2024年10月13日(日)
お台場の「青海(あおみ)」ではなく西多摩の「青梅(おうめ)」です。確かに漢字は似ていますが、どうやら本当に間違える人もいるそうで…。
そんな話はさておき、本日は中央線・青梅線にとって記念すべき新たな歴史の始まりを告げる一大ニュースが待ち構えていました。
オレンジ色の帯で運行されているE233系中央快速線について、JR東日本は2025年春より2階建てグリーン車の営業運転を開始すると発表しました。これに先駆け、「お試し期間」として本日10月13日(日)より一部の編成にグリーン車が連結されています。
グリーン車を連結して運行するのは、中央線の東京~大月駅間および青梅線の立川~青梅駅間です。これまで10両編成だった中央快速線系統の列車は、普通車の両数を減らすことなくグリーン車を間に組み込むため本日から「12両編成」と案内されることになります。
ホーム上ではグリーン車の乗車位置を示すステッカーも準備され、準備は万全。ただしあくまでも「お試し期間」なので2025年春まではグリーン車も普通車としての扱いになり、グリーン券を購入する必要はありません。
4番線ホームで待っていると、東京方面から当駅止まりの列車として10時49分に入線。折り返し青梅11時02分発の青梅特快 東京行となります。
まず車体側面をご覧いただくとお分かりの通り、これまでの他の路線の普通列車グリーン車との最大の違いは「ドアが両開き」である点です。
中央快速線は東京駅を始発・終着として運行していますが、その東京駅では中央線ホームが1・2番線の2つしかなく、一日を通じて極めて短い時間で折り返し作業を行わなければなりません。特に朝夕ラッシュ時等は大変な混雑が見込まれる中で、東京駅のみならず途中駅も含め短い時間で全ての乗客の乗降を完了させるべく、他の路線の普通列車グリーン車よりも幅の広いドアが設置されているのです。
グリーン車は4・5号車の2両で、ドア横の四つ葉のマークも隠されることなく堂々と掲げられています。中央快速線ではこれまで10両の固定編成と6+4両の分割編成が存在しており、分割編成については6両側に組み込まれるため8+4両となります。
デッキ部分もドアと同様に広いものの、車端部が平屋席となっている構造は他の路線の普通列車グリーン車と同じです。デッキの広さ故、平屋席の席数が他の路線の普通列車グリーン車よりも少なくなっています。
デッキ部分にはグリーン料金表も貼り付けられているものの、ドア部分では「ただいまこの車両は『普通車』としてご利用いただけます。」という案内もまたなされています。一番左のステッカーが見られるのは約半年間限定ということになりそうです。
なお、2025年春以降の中央快速線グリーン料金体系については現行の他の路線と同じものが適用されますが、東京駅や新宿駅で中央快速線以外の路線と乗り継いで料金を通算することはできません。また中央線(立川以西)と青梅線を立川駅で乗り継ぐ場合も通算はできないため注意が必要です。
青梅駅では入線の数分前から並んでいたところ、何とか窓側の座席を確保することができました。モケットの色は横須賀線・総武快速線E235系のグリーン車と同じと思われますが、本格的なグリーン車サービスの開始前のためかヘッドカバーは取り付けられていません。
普通車扱いのため座席頭上のランプは稼働しておらず、グリーンアテンダントの方も乗務されていません。車内販売はなく、またこのお試し期間中はグリーン車内のトイレ・ごみ箱・Wi-Fiも利用できなくなっています。
各座席には背面テーブル・ポケット・フックが備わっており、こちらは利用することができます。また各席ひじ掛けにコンセントがあり、こちらはお試し期間の本日より利用することができました。
なお現在は終着駅での車内清掃は行われないため、座席の向きを乗客が自主的に転換する様子が見られました。本日は初日とあって私を含め鉄道ファンの利用も多いためこの辺はスムーズで、転換手順こそ異なるものの東海や関西の転換クロスシートを彷彿とさせる光景でした。
11時02分、時刻通りに列車は青梅駅を発車。この先立川までの各駅と、国分寺、三鷹、中野、新宿、四ツ谷、御茶ノ水、神田、終点東京に停車します。
気になる2階席の混雑ですが、青梅駅を発車する時点で既に窓側は全て埋まっていた様子です。通路側であれば比較的余裕があり、着席も可能なようでした。
客室内前方のモニターはフルカラーディスプレイで、普通車のデザインとも異なっています。客室後方からでもしっかりと文字を視認できるよう、レイアウトに工夫がなされているように見えました。
青梅線内の途中駅からもどんどん乗車があり、次第に車内の混雑が激しくなっていきます。
グリーン車と普通車ではドア数・ドア位置が異なるため、各駅ホームのグリーン車の前で待っていた人が列車の到着と同時に普通車の方まで移動している様子も見られました。もしかするとグリーン車の「お試し期間」の周知が少し不足しているのかもしれません。
グリーン車が連結されている列車については、JR東日本アプリから確認することができます。「中央線快速電車」の列車走行位置ページを開くと、列車ごとに両数が記載されているため、特急以外で「12両」の記載のあるものがグリーン車を組み込んだ編成です。なお拝島駅到着直前にアプリで混雑状況を確認したところ、グリーン車についてはしっかり「満席です」と表示されていました。
運行初日の本日は、グリーン車を組み込んだ編成が3編成運用されているようでした。
定刻よりも1分ほど遅れて、11時20分頃に拝島駅へ到着。当駅の発車時刻は11時25分のため、ここで遅延は回復できそうです。
他の路線との乗り換えについては、グリーン車客室内のディスプレイでもしっかりと案内されます。
2階席は目線が高いため、各駅ホーム上において時計や発車標、駅名標等との距離が近くなります。中央線の新宿~小淵沢駅間では2020年11月までオール2階建て車両「215系」を使用した臨時列車「ホリデー快速ビューやまなし号」が運行されていましたが、青梅線内で2階建て車両が運行されることはおそらくこれまでほぼなかったのではないかと思います。
拝島駅を発車すると座席は通路側を含めほぼ満席となりましたが、通路はしっかり通れるような状態です。おそらくデッキは混雑していることでしょう。
立川駅の一つ手前、青梅線の西立川駅まではドアが半自動(ボタン式)で扱われ、立川駅からは自動で開くようになります。
さて、まもなく列車は”運命の”立川駅へと到着します。立川からはそのまま中央線へ直通し、新宿・東京へ向かうことになります。
本日はグリーン車の運行開始初日。東京~立川駅間では特に多くの利用が見込まれるため、その混雑に巻き込まれることなく始発駅の時点で座席を確保しておきたかったがために私はわざわざ青梅へ向かったのです。
立川駅へは、定刻よりも3~4分ほどの遅れをもって到着。もちろん当駅での下車もあるものの、それ以上に多くの乗車がありいよいよ乗客の波が2階の通路にまで押し寄せてきました。
このグリーン車の混雑は、当然ながら「運行初日」という理由がその最たるものでしょう。しかしアプリで確認すると、どうもこの青梅特快は普通車の方も同様に激しく混雑していたようで、もはやどの号車に乗っても地獄という状況だったみたいです。
立川駅を発車し、中央線に入ると直線的な高架となります。いよいよ「青梅特快」としての速達運転を行う区間に入り、まずは国立・西国分寺を通過します。とはいえ中央線が全体的に遅延ぎみの本日、どうも前が詰まっているようでこの列車もなかなか本領発揮とはいきません。
国分寺駅の手前では、西武国分寺線と並走します。これまでなかなか見ることのできなかった視界を、2階席から楽しむことができます。
国分寺駅ではつっかえていた先行の快速列車との緩急接続を行います。
ホーム上はとにかく人、人、人だらけ…!
グリーン車の物珍しさが元々の休日の混雑に拍車をかけ、さらに遅延が増大していきます。
車内では、グリーン車に追加料金なしで乗れるという直接的な文言こそなかったものの、「全ての車両が普通車です」「ごみはお持ち帰りいただき、車内美化にご協力をお願いします」というアナウンスが繰り返しなされていました。グリーン車の通路にまで人が押し寄せるほどの混雑ですから、いずれにせよもうこれ以上4・5号車に人が乗り切れなくなる、その寸前のところまできていたのだろうと思います。
続いて列車は三鷹、中野に停車。グリーン車内は鉄道ファンのみならず、そうでない一般の方も多くてんやわんやです。短区間だけお試しで乗ってみたはいいもののまともにくつろげる状況でなく、かといって降りようにも通路まで人が押し寄せていてなかなか降りられない…という光景が客室の前後で巻き起こっていました。
新宿駅のように乗り換え路線が多い駅であっても、路線名は複数ページに分けて表示することで文字一つ一つが普通車よりも大きく表示できているように思います。新宿駅での乗り換え路線数は3ページにも渡りました。
歌舞伎町を横目に、列車はまもなく新宿へ。この景色もまた、2階建てゆえにいつもと少し違って見えます。
定刻よりも6分ほど遅れて、新宿駅に到着。ここでの降車はやはり多かったですが、それでもやはり乗車の波もあったため結果的に車内の混雑具合はそれほど大きく変化することなく発車となりました。
中央線の特急は多くが新宿止まりですから、新宿より先もリクライニングシートで向かうことができるのがこの普通列車グリーン車の強みといえます。神田川に沿って走る区間では中央・総武線各駅停車と並走しつつも、やはり快速線の方が停車駅が少ないためあっという間に差をつけていきます。
やがて山の手の東側へと移動し、神田駅に到着。横の線路には2015年に開業した上野東京ラインのグリーン車が日夜行き交いますが、神田駅に「停車する」グリーン車となるとこの中央快速線が初めてのことです。
各路線のホームを見下ろす形で、列車は終点の東京駅へ入線します。ただでさえ他の路線よりも高い位置にホームがある中央線ですが、さらに2階部分ともなると相当な高さです。
所定では12時17分到着予定のところ、7分ほど遅れて12時24分頃に到着。折り返しは12時21分発の中央特快 高尾行ですが、既に出発時刻を過ぎています。
東京駅のグリーン車乗車位置付近に並ぶおびただしい数の人は青梅駅のそれとは段違いで、まるでお盆の新幹線のUターンラッシュのようでした。おそらく列の後方の人は着席できていないと思いますが、それでも何とか乗り込めるだけ乗り込んで、普通車もグリーン車も満員の状態で定刻6分遅れの12時27分頃に東京駅を発車していきました。
2025年春以降のグリーン車サービス開始において、東京駅での折り返しの車内清掃を完了させられるのかというところに一抹の不安は覚えるものの、やはり本格的なサービス開始も楽しみです。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。