2023年1月2日(月)
今回は千葉県にある京成成田駅にやってきました。成田山新勝寺への玄関口となっている駅で、ちょうどお正月ということで大勢の初詣客で賑わっています。
せっかくなら私も成田山へ初詣へ…と言いたいところですが、実は成田には鉄道ファンにとってそれよりも魅力的な「とある鉄道路線」が運行されています。
”日本一短い鉄道”の一つとして知られる「芝山鉄道」です。
芝山鉄道は東成田~芝山千代田駅間2.2キロを結んでおり、これは第一種鉄道事業者としては最も短い営業距離にあたります。「日本一短い鉄道」のキャッチコピーは公式ホームページの最上部にもしっかりと出ており、社を挙げて積極的にアピールしていることが窺えます。なお途中駅はなく、東成田を出るとすぐに終点の芝山千代田へと到着します。
そんな芝山鉄道に乗るために、まずは起点駅である東成田へと移動しなければなりません。
京成成田から東成田までは「京成東成田線」を利用していきます。
ではどれが東成田線の列車かというと…左側の上段に表示されている、京成成田10時16分発の普通 芝山千代田行です。
そう、この「京成東成田線」と「芝山鉄道」は1日を通じて直通運転が行われており、実質的に1本の路線として運行されています。
2番線で待っていると、列車がやってきました。前面の上部には「SR」(Shibayama Railway)のロゴがあり、方向幕は「(東成田)芝山」という何とも独特な案内になっています。
ホームでは一見するとたくさんの人が待っているように見えますが、この芝山千代田行ではなくその3分後にやってくる特急 京成上野行の乗客のみなさんです。
列車は定刻通りに京成成田駅を発車。やはり車内はガラガラです。
列車はしばらく京成本線と同じ線路を走行しますが、成田空港が近づいてきたところで本線と分かれます。
成田周辺の鉄道路線はJRと京成が複雑に絡み合っており、整理すると上の図のようになります。JRの成田駅と京成成田駅は近接しており、徒歩圏内にあります。京成成田駅から分岐する支線のような扱いとなっているのが現在乗車している京成東成田線ですが、かつてはこちらが「京成本線」でした(後述)。基本的に空港アクセスを目的として京成本線・成田スカイアクセス線・JRが成田空港へと集まっていきますが、その空港第2ビル駅は東成田駅と徒歩での乗り換えが可能な距離にあります。
成田市の市街地を抜けると、ゴルフ場やシティホテルが集まるエリアを走ります。日本を代表する空の玄関口でもある成田空港ゆえ、格式高いシティホテルが空港周辺でいくつも営業されていることがよく分かります。
6分ほど乗車し、10時22分に東成田駅へと到着。
「京成東成田線」の区間としてはここで終了ですが、乗務員交代等もなくすぐに発車して列車は芝山千代田へと向かいます。この後改めてそちらへ乗るとして、まずはこの東成田駅をしばし探検してみることにします。
東成田は1面2線の島式ホームの駅で、ホームは地下にあります。列車が過ぎ去っていくと人影もなく、昼間でも薄気味悪く何とも殺風景な印象を受けます。
しかし柱の向こうには、もう1本ホームがあるような…?
駅名標のようなものがあり、拡大して見てみるとなんと「なりたくうこう」の文字が。
そう、この東成田駅はかつて「成田空港駅(初代)」として営業されていた駅なのです!
成田空港が開港したのは1978年。これに合わせ京成本線の京成成田~成田空港(初代)駅間が延伸開業されましたが、現在の京成成田~空港第2ビル~成田空港駅間を結ぶ新線が1991年に開業し、それまで本線だったこの区間は支線となり、「成田空港駅(初代)」は「東成田駅」へと改称されたのです。
エスカレーターで改札階まで上がってきましたが、人影もなければ広告もほぼ皆無。明かりこそついているものの、あまりにも不気味です。
元々現在よりも広かったと思われる改札内のエリアは壁によって仕切られ、必要最小限の広さになっています。その壁のすき間から向こう側を覗いてみると…喫茶店らしき店舗の名残がありました! 空港駅として機能していた時代はさぞ多くの人に利用されていたことでしょう。
改札口にはしっかりと自動改札機もあり、無人駅ではなくしっかり駅員さんが配置されています。ただしホーム上・改札口を含めこの駅にデジタル式の発車標はありません。
改札口横には、東成田駅の歴史に関する手書きのボードもありました。当然ながらここが「成田空港駅」であった時代には、スカイライナーもやってきていたことになります。
かつての改札口付近も高い壁に覆われて中の様子は見えにくくなっているものの、覗いてみると「スカイライナー入口」などの文字も見えます。もはや物置状態となっており、おそらくこの光景は空港駅としての営業を終了した1991年からほとんど変わっていないものと思われます。
がらんとした駅構内。かつては無数の空港利用客で賑わっていたのだろうと思いますが、その頃から特に大きく改装された様子もなく、時が止まったままという感じがします。
階段を上がり、駅の外へと出てみることにします。
階段の広さもかつての空港駅ならではといった感じで、頭上には配送サービスの広告があった跡があります。
こちらが東成田駅の外観です。小さくて見にくいですが、駅名のところには京成電鉄と芝山鉄道の両方のロゴが入っています。
駅前には自動車の乗りつけが可能な乗降スペースがありますが、現在ではバスやタクシー等がやってくる様子はありません。
駅出入口の近くには、フェンスで囲われ立ち入ることのできない出入口らしきものが他にもいくつかあります。やはり空港アクセスを目的とした大きな駅だったのか、出入口は1つ2つではなくいくつもあったのでしょう。
遠くから見渡してみると、この東成田駅は今でも成田空港の中にあるということがよく分かります。先ほど路線図でも示した通り、空港第2ビル駅とは徒歩圏内にあり、今でも空港アクセス駅として使うことはできなくもない気がします。
また、東成田駅には先ほど利用した出入口以外にもう一つ出入口があります。こちらは「第5ゲート」という看板が掲げられており、一般民間人が立ち入るのには少し勇気のある見た目をしています。
第5ゲートを出て、案内に沿って数分歩くと「ターミナル連絡バス」の乗降場があります。ここはあくまでも空港の外の一般道ですが、各ターミナルを結ぶ無料連絡バスがこの東成田駅前まで来ており、今でもこの駅は空港アクセス駅として利用できるようになっています。ただしここでバスを待つ人や乗り降りする人の姿は皆無でした。
さて、それでは東成田駅構内へと戻り、いよいよ「日本一短い鉄道」芝山鉄道へ乗車していくことにします。
芝山鉄道では、SuicaやPASMO等の交通系ICカードが利用できません。これは私自身も現地を訪れて初めて知り、慌てて券売機できっぷを購入しました。運賃は大人200円です。
乗車するのは、東成田11時00分発の普通 芝山千代田行。車両は先ほど京成成田から乗車したものと全く同じかと思います。
列車は定刻通りに東成田駅を発車。いきなりドアが閉まるので乗り遅れには注意しましょう。
案の定車内は空いていてガラガラです。
しばらくすると地下から地上へと出てきます。当たり前のように線路は単線ですが、しっかりと電化はされています。
地上に出るとそのまま一気に高架線へと上がっていき、見晴らしがどんどんよくなっていきます。車窓に広がるのは滑走路で、日本最大の貿易港である成田空港がいかに広大であるかがよく分かります。
11時04分、列車は早くも終点の芝山千代田駅へと到着。やはり予想はしていましたが本当にあっという間に完乗できてしまいました。
駅名標のデザインは、京成のものとは少し異なっています。駅ナンバリングが施されているものの、東成田駅は「KS44」なので芝山千代田駅が「SR01」となり、1番だけで終わってしまうという何ともシュールな番号の振り方です。
日中の運行間隔は40分に1本となっており、基本的に京成成田~芝山千代田駅間の折り返し運転です。ただし朝夕には京成本線やその先の都営浅草線へも乗り入れる京成上野行・西馬込行が運行されています。
芝山千代田駅は1面1線の高架駅で、車止めがありすぐに線路は途切れています。
ここから横芝光町方面への延伸も計画されているようですが、現在は路線バスが運行されているのみで具体的な進展はありません。
高架駅ということもあって立派な芝山千代田駅の駅舎は、芝山鉄道の本社社屋を兼ねています。芝山鉄道単独で管轄する駅としてはここが唯一になり、当然ながら自動改札機も設置され駅員さんも配置されています。
そして何と、芝山千代田駅では「乗車記念証明書」を無料でいただくことができます!
しかも私がいただいたデザインのものは、開業20周年のロゴ入り。乗車した日付もスタンプしてくれるので記念になります。
駅前のロータリーは広く、東成田駅と比べると断然整っています。路線バスは成田市の市街地や成田空港方面のほか、総武本線の松尾駅・八日市場駅へ向かうものなどがあります。お正月ということもあってか人はそれほど多くないですが、しっかりと芝山町の交通拠点としての役割を担っているようです。
駅周辺には「成田空港温泉 空の湯」や「航空科学博物館」といった観光名所があります。芝山町の中心市街地は駅から少し南下したところにあり、そちらには役場のほか道の駅等もあるようです。
というわけで、今回は日本一短い「芝山鉄道」およびその起点駅である東成田駅についてご紹介しました。
みなさんも是非利用してみてください!
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。