2022年2月22日(火)
今回は2022年3月のダイヤ改正限りで定期運行が廃止される小田急ロマンスカー「VSE」のサルーン席を利用して新宿から箱根湯本へと向かいます。
乗車するのは、新宿10:00発の特急〔スーパーはこね7号〕箱根湯本行。小田急ロマンスカーでは新宿~箱根湯本駅間を結ぶ「はこね号」が1日を通じかなりの本数運行されていますが、その中でも特に停車駅を絞ったのがこの「スーパーはこね号」です。
新宿~箱根湯本駅間を結ぶロマンスカーのほとんどは、途中新百合ヶ丘、町田、相模大野、海老名、本厚木、秦野等のうちいくつかの駅に停車することで神奈川県内からの需要も拾えるようになっています。しかし今回乗車するこの「スーパーはこね号」は新宿を出ると何と小田原までノンストップで運行。運行距離88.6kmのうち82.5kmを無停車で駆け抜けます。
この「スーパーはこね号」は下りのみの運行で、現在平日1日2本(新宿10:00発・11:00発)、土休日1日4本(新宿9:00発、10:00発、10:20発、11:00発)が運行されていますが、2022年3月12日のダイヤ改正以後は土休日の運行が1日2本に減便され、平日の運行は取りやめとなります。
そしてこの日のスーパーはこね7号に充当されるのが、21世紀のロマンスカーの代名詞とも言うべき「VSE」(50000形)です。2005年にデビューした車両で、おなじみのあのCMでも登場するフラッグシップトレインです。まださほど古くはない車両ですが、この春のダイヤ改正をもって定期運用から引退することが発表されました。
車両の前面や側面には、「感謝をこめて」という文字が入った引退記念のステッカーも貼られています。この日の新宿駅には平日にも関わらず大変多くの鉄道ファンの姿がありました。まもなく引退が迫っていることを実感します。
今回利用するのが、こちらの「サルーン席」。4人が向い合せになって座れる半個室で、VSE1編成(10両)の中にたった3室しかありません。小田急には他にもGSE、MSE等様々な形式のロマンスカーがありますが、サルーン席があるのはこのVSEのみなのでまもなく見納めになります。
そして定刻となり、列車は新宿駅を発車。左側にはちょうどJRも走っており、成田エクスプレスの姿が見えます。小田急のホームは建物の中にあるため、暗いところから徐々に明るいところへ出ていくような形での発車となります。
まずは南新宿、参宮橋、代々木八幡…と東京都内の駅を次々通過していきます。途中には下北沢や経堂、登戸等の主要駅がありますが、スーパーはこね号でなくとも新宿駅を発車したロマンスカーは少なくとも新百合ヶ丘駅までノンストップで運行するため、遠近分離が図られています(千代田線直通のロマンスカーは一部が成城学園前に停車します)。
まもなくすると多摩川を渡り、列車は神奈川県へと入ります。2018年に完成した複々線区間はこの辺りまでで、この先は単なる複線となるため緩行線と快速線が合流します。若干速度を落としつつ登戸駅を通過していきます。
サルーン席の特急料金(新宿~箱根湯本)は利用人数に関わらず1室4,440円。同区間の通常の特急料金は1,110円なので、4人で利用すれば通常の座席と同じ値段で利用することができます。
今回は有難くもフォロワーのきっくーさん(@kikku10_YT)にお誘いいただき、乗車させていただけることになりました。平日とはいえ引退直前の花形運用の便で利用でき貴重な思い出になります。本当にありがとうございます!!
2名での利用なので1人あたりの特急料金は通常の座席の倍額となりますが、ブース単位での予約となるので空いた席に知らない人が来る心配もなく、ゆとりをもって利用できます。上部には天窓もあり、明かりが差し込む開放的な造りになっています。
ブース内には荷物棚やコンセントもしっかり完備されているほか、フリーWi-Fiも利用可能です。
列車は神奈川県から再び東京都へ入り、そして再び神奈川県へ…というように県境を何度も跨ぎます。春のダイヤ改正以降は平日日中全てのロマンスカーが町田駅に停車するようになるので、平日の乗車ながら町田駅を通過できた今回の乗車も貴重な経験かもしれません。相模大野駅を過ぎると前につかえていた列車がなくなったのか急激にスピードアップし、手元のスピードメーターアプリは100km/h以上を示していました。
いきものがかりのSAKURAが流れることでおなじみの海老名駅も颯爽と通過。ここは2016年のダイヤ改正から伊勢原駅とともに一部のロマンスカーの停車駅として加えられましたが、もちろんこのスーパーはこね号は引き続き通過です。春の改正からは何と新宿を17:00以降に発車する下りロマンスカー(ホームウェイ号)が全て海老名駅に停車するようになるため、ロマンスカー通勤の方にとってはかなりの朗報ではないでしょうか。
相模川を渡り、列車は神奈川県西部へと突入していきます。まだまだ沿線に建物や住宅街は続くものの、少しずつ地形が開けた区間も出てきたような気がします。
車窓右側に見える山々は大山の辺りでしょうか。あまり詳しくないので正確なことは分かりませんが、天候にも恵まれ最高の景色を眺めることができます。
サルーン席がある3号車にはかつて売店として使われていたスペースがありますが、現在は営業していません。代わりにショーケースの中にはVSEの写真とともに「VSEありがとう」と書かれた手作りの装飾が施されており、引退が近いことを実感します。
県西部まで来るとかなりのどかな雰囲気で、駅間もかなり長くなります。特に渋沢~新松田駅間は6.2kmも離れており、新宿を出てすぐの区間に置き換えると数駅分に相当します。
御殿場線や大雄山線の線路と交差するようになると、徐々に小田原の市街地が近づいてきます。
新宿駅を出てから1時間以上が経過し、11:09にようやく最初の停車駅である小田原駅へと到着。小田急小田原線はここまでで、この先は箱根登山鉄道へと直通することになります。途中に運転停車もなく、本当に新宿から小田原までノンストップで走り抜けてしまいました。
前方に小田原城を望みながら、列車は11:12に小田原駅を発車。乗務員交代が行われるということもあり、流石に小田原駅を通過するロマンスカーは1本も存在しません。
小田原駅にはJR東日本、JR東海、小田急、箱根登山鉄道、伊豆箱根鉄道の5社が乗り入れています。日本一を誇る横浜駅(6社局)に次いで全国2位の記録をもち、たくさんの架線柱が並びます。
箱根登山鉄道線内は単線のため、途中駅で行き違いを行います。これはスーパーはこね号も他のロマンスカーと同様で、時刻表上は小田原~箱根湯本駅間ノンストップになっていますが実際は箱根板橋駅で上りのMSEと行き違いを行いました。
箱根「登山」鉄道と呼ぶだけあって、この区間の勾配はかなりキツく、小田急小田原線内と比べるとスピードはだいぶ落ちます。小田原~箱根湯本駅間には3つの途中駅がありますが、正直普通列車でもロマンスカーでも所要時間はほぼ変わりません。ただし普通列車の場合は小田原駅で完全に運行系統が分離されているので、都心から乗り換えなしで箱根へ行きたい場合は鉄道だとロマンスカー一択ということになるのでしょう。
新宿を出てから1時間24分、11:24に終点の箱根湯本駅へと到着。箱根観光の玄関口となる駅で、強羅方面への登山電車の他、各方面へと向かうバスが発着しています。
通常のはこね号であっても新宿~箱根湯本駅間は1時間30~40分程度なので、スーパーはこね号に乗ったからといって劇的に速く着くというわけではないのですが、新宿から小田原までの80km以上をノンストップで走る光景は平日だともうすぐ見納めとなります。気になる方は是非今のうちに乗ってみてください。
またスーパーはこね号のサルーン席を乗車直前に押さえることは直前だとかなり難しいと思いますが、VSE自体は朝から晩まで区間運用も含め様々な運用に就いていますので、是非空席照会で調べてみてください。
また、今回ご一緒させていただいたきっくーさんの動画は以下のリンクからご覧いただけます。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。