わたかわ 鉄道&旅行ブログ

乗り鉄&旅好きの20代男子が全国を巡る!

【全国でここだけ】阪急京都線の最優等列車「快速特急A」とは?

 

2022年8月28日(日)

今回やってきたのは阪急の大阪梅田駅。これから京都方面へおでかけしていきます。

大阪~京都間はJR、阪急、京阪等実に多くの移動手段がありますが、今回は阪急京都線を利用していくことにします。大阪梅田駅の頭端式ホームにずらりと並ぶマルーン色の車両たちは圧巻で、首都圏ではなかなか見られない光景です。

阪急京都線の発車標があったので、発車時刻を確認します。日中の阪急京都線は特急・準急・普通の3種類の種別がありますので、その中で最も速い「特急」へ乗車すればよいかと思いましたが、よく見てみると3行目に「快速特急A」という見慣れない表示があります。

10:30発の特急と比べてみると停車駅はかなり少ないようで、せっかくなのでこれに乗ってみることにしましょう。

3番線で待っていると、奥の方から列車が姿を現しました! 阪急おなじみのマルーン色…ですが、車体の前面には何やら扇子のようなものがくっついています。

こちらが大阪梅田10:32発の快速特急A 京都河原町です。この「快速特急A」はすなわち特別車両「京とれいん」を使用して運行される阪急京都線の最優等種別で、土休日に1日3往復のみの運行となっています。

使用車両は6300系で、1975年にデビューしてから半世紀近く走り続けています。「京とれいん」への改造が施されたのは2011年のことです。

この「快速特急A」という種別名は実は比較的新しく、2019年に登場したもの。2代目の「京とれいん雅洛」がデビューしたことでこちらが「快速特急」を名乗ることになり、先代の京とれいんは「快速特急A」として走ることになりました。なお京とれいん雅洛も同じく土休日のみの運行で、大阪梅田~京都河原町駅間に1日4往復が設定されています。

車体側面には「京とれいん」のロゴマークや和風のオリジナルラッピングが施されています。窓のシェードは何だか物々しさすら感じる独特なデザインですが、しっかりと上下に動かすことができます。

列車は6両編成で、全車自由席にて運行されます。別料金や予約等は一切必要なく、座席は早い者勝ちです。

1・2号車と5・6号車は一般的な転換クロスシートになっています。ただし阪急では珍しい「2ドア車」ということで、2人がけの座席が途切れることなくずらっと並んでおり、その光景は圧巻です。

真ん中の3・4号車は1+2列のボックスシート。すぐに埋まりますので、確実にここに座りたい場合はホーム上で並んで待っておくのがよさそうです。とても運賃のみで乗車できる列車とは思えません…!

列車は10:30発の特急のすぐ後を追う様に、定刻通り10:32に大阪梅田駅を発車。途中の停車駅は淡路、桂、烏丸のたった3駅のみです。

大阪梅田駅を出るとすぐ、列車は中津駅を通過して淀川を渡ります。阪急京都線宝塚線神戸線がそれぞれ複線になっているほか、並行する国道が視界に入るだけでも数本あり、無数の橋が架かっています。

淀川を渡り切ると、列車は次第に速度を落としていきます。そして何と十三駅で停車。

方向幕にも記載のある通り、この列車は十三駅を通過するはずです。ドア越しに聞こえてくるホーム上のアナウンスでも「通過列車ですー」と確かに言っています。

ここ十三駅は、京都線宝塚線神戸線の3路線が分岐する主要駅。ほぼ全ての種別が客扱いでの停車を行いますが、この「快速特急A」は運転停車のみで客扱いをせず、ドアは開きません。その理由はまさに先ほどもご紹介した「2ドア」での運行ゆえ、十三駅に設置されたホームドアと規格が合わないためです。

十三駅は数秒ほどの運転停車の後に発車。続いて現れる主要駅は淡路駅で、ここでは大阪メトロ堺筋線から直通してきた阪急千里線が合流します。車窓右手には立派な高架橋が出来上がってきており、淡路駅の高架化工事は着々と進められています。

この淡路が、大阪梅田を出て最初の客扱い停車駅。大阪梅田を9分早く発車した準急をここで追い越し、同時に緩急接続を取ります。

淡路を出ると、次は京都府まで何と26分間ノンストップ。途中にある茨木市高槻市長岡天神といった駅はほとんどの列車が停車する主要駅ですが、快速特急Aはこれらも全て通過していきます。ちなみに「快速特急(京とれいん雅洛)」と「快速特急A(京とれいん)」の停車駅の違いは「十三に停車するかしないか」だけですので、淡路~桂駅間ノンストップは快速特急も同じです。

まもなく列車はどっかの駅へ進入(おそらく高槻市)。2面4線の大きな駅ですがもちろん通過となります。ちょうど副本線を発車していく大阪方面行の列車が1本あり、その後ろには既に次の大阪方面行の列車が見えています。そしてそのさらに後ろにうっすらと見える列車の影は…おそらく大阪梅田をこの快速特急Aよりも2分早く出発した特急(京都河原町行)ではないでしょうか…! 流石は快速特急A、先行する特急に追いつきそうになっています。しかし結論を述べると、京都河原町へ着くまでに快速特急Aがこの特急を追い越すことはありません。

高槻市を過ぎると、右側に見えてくる高架橋は東海道新幹線。この先の区間で阪急は新幹線とぴったり並走するように高架を走っています。実は一時期、阪急の高架化工事に伴い阪急の列車が新幹線の線路を走行した時期があったと言われています。

並走区間はそれほど長くないため、あいにく今回車窓から新幹線の姿を捉えることはできませんでしたが、どちらも標準軌(1,435mm)ですので不可能ではないといったところでしょうか。

そして数々の駅を通過しながら京都府へと入り…ようやく次の停車駅であるが見えてきました!

既にホームが目の前に見えていますが、複雑なポイントの手前で列車はいったん停止。どうやら前を走る特急へ追いつきそうになっているようです。まぁ当たり前といえば当たり前で、快速特急Aがノンストップで爆走した淡路~桂駅間で特急は茨木市高槻市長岡天神にも停車していますので、むしろわずか2分差で大阪梅田を出発しているのに追いつかないはずがありません。

そしてようやく線路が空き、列車は桂駅へと到着。隣のホームには前を走る準急(京都河原町行)が停車しており、ここでも淡路と同様に緩急接続が行われます。また、ここ桂は阪急嵐山線への乗換駅でもありますので、結構な数の観光客の方が降りていかれました。

桂を発車し、西京極駅を通過すると列車はいよいよ地下へと入ります。この先西院、大宮、烏丸、そして終点京都河原町の4駅は地下にあり、市内中心部へ入る最後の数駅のみ地下区間を走行するかたちとなっています。まるで京葉線のようです。

終点の一つ手前、列車は烏丸駅へと到着。京都市営地下鉄烏丸線の四条駅と交差しており、これに乗り換えれば京都駅方面へもアクセスすることが可能です。

大阪梅田を出て43分、11:15に列車は終点の京都河原町へと到着!

地下ホームなので、列車を降りただけでは京都に辿り着いた実感は薄いですが、地上へ出れば目の前は鴨川とそこにかかる四条大橋ですのでまさに京都の中心部に出ることができます。

ちなみに2分先行していて時折追いつきそうになっていた大阪梅田10:30発の特急ですが、ここ京都河原町には11:13に到着しています。すなわち所要時間は快速特急Aと全く同じ(43分間)ですので、その点ではメリットはほとんどなさそうです。

 

【人吉へは行きません】期間限定? 鹿児島本線を走る「SL人吉」の旅

 

2022年8月11日(木)

今回やってきたのは熊本駅。これから、鹿児島本線を走るとある観光列車へと乗車していきます。

2011年には九州新幹線(鹿児島ルート)が全線開業し、その後在来線ホームも順次高架化されすっかり新たな姿へと生まれ変わった熊本駅。近年では駅周辺に新たな商業施設等も建設されはじめ、街の中心にも負けじと開発が行われています。

そんな熊本駅から本日乗車するのは、10:50発の〔SL人吉鳥栖です。熊本~鳥栖駅間で週末を中心に1日1往復運行されている観光列車で、今回はせっかくなので全区間乗車していくことにします。

6番線ホームで待っていると、向こうから汽笛を鳴らしてSLが入線してきました!

ホーム上は大変な人だかりで、その視線はみな一点に集まっています。

SL人吉〕に使用される機関車は、「8620形蒸気機関車58654機」と呼ばれるもの。製造されたのは何と今からちょうど100年前の1922年のことで、長崎本線唐津線等九州内の様々な路線で運用に就きました。1975年にいったん運用が終了され廃車となりましたが、その後1988年に復活し今に至ります。

使用されている客車は「50系客車」で、1970~80年代に製造されたもの。その後幾度かの改造が施され、現在は3両を繋いで「SL人吉」として運行されています。

ホーム上の発車標にも「3両」と表示されていますが、これはあくまでも客車の両数のみを示したもの。実際にはこれに加え、先頭に先ほどご紹介したSL1両、そして最後尾にはDL(ディーゼル機関車)が1両連結され計5両での運行となっています。

列車は定刻通り、10:50に熊本駅を発車。真っ黒い煙を上げながら都市部の高架線を進んでいく光景はそう見られるものではありません。

発車直後、乗務員等の紹介があります。通常、新幹線や特急列車であれば紹介されるのは「この列車の運転士は○○、車掌は○○です。…」といった感じですが、このSL人吉では「機関士は○○、機関助士は○○…」といった紹介のされ方になっていました。普段乗車する特急列車等では「機関士」などまず聞くことができません。

客車自体は非常に古いものですが、内装は度重なるリニューアルによりレトロな空間が演出されています。4人がけのボックスシートと2人がけのクロスシートが混在しており、お盆ということもあって大変賑わっています。

私は1人での乗車だったので、何とか2人がけの区画を確保。相席になることも覚悟していましたが、隣に見知らぬ人が乗車してくるということはありませんでした。

各座席の前方には大きめの木のテーブルが設置されており、お弁当等を広げるのにもちょうど良いスペース。古い客車ですが板張りの座席というわけではなく、リクライニングはしないもののふかふかの座り心地になっています。私の座席はチェック模様のモケットでしたが、号車によっては革張りの座席になっているところもあるようです。

なお各座席にコンセントはありませんが、車内ではJR九州のフリーWi-Fiに接続できます。見かけは古くても時代に合わせしっかりと設備が整えられているといった印象です。

ところで、この「SL人吉」の運行区間は熊本~鳥栖駅間で、全区間鹿児島本線を通ります。なぜ人吉へ行かないのに「人吉」とついているかというと、実はかつてこのSLは熊本~人吉駅間で運行されていたからなんです。

本来の「SL人吉」の運行区間は上の地図の灰色の線で示された区間で、熊本~八代駅間は鹿児島本線、その先人吉までは肥薩線を通るルートでした。しかし2020年7月に発生した豪雨災害の影響で肥薩線の復旧は絶望的な状況となっており、それならばと人吉の代わりに鳥栖へと向かうルートにて2021年5月より運行が再開されたのです。

SL人吉は3両とも普通車指定席で、列車種別上は「快速」となっています。すなわち乗車券に「指定席券」を追加購入することで乗車可能です。このように書くと、てっきり「+530円なのか」と思ってしまいがちですが、実際にはSL人吉の指定席券は何と1,680円。特急料金並みの高価な設定になっています。

実は、熊本~人吉駅間で運行されていた頃の指定席料金は840円でした。しかし熊本~鳥栖駅間での運行が始まるにあたり料金が改訂され、倍額となった経緯があります。「普通・快速列車の指定席」と考えると割高に見えるかもしれませんが、よく考えてください。SLは100年前、客車も50年近く前に製造され、度重なる改造や保守・整備の手間をかけながら運行されているものにたったの1,680円で乗れてしまうのです。むしろこれでも安すぎる気さえしてきます。

列車はあっという間に熊本の市街地を抜け、山間部へと入っていきます。熊本市玉名市に挟まれた「田原坂」は西南戦争の激戦地としても知られ、その名は今なお駅名として残っています。

田原坂付近は鹿児島本線屈指の急勾配区間としても知られ、沿線の車窓は熊本市内から一変してとてものどか。SLが力強く煙を吐きながら進んでいく様子は魅力的です。

熊本駅を出て約40分、11:32に列車は最初の途中停車駅である玉名駅へと到着。ここでは9分間の停車時間があり、ホームに出て写真撮影等をすることができます。

玉名駅では停車時間中に機関士さんらにより石炭がせっせとくべられ、煙を上げる様子をじっくりと見ることができます。夏の暑い時期に灼熱のボイラーの前で作業されている方々には本当に頭が上がりません。

また、この玉名駅での9分間の停車時間の間に、後からやってきた11:39発の普通列車鳥栖行)を先に通します。SL人吉は曲がりなりにも「快速」という種別ですので、快速が普通に抜かされる何とも面白い光景が展開されます。SL人吉の方が普通列車より停車駅は少ないものの、あくまでも臨時列車であり駅間走行速度は普通列車に劣るため、こうして途中の駅で普通列車を先に通さないと後がつかえてしまうのです。

無事に待避も完了し、11:41に玉名駅を発車。ここで車内探検へと出てみることにします。

この客車の扉は今どき珍しい「折り戸」になっており、路線バスの前扉のように扉が半分に折れて内側へ開きます。また乗降口付近は段差があり、まだバリアフリーの概念がなかった時代に製造された車両であることもよく分かります。

一部号車の座席は、ご覧の通り先ほどもご紹介した革張りの座席になっています。布張りの座席とお値段は一緒で、こちらも普通車指定席扱い。シートピッチ等の規格は布張りでも革張りでも変わらないように見えます。

客車の先頭(鳥栖行では3号車)と最後尾(鳥栖行では1号車)には展望スペースが設けられており、乗客誰でも自由に入ることができます。SL側は人気が高く混雑している一方、DL側は空いているタイミングもありました。大きな窓から眺める筑後平野の田園風景は格別です!

また、2号車にはビュッフェ(売店が備わっており、各種スイーツやドリンク、限定グッズ等を手に入れることができます。ここで購入できる「86(ハチロク)弁当」という限定駅弁は残念ながら発車後早々に完売してしまったようですが、車内での優雅なひとときにせっかくなので人吉の名物「焼酎アイス」(350円)を購入。アルコール分は1%以下で子どもでも食べられるようにできていますが、焼酎の風味をしっかりと味わうことができる一品です。

3号車の一角には「SL文庫」と名付けられたフリースペースもあります。車内の乗客を見ていると、お盆という時期柄もあってか鉄道ファン以上に親子連れが多い印象でしたのでこうしたコーナーも需要がある…と思いきや、残念ながら棚の中は空っぽで本は1冊も用意されていませんでした。感染症対策でしょうか。

列車は荒尾駅を通過し、いよいよ熊本県を抜けて福岡県へと入ります。この辺りからはいよいよ福岡都市圏を走る普通・快速列車も多数乗り入れる区間へと入っていきます。

12:14に列車は大牟田駅へと到着。福岡県南部有数の都市で、西鉄も乗り入れる大きなターミナル駅です。

ここでの停車時間はわずかのため、本来ホーム上での写真撮影は控えるべきところですが、ここから乗車する予定のとある家族連れが写真撮影に熱中するあまりうっかり乗り遅れ、再開扉の後に何とか乗り込むことができたというハプニングもありました。時刻表と発車時刻はしっかり確認し、くれぐれも乗り遅れることのないように気をつけましょう。

12:15に大牟田駅を発車し、列車は筑後平野を進んでいきます。ふと窓の外を見ると黒さがはっきりと肉眼で確認できるほど勢いよく煙を上げて走っており、周辺にお住まいの方にとっては何か悪影響はないのだろうか…と少々心配になってしまうほどでした(笑)。

環境問題やSDGsが叫ばれる昨今、SLが時代に逆行する乗り物であることは言うまでもありません。しかしそんな中でも、ステークホルダーからの批判を顧みず(?)このようにSLを運行してくださることは鉄道ファンの一人としてとても嬉しく思います。

筑後船小屋駅付近からは新幹線とぴったり並走するようにして走る区間へと入ります。こちらは1922年製のSL、それに対し向こうは2011年に開業した新幹線の高架橋です。時代のギャップが激しすぎて耳がキーンとしそうです。いやしないけど。

いよいよ沿線の車窓も都会的になってきたところで、列車は荒木駅で5分間ほど運転停車。ここでは13:00発の区間快速鳥栖行)を先に通します。「快速が区間快速に抜かされる」というまたもや面白いシチュエーションです。

13:12には久留米駅に到着。ここを出ると次は終点の鳥栖となります。

久留米駅は新幹線への接続があるためか、ここで降りていかれるお客さんも一定数いらっしゃいました。なお西鉄にも「西鉄久留米駅」がありますが、JRの駅からは離れていますのでその場合は先ほどの大牟田駅の方が便利かと思います。

車窓右手に多数の留置線と「駅前不動産スタジアム」が見えてくれば、鳥栖駅はもうすぐです。

そして定刻通り、13:24に終点の鳥栖駅へと到着。熊本駅を出てから実に2時間34分に渡る”汽車旅”を楽しむことができました。

ちなみに熊本~鳥栖駅間の営業キロは89.8km。表定速度はわずか35km/時ほどで、同じ区間を走る普通列車と比べても非常にゆっくりとしたスピードで走っていることが分かります(普通列車は所要時間1時間30~40分程度、表定速度は55km/時くらい)。

ましてや新幹線であれば、熊本~新鳥栖駅間はせいぜい30分程度。文明の利器とは恐ろしいものです。

肥薩線の復旧に関しては見通しが立っておらず、今度も当面の間は熊本~鳥栖駅間での運行が継続されるものと思います。幹線である鹿児島本線を走る姿もかっこいいですが、今度九州へ足を運んだ際には是非肥薩線内でも乗車してみたいものです。

▼最新の運行情報等につきましては、下記リンクよりご確認ください。

www.jrkyushu.co.jp

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

【9月23日開業予定】西九州新幹線全駅を”開業前”に訪問。駅舎・駅前は出来上がっているのか!?

 

2022年8月13日(土)

本日やってきたのは長崎駅長崎本線の終点駅であり、また大村線方面へと直通する列車も乗り入れるターミナル駅です。

2020年3月に全面高架化を果たした長崎駅。新たな駅舎はそれまでよりも西方へと移り、正面出入口は駅の西側に設けられています。

いよいよ2022年9月23日、西九州新幹線が武雄温泉~長崎駅間で開業します。70kmにも満たない短い区間ではありますが、途中には3つの駅が設置され、武雄温泉駅では博多方面へと結ぶリレー特急にて対面乗り換えが予定されています。

そこで開業まで約1ヵ月に迫った今、あえて「開業前」に西九州新幹線の各駅を巡り、その完成具合や現地の盛り上がりをたっぷりお届けしてまいります!

まずは長崎駅から。こちらは2年前の高架化により洗練されたデザインへと生まれ変わった長崎駅コンコースです。休日の朝ということで人影はまばらですが、その分新しく綺麗な長崎駅舎内をじっくり見ることができます。

在来線の券売機の脇には、開業までの日数を示したカウントダウンボードも。訪問日は2022年8月13日でしたので、開業まで「あと41日」となっていました。

新幹線改札口の前には緑色の柵こそ立てられているものの、自動改札機や券売機の位置等も外からはっきりと分かる状態で気分が盛り上がります。券売機の左側には待合室が設けられるようです。

自動改札機は正面から見る限り2レーンしか見えませんが、おそらく死角になっているだけでもう数台はあるのだろうと思います。新幹線ホームは何と11~14番線まであるんですね…地理的にこれより先への延伸計画もないはずですので、やや過剰設備な気もしてしまいます。

それでは移動を開始していきます。もちろんまだ新幹線へは乗れませんので、隣にある在来線乗り場から入ります。長崎エリアでは交通系ICカードが使えますので、Suicaでまずは次の新幹線停車駅である諫早へと向かいます。

在来線改札口を入りすぐ左手には、新幹線乗り換え改札も確認できます。新幹線・在来線ともに終着駅である長崎駅ですが、乗り換え改札が設置されるというのは何とも不思議です。恐らく新幹線に乗って長崎駅へ到着し、そこから普通列車で少し来た道を戻るような形で浦上・長与方面等への乗り継ぎが想定されているのかもしれません。

また新幹線の発車標には「新鳥栖・博多方面」と書かれているのも面白いところ。単に「諫早」や「武雄温泉」等といった西九州新幹線内の主要駅は表記されておらず、一日も早くフル規格で博多へ直通させたいであろうJRの思惑すら見て取れます(笑)。

在来線ホームは1~5番線で、この構造自体は新幹線開業後も大きく変わることはないでしょう。

しかし、発車標は「特急」と「快速・普通」に分かれています。新幹線開業後はこの駅に特急が来ることはほとんどありません(観光特急「ふたつ星4047」くらい)ので、現在の仕様の発車標が見られるのもあとわずかです。

まず長崎駅から乗車するのは、8:27発の特急〔かもめ8号〕博多行です。言うまでもないことですが、在来線特急〔かもめ〕は新幹線開業により廃止される予定で、その最終運行日は新幹線開業前日の2022年9月22日となっています。

在来線ホーム上の発車標には「佐賀・博多方面」の文字が残っているものの、果たしてこれが新幹線開業後どうなるかは気になるところです。しかしまぁ特に途中の区間が経営分離されるわけでもありませんので、特急が廃止されようとこのままの気もします。

在来線特急〔かもめ〕には主に白い885系と黒い787系の2種類の車両が使われていますが、新幹線開業後はそもそも長崎本線肥前浜以南が非電化となるため、これらの車両が長崎駅へやってくることは物理的に不可能になります。

今回は4号車の自由席へと乗車。定刻通りに長崎駅を出発です。

列車は長崎駅を出ると、すぐに次の浦上駅へと停車します。ここも長崎駅高架化に伴い高架化された駅ですが、こちらには新幹線の駅は設置されません。

長崎~諫早駅間の営業キロは24.9km。JR九州では25km以内であれば自由席特急料金が500円と比較的リーズナブルに設定されており、この区間はギリギリこれに当てはまります。新幹線開業後も特定特急料金が適用されるかとは思いますが、それでもワンコインとはいかないでしょうから、こんな何でもない自由席特急券さえ将来的には貴重になるかもしれません。

浦上~喜々津駅間では長崎本線が二手に分かれており、特急〔かもめ〕は全て新線の方へと進みます。新線の方が山を貫くように直線的に線路が敷かれており、何とトンネル内で列車の行き違いを行うこともできるのです。

19分間乗車し、8:46に諫早駅へと到着。ここへ降り立つのは最長片道切符の旅以来ということもあって、懐かしさがこみ上げてきます。

諫早駅は2面4線の地上駅。ホーム上には様々な両数に対応した特急〔かもめ〕の乗車位置案内が掲げられていますが、こうした日常の風景もあとわずかで見納めです。

改札階へと上がってくると、現在の出口とは別に青色の柵の向こうに新幹線乗り換え改札口があるのが確認できました。現在はホームから上がってくると向かって左側が有人改札口ですが、新幹線開業後はこの機能が反対側へと移り、新幹線・在来線で共通のものとなるようです。

在来線の改札口を出て右側から回り込んでみると、そこにははっきりと「新幹線のりば」の文字がありました! シャッターが下ろされているので中の様子は詳しくは分かりませんが、丁寧に「2022年秋 新幹線開業」という文字も貼り付けられており、これさえ剥がせばいつでも新幹線駅としてスタートを切れる準備はできているように見えます。

諫早駅では長崎駅と同じく西口側が新幹線駅舎となっており、その外観自体はほぼ完成しているようでした。一方で駅前の広場のようなスペースは今なお重機の姿があり、整備が進められています。

諫早駅の街の中心は東口の在来線駅舎側で、こちらには大きなバスロータリーもあります。2018年にできたためこちらも新しく、新幹線の全列車が停車する駅としての十分なポテンシャルを感じ取ることができます。

他にも「新幹線」の文字は既に駅舎内の至るところで確認することができ、新幹線開業を前にその熱気の高まりを感じることができます。

続いては次の「新大村駅」へと向かうべく、大村線を利用していきます。これより先は現在の在来線特急〔かもめ〕とは異なるルートを進んでいくことになります。

乗車するのは、諫早9:07発の大村線 早岐です。「イカ釣り漁船」の異名をもつYC1系ワンマン列車がやってきました。

列車は定刻通りに諫早駅を発車。まもなくすると長崎本線と分かれ、大村線を進んでいきます。

車窓右手には立派な西九州新幹線の高架も見えます。新幹線は直線的に走るため、目の前に山や丘があればまっすぐトンネルで貫きますが、大村線は古くからある線路ですので海岸に沿ってくねくねと進んでいきます。

列車は大村駅へと到着。それなりに乗降もあり主要駅であることが窺えますが、新幹線のホームが設置されるのは大村駅ではなく"新"大村駅ですので、まだ降りずに進んでいきます。

大村駅を出てしばらくすると、次の諏訪駅が見えてきました。そしてちょうどここで、右側からやってきた新幹線の高架が合流してきます。うまくすればここに新幹線のホームを設置できそうにも見えますが、新大村駅はここではありません。

新幹線のホームが見えてきたのはその直後。そう、「新大村駅」は新幹線開業にあわせ設置される、完全なる新駅なのです。大村線の方では諏訪~竹松駅間に新幹線接続駅として在来線ホームが設置されることになります。

9:25に竹松駅へと到着。ここから少し後戻りする形で、竹松駅から歩いて新大村駅を見に行きたいと思います。

竹松駅のホームは上下線がややずれた位置にあり、列車交換が行えるようになっています。一部列車はこの駅を始発・終着として運行しているようです。

竹松駅を出て左へと曲がり、静かな街の中を歩き進めていきます。この日は朝から大気の状態が不安定で、ときおりザっと雨が降る瞬間もあり、この竹松駅周辺徒歩の際にそうならなければよいなと気をもんでいたところでしたが、幸運にもこのタイミングでは雨はやんでいてくれました。

途中には大村線の踏切があり、これを渡って新幹線の線路の東側へと回り込むことにします。

竹松駅から歩くこと約10分、ついに大村駅の駅舎が見えてきました!

二等辺三角形と台形を組み合わせたお洒落なデザインの駅舎外観は概ね完成しており、駅前のロータリーも完成間近といった様子。一応駅舎の近くは立入禁止になっており、すぐ近くへは近づけないようになっていますが、歩行者用通路からでもその姿ははっきりと確認することができます。

駅前には「来たいがふくらむ、おおむら」というキャッチコピーの書かれた大きな看板が設置されています。「西九州新幹線」ではなくあえて「九州新幹線西九州ルート」という呼称が用いられていることに、何か深い意味はあるのでしょうか。

一方で東側(内陸側)の駅前を見てみると、駅前一等地にほぼ建造物は見当たらず、更地になっています。これからあと1ヵ月でゼロから何か商業施設やホテル等が造られるとは思えませんので、この光景はおそらく新幹線開業後もしばらく変わらないものと思われます。

ホームを横から見ることのできる場所に来ました。在来線ホームに関しては1面1線で、こちらも基本的な構造はほぼ完成しているように見えます。諏訪~竹松駅間は今のままでもとりわけ駅間が長いというわけではありませんので、この新大村駅の開業によって諏訪~新大村駅間・新大村~竹松駅間それぞれが大村線としてはかなり短い駅間になることでしょう。

駅舎の西側へと回ってきました。こちらもデザインは反対側とほぼ同じで、駅前ロータリーの規模も同等に見えます。しかし東西で駅前の様子を見比べてみると、東よりも西の方が駅前に住宅が多く、更地が広がる東側に比べれば駅前の人口が多い西側の方がより多くの利用を見込めるのではと感じました。

また、新大村駅の近くにある交差点を見てみると道路看板に「長崎空港」の文字も。

長崎県の空の玄関口である長崎空港は、実は長崎市内ではなく大村市内にあります。ゆえに長崎市内からはかなり距離があり、空港リムジンバスが直結しているものの所要時間は45分程度かかり決して近いとは言えません。

一方でこの新大村駅は、長崎空港からかなり近い位置にある新幹線駅と言えます。そこで一部報道では、新幹線開業に合わせ大村市長崎空港~新大村駅間を結ぶ予約制タクシーの運行を開始する予定であると報じています。尤も、空港~市内の移動がバスのみであればまだしも、タクシー+新幹線となれば仮に実際の所要時間が短縮されたとしても心理的な距離を感じざるを得ないため、この新大村駅での乗り継ぎアクセスルートが空港利用者にどこまで受け入れられるかは疑問が残ります。

そこから歩いて、竹松駅へと戻ってきました。駅舎は無人の状態ですがSUGOCAの簡易タッチ機は設置されています。

しかし実はSUGOCAをはじめとする交通系ICカードが利用できるのは竹松以南のみで、これから進む竹松以北の区間は券売機にて乗車券を購入しないといけません。というわけで、忘れずに280円のきっぷを購入しておきます。

大村駅の新幹線ホームをバックに、竹松10:58発の区間快速シーサイドライナー〕がやってきましたのでこれに乗車していきます。新大村駅の次の目的地は嬉野温泉です。

新幹線開業に合わせ、実は大村線では新大村駅の他にもう1つ新駅が誕生します。その名も竹松~松原駅間に設置される「大村車両基地」。車両基地の名前がそのまま駅名になってしまうというのも驚くべきことですが、駅が設置される予定の区間を通るとまさに真新しい1面1線のホームが確認できました。

この「車両基地」とはもちろん西九州新幹線車両基地で、新幹線開業後は一部の列車が新大村発着で運行されるようです。

松原駅を出ると、車窓左手には大村湾の絶景が広がります。これが何と言っても大村線の最大の見どころで、入り組んだ地形に沿ってギリギリのところを進んでいきます。

途中にある千綿駅は、海が近くにある駅として2014年に青春18きっぷのポスターにも採用されています。駅舎の方もかなり風情があり、一度機会があれば降り立ってみたいところです。

列車は11:14に彼杵(そのぎ)駅へと到着。初見ではなかなか読めない難読駅名です。

実はこれから向かう嬉野温泉は、今現在鉄道の通っていない街なのです。新幹線の線路は新大村を出ると武雄温泉方面へ大きく右に曲がっていくため、この先大村線にいくら乗り続けても新幹線の線路や駅が見えてくることはありません。

そこで彼杵駅からは、路線バスを利用して嬉野温泉へと向かっていきます。ホーム上にはその旨を記した看板があり、フォントやデザインからみてかなり古くからある看板のように見えます。

駅舎を出ると、目の前に真っ赤なJR九州バスの車両が停車していました。発車時刻の20分も前ですが、既に乗車できるようです。

時刻表を見てみると、本数は平日・土休日ともに1日わずか7本。午後は4時間ほど開くところもあり、しっかり前もって時刻を調べてからいかないと待ちぼうけを喰らうことになります。果たして新幹線ができた後、これらのバスがどうなるのかも気になるところです。

バスは定刻通り、11:35に彼杵駅前を発車。乗客は私のほかもう1名のみで、様子を見るにどうやら同業者の方のようです。ちなみに交通系ICカードは利用できません。

バスは東彼杵町の市街地を抜け、国道34号線へと入っていきます。ここから嬉野方面へは県境の大きな山を越えることになるので、しばらくは登り坂が続きます。バス停はこまめに設置されていますが、バスを待っている人の姿は一人もなく次々に通過していきます。

しかしそんな山の中を、西九州新幹線の線路が貫いています。坂本郷バス停~俵坂バス停間では一時期SNSでもバズった「凄い法面トンネル」が車窓後方に見え、現代の土木技術の凄まじさを見て学ぶことができます。バスの車窓から見えるのはほんの数秒間ですので、見逃すことのないよう車窓右後方に注目しておきましょう!

この「凄い法面トンネル」を過ぎると、県境を越えて長崎県から佐賀県へと入ります。また勾配も登り坂から下り坂へと変わり、次第に嬉野の市街地が見えてきます。

20分少々バスに揺られ、11:58に嬉野温泉バスセンターへと到着。すぐ後方から別のバスも到着してきており、交通の要衝であろうことが窺えます。

バスセンターの窓には西九州新幹線のポスターもたくさん貼られ、地元での期待は大きな高まりを見せているようです。

それにしてもこの嬉野温泉バスセンター、一見するとバスターミナルには見えないような古さの目立つ外観で、これが今日に至るまで嬉野温泉最大の公共交通の拠点であったことは俄かには信じがたい気持ちです。一応観光案内等も行っているようですが、せめて遠くから見ても分かるよう建物の上の方に大きく「嬉野温泉バスセンター」という文字でも取り付けてくれればいいのに…と思わずにはいられません(笑)。

嬉野温泉バスセンターから通りへと出てみますが、どこを見渡しても新幹線の駅や高架らしきものは見当たりません。お盆だというのに人気もなく、1ヵ月後にはここに新幹線が来るという実感がわきません。

それもそのはず、実は嬉野温泉バスセンターと新幹線の嬉野温泉駅は約2.2kmも離れているのです。温泉街や観光施設等は主にバスセンターの近くに集まっていますので、実は新幹線の駅を降りてもすぐ駅前に嬉野温泉の温泉街が広がっているということにはならなさそうです。

2.2kmは歩けない距離ではありませんが、既に暑さと湿気でかなり体力を奪われていますので、ここで温泉に浸かっていくことにしましょう。嬉野温泉には数多くの日帰り入浴宿や温泉施設がありますが、その最も代表的なものの一つが「嬉野温泉シーボルトの湯」。バスセンターから歩いてすぐです。

館内は吹き抜けになった開放的な空間で、入ってすぐのところには嬉野温泉駅開業カウントボードが設置されています。「嬉野に新幹線が来る」ということももちろんですが、それ以上に地元にとっては「嬉野に鉄道の駅ができる」という部分が歓迎されているように見受けられます。

温泉は無色透明ですがぬるっとしており癒されます。私が訪れた時は空いていましたが、入場料も420円とリーズナブルですので、新幹線開業後はより多くの人で賑わってくれることを願ってやみません。

バスセンターへと戻り、いよいよ嬉野温泉駅を見に行くことにします。乗車するのは13:43発のJR九州バス たけお競輪場行です。

バスの車内は先ほどよりもやや乗客が多めで、旅行客のみならず地元の方も乗っていらっしゃるようでした。

7分ほど乗車し、嬉野医療センター前で下車。目の前に見えているのは…そう、嬉野温泉です!!

近づける限りで近づいてみると、やはり駅舎は完成している模様。バスロータリーは砂利道のようになっていて未完成にも見えますが、もしかするとこれが既に完成形なのでしょうか…?

駅舎の目の前には、やはり新大村のように開業を知らせる看板が。こちらは「嬉野」という地名に「嬉しい」という感情表現をかけた「うれしいを、いっしょに。」というキャッチコピーが用いられています。またここでも「西九州新幹線」ではなく「九州新幹線(西九州ルート)」という計画段階での呼称が用いられており、掲載されているN700Sのイラストはとてもリアリティがあります。

ちなみに駅前一等地にはバス停の名前の通り「嬉野医療センター」がありますが、外観はどう考えても温泉旅館にしか見えません。ある意味では嬉野温泉の玄関口であることを象徴する建物ですが、先ほども述べた通り実際には嬉野温泉の温泉街まで1km以上離れています。

駅の東側(温泉街と反対側)へと回り込んでみました。こちらには大きな駐車場があるようですが、その他駅前一等地に目立った建造物はなく、広大な田園風景のみが広がっています。

まるで北海道に来たかと思うほど辺り一面には本当に何もなく、人通りはおろか車通りすらほとんどありません。

実は西九州新幹線の列車はその全ての便が全ての駅に停車するというわけではなく、一部の列車は新大村やここ嬉野温泉といった駅を通過することになっています。中でもここ嬉野温泉駅は武雄温泉~長崎駅間で最も停車する列車の本数が少なくなる予定で、また一つ新たな”新幹線秘境駅”が誕生する予感さえします。”温泉”と名の付くほど立派な観光地の玄関口となる駅ですから、くれぐれも閑古鳥が鳴くようなことになってほしくはありませんが…。

駅を出て国道沿いに来ると、先ほど駅前にあったものとは別の看板がありました。西九州新幹線の全線フル規格開業を目指す団体(?)により設置されたもののようですが、描かれているのは東海道・山陽新幹線で活躍するN700系。すなわち東海道・山陽方面から直通列車を走らせることを願う意味にも取れますが、仮にもそれが実現したとしてその頃にはN700系は引退しているのではないでしょうか。

最後は「嬉野高校前」バス停よりたけお競輪場行のバスへと乗り込み、武雄温泉駅を目指します。実は嬉野医療センターは国道から少し脇道へそれた場所にあり、医療センターへは立ち寄る便と立ち寄らない便があるので、嬉野温泉駅から国道沿いまで歩いて出てきました。

所定14:30発のバスですが4分ほど遅れて発車。引き続き車窓にはちらちら新幹線の高架が姿を現します。

しばらく山あいを走行してきましたが、ちょうど平地に出る交差点に来たところで目の前を新幹線&佐世保線の高架が横切る形になっています。ここまで来れば武雄温泉駅はもうすぐです。

15:00頃、武雄温泉駅に到着!

乗ってきたバスは駅の南側へと到着し、ちょうどこの南口側が真新しい新幹線駅舎となっています。やはり駅舎は概ね完成しているものの、駅前のロータリーは明らかに未完成のようで、資材やシートなどがまだあちこちに置かれたままになっています。

まずは駅の観察を…と思いましたが、その前にせっかく武雄温泉に来たのでここでも温泉に浸かっておきましょう。武雄温泉の温泉街は駅から歩いて20分ほどのところにあります。

今回は楼門をくぐってすぐ右手にある「元湯」へ入浴。お値段はこちらもリーズナブルでわずか450円です。中へ入ると「ぬる湯」と「あつ湯」の2種類の浴槽がありますが、ぬる湯でも42~43℃くらなので十分熱かったです。あつ湯の方は46℃くらいのようで、ほとんど誰も入っていませんでした(笑)。

そして改めて武雄温泉駅へと戻ってきました。こちらが以前からある北口駅舎で、立派ではあるものの新幹線の駅舎とは大きくデザインが異なります。

西九州新幹線の始発駅となる武雄温泉駅は、元からある在来線の駅舎にそれほど大きく手を加えずにすぐ隣に新幹線駅舎を造ったという感じなので、在来線の方はこぢんまりとした特急停車駅といった様子で、特段大きな変化は見られません。

北口の方から入っていくと、新幹線の駅舎に入るところで巨大な白いシャッターが立ちはだかります。この位置から新幹線の駅舎内を詳しくうかがい知ることはできないものの、南口へ出る際はその横の通路を通ることができるようになっているため問題はありません。

また一部分には、ガラス越しで新幹線の改札口付近の様子が窺えるポイントもありました。自動改札機・待合室・券売機等の一式が確認でき、当たり前ですが在来線の改札口と比べると非常に立派な改札口です。

なお、リレー特急に関しては在来線改札口ではなくこちら新幹線改札口から乗車することになるようです。

改めて在来線改札口から入り、隣接する新幹線ホームの様子等も見ていきたいと思います。

自動改札機でないどころかICカードさえ利用できないという残念感の強い在来線改札口ですが、せめて新幹線開業に合わせて自動改札機くらいは導入されるのでしょうか…いやしてほしいんですが…(笑)。

改札口付近には、「嬉野温泉行バスは南口へ」と大きく書かれています。今現在では鉄道の通っていない嬉野温泉への玄関口の役割も果たしている武雄温泉駅ですが、新幹線開業によりこの区間の移動が劇的に便利になればこの文字も見られなくなることでしょう。

在来線のホームは2面3線ですが、実質的には上下列車とも2番線の1つのみで捌くことが多いようです。下りの特急も上りの特急も同じホームへとやってくるので注意が必要です。

3番線には頑丈な柵が設置され、その向こう側にはすぐ新幹線ホームが見えています。

ここ武雄温泉駅では博多方面を結ぶ在来線特急〔リレーかもめ〕と新幹線〔かもめ〕が対面接続を行うため、在来線規格の線路が敷かれている3番線をリレー特急の専用ホームとして転用し、3番線からの乗降は不可能として新幹線改札内にある10番線ホームからのみ乗降可能としているようです。

柵さえ取り払ってリレー特急へは3・10番線のどちらからでも乗降可能としてしまえば非常に便利だとは思うのですが、なかなかそうもいかないのでしょう。

発車標は稼働こそしていないものの、特にシートで覆われたり隠されたりすることなくその姿がはっきりと確認できます。

10番線と11・12番線では発車標の仕様が異なっており、10番線(リレー特急専用ホーム)には佐賀・博多方面のほか下りの「ハウステンボス佐世保方面」も記されています。これは在来線特急〔みどり〕〔ハウステンボス〕も一部時間帯でリレー特急としての役割を果たすためで、10番線へと入線した列車はそのままハウステンボス佐世保方面へも発車できるような配線になっているのです。

リレー特急専用ホームの駅名標は両隣りの駅が隠されていますが、おそらく上り方面は武雄温泉を出て最初の特急停車駅である「江北」、下り方面は同じく最初の新幹線駅である「嬉野温泉」が記されていると予想します。

在来線ホームから最も遠い12番線の駅名標は、既に隣の駅が隠されることなくはっきりと「うれしのおんせん」と記載されていました。12番線は在来線との対面接続ができないため、あまり積極的に使われることはないホームかもしれませんが、この「うれしのおんせん」と反対側にも何かしらの新幹線駅が現れる日は果たして来るのでしょうか。

 

そんなわけで、今回は開業が間近に迫った西九州新幹線の5駅全てをあえて開業前に巡る様子をお届けしてまいりました。

今回立ち入ることができず詳しく見ることのできなかった新駅の駅舎内等は、9月23日の開業の日までのお楽しみということで、ますます期待が膨らみますね!

それほど距離の長くない新幹線ではありますが、開業の日を心待ちにしたいと思います。

 

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

【思わぬハプニングも】国内最長運行距離の私鉄特急「京都しまかぜ」全区間乗車!

 

2022年3月3日(木)

今回は京都駅より、日本一運行距離の長い私鉄特急へと乗車していきます。

全国の数ある私鉄の中で最も広域な運行ネットワークをもつのが近畿日本鉄道近鉄)。その名の通り近畿地方全体で路線を展開しており、名古屋・京都・大阪といった複数の都市にターミナルを持ちます。

今回乗車する「日本一運行距離の長い私鉄特急」とはこちら。京都10:00発の特急〔しまかぜ〕賢島行です。2013年のデビューからまもなく10周年を迎える近鉄の最上位クラスの特急列車で、名古屋・京都・大阪難波の3つのターミナルからそれぞれ伊勢志摩方面へと運行されています。その中でも最長距離となるのが、この京都発着便というわけです。

京都~賢島駅間の運行ルートと〔しまかぜ〕の停車駅は上図の通り。その距離何と195.2kmにも及びます。東海道本線で言えばおよそ東京~焼津駅に匹敵する距離で、いかに長いかというのが分かるかと思います。

ちなみに他に運行距離の長い私鉄特急として、首都圏で運行されている東武・野岩・会津鉄道の〔リバティ会津〕(浅草~会津田島)を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。あちらも十分長いのですが、それでも距離にして190.7kmということで京都しまかぜには5kmほど足りません。ちなみに京都しまかぜよりもリバティ会津の方が表定速度は遅く、所要時間も長くなっています。

〔しまかぜ〕には近鉄50000系という専用の特急車両が充当されます。前面はキリっとした顔立ちで、他の鉄道車両とは明らかに異なるオーラを放っています。

〔しまかぜ〕が運行を開始したのは2013年の3月。実はこの時の発着駅は名古屋と大阪難波のみで、京都発着便が運行を開始したのはその約1年半後の2014年10月のことでした。大阪と京都といえば比較的近い位置にあるようなイメージがありますが、それはあくまでもJRのイメージであり近鉄では全くの別路線上にあたります。

しかも西日本方面から新幹線と近鉄特急を乗り継いで伊勢志摩方面を目指す際、大阪では新幹線のターミナル(新大阪)と近鉄特急のターミナル(大阪難波大阪上本町)が離れているのに対し、京都であればどちらも京都駅に集約されており、大きい荷物を抱えた旅行客にとっても乗り継ぎの利便性が高く重宝されるようです。

発車時刻も迫っているので車内へと入ります。今回乗車したのは〔しまかぜ〕の編成内で最も座席数の多い「プレミアムシート」。2+1列のゆとりある座席配置となっています。他に和風個室・洋風個室・サロン席といった多彩な客室が用意されており、他の近鉄特急と比べてもいかに編成全体として水準の高い空間が提供されているかが分かります。

列車は10:00ちょうど、定刻通りに京都駅を発車。しかし早速、気になるアナウンスが流れました。

何と「近鉄宮津駅付近で沿線火災が発生したため、列車に遅れや行先変更が生じる可能性」とのこと。近鉄宮津駅京都府京田辺市にある駅で、京都駅からもさほど遠くはありません。〔しまかぜ〕に乗ったのに京都府内で旅行終了となってしまっては旅程崩壊もいいところですが…どうなるか。

まず列車は最初の途中停車駅である近鉄丹波橋駅に到着。本来ここでの停車時間はわずかのはずですが、この先に運転見合わせ区間があるため列車が詰まっているようで、近鉄丹波橋には5分ほど停車していました。その後「とりあえず大久保駅まで進みます」というアナウンスの下、10:12頃に再び動き出し近鉄丹波橋駅を発車しました。

そこから10分ほど走り、大久保駅へと到着。ここで列車が停止しました。本来停車駅ではないためドアが開かない「運転停車」です。どうやら運転見合わせ区間は新田辺~高の原駅間となっているようで、大久保駅では8分間ほど運転停車をしました。

まもなくして、ようやく運転再開。火災現場付近を通過する際は安全を確認しながら徐行して通過しており、〔しまかぜ〕の大きな窓からはまだ煙が上がっているのが確認できました。焦げ臭さが車内まで立ち込め、〔しまかぜ〕の乗務員さんが各座席を回って丁寧に遅れのお詫びをされていたのがとても丁寧で印象的でした。

10:54頃、列車は大和西大寺駅へと到着。この時点で23分遅れとなっています。

ホーム上で待ちくたびれていた乗客たちをのせ、列車はすぐに発車。この先この遅れを取り戻せるのか気になります。

ここで改めて〔しまかぜ〕の座席をご紹介。肘掛けの部分にコントロールパネルが設置されており、リクライニング等は全てボタン操作にて自動でできます。

背もたれを限界まで倒し、レッグレストも出してみるとご覧の角度に。いやもう歯医者さんの椅子なんよこれ。四捨五入して寝台では…!?

乗車後まもなくすると、乗務員さんから記念乗車証とおしぼりが配られます。近鉄特急では〔しまかぜ〕に限らず以前からおしぼりの文化があるようですが、大半の特急では様々な車両のイラストが描かれた汎用的なデザインのものが洗面所に置かれているのみ…のようで、しまかぜオリジナルデザインのおしぼりはとても貴重です。とはいえ使わずにとっておいたところで乾いてしまってはどうしようもないので、新鮮なうちに(?)使ってしまうのがオススメです。

大和西大寺駅を発車してからは、列車はあまり徐行することもなく特急らしい走りを見せてくれています。車窓には近鉄車両基地もありましたが、普段乗らないので車両形式等はさっぱり分かりません(笑)。

新ノ口連絡線を通り、大和八木駅には11:15頃に到着。橿原線内での快調な走りもあってか、遅れ時分は少し縮まり21分遅れとなっていました。

大和八木駅からは大阪線へと入ります。そして次の停車駅は何と山田線の伊勢市駅。大和八木~伊勢市駅間は100km以上あり、この距離をノンストップで駆け抜けます。

列車は奈良県から三重県へと入り、山間部を進んでいきます。途中に名張など比較的大きな街もあるものの、近鉄の最優等列車である〔しまかぜ〕はもちろん通過。青々とした車窓が広がります。

ここでせっかくなので、3号車にある「カフェ」へ。何と〔しまかぜ〕では列車の中に供食設備があり、温かい食事をいただくことができるのです!!

様々なメニューがある中でも、注文したのは「松阪牛」。お茶とお新香がついてお値段は1,500円です。まぁ見たらわかると思うんですが本当に超絶美味しくて。お肉がとにかくやわらかいんです! ご飯が見えなくなるくらいまでぎっしり敷き詰められたお肉やお野菜は味がしっかりしみ込んでいて、一瞬でペロリとたいらげてしまいました。

お値段だけ聞くと1回の食事にしてはやや高めと感じるかもしれませんが、流れる景色を眺めながらこれほどまでに味わい深い牛肉重をこの価格でいただけると思ったら安いものです。

まもなく列車は伊勢中川のデルタ線へと入り、大阪線に別れを告げて山田線へと入っていきます。遅れの影響か、伊勢中川駅への入線を待つためデルタ線上でいったん運転停車をしました。

12:26頃にようやく伊勢市駅へと到着。大和八木駅を出て以来、約1時間10分ぶりの客扱い停車となります。遅れ時分を確認してみるとどうやら「25分遅れ」ということで、残念ながら山越え区間で遅れ解消とはならなかったようです。

近鉄では、〔しまかぜ〕も含めた全ての旅客列車が「伊勢市駅」とその次の「宇治山田駅」の両方に必ず停車します。しかし地図をよく見てみると両駅間は極めて近く、距離にしてわずか600mほどしかありません。しかもカーブになっていますので、伊勢市駅を出た列車はほとんど速度を出すことなく瞬時に次の宇治山田駅へと到着します。

JR・近鉄の2社が乗り入れることもあり、伊勢神宮周辺の観光拠点は「伊勢市駅である」と勘違いしてしまいがち。もちろん伊勢市駅伊勢神宮の重要な玄関口なのですが、それよりも近鉄では宇治山田駅の方が主要な役割を果たしています。駅舎も大きく、一部の特急はここ宇治山田駅を始発・終着として運行されています。

宇治山田駅を出ると鳥羽駅までは「鳥羽線」、その先終点の賢島駅までは「志摩線」と呼ばれ、末端区間では路線名がコロコロ変わります。とはいえ山田線・鳥羽線志摩線では一体的な列車の運行が行われており、今回の〔しまかぜ〕も含め伊勢中川以南は実質的に1つの路線として認識されています。

志摩赤崎駅では運転停車を行い、上り列車との行き違いを行いました。これが遅れの影響によって急遽志摩赤崎駅で行われたものなのか、それとも普段からここ志摩赤崎駅では京都しまかぜとの列車交換が行われるのかについては謎です。

そして列車はようやく終点の賢島駅へと到着!

定刻では賢島12:47のところ、26分遅れて13:13頃の到着となりました。京都駅を出てから実に3時間以上を要したことになります。普段は京都~賢島駅間で2時間47分のところ、3時間の大台を突破する貴重な経験ができました。

隣のホームには、近鉄名古屋から来た〔しまかぜ〕も停車中。曜日によってはここに大阪難波発着便も加わり、〔しまかぜ〕3本が綺麗に並ぶ光景を見ることもできるようです。

ということで、今回は国内最長の私鉄特急「京都しまかぜ」をご紹介しました。

ちなみに京都~賢島駅間を結ぶ特急は1日にこれ1本のみではなく、他にも伊勢志摩ライナー等を使用した直通列車が設定されています。興味ある方は是非乗られてみてください!

 

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

 

 

特急「かささぎ」デビュー目前! 終着駅「肥前鹿島」ってどんな街?

 

2022年8月12日(金)

やってきたのは福岡県の博多駅。本日はこれより「佐賀県鹿島市」へ向かいたいと思います。

既に複数のメディアでも報じられている通り、2022年9月23日にいよいよ西九州新幹線が開業します。ただし当面の間は直接博多駅へ乗り入れることはなく、武雄温泉~長崎駅間での先行開業という形になっており、残る博多~武雄温泉駅間については新幹線と接続する在来線特急を運行させて利便性を図ります。

ここで今回注目したいのが、佐賀県鹿島市の中心駅である「肥前鹿島駅」。在来線特急〔かもめ〕が運行されている現在においてこの駅は博多~長崎駅間のいわば”本線ルート上”にあり、全ての特急〔かもめ〕が停車する主要駅として位置づけられています。

しかし新幹線開業後、新幹線とリレー特急の接続駅は現在の本線ルート上にはない武雄温泉駅。すなわち在来線特急〔リレーかもめ〕も新幹線〔かもめ〕もこの肥前鹿島駅を通ることなく、現在と異なるルートが新たな博多~長崎駅間の本線ルートとなります。

そこでJR九州では、本線ルート上から外れてしまう肥前鹿島駅へ向けて博多方面から代替特急を運行すると発表しました。その名も特急〔かささぎ〕。従来の在来線特急〔かもめ〕からは大幅な本数減となりますが、それでも博多方面からの直通列車が維持されることになったのは地元としても喜ばしい知らせではないでしょうか。

ちなみに残る肥前鹿島~諫早駅間については定期在来線特急の運行が取りやめとなります。この区間は現在でも全ての在来線特急〔かもめ〕がノンストップで運行しており、新幹線開業により在来線特急〔かもめ〕が廃止された後は普通列車の運行がメインとなります。

現在は特急の単なる途中停車駅でしかない肥前鹿島が、これからは特急列車の行先として一大ターミナルである博多駅の電光掲示板に輝くことになります。特急〔かささぎ〕デビューでいま注目の佐賀県鹿島市へ、さっそく行ってみることにします!

乗車するのは博多9:55発の特急〔かもめ13号〕長崎行。新幹線開業後、この在来線の発車標には「かもめ」ではなく「リレーかもめ」の文字が躍ることでしょう。一方で〔リレーかもめ〕の行先は武雄温泉ですが、その先の新幹線接続をアピールする意図で博多駅では引き続き「長崎行」の文字も残るかもしれません。

そしてまもなく、4番線に列車が入線してきました。九州を代表する特急車両「787系」です。1992年にデビューし、今年で30周年を迎えました。かつては博多~西鹿児島(現・鹿児島中央)駅間を結ぶ在来線特急〔つばめ〕や、九州新幹線部分開業時に博多~新八代駅間でリレー特急として運行されていた在来線特急〔リレーつばめ〕等でも活躍した過去をもちます。

列車は7両編成で、1号車がグリーン車になっています。既に30周年を迎えた車両ですが、この西九州新幹線開業に際しても引退する予定はなく、〔リレーかもめ〕〔かささぎ〕等に充当されることが発表されています。ただし現在の7両編成ではなく8両編成での運行となる列車が多くなり、「7両編成」で運行されている現在の光景も貴重なものとなりそうです。

列車は無事に定刻通り博多駅を発車。旅行や帰省のシーズンということで車内は混雑しており、4号車はほぼ満席です。

この4号車、かつてはビュッフェ車両として使用されていました。天井がドーム状になっているのはそのためで、ビュッフェ廃止後に座席が取り付けられています。

今回はインターネット予約限定の割引きっぷ「九州ネットきっぷ」を使用し、博多~肥前鹿島駅間通常3,610円(繁忙期)のところを何と2,340円で移動しています。JR九州アプリやJR九州公式HPから予約でき、繁忙期で比較すると約35%OFFとなります。当日でも予約可能ですので、これはかなりオススメです!

鳥栖駅から先は鹿児島本線を離れ、長崎本線へと入っていきます。長崎本線鳥栖の一つ隣にある新鳥栖駅では九州新幹線と接続しており、2駅連続で全ての特急列車が停車します。

佐賀駅を通り、列車は佐世保線との分岐駅である肥前山口駅に到着。この駅は新幹線開業に際し駅名を町名と同じ「江北」へ改称することが決定しています。最長片道切符のゴール地点としても名の知れた駅ですが、新幹線開業に伴いその経路も変更されるため、肥前山口駅はゴールではなくなってしまうようです。

肥前山口駅を出たあたりから雨足がかなり強まり、猛スピードで走る車両の窓には視界が遮られるほど大粒の雨粒が打ちつけています。肥前鹿島は目と鼻の先ですが、不安が募ります。

そんな最悪の天候でも、列車は定刻通り10:54に肥前鹿島駅へと到着。博多~長崎駅間のほぼ中間に位置し、どちらからでも所要時間は約1時間程度です。

肥前鹿島駅は1面2線の島式ホーム。上下線での列車交換が可能となっています。

映像をご覧いただくと分かる通り、もはやホーム上の屋根が意味をなさないような激しい雨。これでは流石に駅の外へ出るのは危険と判断し、雨足が弱まるまで駅の待合室で待機することにしました。

全列車停車駅の割にはこじんまりとした駅舎で、もちろん自動改札機はなく交通系ICカードも使えません。みどりの窓口は設置されているものの、営業時間が限られているため注意が必要です。

40分ほど待ち、ようやく雨が落ち着いたので駅舎の外へ。日射しこそないものの、湿気でもわっとしておりじっとしていても汗が出てきます。

肥前鹿島駅の1日平均乗車人員は1,200人程度(コロナ前まで)。全列車停車駅で、中には土産物品等を取り扱う売店も併設されています。

ここで、改めて佐賀県鹿島市の基本情報を確認しておきます。佐賀県の南部に位置する鹿島市は人口約2万7000人、面積は112㎢ほとで有明海長崎県大村市に挟まれています。市の中心である肥前鹿島駅は北部に位置しており、市街地も主に市の北部に形成されています。

肥前鹿島駅の目の前には「鹿島バスセンター」があり、ここ鹿島市に本社を置く祐徳バスの運行拠点になっています。本日はこの祐徳バスを使いながら市内をあちこち巡っていきたいと思います。

鹿島バスセンターの中はひっそりとしており、日中でも薄暗い印象。看板の類等を見るとかなり古くからそのままのようで、地方のバスセンターにありがちな昔ながらの光景がそのまま残されています。一方で中央の柱を囲むように設置された待合スペースの机上には充電用のコンセントが完備されており、バスセンター内にはフリーWi-Fiも飛んでいます。

昭和の雰囲気を色濃く残すバスセンターですが、その隅には等身大の大きなモニターでバスの発車案内がなされておりかなりハイテク。鹿島市内各方面のほか、嬉野・武雄・太良・佐賀方面等へバス路線がのびているようです。私が見た限りでは高速バス路線は発着していないようでした。

ではまず、鹿島バスセンター12:00発の竹崎港行へと乗り込みます。12:00ちょうどにはこのほか嬉野方面・祐徳神社方面へのバスもありますので、乗り間違いには注意が必要です。

お盆ということもあってか、乗客はまばら。私の他にもう一人だけでした。

有難いことに、祐徳バスではnimocaをはじめとする全国相互利用可能な各種交通系ICカードが利用できます。私を含め遠方の都市圏からの来訪者にとっては、これだけでも路線バス利用への敷居がぐっと下がるものです。

13分ほど乗車し、「肥前浜宿前」で下車。まずは肥前浜宿を散策していきます!

肥前浜宿はかつて醸造業で栄えた地域で、昔ながらの蔵造りの街並みの中には酒蔵やレトロな建造物が立ち並びます。長崎本線肥前鹿島駅の一つ隣、肥前浜駅からも徒歩ですぐですので、比較的交通の便も良いと言えます。

ちょうどお昼時でしたので、通り沿いにある「浜宿キッチン」さんでお昼をいただくことにします。

数あるランチメニューの中でも一番人気の「鯛のあらだき定食」(1,100円)を注文。鯛の頭の部分を丸ごと一匹使用したワイルドな一皿で、ぷりっぷりの鯛に濃厚なたれを絡めていただきます。ご飯とよく合いとっても美味しいです!!

お昼時ということで、店内は一時ほぼ全ての座席が埋まるほどの盛況ぶり。曜日や時間によっては席に着くまでに時間を要することもあるかもしれませんね。

食後は再び通りを散策。天候がいまひとつだったせいもあってか、観光客の方の姿はほとんどありませんでした。これまで宿場系の観光地は数ヵ所行ったことがありますが、それらと比べても圧倒的な閑散具合です。

時間的にちょっと酒蔵巡りまでは厳しかったので、代わりに「甘酒ソフト」(400円)なるものをいただくことに。甘酒の風味を残しながらもノンアルコールで甘酒独特のきつさはなく、とても食べやすくて美味しかったです!

想定外だったことといえば、このソフトを食べている間に再び雨が降り出したことと、このソフトが想像以上に大きく食べるのに案外時間がかかったということです。夏は食べているうちに暑さで溶け始めてしまうこともあると思うので、うまく食べられるか自信がない方は是非カップでお願いしてみてください(作る際にどちらにするかお店の方が聞いてくださいました!)。ともかく一度食べてみる価値アリです!

発車間際に無事食べきることができ、肥前浜宿前13:29発の竹崎港行に乗車。先ほど鹿島バスセンターからここまで乗車してきたバスの1本後続の便です。

今度はバスに揺られることわずか数分、やってきたのは「道の駅鹿島前」。国道207号沿いにある道の駅です。

ここ道の駅鹿島では、周辺で採れた新鮮な野菜、様々なご当地商品や土産物等をふんだんに取り扱っています。今回の私のようにバスで来るもよし、あるいは先ほどの肥前浜駅から長崎本線でさらに1駅進んだ「肥前七浦駅」からも徒歩圏内ですので、鉄道・バスどちらでもアクセスできます。駐車場は車でほぼ満車に近いくらい賑わっていました。

そしてここ道の駅鹿島の最大の特徴は、干潟体験ができること。直売所の裏手がちょうど有明海に面した干潟になっており、様々なアクティビティを満喫することができます。ちょうど訪問時もたくさんの子どもたちが泥まみれになりながらはしゃいでいました(笑)。

また、この干潟は毎年5~6月頃に開催される「ガタリンピック」の舞台にも使われています。これは干潟を舞台に開かれるスポーツの祭典で、1985年の第1回開催以来鹿島を代表する初夏のイベントとなっています。残念ながら新型コロナウイルス感染症の影響で2019年の開催を最後に今年まで3年連続の中止となってしまっているようですが、来年は復活することを願ってやみません。

短い滞在時間の中で泥だらけになるわけにもいかず、また直売所の新鮮な野菜なども魅力的でしたが持ち帰りに困ってしまうので、代わりに肥前鹿島のご当地丸ぼうろ5枚セット(570円)を自分へのお土産に買って帰りました。後でホテルに帰ってからいただきましたが、しっとりサクサクでとても美味しかったです!

来た道を戻るような形で、道の駅鹿島13:55発の鹿島バスセンター行へと乗り込みます。定刻よりも7分ほど遅れて14:02頃にやってきました。

鹿島バスセンターまでは戻らず、先ほどの肥前浜宿の近くにある「浜三ツ角西」というバス停で下車。ここで祐徳神社方面へ向かう14:08発のバスに乗り継ぐ予定でしたが、道の駅鹿島から乗車したバスが遅れていた影響で私が浜三ツ角西に到着したのは14:10頃。これは逃してしまったか…と思っていましたが、何と祐徳神社方面へのバスも遅れていたため間一髪で乗り継ぐことができました。

14:25頃に終点の祐徳神社前へと到着。バスが何台も停まれる広大なロータリー(?)になっており、その需要の大きさを感じます。

道の駅鹿島に続いて訪れたこの場所は「祐徳稲荷神社」。鹿島市を代表する観光地で、特にお正月は初詣客で大変な賑わいをみせます。冒頭にご紹介した肥前鹿島駅のホームや駅舎もこの祐徳稲荷神社をモチーフにしたデザインとなっており、まさにこの街のシンボルといえる存在です。

参道の両側には土産物店や飲食店等が並びますが、主に営業しているのは長い参道の中でも神社に近い数店舗のみ。後の大半はシャッターを下ろしている店舗も多く、やや寂しさを感じるところではあります。

長い参道を通り、神社へ到着。まずは立派すぎる門をくぐり、境内へと入ります。いや何かこの門豪華絢爛すぎません!?

門をくぐると、壮大な本殿がお目見えします(というかあまりにもデカすぎて境内に入る前から見えている)。工事現場の足場のように何層にも組まれた朱色の櫓の上にそびえる本殿へは階段を上がっていく必要があり、ちょうど雨も降っていたのでヒヤヒヤしながら上りました。

階段を上りきったところにある本殿からは、神社周辺の街並みを一望できます。比較的内陸にあるため、この本殿からは有明海までは見えませんが、本殿よりもさらに高いところにある「奥の院」からは有明海が見えるそうです。時間的に厳しかったのと、雨であまりにも危険ということで私は本殿までにしておきました。

帰り際、せっかくなので名物の「稲荷ようかん」を買っていくことに。参道のどのお店でもだいたい売っているようですが、本殿に負けないくらい朱色の鮮やかな看板のお店がありましたのでここで買っていくことにしました。

「稲荷ようかん」とは円筒状の形をした糸切りようかんで、1本300円。筒の上部の蓋を開け、筒の底を指で押すと上部から円筒状のようかんがにゅるっと出てくるので、それを白い糸で切って食べます。あずきの粒感をしっかり味わうことができ、優しい甘さでとても美味しかったです! 片手サイズでお皿もフォークもいらず、手が汚れることもありません。

それでは祐徳神社前のロータリー(?)から、15:29発の嬉野温泉・湯の田行へと乗り込みます。実は鹿島市嬉野市は隣接しており、鹿島市内各所から嬉野温泉へは1本の路線バスで繋がっています。ご紹介が遅れましたが、鹿島・雄・野の3エリアのバスが乗り放題になるデジタルフリーパス「かぶきフリーきっぷ」なるものもありますので、興味ある方は是非利用してみてください。

saga-moblab.jp

このバスには5分ほど乗車し、市街地まで降りてきたところで「執行分」というバス停で下車。「しぎょうぶん」と読みます。何だか仰々しい名前ですね(どうでもいい)。

このバス停を降りて目の前にあるのが、最後にご紹介する「ひぜん祐徳温泉宝乃湯」という温泉施設。入館料は大人700円です。初っ端から大雨に降られ、その後も移動しっぱなしで汗だくなのでここでさっぱりしていきます!

館内には様々なタイプの内湯のほか、光が差し込む露天風呂もありとにかく広々とした造り。私が訪れたのは16時前後でそれほど激しい混雑ではありませんでしたが、地元の方から観光客まで多くの方で賑わっていました。

食事処やゲームコーナー等もあり、施設内は大変充実しています。祐徳稲荷神社肥前浜宿等、今回ご紹介したような市内各所の観光地から肥前鹿島駅へ戻る道の途中にありますので、とても立ち寄りやすいかと思います。国道444号・207号のいずれからも1本路地へ入ったところにありますので、是非お立ち寄りください。

というわけで祐徳温泉へは約1時間滞在し、16:40頃に鹿島バスセンターへと帰着。

合計5時間弱で鹿島市内の4ヵ所の観光スポットを巡ることができました。

実はこれ以外にも、鹿島城跡茅葺の街並みなど本当であればご紹介したかったスポットがまだまだたくさんあります。午前中の早い時間の特急でお越しになるとそちらへも足を運べると思いますので、是非参考にしてみてください。

 

今回の記事を通じて、いま注目の「佐賀県鹿島市」の魅力が少しでも伝われば幸いです。

現在は特急〔かもめ〕で、そして西九州新幹線開業後は特急〔かささぎ〕で、魅力いっぱいの鹿島市へ是非お越しください!

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

【東海道新幹線】自由席よりも安くグリーン車に乗る!? その方法とは

 

2022年7月1日(金)

今回は、名古屋から新横浜まで新幹線で移動していきます。

みなさんは普段、新幹線に乗られる際に「普通車」と「グリーン車」のどちらを選ぶでしょうか。「少しでもゆとりのある座席を求めてグリーン車を頻繁に利用する」等という人もいれば、「普通車でも十分快適なのでグリーン車にはあまり乗らない(or1回も乗ったことがない)」という人もいることでしょう。ちなみに私は完全に後者です。

一般的に「グリーン車はグリーン料金が加算されるので普通車よりも高い」というのは誰もが知るところです。しかしどうやらこの東海道新幹線には「普通車自由席よりも安いグリーン車」が存在するというのです。一体どういうことでしょうか。

乗車するのは名古屋15:38発の〔こだま734号〕東京行。終点東京まで各駅に停車していく列車で、新横浜までノンストップで走る〔のぞみ〕と比べるとだいぶ時間が多くかかります。しかし今回はあえて〔こだま〕を選ぶ必要があるのです。

東海道新幹線は、列車種別にかかわらず16両編成のうち8~10号車がグリーン車。3両も連結されているのはさすが日本の大動脈といった感じがします。〔のぞみ〕では首都圏~東海・関西間等の移動需要が大きいためビジネス客を中心にこの3両のグリーン車が満席近くなることもありますが、短区間利用が中心の〔こだま〕であればグリーン車は空いていることが多いです。

定刻通りに名古屋駅を発車。「AMBITIOUS JAPAN!」のイントロに耳を傾けながら、少しずつ速度を上げていきます。

それではタネ明かしといきましょうか。今回私が「普通車自由席よりも安くグリーン車を予約できた」のは、実は新幹線予約アプリ「スマートEX」の席数・設定日限定商品「EXこだまグリーン早特」を利用したからなんです。お値段は運賃・特急料金合計でたったの9,060円、すなわち駅で購入する普通車自由席よりも安いということになります。

グリーン車の通常額と比べるとその差は約5,000円にも上ります。もちろん毎日設定されている商品ではなく、また名称からも分かる通り〔のぞみ〕や〔ひかり〕では同様の商品は発売されていないので、今回はあえて〔こだま〕を選ぶ必要があったというわけです。

アプリの画面に表示される内容(イメージ)としては上記の通り。駅で東海道新幹線の切符を買うと基本的には定価でしか買えませんが、スマートEXではこのように多種多様な商品の設定があります。この中で比較してみても、やはり左下にある「EXこだまグリーン早特」が最も安い設定であることが分かります。いわば航空券やホテル予約の際にみられる「ダイナミックプライシング」の鉄道版です。

スマートEXはチケットレスでの乗車となり、SuicaTOICA等の交通系ICカードを予め登録させておくことで改札口を通過できるようになっています。タッチすると上のような利用票が改札口から出てくるので、紙の切符の代わりにこれをしっかり手元に持っておきましょう。

東海道新幹線は普通車だと2+3列の計5列シートですが、グリーン車ならば1列減って2+2列。足を遠くまで伸ばせるほか、リクライニングも相当深く倒れます。

足元には大きめのフットレスト。靴のまま足をのせる面と靴を脱いで足をのせる面の両面仕様になっており、何と横のレバーで高さも調節できるスグレモノです。背面ポケットには時代の先端をゆく雑誌「Wedge」等が入っています。

テーブルは背面テーブルとインアームテーブルの両方があります。座席の前後間隔が広いため背面テーブルは手前へ引き出せるようになっており、またインアームテーブルはそこまで大きくないもののこれも安定感があります。

名古屋を出て最初の駅は三河安城。下りの〔のぞみ〕においては名古屋到着前の接近放送くらいでしか聞くことのない駅ですが、〔こだま〕は全列車が必ずしっかりと停車します。ここで後続の列車を1本待避しました。

〔こだま〕というと鈍足のイメージが先行してしまいがちですが、もちろん駅間では新幹線らしい走りをしてくれます。車窓にはおなじみ「727」の看板も見えます。

豊橋駅を発車して愛知県から静岡県に入ると、車窓左手に浜名湖が見えます。この日は若干雲が出ているものの晴れて暑くなり、全国各地で猛暑日を記録しました。名古屋も38℃くらいまで気温が上がったように記憶しています。

普通車であれば各停車駅ごとに頻繁な乗客の入れ替わりがあるでしょうが、グリーン車にはそもそも人があまりいません。グリーン料金は快適な座席や設備への付加価値の意味ももちろんありますが、何よりも「混雑を避ける」という意味がとても大きいように思います。

車窓左手にお城が見えてくると、まもなく列車は掛川駅へと到着します。新幹線駅のすぐ近くのお城としては福山城や姫路城が有名ですが、実はここ掛川城もかなり近く、車窓からはっきりと見えるのです。

静岡駅では、自由席の乗車位置付近にかなりの列ができていました。グリーン車にも若干の乗車客がいましたが、自由席に比べればほんのわずかといったところです。

ちなみに富士山の見える進行方向左側の車窓を注目していましたが、富士山はほんのうっすら見える程度でした。肉眼だともうちょっとはっきり見えるんですが…それでも曇空なのでイマイチという感じです。

名古屋を出てから〔こだま734号〕はほとんど全ての駅で後続の〔のぞみ〕〔ひかり〕の通過待ちを行っていましたが、実は静岡県内最後となる熱海駅には通過線がないため、絶対に列車の待避は行われません。停車時間中にホーム上の自販機で飲み物を買ったりするのはややリスクが高い気がします。

17:59に新横浜駅へと到着。名古屋からの所要時間は実に2時間20分程度でした。〔のぞみ〕であれば1時間20分程度ですので、それよりも1時間多くかかっていることになります。

しかし繰り返しですが、EXこだまグリーン早特の金額は〔のぞみ〕の普通車自由席に乗るよりも安いのです。すなわち単位時間あたりにかけた金額としては〔のぞみ〕よりも遥かに安いという計算になり、「新幹線に1秒でも長く乗っていたい!」という人にとってはこんなに嬉しいことはないでしょう(尤も世の中には「お金で時間を買う」という発想がありますが…)。

 

ということで、今回は〔こだま〕のグリーン車に超お得に乗車する方法をご紹介しました。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

若者限定運賃を事前に予約できる! 「スターフライヤー」で北九州へ

 

2022年8月10日(水)

今回は早朝の羽田空港へとやってきました。これから久しぶりの空の旅が始まります。

今回利用する航空会社は「スターフライヤー」。羽田空港では第1ターミナル(JALの方)からの出発となります。福岡県の北九州を拠点としており、羽田発着では北九州、福岡、関西、山口宇部を結ぶ便が就航しています。

今回は羽田7:40発のSFJ73便 北九州行を利用していきます。ANAとの共同運航便だそうで、第1ターミナルでANAの文字を見るのは何だか不思議な感じがします。お盆のシーズンに差し掛かってきているということで、空席については各便とも△あるいは×の表示となっています。

スターフライヤーのチェックインカウンターは、第1ターミナル南ウイングの一番奥にあります。京急東京モノレールの駅からはやや歩きますが、スターフライヤーの便であればチェックインカウンター・手荷物預かり・保安検査場が全て1ヵ所にまとまっているので分かりやすいです。

通常であれば自動チェックイン機にてチェックインできますが、今回私は「スターユース」と呼ばれる特殊な運賃で利用するため、有人のカウンターへと向かう必要がありました。

スターユースは満12歳以上26歳未満に限り適用可能な運賃で、ANAの「スマートU25」やJALの「スカイメイト」と似ています。ただしそれらとの大きな違いとして「事前にインターネットで予約できる」という大きなメリットがあり、当日の朝にインターネット上あるいは空港で博打をする必要がありません。

お盆ということでスターフライヤーに限らずどこの航空会社も運賃は高め。私が様々な航空会社を見比べた際は、羽田→九州各地への便は概ね3万円前後が相場でした。

「いくら何でも3万はキツいな…」と思っていたところ、スターフライヤーの「スターユース」を発見。羽田~北九州便に残席があり、20,270円にて購入することができました。普段ならば2万でも悲鳴を上げるところですが、お盆でこれならば及第点といったところでしょう。

無事に保安検査を済ませ、搭乗口へ。既にこれから乗る飛行機が待機しておりました。ボーディングブリッジが繋がれているので分かりにくいですが、機体はとにかく真っ黒な塗装なのが特徴。様々な航空会社の飛行機が行き交う羽田空港においても、ひときわ異彩を放っています。

ANAとの共同運航便ということで、搭乗口のモニターには「SFJスターフライヤー)」と「ANA」のそれぞれの文字が。スターフライヤーANAどちらの公式サイトからでも予約可能ですが、タイミングや路線によってどちらから予約した方が安いかは異なるようですので注意が必要です。もちろん「スターユース」はスターフライヤーからしか購入できません。

案内が開始され、早速機内へ。3+3列の真っ黒な革張りシートで、若干の空席はあるもののかなり満席に近い状態でのフライトとなります。

各座席にはモニター、リモコン、フック、背面テーブル、USB充電ポート、ドリンクホルダー、さらに足元にフットレストが完備されています。航空機に関してはあまり明るくないので何とも言えませんが、国内線で各座席にモニターがついているのはなかなか見たことがありません。

無事に全員の搭乗が完了し、定刻よりも少し早い7:38頃に機体がゆっくりと動き出します。滑走路内を移動している間は東京の街並みが見える場面もあり、東京スカイツリーの姿がはっきりと確認できました。

7:52頃、無事に離陸! 京浜工業地帯を眼下に眺めながら、まずは東京湾へと出ていきます。

遠くの方に目をやると、富士山の頂上付近がしっかりと確認できました。遠近法を考慮してもこのスケールですから、いかに大きいかを感じずにはいられません。

しばらくすると西向きに進路を変え、横浜市内上空へと進んでいきます。眼下には先ほど離陸した羽田空港の方から、浮島・扇島・大黒ふ頭の辺りまでを一望できます。

上空からは、横浜駅周辺や日産スタジアムがはっきりと確認できます。改めて見てみても、日産スタジアムの周辺ってこんなに緑が多いんですね…。

神奈川県西部へ差し掛かると建造物は大きく減り、絵に描いたような山々に囲まれた宮ヶ瀬ダムや相模湖等を確認することができます。

険しい山脈に挟まれ、突如現れた街は恐らく長野県の飯田・伊那の辺りでしょう。この辺りでベルト着用サインが消灯されました。

スターフライヤーLCCではないので、しっかりと機内でのドリンクサービスもあります。種類はかなり豊富で、その全てを一度にして聞き取ることはできませんでしたが、無難にりんごジュースをチョイス。

しかしこれが信じられないくらい美味しかったのです…! いわゆる市販の飲料メーカーのものとは明らかに別物で、後に機内の放送で「青森県産のふじを中心に複数の品種をブレンドしたもの」と知り、思わず感動してしまいました。JR東日本の駅の自販機で取り扱っている、小さいペットボトルで1本170円するあの味だと思っていただけると分かりやすいと思います。

しばらくすると、琵琶湖の上空へとやってきました。あまりにも広いので一瞬伊勢湾かと思いましたが、それよりもさらに西まで進んできています。

やがて山陽上空へと進み、機体は陸と瀬戸内海の海岸沿い上空を飛行していきます。時速にして800kmほど出ていますので、大都会岡山も一瞬で通り過ぎてしまいます。

山口県上空を飛行していると、ベルト着用サインが再点灯。まもなく機体が降下を開始します。途中激しい揺れはほとんどなく、ベルト着用サインがついたり消えたりすることもありませんでした。

かなり高度を下げ、陸地がはっきりと見えるところまできました。おそらく見えている部分はもう北九州市門司区の辺りでしょう。

北九州市の鉄道のターミナル駅である「小倉」とは山を挟んで反対側に「北九州空港」やフェリーの「新門司港」があります。新門司港は首都圏や関西等からいくつもの航路が乗り入れており、ちょうど上空からも阪九フェリー等が確認できました。

9:10頃、無事に北九州空港へ着陸!

関西空港長崎空港のように海の上に浮かぶ空港なので、着陸直前まで眼下には海しか見えていません。「えっ海の上に不時着するの…!?」とか思っていると、着陸寸前に陸地が現れます。

というわけで、今回はスターフライヤーの羽田~北九州便をご紹介しました。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。