わたかわ 鉄道&旅行ブログ

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【史上初】1往復限定の特別運行…東武特急「スペーシア」がJR上野駅へ!

 

2025年9月7日(日)

本日は栃木県の東武日光駅へとやってきました。

これから、とある特別な特急列車に乗車していきます。

日光は東武日光線東武日光駅」とJR日光線日光駅」の2駅がありますが、東京都心からの特急列車が毎日発着するのはここ東武日光駅の方。原則は東武スカイツリーラインの浅草駅を起点として運行されていますが、2006年にはJR線へ直通して新宿駅を発着する列車の運行も開始されました。

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また2023年には豪華特急「スペーシアX」が浅草~東武日光鬼怒川温泉駅間で運行開始。現在も多種多様な特急車両が乗り入れる、世界文化遺産の玄関口となっています。

さて、改札口にある発車標に目を向けてみると…4番線に「臨時」とだけ表示があります。行先も列車名も表示されておらず、分かる情報は「17:02」「全席指定」「本日満席」ということだけ。一体これは…?

そう、こちらの列車は東武日光17時02分発の特急〔スペーシア上野日光〕上野行です。何と東武線の浅草駅ではなく、JR線の上野駅へ乗り入れる史上初の試みが行われました。

列車名の通り、車両は東武100系スペーシア」。運行開始から今年で35年を数える、歴史の長い特急車両です。

スペーシアがJR上野駅へと入線するのは今回が初めて。この特急〔スペーシア上野日光〕は2025年9月6日・7日に1往復限定で運行され、下り(上野12:00→東武日光13:59)が6日に、上り(東武日光17:02→上野19:05)が7日にそれぞれ片道ずつで設定されました。

東武日光駅では、手前から順に「スペーシア」「リバティ」「スペーシアX」の3大看板特急が揃い踏み。どれをとっても大変魅力的な車両ですが、本日に限っては一番手前のスペーシアがひときわ異彩を放っているようにすら感じます。

シートの見た目はバブル時代の残り香が感じられ、現代のJR東日本の在来線特急車両とは大きく異なる雰囲気があります。本当にこれからこの車両が、あのJR上野駅に行くのか…! 胸が高鳴ります。

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17時02分、列車は時刻通りに東武日光駅を発車。進行方向右手にはJR日光駅を眺めながら、ゆっくりと右へカーブを描きます。

この列車の停車駅は下今市新鹿沼、栃木、そして終点の上野のみ。東武線内は通常の特急列車と特段大きな差異はありませんが、栃木~上野駅間ノンストップというのがまた非日常を感じられるところです。

列車は前から6,5,4…号車の順で、一番後ろが1号車となる6両編成。先頭6号車は4人用個室となっており、個室を備えた特急車両が上野駅へ乗り入れるというところに往年の寝台列車の風格が漂います。

車内は東武日光駅を出る時点でほぼ満席で、私を含め乗客の大部分が鉄道ファンであった様子。車内の放送では「現在空席となっているところもこの先の駅からお客様がご乗車されます」との案内。しかし結論としては、私の隣は終点までどなたもいらっしゃいませんでした。もしかすると車窓の撮影や車内放送の録音等で、終始デッキにいらっしゃったのかもしれません。

17時09分、最初の途中停車駅である下今市駅に到着。当駅は東武日光方面と鬼怒川温泉会津田島方面への分岐点となる主要駅です。またSL大樹の拠点駅ともなっていることからか昔懐かしいデザインの駅名標が設置されています。

出発時には、ホーム上で横断幕を掲げてお見送りもありました。あいにく横断幕の文字を視認することはできませんでしたが、盛大に見送られて一路上野を目指します。

東武100系スペーシア」の座席は個室を除き全て普通車で、各席にフットレスト・インアームテーブルが設置されています。背面テーブルはありませんが、壁に取り付けられた横に長いテーブルを起こして座席を回転すればグループでの旅行も楽しめることでしょう。平成初期に登場した車両とあって残念ながらコンセントはありませんが、フリーWi-Fiは設置されています。

列車はJR日光線と近いルートを通りつつも、線路や駅が近接する区間はほぼありません。東武鉄道JR東日本(旧国鉄)は長らく東京都心~日光間の旅客輸送において熾烈な競合関係にあったとされており、かつては国鉄も東京都心部から宇都宮経由で日光までを結ぶ優等列車を運行していた時期がありました。

現在、JR日光線内での定期特急列車の運行はありませんが、JRを利用すると宇都宮で新幹線へ乗り換えることで各方面へ陸路最速で移動できるという、東武とはまた違った魅力があります。

17時26分、列車は新鹿沼駅に到着。JR日光線鹿沼駅とは川を挟んでやや離れており、乗降客数は両者互角のようです。

新栃木駅東武宇都宮線と合流し、高架区間へと入ります。(カメラで捉えることはできませんでしたが)進行方向左手からJR両毛線の線路が合流してきます。

17時41分、列車は栃木駅に到着。先ほども述べた通りこの列車は当駅を出ると終点上野まで止まりません。停車中の車内でも「この電車は栃木を出ますと次は終点JR上野です。春日部・北千住・浅草方面、大宮・浦和・池袋・新宿方面にはまいりません」というアナウンスがありました。

JR両毛線ホーム上の高校生が物珍しそうな視線でこちらを見つめる中、列車は時刻通りに栃木駅を出発。引き続き東武日光線を南下していきます。

さてこの先、渡良瀬遊水地のそばをかすめると列車はいよいよ東武線からJR線内へと入ります。有名な話ですので今さら説明するまでもありませんが、東武栗橋駅ホームの北側に両社の連絡線が設置されており、この連絡線を使用して東武線からJR線へと入ります。構内には乗務員用の簡単な乗降設備が設置されており、これを使用して乗務員交代が行われます。列車はいったん停車しますが、ドアは開きません。

ふと左手を見ると、JR宇都宮線の車両がちょうど停車中!

つい先ほどまで東武の車両とばかりすれ違っていましたが、ここからはいよいよJRへ入るのかと実感します。

数分間の運転停車を経て、栗橋駅を発車したのは18時10分頃。次第に辺りが暗くなってきたことが分かります。このタイミングでの車掌さんによる車内放送や車内チャイム等は特にありませんでした。

通過する各駅のホーム上で光り輝く駅名標は、もちろん東武ではなくJR東日本。もちろんこの光景は今回の「スペーシア上野日光」に限ったものではありませんが、こと今回においては「上野行の在来線特急列車が東北本線の各駅を通過しながら走行している」という非日常感があります。

18時36分頃、列車は大宮駅を通過。ある程度の減速はしていたでしょうが、運転停車することなく颯爽と通過していきます。乗客を載せた営業列車が大宮駅を通過するなど、まずあり得ない話でしょう。

この先、東武・JR直通特急は通常湘南新宿ライン東北貨物線)の線路へと入りますが、もちろんこの列車はそんなことはなく、引き続き上野東京ライン宇都宮線高崎線)の線路を使用して走行します。さいたま新都心や浦和では上野東京ラインの列車が発着するホームを東武の特急車両で颯爽と通過する貴重な体験ができました。

車両は東武ですが、特急券の仕様はJR。しかしその券面には「東武」の文字があり、そこにJR東日本の入鋏印が押されるという何とも情報量の多い特急券です。

赤羽駅を通過し、その先王子駅付近で湘南新宿ラインとはルートが分かれます。時刻は19時前、いよいよ上野が近づいてきました。

スペーシアの車内より、進行方向右手に尾久車両センターの景色を望みます。暗闇の中で光り輝くあの車両は…クルーズトレイン「トランスイート四季島」でしょうか…!

目視の限りですが、尾久駅のホームやその先の鶯谷駅ホーム上などにも多くの鉄道ファンがいたように見えました。

上野駅到着前には「この電車は低いホーム13番線に到着いたします。本日も東武鉄道JR東日本をご利用いただきましてありがとうございました」との車内放送が掛かりました。

そして19時05分…列車はついに終点、JR上野駅へ到着!!!

到着ホームの13番線は、かつて東北・北海道・上信越など各方面への夜行列車が発着していた特別なホームでもあります。

13番線は頭端式になっており、この列車からの降車客以外は立ち入れないようになっているようでした。ホーム中程にあるエスカレーターは封鎖され、東京方の1か所のみを出口とする対応がなされていました。

今回のこの列車を機に、今後も上野への東武特急の運行が実現することを期待したいものです。上野駅地平ホーム入線ももちろんとても魅力的ですが、さらなる期待としては上野東京ラインを介して東京・品川方面への直通なんてことも…!? 夢が膨らみます(妄想するだけならタダ)。

最後に、少し気になったことを一つ。

SNS上では、この回送列車が上野駅を発車する前に全ての乗客が13番線ホーム上から強制的に”追い出された”ことに対して一部批判の声が上がっているようです。

確かに、降車直後よりホーム上では「東京方の出口へお進みください」と繰り返し放送がかかり、私が退出した後しばらくすると綺麗さっぱり13番線ホーム上からは乗客の姿が消えていました。私自身は回送列車の出発にそれほど執着しないので特段嫌な気分などもなかったのですが、一部の鉄道ファンが不満を抱く気持ちは分からなくもありません。

しかし、これはあくまでも一般発売の列車であって「団体列車」ではありません。「上野駅ホーム上で長時間の撮影ができる権利」が料金に含まれているわけではないので、この件に関してJR側に文句をつけるのはいかがなものかと感じています。長時間にわたって13番線ホーム上に係員を配置し続けるのも大変なことですので、追い出されてしまうのはある意味で致し方ないことかと思います。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。