※冒頭に茶番を含みます。あしからずご了承ください。
2024年11月17日(日)
蒲田駅はJR京浜東北線のほか、東急多摩川線・池上線の計3路線が乗り入れています。また東口より少々歩けば京急蒲田駅もあり、交通の便は極めて良好です。
本日は京浜東北線に乗車し、品川駅まで移動したいと思います。
北行の列車に乗車して大森、大井町、品川と3駅進むのみ。何ら難しい話ではありません。
しかしいざ蒲田駅の改札内へ入ってみると…あれ、何だか様子がおかしいですねえ…。
私が乗車したい北行(大宮方面)の発車標には時刻や行先など何も表示されていません。
そのそばには、やけに目立つ大きなポスターがずらり。
見てみると、「蒲田~品川 運休」と書かれています。
何と本日、京浜東北線は始発から16時30分頃まで蒲田~品川駅間で全ての列車が運休になるとのことなのです。すなわちこの運休の時間帯、当駅から発車する京浜東北線は全て当駅にて折り返しとなります。
今回の運休は、京浜東北線大井町駅ホーム拡幅工事に伴うもの。京浜東北線は蒲田以南と品川以北でそれぞれ折り返し運転が行われており、また通常であれば日中に行われている快速運転も取りやめとなっています。
並行する東海道線は通常通りの運行となっており、JR東日本では他の路線による迂回を呼びかけています。運休区間内には大井町駅と大森駅の2駅があり、大井町駅であればほかにりんかい線・東急大井町線が通っているため蒲田駅からでも何本か列車を乗り継いで向かうことができます。大森駅は京浜東北線単独の駅ですが、700mほど歩いた位置に京急本線の大森海岸駅があるため、JR東日本ではそちらを利用するよう案内されています。
さて、私が向かいたいのは品川駅です。蒲田~品川駅間の移動については、いったん京浜東北線南行で川崎駅へ戻り、そこから東海道線を利用するルートのほか、京急蒲田駅まで徒歩で移動し、京急本線を利用するルート等が案内されています。
しかし通常であれば、蒲田(京浜東北線)川崎(東海道線)品川、と利用する経路は蒲田~川崎駅間が重複となるため厳密には不正乗車となります。本日に限ってはこの方法での乗車も黙認とされているようでしたが、なるべくグレーな方法は取りたくないのが清き鉄道ファンたるものです。
そしてもし今回運休となっていなければ、私はこの蒲田駅4番線ホームから京浜東北線(E233系)に乗車するはずでした。私の今の気分は完全にE233系で、何としてもその他の形式の列車には乗車したくありません。
そして先ほどご覧に入れた通り、蒲田→品川(180円)のJR線きっぷは既に購入してしまいました…。
(茶番はここまで)
というわけで今回は、蒲田から品川まで、京浜東北線の運休区間を避けつつもE233系のみで移動していきたいと思います!
蒲田駅は2面3線の構造で、1・2番線が南行(大船方面)、3・4番線が北行(大宮方面)です。2番線と3番線は同じ1本の線路を共用しており、本日はこの2・3番線の1線のみを利用して折り返し運転が行われていました。3番線を降車専用ホームとし、全ての乗客の降車が完了したことを確認した後2番線から乗車開始となります。
蒲田以南は臨時ダイヤにて運行されており、運行間隔はわずか10分に1本。普段の京浜東北線と比べるとかなり少ないところですが、これはすなわち蒲田駅において折り返し設備をもつ線路が1線しかないことが理由でしょう。2・3番線にはホームドアが設置されていないため、何だか一昔前の京浜東北線を思わせます。
というわけで、乗車する1本目の列車は蒲田11時26分発の京浜東北線 各駅停車 大船行です。京浜東北線・根岸線のE233系は「1000番台」と呼ばれ、2007年にデビューしました。
列車は時刻通りに蒲田駅を発車。その後すぐに北行の蒲田行とすれ違いました。蒲田駅のホームは本当にギリギリの体制で運用されている様子であることが窺えます。
11時29分、列車は川崎駅に到着。ここで下車します。
本数の少なさゆえか、車内の混雑は比較的激しいように思われました。
北行の発車標で表示される行先は、ひたすらに「蒲田」のみ。「東京・大宮方面」等の文字が隠される様子は一切ありません。
東海道線へ乗り換えてしまえば品川まではあっという間…というところですが、グレーな利用方法は避けるべく、続いて乗り換えるのは南武線です。南武線は川崎駅を始発・終着としており、ある程度並べばほぼ確実に着席できます。
乗車するのは、川崎11時51分発の南武線 快速 立川行です。51分発の前には45分発・38分発の各駅停車もあったのですが、いずれも途中駅でこの快速が追い越すダイヤとなっているため、当駅では2本見送った上でこの快速に乗車することにします。
南武線のE233系は「8000番台」という形式で、2014年にデビューしました。南武線では他に「8500番台」という形式も存在しており、こちらは2017年のデビューです。8500番台は中央線の「0番台」を転用したものですが、塗装は南武線仕様となっているためパッと見ただけではなかなか8000番台との区別がつきません。
南武線の快速は2011年にデビューしました。しかしこれは実は「復活」でもあり、かつて国鉄時代の1969~1978年にも川崎~登戸駅間に限定して快速が運行されていました。
11時51分、列車は時刻通り川崎駅を発車。渡り線を左へ進み、その後右へ大きくカーブを描いて多摩川と並走するように進んでいきます。
快速の停車駅は鹿島田、武蔵小杉、武蔵中原、武蔵新城、武蔵溝ノ口、登戸、稲田堤、稲城長沼、府中本町、分倍河原、終点立川です。まだ運行を開始してから十数年ほどですが、何度か停車駅が変更されており、2011年当時は登戸~立川駅間が各駅停車でした。その後2014年に各停区間が稲城長沼~立川駅間へ短縮され、そのさらにわずか1年後の2015年には現在の通り全区間で快速運転が行われるようになっています。
見えてきた最初の駅は尻手駅です。隣のホームには南武支線(浜川崎方面)へ向かうE127系が停車しています。(元々新潟県内等で運用されていたため)「新がたの電車」として2023年9月に南武支線にてデビューしました。
左前方に高層タワーマンション群が見えてくると、まもなく列車は武蔵小杉となります。
武蔵小杉は横須賀線・湘南新宿ライン・埼京線/相鉄線直通・東急東横線・東急目黒線と実に多彩な路線が乗り入れていますが、このうちE233系が使用されているのは湘南新宿ラインと埼京線/相鉄線直通のそれぞれ一部列車のみ。どちらに乗車しても再び東京都心部へ戻ることはできますが、いずれも品川方面ではなく大崎方面に向かってしまいます。この時品川駅へは停車しませんが、「通過扱い」となるため降りることができず、その先E233系のみを乗り継いで品川駅へ戻ってきたところで不正乗車となってしまうためここで乗り換えるわけにはいきません。
武蔵小杉~武蔵溝ノ口駅間は「武蔵」のつく駅が4駅連続となり、しかも全て快速停車駅という面白い区間です。武蔵中原では乗務員の交代が行われ、また武蔵溝ノ口では川崎を6分早く発車した先行の各駅停車との緩急接続を行いました。
川崎を出る時点では座席にわずかな空席もあるほど余裕のあった車内ですが、武蔵小杉・武蔵溝ノ口・登戸…など他路線との接続をもつターミナル駅を通るごとに混雑はどんどん酷くなっていきます。南武線は全列車が6両編成のため首都圏の路線としてはやや編成が短く、それでいて「東京メガループ」の一翼を担う重要路線とあって平日休日を問わず混雑が日常の光景となっています。
私も学生時代に毎日のように南武線を利用していましたが、列車は短くホームは狭く、果たして需要に応えられるだけの供給ができているのか不思議に思ったことがあります。
稲城長沼ではさらに1本前を走る各駅停車との緩急接続を行います。この各駅停車は快速よりも川崎を13分早く出発した列車で、これで川崎~立川駅間で2本の各駅停車を追い越したことになります。
12時33分、終点の立川駅に到着。
蒲田から品川へ移動したいだけなのに、だいぶ都心部から離れた位置まで来てしまいました。
実は立川駅を通る普通・快速列車は、路線にかかわらずほとんどがE233系。ですからE233系縛りの移動をしたとてここ立川駅を抜けだすことはさほど難しくはありません。
3本目のE233系は、立川12時52分発の中央線 快速 東京行です。
中央線快速は言わずもがな、E233系の元祖ともいうべき路線です。2006年に初めてE233系がデビューした路線で、かれこれ20年近くにもなります。
その中でも今回乗車する52分発の快速は、「12両」の表示。何だか違和感のあるフォントですが、それはさておき何が目的かはお分かりですね…?
そう、12両編成の中央線には2024年10月より「グリーン車」が連結されているのです!
現在はお試し期間としてグリーン料金は不要のため、普通車と同じ扱いです。本格的なサービス開始は2025年春からとなるため、それまでの約半年間は10両と12両が混在することになります。
中央線で活躍するE233系は「0番台」。東京~大月駅間のほか、青梅線・五日市線・富士急行線でも運用されています。
先行の49分発が中央特快のためそちらは激しい混雑でしたが、こちらは豊田始発ということもあってか立川駅の時点ではそれほど混雑はしていない様子でした。
眼前に迫る四つ葉のマークに胸が高鳴ります。この位置にグリーン車が停車すると知らず並んでいた人が思わず普通車の方へ移動する光景も見られましたが、現在はお試し期間ですからグリーン券を持っていなくともその必要はありません。
私は10月に続き、今回2回目の乗車。前回は2階席を利用したので、今回は1階席を利用してみることにします。
12時52分、列車は時刻通り立川駅を発車。本格的なグリーン車サービス開始前のため終着駅での車内整備は行われず、座席の向きはまちまちでした。
一応種別は「快速」ですが、吉祥寺までは全ての駅に停車します。車内のLCDのデザインは普通車と若干異なっており、遠くからでも必要な情報が見やすいよう文字の大きさやレイアウトが工夫されています。
1階席は通常の列車の車窓と比べ目線が低く、普通車ではなかなかない非日常を味わえます。
立川を出る時点では1階席にかなり余裕があり、窓側も多数空いている様子でした。座席の転換は途中駅からであっても適宜行い、概ね進行方向を向いて座る方が多いようでした。
国分寺では、後続の青梅特快との緩急接続を行います。現在はまだ12両編成の本数がそれほど多くなく、向かいのホームに停車する青梅特快の方は10両編成のため、「グリーン車の向かいに普通車が停車する」という不思議な光景も見られました。12両編成へ統一された後は基本的に全ての編成で同じ位置にグリーン車が組み込まれるはずですので、こうした光景はなかなか見られません。
お試し期間の現在であっても、座席の背面テーブル・読書灯・コンセントは利用できます。一方で座席ランプは点灯しておらず、ヘッドカバー・フリーWi-Fi・トイレ・ごみ箱は使用できません。車内では「マナー・モラルを守っての利用にご協力を」とのアナウンスもありました。
三鷹でもまた、国分寺と同様に後続の列車との緩急接続が行われました。こちらもまた10両編成(中央特快)で、乗り換え客もあってか車内の混雑はさらに増していきます。丁寧な車掌さんで、国分寺と三鷹の両駅到着前には「ここで特快へ乗り換えると新宿・東京へ何分先着できるか」を細かく案内されていました。
通路側までびっしりと座席が埋まった状態で、列車はいよいよ新宿へ。
新宿を通る路線の中では他に埼京線・湘南新宿ラインがE233系で運行されていますが、先ほど武蔵小杉にて説明した通りいずれも品川駅には停車しません。仮にここで中央線を下車し、埼京線または湘南新宿ラインのE233系で大崎まで移動できたとしても、その先大崎~品川駅間を走るE233系の列車が1本たりとも存在しないのです。
そんなわけで、終点東京へと向かいます。
新宿~東京駅間では神田川と並行しつつ、並走する中央・総武線各駅停車と比べるとかなり駅数は少なく、この区間では快速としての威力を遺憾なく発揮してくれます。
御茶ノ水で各駅停車と線路が分かれ、こちらは右に大きくカーブを描きます。
中央線では特急〔あずさ〕〔かいじ〕等が比較的高頻度で運行されていますが、特急はほとんどが新宿発着であることを考えると、クロスシートで直接東京駅まで乗り入れられるこの快速グリーン車の存在意義は十分にあると言えそうです。
13時45分、終点の東京駅に到着。列車は折り返し50分発の中央特快 高尾行となるようで、グリーン車はすぐに満席となりました。
東京まで来てしまえば、後は品川まで向かうのは何ら難しい話ではありません。
東京~品川駅間で運行されているE233系は東海道線・京浜東北線の2路線です。京浜東北線には冒頭、蒲田→川崎で乗車しているため東海道線の方にしようかとも思いましたが、通常では見ることのできない「品川行」が多数運行されている京浜東北線の方に乗車してみようと思います。
東京駅の6番線ホームへと向かう看板には「蒲田・関内方面」と記されています。こうした文字は運休の時間帯であっても隠されたりすることなく、あくまでも駅構内・ホーム上等での追加の張り紙やアナウンス等による案内に終始していました。
乗車するのは東京13時59分発の京浜東北線 各駅停車 品川行です。「京浜東北線の品川行」というものが珍しいのはもちろんのこと、日中に快速運転が行われていない光景もまた違和感があります。
運行本数は蒲田以南ほど少なくはないようで、こちらは概ね6~8分間隔といった様子。快速運転をしていないため田端~品川駅間での役割としては並行する山手線とほぼ同じで、かつ山手線の方が本数が多いため6番線側で待つ人はそれほど多くないように見えました。
さあ、ついにはっきりと見えた「品川」の文字!
この列車で品川まで移動することができれば、目的達成です。
東京~品川駅間における列車の運行本数の多さは別格で、東海道線(上野東京ライン)・京浜東北線・東海道新幹線がほぼ同じルートを並走します。さらに地下には横須賀線の線路も通っており、車窓を眺めてすれ違う列車や並走する列車を1本も見ない方が難しいというものです。
この区間では有楽町・新橋の2駅が快速通過駅。有楽町はともかく、新橋は東海道線も停車するほどの主要駅ですから、京浜東北線の快速が通過するのはやや意外かもしれません。一方で東京モノレールと接続する浜松町にはしっかりと快速も停車するため、羽田空港利用者にとってはかなり使いやすいダイヤとなっていることでしょう。
高輪ゲートウェイは相変わらずがらんとした様子でしたが、新橋さえも通過するほどの快速はここ高輪ゲートウェイに停車します。
14時12分、列車はようやく終点の品川駅に到着。
これにてようやく、蒲田→品川をE233系のみで移動することができました!
品川駅では当駅止まりの京浜東北線が5番線(南行ホーム)に入線します。到着後は回送列車となるため5番線は降車専用ホームとして扱われていますが、向かいの6番線が上野東京ライン(北行)のホームなので、そちらは通常通りの営業です。
5番線の発車標には「大井町・大森・蒲田・川崎・横浜方面」と表示されているものの、その下に表示される文字は「回送」だらけ。最上段の部分は本日の運休に合わせ「降車専用」等と表示を切り替えられそうな気もしますが、やはり一度きりの運休のためにそのような対応を行うのは難しいのでしょうか。
5番線(南行)ホームに当駅止まりとして入線した列車は、いったん回送列車として大井町方に引き上げ、しばらくして隣の4番線(北行)ホームに当駅始発として入線します。乗車専用・降車専用が明確に分けられている点は蒲田駅と同じですが、1線ではなく2線で列車を捌くため蒲田以南よりも高頻度での運行が実現しているというわけです。
ただしそれはそれで慌ただしいようで、北行列車が1本発車するとすぐに引き上げ線から新たに1本列車がやってきます。この列車が4番線へ入線しないと回送列車が5番線から発車できない様子で、限られた設備を効率的に運用していることが分かります。
何はともあれ、無事にE233系のみを乗り継いで蒲田→品川を移動することができました。
同じ駅を2度通らない大回り乗車として行うことで、蒲田駅で買った180円のきっぷも無駄にならずに済みました。なお、経由に「東海道」と書かれていますが、大都市近郊区間内であれば券面表示通りの経路でなくとも大回り乗車のルールに則って移動ができます(大回り乗車のルールはここでは割愛します)。
本日の移動ルートはご覧の通りとなりました。
直線的に京浜東北線で進むよりも、実に76kmも長く移動したことになります。もちろん「E233系縛り」でなければもっと短い距離での大回り乗車も可能ですが、改めて京浜東北線の有難みを感じる一日となりました。
なお現在、大井町駅でのホーム拡幅工事は完了し、京浜東北線は全線で運転を再開しています。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。