わたかわ 鉄道&旅行ブログ

乗り鉄&旅好きの20代男子が全国を巡る!

【最後のブルートレイン】寝台特急北斗星 上野~札幌16時間の旅

 

2015年2月2日(月)

本日は上野駅へとやってきました。これより、ブルートレインで北海道へ渡りたいと思います。

今回乗車するのは、上野19:03発の寝台特急北斗星〕札幌行です。

上野駅の発車標では、北斗星は「宇都宮線東北本線)」の欄に表示されます。「宇都宮」「小金井」といった関東近郊の行先ばかりが並ぶ中で、同じフォントで平然と「札幌」と表示されている光景は一瞬目を疑いますが、これもまた今となっては貴重な光景です。

そして注目していただきたいのは、各列車の一番左の欄に表示されている「始発」の文字。いよいよ来月開業する上野東京ラインを前に、発車標が取り替えられている証です。かつてこの上野駅は東北・信越・北陸等各方面からの「玄関口」としてあらゆる列車が「当駅始発」で運行されるターミナルでした。しかし上野東京ラインが開業すれば上野始発の列車は減少するため、それらの区別がつくよう欄が設けられているものと思われます。上野駅を跨いでの直通運転が日常のものとなれば、かつてここが始発・終着駅であったという記憶もいつしか薄れてしまうのかもしれません。

かつて星の数ほど走っていた”上野発の夜行列車”も、今は「北斗星」と「カシオペア」の2本のみ。特に「北斗星」は我が国の鉄道史における「最後のブルートレイン」であり、まもなくその半世紀以上の歴史に幕を下ろすことになります。

18:44頃、いよいよ青い客車が尾久方面から入線。「推進回送」とよばれる方法で、機関車を最後尾に連結し客車部分を先頭にして入線してきました。

北斗星をはじめとする「ブルートレイン」は、電車でも気動車でもなく「客車列車」。一般的に、旅客が乗り込む客車部分に動力はなく、先頭に強力な機関車を連結して運行されます。機関車といってももちろん蒸気機関車(SL)ではなく、上野発着の夜行列車においてはいずれも電気機関車(EL)が用いられます。先頭にはヘッドマークが取り付けられ、旅の気分が一気に高まります!

各車両の側面には方向幕が設置され、「特急 北斗星 札幌」と出ています。国鉄時代によく見られた独特のフォントで、これも今では全国的にかなり数を減らしてきています。

編成の最後部にはテールマークが表示され、これもヘッドマークと同じくめちゃくちゃカッコいいデザインです!

平日にもかかわらず、ホームには多くの鉄道ファンが押し寄せています。定期運行終了まであと約1ヵ月に迫り、我が国最後のブルートレインゆえ名残を惜しむ人は多いこと間違いありません。

北斗星には、A寝台「ロイヤル(1人用)」「ツインデラックス(2人用)」、B寝台「ソロ(1人用)」「デュエット(2人用)」「二段式開放寝台」の計5種類の寝台が用意されています。A寝台は全て個室となっており、北斗星に開放A寝台はありません。B寝台では開放寝台以外の「ソロ」「デュエット」が個室ですが、この3種類は全て1人あたりの寝台料金が6,480円で同額なので、個室の方がお得感があります。今回は父親とともに「デュエット」を利用していきます。

部屋の中はご覧の様子。中央に出入口があり、それを挟むように2つのベッドが配置されています。B寝台なので個室内にお手洗い、洗面台、シャワー等の設備はありません。共用のものを利用することになります。

列車は定刻通り、19:03に上野駅を発車。無数に並ぶ線路を横目に、これから約16時間かけて札幌を目指します。

途中停車駅は大宮、宇都宮、郡山、福島、仙台、函館、森、八雲、長万部、洞爺、伊達紋別東室蘭、登別、苫小牧、南千歳です。寝台特急のため深夜帯は客扱いの停車を行いませんが、もちろん仙台~函館駅間を全くの無停車で突っ走っているわけではなく、途中数ヵ所で運転停車を行います。

大宮を発車したところで、夕食のお時間にします。

北斗星には食堂車「グランシャリオ」が連結されています。しかしディナーは完全予約制で、フランス料理コース(8,500円)もしくは北斗星懐石御膳(6,000円)ととても手が出るような代物ではありません。

そこで選んだのが「グランシャリオ弁当」(1,100円)。車内限定のお弁当で、事前に電話予約を入れておくことで当日車内での受け取ることができます。

ふたを開けてみると、しらすご飯、焼き魚、煮物など和風中心のメニューになっています。これはもはや四捨五入して和風御膳と言えそうです(そんなことはない)。

食後はしばし車内を探検。基本的には個室主体の寝台特急ですので、このように通路が片側に寄せられて扉がずらりと並んでいます。普段利用する電車にはない、独特の雰囲気です。

こちらは二段式開放寝台。いわゆるドミトリーに似た造りをしており、4人で一つの区画を使用する配置です。各寝台はカーテンを閉めることである程度のプライバシーが確保できるようになっています。

こちらは共用スペース内にある洗面台。2~3時間程度しか乗車しないような特急電車なら洗面台があっても乗車中に一度も利用しないことも多いですが、寝台列車の場合はそうはいきません。動く列車の中で水が使えるというのは凄い技術であるとつくづく感じます。

気づけば列車は首都圏を抜け、21:52に郡山駅へと到着。新幹線ならあっという間の距離のはずですが、上野を出てからここまで約3時間かけて移動してきています。

そしてここで、遂に念願の食堂車へと入れることに!

実は北斗星では、事前に予約が必要なディナータイムの他に「パブタイム」と「ブレックファストタイム」でも食堂車が開放されます。パブタイムは21時頃からで、何とこのタイミングで運良く利用できることになりました。予約がいらない代わりに先着順だったかと思いますので「せっかく並んでも入れなかった」となる可能性がある点に注意が必要です。

パブタイムではメニューをその場で自由に注文することができ、特に印象に残っているのはこちらのピザ(800円くらい)。お皿に収まるくらいでそれほど大きいわけでもありませんが、動く列車の中でアツアツのピザを味わえると思えば安いものです。

この他にもシチュー等があり、各メニューともディナータイムに比べれば比較的リーズナブルですので、このパブタイムを夕食の時間としている乗客もそれなりにいました。

このあとは福島、仙台と停車します。仙台を23:30に発車すると、翌朝の函館まで客扱いの停車はありません。しかし青森で列車の進行方向が変わるため、機関車を付け替える必要があります。またその他にも盛岡等で運転停車を行うため、実際は深夜でも動いたり止まったりを繰り返します。列車の揺れに不慣れな上、初めての夜行列車で興奮しているのでなかなか寝付けませんでしたが、仙台を出てしばらくすると気づけば夢の中にいました。

 

2015年2月3日(火)

列車は深夜帯の青函トンネルを通り、いよいよ北海道へ。

6:30過ぎ、列車は函館駅へと到着。定刻では6:35着のはずですが、数分程度遅れていました。

函館では、青森に続き列車の進行方向が再び変わります。ここで青函トンネル内を牽引してきた機関車が切り離され、反対側に新たな機関車が連結されます。この赤い機関車は深夜帯を走るだけなので乗客誰の目にも触れないはずですが、それであってもしっかりとヘッドマークが装着されていたというのは意外でした。

函館駅構内には、開業が迫る北海道新幹線の広告がありました。新幹線にとっては新たな「物語がはじまる」一方で、北斗星カシオペアトワイライトエクスプレス等が紡いできた物語は、まもなく終わりを迎えようとしています。

函館駅では10分ちょっとの停車時間があるため、今回のような少しの遅れであれば函館を定刻で発車することができます。発車標には「寝台」を表す流れ星のマークが光り輝いており、めちゃくちゃカッコイイです!!

列車は函館を定刻通りに発車。外はすっかり雪景色で、上野を出発してから約12時間が経過しました。本当に遠いところまでやってきたのだと実感します。

この先七飯大沼駅間では、線路が二手に分かれています。渡島大野仁山を経由する本線に対し、途中駅が一切ない通称「藤城支線」と呼ばれる裏ルートがあり、北斗星をはじめ「カシオペア」「トワイライトエクスプレス」「スーパー北斗」等の下り列車は全てこの藤城支線を経由します。この藤城支線の方が勾配がきつくなく、スルーしてしまう渡島大野仁山とも特急が停車するような大きな駅ではないので全く問題なしというわけです。ただしこのうち渡島大野に関しては、来年の北海道新幹線開業に伴い駅名を「新函館北斗」へと変更して新幹線の終着駅になることが決まっています。

大沼公園付近を走行中、窓の外を見てみると…そこは一面の銀世界。もちろんこの景色自体は北斗星でなくとも普通列車・特急列車等の車内から同じものを見ることができますが、上野からずっと乗車し続けてきたこのブルートレインの車内から見る白銀の世界はまた格別です。

ここでいよいよ、朝食のお時間です。パブタイムに続きブレックファストタイムも予約不要で利用することができますので、列に並んで入店。朝食は和食か洋食から選ぶことができ、お値段はいずれも1,650円。今回は洋食の方にしました。

まさにホテルの朝食のような豪華さで、その味も確か。パブタイムは若干騒々しかった一方、このブレックファストタイムでは穏やかな時間を過ごすことができます。

パンをちぎりながら窓の外に目をやると、目の前に真っ青な海が広がっています。ちょうど列車は内浦湾沿いを走行しているところで、運良く海側の席へ案内されたのがラッキーでした!

食後は特に何かすることがあるわけでもないので、部屋に戻りのんびりと過ごします。北海道内に入ってからの停車駅は聞き馴染みのない駅名ばかりで、ホーロー看板もあいまってかなりの距離を移動してきたことを実感します。

編成の最後部へ来てみると、後面展望を楽しめるようになっていました。線路上は除雪されているのかそれほど雪は被っていませんが、上野から北海道へと線路が確かに繋がっていることを、一晩かけてまさに感じているところです。非電化区間ですので、頭上に架線はありません。

ここで再び開放寝台の様子を見に行ってみました。既に下車されている方もそこそこいる一方で、寝具類が全く使われた形跡のない区画も多くみられました。そういえば今日は2月の平日、オフシーズンにはやはり満席とはならない現実を目の当たりにしました。

窓の外からポカポカと暖かい日射しが入ってくると、思わず二度寝をしたくなります。というか二度寝してました。札幌駅到着が朝早いわけではありませんので、このように起きてからものんびりと過ごせるのは至福のひと時です。

千歳線に入り、列車は南千歳駅を発車。いよいよ次が終点の札幌です。スーパー北斗は途中の新札幌にも停車しますが、北斗星は通過します。このあたりで車内販売がやってきたので、記念に北斗星のキーホルダーを買いました。確か1,200円くらいした気がします。

札幌が近づくにつれ、車窓は次第に都会的な雰囲気へと変化していきます。上野を出てから長い道のりではありましたが、しかし思い返してみれば数々の感動体験で本当にあっという間でした。

来月のダイヤ改正をもって、寝台特急北斗星は定期運行を終了します。夏頃までは臨時列車として運行が継続されるようですが、しかしもう私がブルートレインに乗車できることは生涯で2度とないでしょう。

技術の進歩を惜しむつもりはありません。新幹線の開業や技術革新によって、これまでよりも速く、快適に、便利に移動できるようになることは本当に素晴らしいことです。しかし一方で、寝台列車にも人々の夢は詰まっています。古いものばかりを良しとする風潮はあまり好きではありませんが、今回私にとって最初で最後となった「ブルートレイン乗車」は一生の思い出としていつまでも心の中に残り続けることでしょう。

列車は定刻(11:15)よりも3分ほど遅れ、11:18頃に終点の札幌駅へと到着。いや3分くらいいいんですよ、むしろもっと長く乗っていたいくらいです。

函館から札幌までは、こんな機関車が2両重連で客車を牽引してくれていたようです。貨物列車を引っ張る機関車のイメージが強いですが、やはりしっかりとヘッドマークを装着してくれています。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。