わたかわ 鉄道&旅行ブログ

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【迫るワンマン化の波】ホリデー快速おくたま号 下り奥多摩直通ラストランに乗車

 

2023年3月12日(日)

今回は新宿駅へとやってきました。

これから乗車するのは、新宿8時20分発の〔ホリデー快速おくたま5号〕奥多摩です。

中央線・青梅線では、土休日および祝日に東京都心と東京都西部を結ぶホリデー快速おくたま号〕という列車が運行されています。下り列車は新宿始発で奥多摩へ、上り列車は奥多摩始発で新宿を通り東京まで直通します。

東京都心~奥多摩間における列車の直通運転は、国鉄氷川駅が現在の「奥多摩駅」へと改称された1971年に開始。当時より列車名は「おくたま」であったものの、あくまでも臨時列車としての位置づけでした。

国鉄分割民営化後、1990年にはJR東日本が「ホリデー快速」の呼称を開始。今日に至るまで使用されてきた「ホリデー快速おくたま号」という呼称はここから始まっています。

2001年に〔ホリデー快速おくたま号〕は定期列車へと昇格。それまで冬季は運休もしくは縮小体制での運行でしたが、これ以降土休日・祝日に通年で運行される列車となりました。

しかしJR東日本八王子支社は、2023年3月18日のダイヤ改正より青梅線の青梅~奥多摩駅間でワンマン運転を開始することを発表。これに伴い青梅線青梅駅での系統分割が行われ、青梅駅を跨いだ旅客列車の直通運転は取りやめとなります。

ホリデー快速おくたま号〕も例外ではなく、これまで「奥多摩行」として運行されていた下り列車は「青梅行」へと短縮されます。「おくたま」を謳っているにもかかわらず、他の快速列車や青梅特快と同じ青梅駅までの運行になるとは誰が予想していたでしょうか。

なおプレスリリースにもある通り、利用の見込まれる日には青梅~奥多摩駅間で臨時〔ホリデー快速おくたま81~86号〕を運行します。定期列車とは青梅駅で接続するかたちとなり、所要時間の面で現在と大きな違いはありません。しかしながら、これまで乗り換えなしで移動できていた区間に必ず乗り換えが発生するとなれば、利用者目線で見るとあまり歓迎されるものではありません。

また、〔ホリデー快速おくたま号〕と併結して運行されていた〔ホリデー快速あきがわ号〕については今回のダイヤ改正をもって廃止となることが発表されています。

改めて、今回乗車するのは新宿8時20分発の〔ホリデー快速おくたま5号〕奥多摩です。新宿駅で「奥多摩」という行先が見れるのも今日この瞬間が最後になるかと思いますが、正直なところあまり実感はわきません。

しばらくすると、新宿駅11番ホームに列車が入線してきました。

普段中央線・青梅線等で使用されるE233系と変わらず全車自由席での運行ですが、拝島駅で切り離しを行うことができるように10両の固定編成ではなく4+6両の編成となっています。

隣の12番ホームには、ホリデー快速おくたま・あきがわ5号よりも4分早く新宿駅を発車する快速 青梅行が入線。どちらも青梅線直通ですが、発車標に示された停車駅案内の光る箇所の数を数えると、このホリデー快速おくたま・あきがわ号の「特別快速」たる所以が分かる気がします。

ホーム上のアナウンスでは、本日のこの列車が「新宿からの奥多摩行として運行されるラストラン」である旨や「2001年に定期列車へと格上げされ、今日までハイキング客をはじめとする多くのお客様にご利用いただいた」旨等が繰り返し放送されていました。運行最終日らしい演出です。

8時20分、列車は定刻通りに新宿駅を発車。まずは中央線内を走行していきます。

新宿~立川駅間における停車駅は中央特快・青梅特快と同じ中野、三鷹国分寺の3駅のみです。東京メトロ丸ノ内線と接続する荻窪京王井の頭線と接続する吉祥寺、武蔵野線と接続する西国分寺…など各路線との接続駅も挙げ始めるといろいろありますが、そんなことはお構いなしです。

中野駅ではちょうど向かいのホームに中央・総武線各駅停車が停車中。ホリデー快速は中野~三鷹駅間ノンストップですが、あちらの列車は三鷹までの全ての駅に停車します。

中野~立川駅間は線路が直線的で、大部分が高架化されています。現在は大小さまざまなビルや住宅が眼下に広がっていますが、これからこの車窓がどのように変化するのかも注目です。

三鷹駅では、新宿駅を4分早く出た快速 青梅行を追い越します。過密ダイヤだからと前後の列車と同じペースでゆっくり走るのではなく、ちゃんと「特別快速」らしく先行列車を追い抜くところはさすが定期列車としての風格を感じます。

さらにその先の国分寺駅では、新宿駅を14分早く出た快速 八王子行を追い越します。中央線で特別快速が重宝されるのは、こうした各駅での待避と緩急接続がしっかり整っていることにあると改めて感じる次第です。

立川駅では多数の乗降がありました。立川自体が極めて大きな駅であるというのはもちろんですが、特に新宿からここまでの車内は他の中央線の列車と変わらず激しい混雑であったように感じます。鉄道ファンやハイキング客も多数乗車していますが、それ以上に中央特快・青梅特快と同じ感覚で利用する人が多い印象でした。

立川駅を発車すると、地上区間へと入ります。車窓は少しのどかになりますが、引き続き住宅の多い地域を走ります。

ホリデー快速おくたま号の興味深いのは、青梅線内でもしっかり通過駅があり、ともすると青梅線内でも大部分の駅を通過するという点にあります。立川~拝島駅間では途中「西立川」のみ停車しており、これはダイヤ改正以後も変わらないことになっています。何となく昭島とかの方が大きいのかなと思っていましたが、なぜ西立川…? 土休日運行ゆえ、国営昭和記念公園への利便性向上を図ったものでしょうか。

そして次の拝島では、いよいよ切り離しが控えています。前寄り4両(10~7号車)が「あきがわ号」として五日市線に直通し、後寄り6両は「おくたま号」として引き続き青梅線内を走ります。

8時57分に拝島駅へと到着。青梅線五日市線のほか、八高線西武拝島線も乗り入れる西東京の主要なターミナルです。

発車標を見上げてみると「あきがわ号」→「おくたま号」と時間差をつけて発車していくことが分かります。「前4両」「後6両」という両数表示もこの列車ならではです。

連結面付近では切り離し作業が着々と進められており、大勢の鉄道ファンが集まっています。我が国における最後のホリデー快速の、最後の切り離し作業の瞬間です。〔ホリデー快速おくたま号〕自体はダイヤ改正後も引き続き運行されますが、今後は単独での運行ですから増解結を行うことはないでしょう。

無事に切り離し作業が終了し、〔ホリデー快速あきがわ5号〕が先に武蔵五日市へ向けて発車。この先五日市線内は各駅に停車します。

程なくして〔ホリデー快速おくたま5号〕も発車となりますので、急いで乗り込みます。ここからは6両編成で、終点の奥多摩を目指します。

9時04分に拝島駅を発車。この先福生、青梅、日向和田、御嶽と停車して終点の奥多摩へ到着します。

この辺りに来ると東京都心で休日のショッピングを楽しみに出かけているような若者は少なく、車内の乗客の大半はハイキング客、鉄道ファン、沿線利用者のどれかに分類されそうです。比較的混雑はしているものの、中央線内に比べるとそこまででもなくなっています。

この区間で特に驚くのは、河辺駅を通過してしまう点です。ここは特急〔おうめ〕も停車する駅となっていますので、種別の逆転現象が発生しています。河辺駅では3月18日より新たなホームの使用が開始される予定となっており、ほぼ完成しているピカピカのホームと線路を通過する車内からも確認することができました。

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9時21分に青梅駅へと到着。繰り返しになりますが3月18日以降はここが終点となり、奥多摩方面へ行く場合はホリデー快速おくたま号であっても必ず乗り換えが必要になります。

現在はわずか1面2線のため、青梅駅でそれほど長く停車しているわけにもいきません。来た道を対向の立川行へと譲り、こちらもすぐに発車していきます。

青梅駅を発車すると、本来の途中停車駅は御嶽のみです。しかし今の季節は梅の花が見頃を迎えており、日向和田駅に臨時停車をします。

駅から歩いて少し進んだところに「吉野梅郷 梅の公園」があり、多くの方が降りていかれました。現在はホリデー快速おくたま号の臨時停車のほか、特急型車両を用いた臨時列車なども運行されることがありますが、青梅線のワンマン化によってどのように変化するのか注目されます。

日向和田駅を発車。車窓は先ほどまでよりもさらにのどかになり、険しい山々に囲まれる区間へと差し掛かってきました。中央線とはうってかわって、線路は地形に沿ったくねくねとした線形に変わります。「特別快速」ですから停車駅は引き続き少ないものの、高速での走行は困難になります。

9時35分頃に御嶽駅へと到着。人気の山岳エリアへの玄関口となる駅で、ハイキング客の多くはここで降りていきました。

ここでは対向の普通列車と行き違いを行うため、8分間ほど停車します。

しばらくすると、車内やホーム上にいる人の大部分が鉄道ファンという状況に。新宿からここまで乗り換えなしで来れるということの利便性の高さを改めて感じます。逆に来週以降、直通運転が打ち切られてしまうとどうしても「東京都心から乗り換えなしで御嶽・奥多摩へ!」という趣旨のキャッチコピーは使えなくなってしまいますから、観光への影響も不安が残ります。

9時43分に御嶽駅を発車。終点の奥多摩駅まではあと15分です。

窓の外を眺めると、多摩川に架かる大きな橋が見えます。周囲に建物もそれほど多くなく、暮らすのにとても便利な場所かというとなかなかそうとは言い切れません。

しかし今日まで、東京都心とこの集落はホリデー快速で結ばれていました。また本数はわずかですが、朝方に奥多摩から東京までを直通する快速列車の運行もあり、これは3月17日まで続けられます。しかし翌18日からは、完全に青梅駅で分断されてしまうのです。

「合理化」というのは大変便利な言葉で、捉え方は人それぞれです。東京都心~奥多摩間の直通列車が廃止されて「都心が遠くなる」「過疎化が進む」と考える人もいる一方で、全列車が青梅~奥多摩駅間で完結する運用になりますから「行先が分かりやすい」「都心の遅延の影響が少なくて済む」と考える人もいるはずです。

しかしいずれにせよ、今日この日まで直通列車が運行されていたことは多くの人の心に刻まれています。「ローカル線のワンマン化」という時代の流れに逆らうことは残念ながら難しいかもしれませんが「かつてはこんな便利な列車も走っていたのだ」ということをしっかりと記憶に留めておきたいと思います。

9時58分、列車は定刻通り終点の奥多摩駅へ到着。最終運行でしたが特に大きな混乱もなく、〔ホリデー快速おくたま号〕下り奥多摩行最終列車は最後までしっかりとその役目を果たしきりました。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。