または指定席券売機が必要となりますので、新幹線駅でありながら7:00~19:00以外の時間帯ではネット予約の発券が一切できないということになります。当然ながら7:00より前や19:00以降に発着する列車もありますので、これは由々しき事態です。せめてチケットレスサービスがあれば…と思うところですが…。

何はともあれ新大村駅を発車。車窓左手には大村車両基地が見えます。大村線では新たに竹松~松原駅間に「大村車両基地駅」が設置されており、全国的にも非常に珍しい”車両基地”と名の付く駅名が誕生しました。

これより先、列車は山の中を走行する区間が多くなるため、車内を物色。

洗面台もとても清潔感のあるデザインで、列車の中とは思えません。

デッキには沿線の伝統工芸品を展示するスペースもあり、目的地に着く前から我々の心を楽しませてくれます。もちろんひとつひとつ固定されているのでしょうが、260km/hで走る新幹線の車内でも倒れたり崩れたりしないのは不思議な感じがします。

新大村~嬉野温泉駅間は、特に山の険しい区間。ちょうど長崎県佐賀県の県境付近には、一時期SNSでも話題になった「凄い法面トンネル」があります。現代の土木技術の結晶ともいえる法面補強が、西九州新幹線建設において大きな役割を果たしています。

このトンネルをくぐるとまもなく、列車は嬉野温泉を通過。嬉野温泉駅は西九州新幹線で唯一の新幹線単独駅で、それまで長年に渡り鉄道のなかった嬉野の街に新幹線がやってくるとあって地元は大きな盛り上がりを見せています。

停車するのは青いかもめのみで、その本数は44本中25本。他の駅と比べて停車本数は最も少ないですが、是非ともこの新幹線開業を観光の起爆剤としてほしいところです。

そして嬉野温泉駅から5分ほどで、武雄温泉駅に到着します。

武雄温泉は、間違いなくこの列車の終点のはず。しかし車内では「終点/Terminal」とは案内されません。車掌さんが車内放送で誤って「終点、武雄温泉です」と言ってしまい、それを後から被せて訂正していました。それほど、この武雄温泉はあくまでも「途中駅にすぎない」ということをJR九州は必死にアピールしたいのだろうと思います。

しかし現実問題として、この新幹線に乗り続けていても博多へ行くことはできません。ディスプレイにはしっかり「博多行き特急」へ乗り換えが必要な旨も示され、その列車が同一ホームで待機している旨もしっかりと放送されます。

18:10に列車は定刻通り武雄温泉駅へと到着。ここでリレー特急へ乗り換えとなります。

新幹線ホーム側の駅名標は、次の駅が「江北」と示されており、やはり新幹線の終点であることは感じさせません。

そして驚くべきことに、ここまで約30分間乗車してきた新幹線〔かもめ〕の行先表示器は「博多」ではなく「武雄温泉」へと変わっていました!

これには一瞬驚きましたが、よく考えてみれば当たり前のこと。つまり、武雄温泉駅では在来線ホーム側に「博多行」のリレー特急が停車しているわけです。にもかかわらず新幹線の方にも「博多行」と示しては、いったいどちらに乗ればよいのか分からなくなってしまうでしょう。実によくできているなと感じました。

武雄温泉駅から乗車するのは、在来線特急〔リレーかもめ48号〕博多行。ついにこの列車こそが、本当に博多駅まで乗り入れる列車となります。新幹線とリレー特急の号数は揃えてあり、分かりやすくなっています。

なお、この武雄温泉駅の10番線はあくまでも新幹線と接続する「リレー特急」のみの専用ホームです。このほかに在来線特急〔みどり〕〔ハウステンボス〕が在来線ホーム側から発車しますが、何ともややこしいことにこれらの中にも新幹線と接続して「リレー特急」の役割を果たすものが混在しており、同じ〔みどり〕でも新幹線接続があるか否かによって使用するホームはおろか改札口さえも異なります。次々発に表示されている「みどり(リレーかもめ)」などはまさにそのパターンです。またその上の次発は下りの〔みどり〕で、ここ武雄温泉駅で新幹線〔かもめ47号〕長崎行へと接続を取ることになっています。

在来線特急〔リレーかもめ〕に使用される車両は787系(8両編成)および885系(6両編成)です。長崎へのメインルートの一部区間を担い、在来線特急〔かもめ〕開業後も活躍することは嬉しいですが、どちらもそれほど新しい車両ではないはずですので、一体いつ頃まで走るのかは気になるところです。

車体側面には〔かもめ〕ではなく〔リレーかもめ〕の文字。この48号の乗り換え時間は5分ほどあり比較的余裕がありますが、ほとんどの列車はここ武雄温泉駅での乗り換え時間が3分しかありませんので、乗り遅れには注意が必要です。

無事に乗り換えが完了し、列車は定刻通り18:15に武雄温泉駅を発車。こちらでも指定席を利用していきます。

新幹線と比べると車体の幅が狭く、同じ2+2列の座席とはいってもそのゆとりには大きな差があります。そして武雄温泉駅発車直後から感じるのは、新幹線と比べて乗り心地がそれほど良くないという点です。どうしても在来線なので仕方ない部分なのですが、新幹線とリレー特急を乗り比べてしまうと、やはりどうしても新幹線の静粛性と快適性に敵うものはないと感じてしまいます。

今回はJR九州インターネット予約で購入可能な「かもめネットきっぷ」にて乗車しています。新幹線指定券、(リレー特急)指定券、乗車券の計3枚が発券される仕組みで、特急券が「長崎→【武雄温泉乗り換え】→博多」と1枚の券面になるわけではありません。指定席・自由席とも同額でお値段は4,200円となっており、高速バスの通常運賃(2,900円)よりも1,300円ほど高くなっています。しかも高速バスのWEB回数券であれば1回分あたり2,250円で長崎~福岡間を移動できると考えると、新幹線の割高感は否めません。

一方で、所要時間の面では明らかに新幹線に軍配が上がります。また渋滞にも巻き込まれることなく時間に正確ですから、ビジネス客からのニーズは大きそうです。

武雄温泉を出て最初の停車駅である江北は、かつて「肥前山口」として100年以上に渡り営業していましたが新幹線開業を機にその駅名が改められ、町名と同じものになりました。

車窓が暗かったこともありこの後はウトウトとしていましたが、無事定刻通り19:14に終点の博多駅へと到着。長崎駅からの移動時間は約1時間30分で、このうち3分の2の時間をリレー特急に乗車していたことになります。

なお車内放送では、車掌さんが何度か「リレーかもめ」と間違えて「リレーつばめ」と案内していました。声から察するにベテランの車掌さんのようで、2004年から2011年まで博多~新八代駅間で運行されていたリレー特急の頃の癖が抜けないのだろうと思います(笑)。

到着した列車はまもなく回送となり、驚くことに側面の行先表示器には「KAMOME」のロゴが登場しました! 在来線特急〔かもめ〕は廃止されてしまいましたが、この車両が確かにかつて長崎駅へ直接乗り入れていたことの証と言えます。

 

さて、華々しく開業した西九州新幹線

しかし今のところ運行区間は武雄温泉~長崎駅間のみで、全国に張り巡らされた新幹線網からは孤立した形となっています。

JR九州や多くの長崎県民は「一日も早く博多まで全線開業させたい・してほしい」と願うところかと思います。大幅な時間短縮効果が期待でき、何より武雄温泉駅での乗り換えの手間が省けることは大きなメリットとなります。

一方で間に挟まれた佐賀県にとって、この新幹線開業におけるメリットがそれほど大きくないのも事実。博多~佐賀駅間は現行の在来線特急でもわずか40分ほどで、新幹線が必要とされるほど長い距離ではありません。もちろん新幹線が開業すればその所要時間は短縮されますが、かけた費用に対するメリットが小さいというところでしょう。また、県内には2011年の時点で「新鳥栖駅」が開業しており、既に佐賀県内から直接博多・新大阪方面へ新幹線での移動が実現しているというのもあります。

私は佐賀・長崎いずれの出身でもありませんので「余所者」にすぎません。しかしそんな余所者のいち鉄道ファンの意見としては、やはり一日でも早く博多まで全線開業してほしいと願う気持ちが大きいのが正直なところです。

現在新幹線の線路が繋がっていない新鳥栖武雄温泉駅間の距離は50kmほど。今回開業した西九州新幹線区間よりも短いのです。現状ルート決定や用地買収といった具体的な話は上がっていませんが、もし概ね在来線と沿うような形で建設されるのであれば、この区間は平野が続いており難工事となりそうな箇所もありません。途中「江北」と「佐賀」の2ヵ所に新幹線の駅を設置できれば、現行の在来線特急とほぼ同じ停車駅となり、浦上駅のように「特急廃止により大都市へ直通する優等列車がなくなる」ということもありません。

そして何よりも、新幹線は「静かで快適」です。いくら在来線特急の乗り心地が改善されようとも、この点は絶対に在来線特急が新幹線に勝つことのできないポイントです。

今回武雄温泉駅での対面乗り継ぎ方式として開業したことで、多くの乗客が無意識にも「新幹線」と「在来線特急」の乗り心地を比べざるを得ない運行形態となりました。これまで在来線特急が最も快適な移動手段であったのであればそれに乗るしかありませんが、それよりも遥かに快適な「新幹線」という乗り物ができても、なお佐賀県の方は「在来線特急の方がよい」と感じるのでしょうか。隣県にできた真新しい「西九州新幹線」に乗ってみて「これが自分の県にもあったらいいのに!」と感じる人が一人もいないとは思えません。

あくまでも一人の”鉄道ファン”としての意見ですから、決して中立的な見解とはならないことをどうかお許しください。日頃から新幹線の身近な地域に住んでいる私でさえ西九州新幹線の乗り心地には深く感動するものがあったわけで、現地の人にとってはなおさらその思いは大きいはずです。

近年は「唐津ルート」や「佐賀空港ルート」等も一部で議論されていますが、やはり何よりも新幹線は沿線人口の多い地域を通って多くの人にメリットをもたらしてほしいところ。少しでもこの問題が解決に向け前進することを願っています。

 

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

【28年の歴史に幕】キハ281系定期運行ラストラン 函館~札幌3時間44分の旅

 

2022年9月30日(金)

今回は北海道の函館駅へとやってきました。これから乗車するのは「キハ281系」の定期運用ラストランです。

キハ281系は、今から28年前の1994年に特急〔スーパー北斗〕として函館本線千歳線でデビューしました。それまでキハ183系特急〔北斗〕にて最速でも3時間29分を要していた函館~札幌駅間は最速2時間59分スーパー北斗2・19号)で結ばれるようになり、まさに平成初期のJR北海道に”革命”をもたらしたと言っても過言ではありません。

当時の〔スーパー北斗〕の最高速度は130km/h。これは気動車特急史上初のことで、中でも同区間を最速で結ぶ便の表定速度は驚異の106.8km/hを記録しました。

しかし近年、JR北海道では石勝線脱線火災事故をはじめとした重大事故が多発。こうした事態を受け、北海道内の各特急列車は最高速度が120km/hへと引き下げられることになりました。また、北海道新幹線が開業した2016年以降は順次キハ261系への置き換えが進み、道南を代表する特急車両であったキハ281系は次第に数を減らしていくこととなります。

2018年のダイヤ改正にて、いったん列車名を全て〔スーパー北斗〕へと統一し〔北斗〕が消滅。その後2020年のダイヤ改正にて、「スーパー」の呼称は取りやめとなり、全ての列車が〔北斗〕として運行されるようになりました。

キハ281系の定期運用ラストランとなるのは、函館17:52発の特急〔北斗19号〕札幌行です。奇しくもその「19号」は28年前の営業運転開始当初に下りの最速達列車として設定されたものですが、現在は当時よりも45分ほど長い時間をかけて札幌へと向かいます。

発車標には「キハ281系28年間ありがとう」の文字が輝きます。平成から令和へ、時代を越えて愛された特急のラストランが目の前に迫っていることを実感します。

ホームへ向かうと、既にキハ281系は入線していました。北海道の日の入りは早いもので、薄暗い空に七つの星が描かれた「HOKUTO」のヘッドマークが光り輝きます。

本日の運行に際し、函館支社では特製の横断幕が用意されていました。「ありがとう キハ281系 Last Run」の文字を見ると、乗車前から既に感極まる思いです。

また、ホーム上では横断幕と同じメッセージの書かれた特製デザインのうちわを無料で配布。イベント列車・団体列車ならまだしも、定期列車でこれほどの力の入れようには大変驚きました。

ホーム上には多くの鉄道ファンが詰めかけており、特に先頭車両付近はかなり混雑しています。しかし揉め事やトラブルが起きている様子はなく、それぞれが思い思いの記録媒体でその時を待ち構えていました。

列車は7両編成で、前から7、6、5…号車。このうち自由席は7・6号車の2両となっており、今回私は5号車(普通車指定席)へと乗車していきます。

側面の行先表示器は2018~2019年頃にかけてLED仕様のものに取り替えられましたが、それからわずか4年ほどでその役目を終えることになります。

17:52、列車はたくさんの人々に見送られながら定刻通りに函館駅を発車。JRの方、地元の方、鉄道ファンの方、その他大勢の方がこちらに全力で手を振ってくださっています。これから3時間44分に渡るラストランの始まりです。

途中停車駅は五稜郭新函館北斗、森、八雲、長万部、洞爺、伊達紋別東室蘭、登別、白老、苫小牧、南千歳、新札幌です。北海道内には〔宗谷〕〔オホーツク〕等ロングラン特急が数多く存在するため、それらよりも少し距離の短い〔北斗〕の運行距離の長さについて注目されることはそれほど多くないように感じますが、実はそれでも函館~札幌駅間は東京~岡崎駅間ほどの距離があり、その運行経路はまるで北斗七星を線で結んだかのようになっています。

指定席車両の車内は混雑しているものの、完全に満席というわけではなくちらほらと空席が見られます。実は意外にもこの「キハ281系定期運行ラストラン」にあたる北斗19号の指定席は「1ヵ月前に即完売」というほど熾烈な争奪戦が繰り広げられたわけではなかったようで、おそらく区間によっては当日でもわずかながら指定席を予約できるような状況にあったと思われます。

とはいえ、乗客の大部分は全区間で乗車する鉄道ファン。私もその一人です。

私の隣におかけの方はどうやら鉄道ファンではない海外の方のようで、2人組でしたがまとまった区画を押さえられなかったために通路を挟んでやりとりをしていました。しかし裏を返せば、鉄道ファンでない人であっても(窓側・通路側等にこだわらなければ)指定席を予約できる状況にあったということです。

列車は新函館北斗駅に到着。2016年以降は全列車が停車するようになり、これ以来〔(スーパー)北斗〕は新幹線と接続して本州~北海道間を連絡する役割も果たしています。

この日は午前中からSNSで話題になっていましたが、新函館北斗駅ではキハ281系で運用する〔北斗〕の発車標の部分にドットでイラストが描かれており、車内からもホーム上にある発車標のドットイラストを確認することができました。車体の側面を模したイラストの中に「FURICO281」の文字が忠実に再現されています。

新函館北斗では、上り〔北斗16号〕函館行と行き違いを行います。こちらはキハ281系上り列車としての定期運用ラストランにあたります。キハ281系どうしが途中駅で行き違いを行う…そんな日常の風景もこの瞬間が最後です。

〔北斗16号〕が少し遅れていたため、この列車も定刻より3分ほど遅れて18:14頃に新函館北斗を発車。引き続き北へと進んでいきます。

最近は”ラブパス”も話題のJR北海道ですが、今回私はえきねっとの「トクだ値」を利用して乗車券・特急券とも30%OFFにて乗車しています。ラストランともなると、限られた指定席を確保するので精一杯になり、発売数の限られるインターネット割引商品を手に入れるのは至難の業…ということがほとんどですが、今回はそれほど無理なく手に入れることができました。

なお座席ですが、2008年にリニューアルが施されておりそれほど古さを感じることはありません。JR北海道内の他の特急列車でも使用されている朱色をベースとしたモケットで、背面テーブルにも安定感があります。残念ながら車内Wi-Fiやモバイルコンセントはありません。

一方で特徴的な設備の一つとしては、窓際のカーテンがあります。近年では全国的にも上下に動くブラインドが広く普及している中で、こうしたシックな色合いのカーテンは時代を感じることのできる代物です。夜間の運行につきあいにく外は何も見えませんが、それでもほとんどの乗客がカーテンを開け放して着席していました。

デッキ部分に出てみると、客室内よりも遥かに大きな音量でディーゼルの走行音を楽しむことができます。「電話をする際にはデッキで…」というのは新幹線や特急でおなじみのマナーですが、これほどの爆音を奏でるキハ281系のデッキで電話越しに円滑なやりとりができる自信は私にはありません(笑)。

19:18に長万部駅へと到着。函館本線はこの先倶知安ニセコ・小樽方面(通称”山線”)へと続きますが、ここで函館本線からは離れて列車は室蘭本線へと入っていきます。

洞爺、伊達紋別…。

日中ならばたくさんの観光客が利用する駅も、今回はほとんど乗降がありません。その代わり各駅でホーム上に数名程度キハ281系を撮影される方がいらっしゃいます。鉄道ファンの方かもしれませんし、もしかすると「それほど遠くへはいけないものの、キハ281系の最後を見送りたい」と願う地元の方かもしれません。それぞれが思い思いのかたちで、このラストランを迎えています。

車窓にライトアップされた大きな橋が見えてきました。これは室蘭市内にある「白鳥大橋」です。車窓に明かりの少ない北海道の大地を走る特急だからこそ、こうした立派な橋や建物等はとてもよく目立ちます。

20:10に東室蘭駅へと到着。この駅は、キハ281系スーパー北斗〕の歴史を語る上では絶対に欠くことのできない重要な駅です。

というのも、1994年のデビュー当時に上りの最速達便として設定された〔スーパー北斗2号〕の唯一の途中停車駅がこの「東室蘭」でした。300km以上も走る特急列車において、その途中停車駅が1駅だけというのは後にも先にもそうあることではないでしょうが、今となっては〔北斗2号〕も他の便と同じように途中たくさんの駅へと停車しながら函館へ向かう列車に姿を変えています。

白老駅は、2020年に民族共生象徴空間「ウポポイ」オープンがきっかけで、多くの〔北斗〕が停車するようになりました。白老駅到着前のアイヌ語の車内放送が聞けるのも、これが最後です。

日本一の直線区間を120km/h近くでぶっ飛ばし、20:48に苫小牧駅へと到着。終点札幌まで残り1時間を切り、いよいよその終わりが近づいてきたことを実感します。

南千歳駅からはかなりの乗車があり、ぽつぽつと空いていた指定席が全て埋まりました。函館~札幌駅間の全区間は乗れずとも、せめて最後の短い区間だけであっても乗っておきたいと思う鉄道ファンは一定数いたようです。

千歳線へと入った列車は、ディーゼルの音を奏でながらいよいよ札幌へと近づいていきます。

最後の途中停車駅である新札幌を、列車は定刻通りに発車。28年間に渡って続いてきた「当たり前の日常」が、もうすぐ終わろうとしています。

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ここで車掌さんから、最後の札幌駅での乗換案内に続いて「さよなら放送」が。

思いの詰まった最後の車内放送に、乗客一人ひとりがしっかりと耳を傾けていました。

今から11年前、2011年の夏。当時小学6年生の私は、初めて北海道を訪れた際にこの札幌駅へも足を踏み入れました。

階段を上がり、たくさんのホームが並ぶ札幌駅構内。あちこちに停車していたのが、キハ281系キハ283系・183系…等、北海道を代表する「青い気動車特急」の数々でした。

初めて北海道の特急車両を見た私は思わず感動し、これ以降私の脳内には「北海道の特急は青くてカッコいい!!」というイメージが強くこびりついています。

もちろん、今回のキハ281系引退によって北海道内から青い特急がなくなるわけではありません。しかし一方で、幼少期の私の心を揺さぶる貴重な体験をさせてくれた青い特急の一つである「キハ281系」の最後を見届けないという選択肢は、私にはありませんでした。

万感の思いで、列車は21:36に定刻通り終点の札幌駅へと到着。28年の歴史に、幕が下りた瞬間です。

ホーム上には想像以上に多くの鉄道ファンが詰めかけており、道内外を問わずたくさんの人から愛されてきた車両であることを実感します。

実は10月22日・23日に函館~札幌駅間で当時の列車名である「スーパー北斗」として臨時運行がなされる予定になっています。しかし私はそちらへは足を運べないため、今回の定期運用ラストランをもってこの車両とはお別れです。

改めて、楽しい列車の旅をありがとうございました。

28年間、本当にお疲れ様でした!

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

【速報】32年の歴史に幕…「ホリデー快速鎌倉」ラストラン

 

2022年9月25日(日)

本日やってきたのは、横須賀線鎌倉駅。これより、本日遂にラストランを迎える臨時快速「ホリデー快速鎌倉」へと乗車していきます。

ホリデー快速鎌倉」は、武蔵野線吉川美南から横須賀線の鎌倉までを結ぶJR東日本の臨時快速列車です。その名の通り土曜・休日を中心に運行され、週末に武蔵野線沿線から横浜・鎌倉方面へと出かける観光客を運ぶ目的で運行されてきました。

ホリデー快速鎌倉」は今から32年前、1990年に運行が開始されました。当時の運行区間小山~鎌倉駅で現在と若干異なるものの、武蔵野線経由という点は当時から変わっていません。

国鉄が分割民営化を行って間もないこの頃、JR東日本では「小さな旅」キャンペーンが展開され、首都圏近郊を走る臨時快速列車にこの「ホリデー快速」という愛称が付けられました。鎌倉方面のほか、奥多摩・河口湖・湘南など様々な方面へ同様の臨時列車が設定され、大勢の行楽客が利用してきました。

ホリデー快速鎌倉」は、その後大宮発着・南越谷発着等少しずつ運行区間を変化させながらも「武蔵野線方面から鎌倉へ観光客を輸送する」という使命を果たし続け、今日まで運行が続けられてきました。

しかし先日、JR東日本が発表した秋の臨時列車のプレスリリースを確認すると、そこにいつもの「ホリデー快速鎌倉」の文字はありませんでした。その代わり、10月から新たに特急「鎌倉」が設定されることが発表され、快速列車としての32年間の歴史に幕を下ろすことになったのです。

近年、JR東日本では週末を中心に運行されてきた臨時快速列車の「特急格上げ」が大きなトレンドになっています。その理由は様々ありますが、一つには「新型コロナウイルス感染症拡大の影響で落ち込んだ収支の回復」があるとされています。

ホリデー快速鎌倉」の指定席は、乗車区間にかかわらず一律530円となっています。一方でこれを特急へ格上げすれば特急料金を徴収できることになり、大幅な増収が期待できることになります。その料金設定は乗車距離によって異なりますが、特急鎌倉の場合は最安でも1,050円となっており、吉川美南鎌倉駅間の全区間を駅で購入すると何と従来の3倍以上の1,890円がかかることになります。

なお特急鎌倉ではえきねっとのトクだ値チケットレス)が設定され、これを含めると最安で960円の追加料金にて乗車できることにはなります。しかしこれでも従来から2倍近くの値上げとなり、割高感は否めません。

とはいえ感染症の影響で苦境を強いられているJR東日本の気持ちも分からなくはありません。現在のホリデー快速鎌倉と異なり「チケットレスでの乗車も可能となる」というプラスの側面も考えると、特急格上げはある意味「利便性の向上が図られている」という部分もあるのでしょう。

快速としての最終運行にあたるのは、鎌倉17:21発の〔ホリデー快速鎌倉〕吉川美南です。2018年からE257系(5両編成)にて運行されており、ホリデー快速鎌倉に使用されてきた歴代の車両の中では唯一JR発足後に誕生した車両となっています(他は115系、183系、185系等)。

足元には黄色い乗車口ステッカーもありますが、これが役目を果たすのも今日この瞬間が最後となります。「全車指定席」となったのは2018年からですのでそれほど古いステッカーではありませんが、それでも名残惜しい気持ちになります。

17:14発の上り普通列車が発車した後、すぐ2番線へと入線してきました。ここ鎌倉駅が始発となる列車ですが、後に続く普通列車が同じホームを使いますので、それほど停車時間は長くありません。絵柄のあるヘッドマーク等はないものの、前面の表示には「臨時」「快速」等ではなくはっきりと「ホリデー快速鎌倉」の文字が表示されています。これも今日が最後です。

乗り遅れないよう、車内へと入ります。21世紀に入ってからデビューした車両ですので座席の座り心地は十分良いですが、注目すべき点はヘッドカバーが掛けられていない点です。「ヘッドカバーがあれば特急列車、なければ普通・快速列車」というのが一つの基準のようですが、果たして来週からの特急鎌倉では掛けられるのか気になるところです。

大勢の人に見送られながら、列車は定刻通りに鎌倉駅を発車。日が傾きかけた鎌倉市内の山あいを進んでいきます。

列車はこの先北鎌倉、大船、横浜、西国分寺、新秋津、東所沢、北朝霞武蔵浦和南浦和、南越谷、越谷レイクタウンへと停車したのち、終点吉川美南へ至ります。

鎌倉から数分で、次の北鎌倉へと停車。鎌倉駅とあわせ、鎌倉観光の拠点となる駅です。鎌倉駅に比べるとそれほど規模の大きな駅ではありませんが、鎌倉方面への行楽客を運ぶ臨時列車は季節を問わず基本的に停車します。

鎌倉駅発車前にえきねっとで検索してみると、ラストランの指定席は「×」の表示。もちろん区間によっては空席もあるでしょうが、流石の人気ぶりです。

車内を見渡してみると、もちろん鉄道ファンが多いものの、そうではない行楽客も相当数いるように見受けられました。三連休の最終日、親子連れ・老夫婦・友人同士などで鎌倉観光を一日楽しんだのち、その思い出話に花を咲かせている光景があちこちで見られます。

客室上部の表示器には、次の駅や広告等の表示は一切なく、終始真っ暗のままでした。またその左にある「指定席」「自由席」の文字はどちらも点灯していませんでした。特急格上げ後、「指定席」の文字が点灯したり表示器を使用したりすることはあるのでしょうか…。個人的にはここに表示される「次は 北鎌倉」等の文字を見てみたいものです。

列車は続いて大船駅に到着。神奈川県内でも屈指のターミナル駅ですが、何と特急格上げ後はここ大船駅を通過してしまうことになっています。

もちろん大きな駅ですから、時刻表上では「通過」扱いとなっていても実際には運転停車をする可能性は大いにあります。しかし「ホリデー快速鎌倉」「吉川美南」という文字がここ大船駅で表示されることはこれからもうないわけで、何だか信じられない思いです。臨時列車ゆえのカクカクとした黄色い「吉川美南」の文字とも当面お別れになりそうです。

大船駅ではちょっとしたトラブルがあったようですが、再開扉を経て無事に出発。

戸塚の手前で列車は横須賀線から東海道線へと転線し、戸塚駅では東海道線ホームを通過します。東海道線横須賀線の列車がどちらも定刻で運行されているからこそ、スムーズな転線が可能となるのですから凄いことです。

17:43に列車は横浜駅へと到着。もちろんここでは東海道線ホーム(7番線)に入ります。ホーム上には大変多くの鉄道ファンの姿がありました。

私自身神奈川県民ゆえ、鎌倉へ行くのにわざわざこの「ホリデー快速鎌倉」を使ったことは実はほとんどありません。しかしなぜ今回ラストランへ乗車するに至ったかといえば、地元であるここ横浜駅で日常的に「ホリデー快速鎌倉」の文字を見ていたからこそなのです。

「横浜を出ると次は西国分寺にとまります――」。快速運行最終日の今日も、そんないつもの放送を聞くことができました。

横浜線と並走しながら、列車は横浜駅を発車。この瞬間をもって神奈川県内の駅から乗車できる「ホリデー快速」は全て姿を消したことになります

鶴見駅の手前で列車は東海道線から貨物線へと転線し、京浜東北線鶴見駅ホームが見える位置で運転停車。ここで乗務員交代が行われます。短い時間とはいえ、ホームのない場所で停車するというのも臨時列車ならではの光景です。

1分ほどの運転停車を終えて発車し、列車は新川崎方面へと進んでいきます。横須賀線と並走するように走る貨物線を走行していきますが、その見える景色は横須賀線のそれとは大きく異なっており、右手側には多数の留置線と貨物列車の姿が見えます。

まもなくすると列車は武蔵野貨物線の長いトンネルへと入ります。走行ルートは南武線と似ているものの、それとは全く別の線路です。トンネル内はもちろん真っ暗で、通信機器も圏外となります。まるで山あいを走る夜行列車のような雰囲気です。

E257系は元々特急列車向けに開発され、今もなお房総半島では〔わかしお〕〔さざなみ〕等で幅広く運用されています。背面テーブルも大きく、首都圏の普通列車グリーン車と似たような設備です。残念ながら車内にWi-Fiやコンセントはなく、また背面テーブルの妙な色褪せ具合を見ると時代を感じさせてくれます。

近年は感染症対策や合理化の波に流され、指定券への入鋏印は省略される傾向にあります。しかし今回この列車では入鋏印を押していただくことができました。しっかりとこのラストランに乗車したことの何よりの記念になります。

しばらくして貨物線の長いトンネルを抜けると、辺りはすっかり真っ暗になっていました。列車はまもなく東京都へと入り、その後しばらくして多摩川を越えます。

鶴見駅での運転停車から40分ほどノンストップで走り続け、18:27に武蔵野線西国分寺駅へと到着。中央線との接続駅ということもあり、ここで結構な数の降車がありました。

西国分寺駅でも、発車標にはしっかり「ホリデー快速鎌倉」の文字が表示されていました。時間帯によっては混雑が激しく、かつほぼ全列車が各駅停車である武蔵野線内においてはもしかすると530円の追加料金を払ってでも「ホリデー快速鎌倉」で武蔵野線内のみを移動する、という需要もこれまではあったのかもしれませんが、全車指定席の特急ともなると今後はそう気軽に利用できることはあまりなさそうです。

新秋津駅西武池袋線秋津駅と接続しています。横浜駅や東京都内での乗り換えを回避して西武池袋線沿線と鎌倉を結ぶルートは一定の需要があるようで、ここでも若干の降車がありました。

その次の東所沢駅は、特急格上げ後に通過となってしまう駅の一つ。発車標にはしっかり「ホリデー快速」の文字が灯っていますが、これも最後の瞬間です。

北朝霞駅は、今から8年半ほど前に私が185系の「ホリデー快速鎌倉」を撮影した思い出のある駅です。当時中学生の私は「こんな遠い場所から鎌倉まで直通で行けるのか」と感動したのをとてもよく覚えています。

埼京線と接続する武蔵浦和駅でも一定の降車がありました。行楽客は武蔵野線に入り各停車駅でどんどん降車していきますが、それと入れ替わりで少しの区間であっても最後に乗車しておきたい鉄道ファンが少しずつ増えていき、武蔵野線内に入ると乗客の「鉄道ファン率」が次第に上がっていくのを感じます。

次の南浦和駅京浜東北線と接続する主要駅ですが、特急格上げ後は通過となってしまいます。決して停車の需要が低いわけではないと思うのですが、やはり特急にするにあたり停車駅を絞って所要時間の短縮を狙っていたりするのかもしれません。

この辺りまで来ると車内に行楽客の姿はだいぶ減り、空席も目立つ様子。南越谷駅は2011年から2021年までの約10年間に渡りこの列車の発着駅となっていたこともあり、個人的に「ホリデー快速鎌倉」の上り列車といえば南越谷行のイメージが非常に強いです。

越谷レイクタウンも、特急格上げ後は通過となってしまいます。吉川美南発着になった2021年秋からわずか1年間の停車となりました。

そしていよいよ、列車は終点の吉川美南駅へと到着します。

実はこの「吉川美南駅」自体も、2012年に開業した比較的新しい駅。1990年の運行開始当初は想像もしなかったような車両で、想像もしなかったような終着駅でフィナーレを迎えようとしています。

鎌倉駅を出てから約2時間、列車は定刻通り19:17に終点の吉川美南駅へと到着。

この瞬間、32年間の歴史に幕を下ろしたことになります。

あいにく車内での「さよなら放送」等はなかったものの、ホームに降り立ってみると何と「ホリデー快速鎌倉 最終回送」の文字が!!!!! 粋な計らいに、思わず涙がこぼれそうになります。

本日をもって「ホリデー快速鎌倉」はラストランを迎え、残るは「ホリデー快速おくたま・あきがわ」のみとなりました。しかしあちらは全車自由席での運行ですので、指定席を連結したホリデー快速としては完全に廃止されたことになります。

神奈川県内で度々「ホリデー快速鎌倉」の文字を見てきた私としては少々残念な思いもありますが、「特急鎌倉」となった後もたくさんの人に愛される列車となることを願っています。

 

本日も最後までお読みいただきありがとうございました。

【速報】西九州新幹線「かもめ」ついにデビュー! 超満員の自由席に乗車

 

2022年9月23日(金)

本日やってきたのは、福岡県の博多駅

いよいよ待ちに待った、西九州新幹線開業日です。

西九州新幹線は、武雄温泉~長崎駅を結ぶ新幹線です。途中には「嬉野温泉」「新大村」「諫早」という3つの駅が設置されます。

昨日まで46年間に渡り運行されてきた在来線特急「かもめ」と異なり、新幹線が直接博多駅へ乗り入れるわけではありません。博多~武雄温泉駅間では在来線特急〔リレーかもめ〕を運行し、その乗り換え駅となる武雄温泉駅では新幹線と在来線の対面乗り換えを行います。

この方式は過去に前例があり、2004年に九州新幹線新八代鹿児島中央駅間で先行開業した際に博多~新八代駅間で在来線特急〔リレーつばめ〕が運行され、今回の武雄温泉駅と同様に新八代駅で対面乗り換えとしていました。このシステムは2011年に九州新幹線が全線で開業したことにより解消されたため、本日それが11年ぶりに復活したということになります。

それでは、まず博多駅より10:52発の特急〔リレーかもめ21号〕へと乗車していきます。

先に述べた通り、このリレー特急はあくまでも武雄温泉駅までの運行です。しかし駅の発車標や案内放送等では統一して「長崎行」と案内されています。「リレーかもめ号が長崎へ行く」わけではないので若干混乱を生むのでは…という気もしましたが、在来線特急〔リレーかもめ〕と新幹線〔かもめ〕は2つ合わせて1つの列車であるという考えのようで、乗り換えの煩わしさをなるべく感じにくくさせようとする工夫であるとも思いました。

ホーム上の発車標では、武雄温泉駅にて接続する新幹線の停車駅も併せて案内されていました。博多駅の在来線ホームで見る「嬉野温泉」「新大村」といった新駅がとても新鮮です。

まもなくすると、4番線に列車がやってきました。「8両編成」と聞いて783系を連想された方もいらっしゃるかもしれませんが、こちらは787系での運行です。JR九州を象徴する特急車両の一つで、今年デビュー30周年を迎えました。これまで在来線特急「かもめ」等では7両編成で運行されてきましたが、1両増結し「787系の8両編成」が誕生しています。

車両側面の行先表示器も「長崎」と表示されています。一方でその下の画面には「武雄温泉で新幹線に接続」と出ており、混乱が生じにくくなるように工夫されていると感じました。

無事に乗り込み、列車は博多駅を発車。奇しくも本日はちょうど鹿児島本線で大幅なダイヤ乱れが発生しており、遅延していた他の列車からの接続を取ったため、定刻よりも2分ほど遅れての発車となりました。

列車は1号車がグリーン車、2~4号車が指定席、5~8号車が自由席です。自由席は窓側がほぼ全て埋まるくらいの混雑ではありましたが、通路側まで埋まっている区画は少ないように見えました。

今回は博多から長崎まで、全区間自由席を利用していきます。それにあたり購入したのが、こちらの「かもめネットきっぷ」。JR九州のインターネット予約限定割引きっぷで、博多~長崎駅間が4,200円で移動できます。駅で購入した場合、博多~長崎駅間は乗車券と自由席特急券を合わせて5,520円となりますので、約24%OFF。当日でも購入可能なので、大変オススメです。

ただし注意点としては、指定席・自由席とも同額のため、自由席の方が割引率は小さくなり、若干ですがお得感は減ってしまいます。本当は私も今回指定席を予約したかったのですが、あいにく満席のため自由席にせざるを得ませんでした…!

鹿児島本線内で見事な回復運転を見せ、鳥栖駅には定刻通り11:15に到着。しかしここで別の接続列車が遅れていたようで、その列車からの接続を取るため定刻よりも4分ほど遅れて11:20頃の発車となりました。せっかく回復したんですが…こればかりは仕方のない事です。

鳥栖から先は長崎本線へと入り、すぐに次の新鳥栖駅へも停車。到着前の案内表示で「新幹線はお乗り換えです」という表示がなされており、これはあくまでも九州新幹線(熊本・鹿児島中央方面)への案内であると思われますが、新幹線リレー特急を謳っているこの列車の車内でそのような案内では、一見すると「西九州新幹線への乗り換えをこの新鳥栖駅で行わなければならない」と勘違いする方も出てしまうかもしれない…という懸念を抱きました。恐らく在来線特急〔かもめ〕時代からのテキストがそのまま使用されているということだと思われます。何せ昨日までJR九州管内には新幹線が1路線しかなかったのですから、これも仕方のないことです。

鳥栖駅で再び発生してしまった遅れを取り戻そうとしているのか…は分かりませんが、佐賀県内を列車は120km/h程のハイスピードで走行していきます。787系でこの区間を走ること自体は何も昨日までも珍しいことではありませんが、この先で新幹線に乗り換えることを思うと「どうせならこの平野も新幹線でかっ飛ばしたいなぁ…」と思わずにはいられません。

しかし苦労も虚しく、遅れはほとんど取り戻せないまま佐賀駅へと到着。ここで結構な数の方が降りていかれましたので、「リレー特急」を標榜しているとはいえ博多~佐賀駅間での移動需要は昨日までと変わらずこの列車が大きな役割を果たしていくのだ、ということを実感いたしました。

佐賀の次は江北へと停車します。「こうほく」と読むこの駅は、昨日まで109年間に渡り「肥前山口」という駅名でした。鉄道ファンならまだしも「地元の一般の方にこの今回の駅名改称が浸透しているのか…?」というのが若干気になります。9月23日以降に使用する乗車券であっても、9月22日までに購入した場合は「肥前山口」という印字になるはずですので、まだ今日のうちは「肥前山口」と書かれた乗車券を手に江北駅へ降り立つ方もいらっしゃったことでしょう。

もちろんホーム上の駅名標は新しいものに取り替えられています。汚れや傷のない新品の駅名標ですが、デザインはこれまでのJR九州のものから特に大きな変更はなさそうです。

江北を出ると、列車は長崎本線を離れ佐世保線へと入っていきます。

「長崎方面への列車」であるにも関わらず「長崎本線を離れる」というのはいかにも不思議なことですが、実は今から88年前の1934年まではこの早岐方面へと進むルートこそが「長崎本線」であり、当時まだ佐世保線大村線といった路線名ではありませんでした。すなわち今回の新幹線開業によって「戦前の頃までの博多~長崎駅間のメインルートが、その一部を新幹線という高速鉄道に置き換える形で復活した」と言うこともできるのです。

江北を出ると、次はいよいよ対面乗り換えが行われる武雄温泉となります。ここでは車内放送にて「次は終点の武雄温泉、武雄温泉です」という言い回しが用いられていました。流石にここで「終点」という言葉を使っておかないと、武雄温泉に着いてもそのまま乗り続けようとしてしまう方もいそうですので、この先の円滑な乗り換えのためにも「終点」という言葉は欠かせないと思います。

江北(旧肥前山口)~武雄温泉駅間では、以前から特急〔みどり〕〔ハウステンボス〕が運行されていましたが、今回リレー特急の運行が始まったため、この区間の特急運行本数は大幅に増加したことになります。これを見越して同区間ボトルネックとなることのないよう、複線化工事が進められていました。

そしてようやく、終点の(?)武雄温泉駅へと到着です!

結局鳥栖で発生した遅延を回復させることはできず、所定11:55着予定のところ4分ほど遅れて11:59頃の到着となりました。

対面乗り換えが行われる武雄温泉駅では、10番線がリレー特急専用ホーム、11番線が新幹線ホームとなっています。ホーム上は家族連れ、鉄道ファン、関係者などで大混雑しており、乗客はとにかく乗り遅れまいと新幹線へ乗り込むので必死の様相です。

新幹線〔かもめ〕は6両編成で、1~3号車が指定席、4~6号車が自由席になっています。おおよその座席等級はリレー特急と同じような停止位置になるよう揃えられていますが、とはいえ人が多いこともありホーム上は混沌とした雰囲気です。本来のダイヤであれば、11:55に到着した〔リレーかもめ21号〕から乗り換えて新幹線〔かもめ21号〕は11:58に武雄温泉を発車するはずですが、そもそもリレー特急の到着が遅れているので新幹線もそううまく発車できるはずがありません。

ともかく、私自身も指定席を取ることができなかった自由席の乗客ですから、これに乗り込まなけばなりません。何とか間に合い、列車はドアを閉めることができました。武雄温泉駅の発車は12:02頃、リレー特急の遅延を引き継ぎやはり4分遅れでの発車となりました。

何とか乗り込めたは良いものの、新幹線の車内は通路にもデッキにも乗客が溢れるほどの大混雑。身動きが取れず、まるでお盆や年末年始の東海道新幹線を思わせます。

というのも、この西九州新幹線で本日デビューした車両は「N700S」。基本的な設計や構造は東海道・山陽新幹線のものと酷似しており、いわば「我が国の大動脈で使用されている新幹線と同じ形式が西九州へ投入された」ということになります。

武雄温泉駅を出てわずか数分で、列車は次の嬉野温泉へと到着。ここでうまくタイミングを見て、自由席の客室内へと入ることができました。

嬉野温泉駅は、新幹線開業に合わせ新たに造られた駅の一つ。在来線との接続はありませんが、それまで長らく鉄道路線のない状態が続いていた嬉野の街に新幹線が来るとあって、現地では大変な盛り上がりのようです。

列車は嬉野温泉駅を発車。自由席は3+2列のシートですが、通路側やB席までも全く余裕がないくらいびっしりと埋まっています。

ドア上部のディスプレイも東海道・山陽新幹線のN700Sと同じく大変大きくて見やすいものとなっています。これまで私も何度か東海道新幹線のN700Sには乗車していますが、見る行先はいずれも「東京」「新大阪」等ばかりでしたので、ここに「長崎」の文字が表示されるのは大変新鮮です。

嬉野温泉駅を出てしばらくすると、列車は次第に海沿いへと出ていきます。険しい地形を直線的に貫くように建設されているためトンネルの区間が多いですが、ところどころで大村湾の景色が見える瞬間もあり、この絶景は乗車したら是非ともチェックしたいところです!

本日はあいにくの曇天につきぼんやりとした景色ではありましたが、また晴れの日に改めて乗車できる日を楽しみにしています。

続いて列車は大村駅へと到着。こちらも本日開業した新駅ですが、嬉野温泉駅と異なりこちらは並走する大村線にもホームが設置されており、乗り換えることができます。新大村駅の近くには西九州新幹線車両基地があり、朝夕の数本はここ新大村発着で運行される新幹線が設定されています。

九州新幹線の方では駅名標が濃い色をしていますが、西九州新幹線においては在来線を踏襲したような白地に黒文字のものになっています。同じJR九州管内の新幹線でありながらこうした違いがあるのも興味深いところです。

何とこのタイミングで、運良く目の前の席が空いたため、ここ新大村駅からは着席できることに!

シートの形状や大きさはやはり東海道等のN700Sと同じのようですが、モケットの色は鮮やかな黄色で東海道等の青色とは異なっています。また、ヘッドカバーが付いていないのも大きな特徴です。

背面テーブル、コンセント、Wi-Fi等一通りの設備もしっかり備わっています。ちなみに指定席には背面テーブルがないそうなので、しっかりとお弁当等を広げたい場合は自由席がオススメかもしれません(そもそも走行時間が短いので食べている時間があるかは別ですが…)。

駅到着時には、やはり荷棚のライトが明るく光り、降車客へ注意を促すようになっています。モケットも暖色系なので、客室内全体を通じ洗練されたデザインながらも温かみがあると感じました。

最後の途中駅は諫早駅。こちらは以前からある在来線の駅に接続するかたちで建設されており、長崎本線大村線島原鉄道と乗り換えることができます。

武雄温泉駅の時点で4分遅れだったこの新幹線ですが、途中駅での乗降に時間がかかったこともあり、諫早駅を何と8分遅れで発車。「新幹線といえば定時運行」のイメージがある方も多く、「8分遅れ」の旨がが車内で放送された瞬間に乗客からは苦笑いが巻き起こっていました。

諫早駅の次は、いよいよ終点の長崎駅となります。ここ長崎駅は新幹線・在来線ともにその先へ線路が続くことのない”終着駅”ですが、長崎本線への乗換案内はしっかりと行われました。特に在来線で長崎駅の一つ手前にある「浦上駅」は、昨日まで全ての特急列車が停車していた駅で、そうした方面への乗り換えの需要は一定数あるものと思われます。

諫早長崎駅間もトンネルの区間が長く、気づけば長崎の街が見えてきたところですぐに到着といったところ。在来線の市布経由よりもさらにショートカットしているので、本当にあっという間です。

12:37頃、列車はようやく終点の長崎駅へと到着。本来であれば12:29着予定ですから、最終的に8分遅れでの到着となったことになります。武雄温泉~長崎駅間はせいぜい30分程度ですので、そうした中で8分も遅れるというのはかなり大きな遅れのような感覚になります。

先頭車両の形状はご覧の通り。大部分では東海道等のN700Sと同じですが、ライトや床下の色合いが少し違っています。目がくっきりとしている印象で、とてもスタイリッシュです。

ホーム上は大変な人だかりで騒然としていました。本来であればこの列車は折り返し12:41発〔かもめ28号〕となるようですが、そもそも遅れをもって到着したこともあり、なかなか時間通りには発車できないようでした。

改札口の外に出てきてみると、カウントダウンボードは「あと0日」を示していました。またその脇には地元メディア等からの花が届いており、さながらテレフォンショッキング感があります(笑)。

長崎の街はあいにくの雨でしたが、かつて在来線の地上ホームがあった辺りは半分ほどが舗装されイベントスペースとして活用されていました。まだまだ工事中のエリアも多いようですが、本日の新幹線開業を皮切りに西九州全体がさらに活気で溢れることを期待したいと思います!

また、従来の在来線特急と比較して西九州新幹線はとても乗り心地がよく、走行音も静かで快適であることは言うまでもありません。1日も早く、この快適な新幹線で乗り換えなしで博多~長崎が結ばれることを願ってやみません。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

【さようなら】在来線特急「かもめ」グリーン個室で乗り納め…46年の歴史に幕

 

2022年8月12日(金)

おはようございます。早朝の長崎駅へとやってきました。

今回は長崎から博多まで、贅沢すぎる方法で移動していきます。

まもなく開業の日を迎える西九州新幹線。その終着駅である長崎駅では、2020年3月に在来線ホームの高架化が完了しました。それまでの地上ホームよりやや西へずれた位置に設置され、かつてホームのあった場所は更地となっています。

かつてここにずらりと並んでいた頭端式ホームには、首都圏や関西等からも寝台列車がやってきていました。しかし高架化から2年以上が経過した今となっては見る影もなく、広大な跡地を重機が往来しています。こちらは2022年8月時点での様子ですが、まだ広場の完成には程遠いようにも見えました。果たして9月23日までにある程度形になるのでしょうか。

本日乗車するのは、長崎7:26発の特急〔かもめ6号〕博多行です。発車標には「長崎本線 佐賀・鳥栖・博多方面」と明確に記されており、ここ長崎から1本の線路がしっかりと繋がっていることを実感します。

ホームに上がると、既に列車は入線していました。すぐ横が新幹線ホームとなっている5番線に入線しているのが、九州を代表する特急車両「787系」(7両編成)です。濃いグレーの車体は独特の存在感があり、前面はシャープな顔をしています。実は今年でデビュー30周年を迎える車両で、1992年に博多~西鹿児島(現・鹿児島中央)駅間を結ぶ特急〔つばめ〕として運行開始しました。

その2年後、1994年に787系は初めて特急〔かもめ〕へ投入。1990年代から2000年代にかけ何度か運用復帰と撤退を繰り返しながら、2011年には九州新幹線(博多~鹿児島中央駅間)全線開業。これに際し在来線特急〔リレーつばめ〕が廃止され、余剰となった787系は特急〔かもめ〕へ本格的に転用され今日に至ります。

近年の特急〔かもめ〕は基本的に787系もしくは885系での運用となっており、両数や車内設備に大きな違いがあることから運用は固定となっています。787系とは対照的に885系の方は真っ白な車体が特徴で、それぞれ「黒いかもめ」「白いかもめ」等と呼び分けられています。

発車時刻が近づいておりますので、早速車内へ。今回利用する設備は…!

何と最上級設備「グリーン個室」です!

1列車あたり1室しかなく、普通車や他のグリーン車の座席とは異なりプライベートな空間が保たれる完全個室になっています。

787系は、7両編成のうち長崎寄り1号車がグリーン車。その中でも「グリーン車」「DXグリーン車」「グリーン個室」の3種類があり、「SALOON COMPARTMENT」と書かれた木の扉があるのがグリーン個室になります。扉の脇には「空室/使用中」を指でスライドして切り替える表示がありました。

列車は定刻通り、7:26に長崎駅を発車。グリーン個室の窓から長崎駅の新幹線ホームを眺めることができるのも今のうちです。

長崎駅を出てすぐ、列車は隣の浦上駅へと停車。ここに新幹線のホームは設置されないため、西九州新幹線開業に伴い”割を食う”駅の一つで、博多からはこれまで乗り換えなしで来れていたところを最低でも2回の乗り換えが発生することになります。

ここで室内を物色していきましょう。壁面にはコントロールパネルがあり、スピーカーのON/OFF操作等ができるようになっています。また、トイレの空室状況が分かるのもとても便利ですね。

その横にはクローゼットがあり、中にはハンガーが1本と1着だけ衣類を掛けられるくらいのスペースがあります。複数人で利用することを想定した設備なのでいささか小さいような気もしましたが、ともかく夏はあまり使うことはないでしょう。

グリーン個室の定員は4人で、3人がけのソファと1人がけのリクライニングシートが設置されています。中央のテーブルは折り畳み式で、広げると4人で利用するのに十分な大きさとなります。

JR九州の4人用グリーン個室は、定員以内であれば何人でも利用可能となっています。この際に必要なのが「利用人数分の運賃+自由席特急料金」「グリーン個室料金」です。

上の画像は、運賃を除く諸料金の合計が5,400円、すなわち運賃に5,400円を追加することで長崎~博多駅間でグリーン個室を利用できるということになります。この5,400円のうち、2,200円は1人分の自由席特急料金(151~200キロ)で、指定席特急料金から530円値引きした金額です。

そして残りの3,200円がグリーン個室料金(101~200キロ)となっています。グリーン個室料金はグリーン料金のちょうど2倍となっており、この個室を2人で利用すれば、1人あたりは通常のグリーン席を利用するのと変わらない料金ということになります。

残念ながら車内販売等の設備はありませんので、長崎駅改札口近くにあるファミマで朝食を購入。せっかくのグリーン個室なので豪華にいこうといろいろ奮発したら買いすぎてしまいました(笑)。いつも食べているようなパンであっても、個室で食べると5割増しで美味しく感じます。

諫早駅を発車し、しばらく進むと目の前には有明海雲仙岳が見えてきます。この日はあいにくの天候でしたが、ふかふかの大きなソファを独り占めして大きな窓から眺めるオーシャンビューはいつもと違って見えるものです。

この諫早肥前鹿島駅間は、全ての特急〔かもめ〕がノンストップで駆け抜けます。それもそのはず、両駅は55kmほど離れていますが、途中に特急停車の需要があるほど大きな街が存在しないのです。

今でこそ「長崎本線」は有明海沿いを通るルートで定着していますが、かつては現在の佐世保線大村線経由のルートが「長崎本線」でした。これに対し現在の肥前鹿島経由のルートは「有明線(有明東線、有明西線)」という支線でしたが、1934年にこれが全線開業すると有明線が「長崎本線」へと編入され、同時にそれまで本線だった方のうち肥前山口早岐駅間が「佐世保線」、早岐諫早駅間が「大村線」という現在の形になりました。

9月23日以降、諫早肥前鹿島駅間を走る定期特急列車は1本もなくなります。列車の待避や行き違いがぐっと減るでしょうから普通列車の表定速度が上がり沿線の利用者にとっては便利になる反面、鉄道ファンとしては些か残念な気持ちにならずにはいられません。

肥前鹿島駅では、長崎へと向かう下り特急〔かもめ5号〕と行き違いを行いました。ホーム上では一瞬ながら787系が並んだということになります。

ここ肥前鹿島駅は、新幹線の線路から大きく離れており、新幹線の直接的な恩恵を受けることはありません。しかし新幹線開業によって特急〔かもめ〕は廃止されてしまうので、代わりに肥前鹿島発着の特急〔かささぎ〕を運行することで博多方面への足を確保することにしています。1面2線でそれほど線路容量に余裕があるようには見えない駅ですが、この駅を始発・終着とする特急列車が本格的に運行されることになるわけです。

まもなくすると、列車は佐世保線と合流する肥前山口駅へと到着。9月23日からこの駅は町名と同じ「江北駅」に名を改めることになります。

1895年に「山口駅」として開業したこの駅は、1913年に山口県内に同名の駅が誕生したため「肥前山口駅」へと改称。今年、その駅名は実に109年の歴史に幕を下ろすことになります。

続いて佐賀県の県庁所在地、佐賀駅に到着。特急を利用して博多~佐賀駅間を移動した場合、所要時間は40分程度となっており、フル規格新幹線の必要性が薄いと主張するのも頷ける気がします。

長崎を出てからここまで約1時間半が経過しましたが、いっこうに疲労のたまる気配がありません。それもそのはずで、こんなにも広い空間を一人で占有しているのですから、人目を気にせずゴロゴロし放題です。複数人で乗る場合にも、うるさくなり過ぎないよう注意すればそれなりに人目を気にせずおしゃべりしながら過ごすことができ、良い思い出になりそうです。

九州新幹線の高架が見えてくると、まもなく列車は新鳥栖駅に到着。西九州新幹線が博多方面へと繋がる暁にはここ新鳥栖が合流・分岐地点となりそうですが、その目途は全く立っていません。

車窓右手に駅前不動産スタジアムが見えてくると、鳥栖駅に到着して長崎本線は終わりとなります。この先は鹿児島本線へと乗り入れ、いよいよ終点博多駅を目指します。

沿線には住宅も増えてきて、いよいよ都会が近づいてきていることを実感します。一部の特急〔かもめ〕は二日市駅に停車するものがありますが、今回乗車している特急〔かもめ6号〕は鳥栖博多駅間ノンストップです。

博多駅入線直前には、熊本方面へと向かう新幹線〔つばめ〕や普通列車とすれ違い。

次々発車していく列車に加え、背後にはヨドバシカメラも見え、一大ターミナル駅へと入っていくのを実感します。

列車は定刻通り、9:24に終点の博多駅へと到着。

長崎から博多まで、約2時間の贅沢な移動を堪能することができました。

 

 

さて、まもなく開業する西九州新幹線

それに伴い、今日まで走ってきた在来線特急〔かもめ〕はその長い歴史に幕を下ろします。

西九州方面への在来線特急列車として運行を開始したのが、今から46年前の1976年。

しかしそれよりもさらに前から「かもめ」という列車名は存在しており、元を辿れば戦前の1937年に東京~神戸駅間で運行開始した「鷗」の登場から数えると実に85年も前から存在してきた在来線の格式高い列車名であると言えるでしょう。

そんな「鷗/かもめ」は、まもなく在来線の線路を離れ、新幹線としての歴史に新たな1ページを刻もうとしています。

 

不安なことも多い、今の時代。

決して誰もが、この新幹線の開業を心の底から喜んでいるわけではないかもしれません。

しかし、地元にとって年の悲願であった夢の超特急。

これまでよりも、く、快適に。

きな期待に、胸をふくらませて。

しくてたまらない日々がやってくると信じて。

その姿が、沿線に新たな風を運んでくれることを願って。

その瞬間を、私は楽しみに待ちたいと思います。

 

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

【福岡県内今月ラストラン】特急「かわせみ やませみ」で博多へ! 快適すぎる座席に感動

 

2022年8月10日(水)

今回やってきたのは福岡県の門司港駅鹿児島本線の起点となっている、九州の古くからの鉄道の玄関口です。

駅舎は重要文化財に指定されており、駅周辺は「門司港レトロ」として北九州市内で人気の高い観光エリアとなっています。今でこそ本州方面へと続く本線に対して門司港は支線の終点のようなイメージがありますが、かつて下関~門司間が連絡船で結ばれていた頃はその重要な乗り継ぎ駅としての役割を果たしていました。

駅舎内へ入ると天井が高く、その一角に自動券売機が置かれています。かつて人が対面で切符を売っていた頃の窓口のような名残がありますが、これとは別にみどりの窓口が駅を入って左側のところに設けられています。

改札口のそばには「関門連絡船通路跡」と書かれた地下道の入口のような場所があります。この地下道は駅構内からそのまま海峡方面へと繋がっているようで、連絡船と列車のスムーズな乗り継ぎができたようです。残念ながら現在この地下道は通ることができず、また大きなパネルで塞がれており中の様子を伺うことはできません。

そんな門司港駅より、今回乗車するのは15:19発の特急〔かわせみ やませみ91号〕博多行。発車標の限られたスペースに、かなり小さい文字ですが列車名がしっかりと表示されています。

5番線でしばらく待っていると、ゆっくりと列車が入線。見えているのは「やませみ」の方の車両で、深緑色の美しい車体が目を引きます。2両編成の気動車で、門司港発博多行として走る今回の場合は「かわせみ」が先頭となります。

「かわせみ」の方の車体は濃い青色をしています。広々としていて長編成も入線可能な門司港駅のホームにたった2両の気動車が停車している光景はなかなか不思議な感じがするものです。

発車時刻が近づいているので、早速車内へ。今回は2号車「やませみ」の通常座席(リクライニングシート)に乗車します。おなじみ水戸岡鋭治氏のデザインの車内では、モケットの色や模様が少しずつ違っており、照明やカーテン等の調度品も特別感があります。

列車は定刻通りに門司港駅を発車。途中門司、小倉、黒崎、折尾、香椎に停車して終点博多へと至ります。同区間では朝晩を中心に特急〔きらめき〕が運行されていますが、それより少し停車駅は少なめです。

2両とも全車普通車指定席で、特急券みどりの窓口にて定価で購入しました。お盆の繁忙期にあたるため、特急料金は通常よりも200円増しで1,330円。検札に来てくださった車掌さんが発券箇所の「横浜駅」というところに気づき、「遠いところからありがとうございます!」と言ってくださいました。

「やませみ」車内には売店(ビュッフェ)があり、各種名産品が販売されています。外が暑かったこともあり、速攻で「くりりアイス」(380円)をチョイス。球磨産の栗をふんだんに使用した濃厚なアイスクリームで、とっても美味しかったです!

15:33に小倉駅へと到着。ここで山陽新幹線へ乗り換えてしまえばものの20分ほどで博多駅へたどり着くことができますが、もちろんそんなことはせず乗り続けます。

小倉駅ではすぐに発車する予定でしたが、何かトラブル(?)があったようで乗務員さんたちがホーム上で何やらバタバタとしていらっしゃいました。結果的に定刻よりも7分ほど遅れ、15:41頃に小倉駅を発車。何か他の路線からの接続を取ったのか、でもそれにしては乗務員さんがかなり焦っているように見えたので気になります。

小倉を出発すると、何本もの線路が架かる紫川を渡ります。目の前に見えている黒い建物はゼンリンミュージアムで、地図の歴史や文化について学ぶことができる大変興味深い施設です。

かつてスペースワールドがあったその跡地は再開発が進み、現在はアウトレットモールやイオンモール等の大型商業施設エリアになっています。車窓からは一瞬さっと見えただけでしたが、駐車場はかなり埋まっていましたので多くの人で賑わっていることでしょう。

黒崎駅折尾駅には特急〔ソニック〕〔きらめき〕等も含め全ての列車が停車します。この時点ではまだ遅れが回復している様子はありませんでした。

せっかくなので車内探検をしてみることにします。「かわせみ」の方にも同じリクライニングシートがあり、こちらは車体の色に揃え青を基調とした色合いです。やはりこちらも少しずつ座席の模様が違っているようで、細部までこだわったデザインです。

車内の一部にはカウンター席やボックス席もあり、カウンターからは窓の外を眺めながら移動を楽しむことができます。リクライニングこそしないものの、まるでおしゃれなカフェにいるかのような雰囲気です。

また、1人がけの椅子が並ぶカウンター席の反対側には、大人1人と子ども1人で利用することを想定した「ベンチシート」があります。通常の特急料金に210円加算することで利用でき、2人がけですが1つの座席として発売されます。

他にも車端部などにソファー席があり、こちらはベンチシートと異なり2人がけの座席が1席ずつ発売されるようです。

わずか2両編成でありながら実に多彩な座席設備があることが分かります。

遠賀川駅古賀駅福工大前駅では運転停車を行いました。遅延していたため時間調整が必要だったのか、それとももともと予定されていたものなのかは分かりませんが、あまりにも座席が快適すぎるのと鹿児島本線の線形が良すぎるのとで気づけば夢の中でした…!

実は元々、〔かわせみ やませみ〕は熊本~人吉駅間を結ぶ観光列車として2017年春のダイヤ改正から運行を開始しました。しかしその後2020年7月に発生した豪雨災害の影響で肥薩線が不通となる状態が今なお続いています。そこで復興応援企画として、同年8月より門司港博多駅間で臨時列車として運行されるようになりました。日によっては〔かわせみ やませみ〕だけでなく、同じく肥薩線で活躍していた観光列車〔いさぶろう・しんぺい〕を連結し4両編成で運行することも。

そして今月23日からは、再び活躍の場を熊本県内へ戻すことが発表されています。既に〔あそぼーい!〕や〔九州横断特急〕といった観光列車が運行されている豊肥本線の熊本~宮地駅間でダイヤ改正当日の9月23日より運行されることになっており、これに伴い9月19日のラストランをもって門司港博多駅間での運行は取りやめとなります。

しかしこの三連休中、現在進行形で九州を襲っている非常に強い勢力の台風14号の影響でJR九州管内では本日18日(日)より計画運休が行われており、これに伴い〔かわせみ やませみ〕も18日(日)・19日(月)は運休となることが発表されました。門司港博多駅間でのラストランは19日(月)の予定でしたが、これが17日(土)へと繰り上がったことになります。

最後の途中停車駅である香椎駅には、何と定刻通りの到着。恐らく私がウトウトしている間にとてつもない回復運転がなされたようです。

いよいよ新幹線と並走し始めると、博多はもう目の前。東海道・山陽新幹線N700Aと〔かわせみ やませみ〕が並走するのもこの夏が最後となることでしょう。

なんやかんやありながらも、無事に定刻通り17:00に博多駅へと到着。ちょうど帰宅時間帯を迎えており、郊外へと向かう列車を待つ通勤通学客でホーム上はかなり混雑しています。中には珍しい車両に興味を示しカメラを向ける人の姿もありました。

 

いよいよ9月23日からは、〔かわせみ やませみ〕の豊肥本線での運行が始まります。門司港博多駅間での2年間の締めくくりは残念な結果となってしまいましたが、今後の活躍にも期待したいと思います。

 

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

【まもなく廃止】長崎本線ほぼ全線走破! 「鳥栖発長崎行」全区間乗車

 

2022年8月11日(木)

今回やってきたのは佐賀県鳥栖駅。福岡市内方面へ直通する普通・快速列車が多数発着することもあり「福岡県」と勘違いされることがありますが、あくまでも佐賀県です。

本日はここ鳥栖駅を起点として佐賀・長崎方面へと続く長崎本線」のほぼ全区間を走破するロングラン普通列車へと乗車していきます。

長崎本線は、鳥栖長崎駅間を結ぶ西九州エリアの主要幹線。長崎県内の喜々津~浦上駅間は線路が二手に分かれており、長与経由(北側)の旧線と市布経由(南側)の新線があります。

鳥栖駅の改札口をくぐると、まさに「交通の要衝」と呼ぶにふさわしい多方面への列車の発車標がありました。「かもめ」「白いかもめ」「肥前山口」などなど、西九州新幹線開業によりまもなく見納めとなってしまう文字も随所に見られますが、その中でも今回私が乗車していくのは鳥栖15:44発の長崎本線 長崎行です。

鳥栖長崎駅間(市布経由)の営業キロは125.3km。これは東京~沼津駅間、東京~渋川駅間などに相当します。この距離だけ聞くと、「そこまでロングランでもないのでは?」「もっと長い距離を走る普通列車は世の中にたくさんあるだろ」と思われるかもしれません。

確かに、125kmという距離が全国的に見てとりわけ長いというわけではありません。しかし、実はこの列車の魅力は単なる「運行距離」そのものではないのです。

2022年9月23日、いよいよ西九州新幹線が武雄温泉~長崎駅間で開業します。現在は長与経由の旧線区間を除きほぼ全線が電化されている長崎本線ですが、この新幹線開業に伴い肥前浜~長崎駅間の電化設備が撤去され、非電化路線となってしまうのです。

このため、新幹線開業後は電化区間と非電化区間の境目である肥前浜駅にて普通列車の運行系統が分かれることになります。一部の気動車は電化区間にある江北(肥前山口)駅まで乗り入れる予定のようですが、これ以上佐賀・鳥栖方面へと直通してしまうと限りある気動車を非電化区間内で効率よく運用することができないため、いずれにせよ鳥栖長崎駅間を直通する普通列車というものはもうじき過去のものになります。

現在、鳥栖長崎駅間を直通する普通列車は上記の通りとなります。下り4本・上り2本で、所要時間はいずれも3時間前後となっています。

その中において、今回乗車する鳥栖15:44発を見てみると、何と長崎まで4時間近くかかっています。「どうせ乗るならば」ということで、今回はこの所要時間が最も長い鳥栖15:44発の長崎行に乗車していこうというわけです。

使用車両は817系(2両編成)。2001年にデビューした車両で、九州全土で広く活躍しています。長崎12:34発→鳥栖15:32着からの折り返し運用となっており、この日は若干の遅れをもって鳥栖駅へ入線してきました。

列車は定刻通り、15:44に鳥栖駅を発車。この先新鳥栖肥前麓、中原、吉野ヶ里公園、神崎、伊賀屋、佐賀、鍋島、久保田、牛津、肥前山口肥前白石、肥前竜王肥前鹿島、肥前浜、肥前七浦、肥前飯田、太良、肥前大浦、小長井、長里、湯江、小江、肥前長田、東諌早、諫早、西諌早、喜々津、市布、肥前古賀、現川、浦上、終点長崎33駅へと停車していきます(言いたかっただけ)。

車内は転換クロスシートで、頭の部分と腰の辺りは革張りになっています。鳥栖駅を出発する時点ではまだ沿線人口もかなり多い地域ですので、車内は立ち客もちらほらいるくらい混雑していました。

記念すべき(?)最初の停車駅は新鳥栖駅。2011年の九州新幹線全線開業時に長崎本線との乗換駅として設置されました。将来的には西九州新幹線の分岐駅としても計画されていますが、果たして実現するかは怪しいところです。

吉野ヶ里公園駅はその名の通り、吉野ヶ里歴史公園への玄関口となる駅。車窓右手には遺跡のようなものもちらほら見えました。歴史の授業で習った遺跡や寺社仏閣等の歴史的建造物を実際目の前にすると、謎の感動が生まれるものです。

鳥栖駅を出て約30分、16:12に佐賀駅へと到着。2面4線の高架駅で、特急も含め全ての旅客列車が停車します。

ここ佐賀駅では、8分間の停車時間があります。後続の特急〔みどり・ハウステンボス17号〕佐世保ハウステンボス行(佐賀16:17発)を先に通すためです。

2番線に姿を現したみどりテンボスは堂々の8両編成。このように、普通列車の旅では途中駅で特急の待避を行う場面が何度も出てきます。

無事に特急を先に通し、16:20に佐賀駅を発車。どんどん進んでいきます。

鍋島~久保田駅間には、「バルーンさが駅」があります。毎年10~11月に開催されている「佐賀インターナショナルバルーンフェスタ」の開催期間中のみ営業される臨時駅ですが、折からの感染症の影響で2020年はイベント中止、また翌2021年は無観客開催となっており、バルーンさが駅の営業は2019年を最後に行われていません

しかしながら、2022年は現時点で有観客開催が予定されており、このままいけば今年の秋は2019年以来3年ぶりの開設となりそうです!

唐津線が分岐する久保田駅の一つ隣、牛津駅の駅舎には何やら不思議なキャッチコピーが。はじめはどういう意味かさっぱり分からなかったのですが、どうやらここ牛津はかつて長崎街道の宿場町として多くの商人で賑わい、その際にこのようないわれがあったそうです。

16:35に列車は肥前山口駅へと到着。ここでは11分間の停車時間が設けられています。

長崎本線佐世保線の分岐駅であるここ肥前山口駅は、新幹線開業のタイミングに合わせ駅名を町名と同じ「江北(こうほく)」へと変更することが大きな話題になっています。また30年以上に渡り「最長片道切符」の終着駅として全国的にも有名な駅でしたが、新幹線開業に伴い大幅なルートの変更が発生することからゴール地点ではなくなってしまうことも注目を集めています。

長崎方面へと向かう〔かもめ〕と佐世保ハウステンボス方面へ向かう〔みどり〕〔ハウステンボス〕はここで分かれていくことになります。わずか10分ちょっとの停車時間のうちに下りは〔かもめ17号〕、上りは〔みどり・ハウステンボス22号〕がそれぞれ発車していきました。

ホーム上に売店や立ち食いそば等はありませんが、自販機があったので九州産の温州みかんを使用したジュースを購入。果肉の粒感をしっかり感じることができ、もはや四捨五入してみかんの丸かじりです。

肥前山口16:42発予定だった〔かもめ17号〕が7分ほど遅れていたため、その巻き添えを喰らうかたちで私の乗る鳥栖発長崎行の普通列車も定刻から4分ほど遅れ16:50頃の発車となりました。特急〔かもめ17号〕からの接続を取った16:45発予定の佐世保線早岐普通列車も定刻から数分遅れてこちらとほぼ同時に肥前山口駅を発車したため、地方の路線では珍しい「駅出発直後の並走」を見ることができました。ここからは佐世保線と分かれ、私の乗る列車は海沿いを進んでいきます。

肥前山口諫早駅間では、駅名に「肥前」とつく駅がとても多いのが特徴です。のっけから肥前山口肥前白石→肥前竜王肥前鹿島→肥前七浦→肥前飯田と6駅連続で到来します。土地勘のない人にとっては降りる駅を間違えてしまいそうになります。

肥前竜王駅では、上り〔かもめ94号〕と行き違いを行いました。鳥栖肥前山口駅間は複線でしたが、その先肥前山口諫早駅間は単線となるため頻繁に行き違いが生じます。上下線どちらか片方でも遅延が起これば、すぐに上下線全体へと遅れが波及してしまいます。

この辺りでは有明海に面した海沿いが広大な干潟となっており、遠くまで遮るものがありません。空の広さを実感することができます。

鹿島市の中心である肥前鹿島駅は、特急列車も停車する主要駅。ここではかなりの乗降がありました。新幹線開業に合わせ特急〔かもめ〕廃止後の代替列車である特急〔かささぎ〕はここ肥前鹿島駅を始発・終着として運行されるため、9月23日以降は博多駅でも「肥前鹿島」の文字を多く見ることができそうです。

watakawa.hatenablog.com

次の肥前浜駅には定刻よりも3分ほど遅れ、17:10頃に到着(定刻17:07着)。駅名標の真上に大きく掲げられている通り、ここは古い街並みが残る肥前浜宿観光の玄関口となる駅になっています。

冒頭でもご紹介した通り、ここ肥前浜駅より先の区間は電化設備が撤去され非電化になることが決定しています。現在乗車している817系電車ももちろんこの先へは進めませんので、「鳥栖発長崎行の普通列車」などまさに幻となる日はもうすぐそこまで来ています。

ここでも10分以上の停車時間があるため、いったん駅の外に出てみました。観光地の玄関口らしく、駅舎も味のあるデザインです。特急〔36ぷらす3〕の月曜日ルートは博多~長崎駅間を往復するものとなっており、その途中にあるここ肥前浜駅では長時間停車しておもてなしが行われています。新幹線開業後は電車特急である787系も長崎方面への乗り入れが不可能となるため、代わりに長崎ではなく博多~佐世保駅間の往復となりますが、その途中にわざわざ江北~肥前浜駅間を往復するかたちで肥前浜駅へも乗り入れるダイヤが組まれており、36ぷらす3のおもてなし停車は継続される予定となっています。

この肥前浜駅では、下り特急〔かもめ29号〕の待避および上り特急〔かもめ30号〕との行き違いを行いました。ここまでの遅れも回復させ、定刻通り17:22に肥前浜駅を発車。いよいよ非電化予定区間へと進んでいきます。

肥前七浦駅では、上りの普通列車と行き違いを行いました。鳥栖駅を出る頃は立ち客がわんさかいた車内ですが、この辺りまで来ると乗客はだいぶ少なくなっています。

多良駅では10分ほど停車し、上り〔かもめ32号〕との行き違いを行います。数駅おきに特急との行き違いor待避が行われており、これほどならば複線でもよいのでは…と思いましたが、そもそも新幹線開業後この区間にはほぼ特急が走らなくなるため、今さらその必要もなさそうです。

この辺りからは、いよいよ車窓左手に有明海の絶景が見えてきます。若干雲はあるものの晴れており、最高の眺めです!

17:54に佐賀県内最後の駅である肥前大浦駅へと到着。ここでは12分間の停車時間があり、上りの特急〔かもめ34号〕および普通列車肥前山口行)の行き違いを行いました。あっちも電車、こっちも電車…架線が張られた当たり前の光景が見られるのもあとわずかです。

18:06に肥前大浦駅を発車し、いよいよ長崎県内へと入ります。

長崎県に入って最初の駅は「小長井駅」。海に非常に近く、ちょうど駅からは真正面に雲仙岳の立派な姿を見ることができます。島原半島の象徴でもある雲仙岳では今から30年以上前の1991年に大規模な火砕流が発生しており、島原市内にはその時の災害遺構もいくつか残されています。

湯江駅でも10分弱停車します。ちょうど到着するタイミングで反対側のホームでは特急〔かもめ76号〕が運転停車をしており、さらにこの後下りの特急〔かもめ31号〕もやってきます。「特急どうしの上下行き違い」と「特急の待避」を同時にしてしまうという何とも神業的なダイヤが組まれています。

18:38には肥前長田駅へと到着。いよいよ諫早の市街地へと近づいてきて、駅前には次第に建物も増えてきたように感じます。

ここでの停車時間はわずか3分ほどですが、上りの特急〔かもめ38号〕との行き違いを行います。単線区間に入って以来「ついさっきも行き違いをしたばかりでは…」という光景が繰り返されており、明らかに普通列車よりも特急列車の方が本数が多いことは言うまでもありません。

そして18:48に諫早駅へと到着。肥前鹿島以来1時間45分ぶりの特急停車駅で、今度開業する西九州新幹線も全列車が停車します。上の画像では分かりにくいですが、ここからは発車標に「市布経由」という文字が現れました。ホーム上に貼ってある36ぷらす3のポスターが目立ちますが、もうすぐここ諫早駅に36ぷらす3はやって来れなくなります。

諫早より先、喜々津~浦上駅間ではルートが二手に分かれています。長らく長与経由の旧線ルートが使用されてきましたが、これに代わり新たなメインルートとして1972年に市布経由の新線ルートが完成しました。現在は新線のみ電化されていますが、この架線もまもなく剥がされ、電車の乗り入れは不可能となります。

新線ルートはあくまでも時間短縮が目的なので、途中にそれほど大きな駅はなく沿線人口も多くありません。市布駅では3分ほどのわずかな停車時間の中で上り特急〔かもめ40号〕との行き違いを行いました。

次第に辺りも暗くなってきたところで、19:12に現川駅へと到着。ここが最後の長時間停車となります。

既に長崎市内へと入っていますが、異国情緒あふれる街並みとは程遠い山あいの無人駅。辺りはうっそうとしており、駅名標国鉄時代のものからほとんど手が加えられることなく現在も使用されています。

現川駅は相対式ホームが配置されて列車交換が可能な上、その間には通過線があるため多くの列車が少なくとも数分間停車して行き違いや待避を行います。ちょうどこの時も上りの普通列車(小長井行)が停車しているところに、下りの特急〔かもめ33号〕が後ろからやってきました。現川駅でのこうした光景も、まもなく過去のものとなってしまいます。

さらに現川~浦上駅間には、全長6km以上にも及ぶ「長崎トンネル」があり、そのトンネル内にある肥前三川信号場でも列車の行き違いがしばしば行われます。今回はここで上り特急〔かもめ42号〕との行き違いを行いました。

トンネルを抜けるとすっかり長崎の市街地が見えてきます。最後の停車駅は浦上駅で、ここは全ての特急列車が停車する主要駅。しかしここに新幹線のホームは設けられておらず、新幹線開業後に博多~浦上駅間を移動する際は最低でも2回の乗り換えが必要となります。

いよいよ次が終点の長崎。運賃表には長崎本線のみならず佐世保線大村線からの運賃も示されており、西九州エリアの経路の複雑さが見て取れます。

鳥栖駅を出てから3時間53分、ついに終点の長崎駅へと到着です!!

途中何度か遅れがあったものの、最終的には定刻通り19:37の到着となりました。

お気づきかと思いますが、何といっても目立つのはやはり特急列車との行き違い・待避の多さ肥前山口駅を出てから、下りは〔かもめ29・31・33号〕の3本に追い越され、上りは〔かもめ94・30・32・34・76・38・40・42号〕の8本と行き違いを行いました。表定速度は約32.3kmで、かなりゆっくりと走ることは数字を見ても明らかです。

西九州新幹線開業後にこれらの特急が全廃されれば所要時間の大幅な短縮が図れることは間違いなく、沿線の方にとっても利便性向上が期待できそうです。

新幹線開業はとかくそれ自体の所要時間や特急の運行体系の変化にばかり目がいきがちですが、並行する在来線の所要時間短縮や速達化が図られる例も往々にして存在します。今回は長崎本線も経営分離されることなく引き続きJRの路線として存続し続けますが、電車で長崎まで行けるのはあとわずかですので乗りたい方はお早めに!

【おまけ】

夕食は長崎駅ビル内にある「ニッキー・アースティン」で名物のトルコライスをいただきました。メニューがとんでもなく多いのでかなり悩みましたが、とっても美味しかったです!!

 

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。