わたかわ 鉄道&旅行ブログ

乗り鉄&旅好きの20代男子が全国を巡る!

【蘇った長距離特急】WEST EXPRESS銀河 山陽コースの旅(大阪→下関)

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2022年2月15日(火)

今回はある特別な長距離列車へと乗車すべく、早朝の大阪駅へとやってきました。

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その列車とは、大阪7:19発の〔WEST EXPRESS 銀河〕下関行。新幹線ではなく在来線で大阪~下関を結びます。

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今から半世紀以上前までは、関西~山陽方面の長距離移動の主役は「しおじ」「はと」をはじめとする特急・急行列車の数々でした。しかし1972年に山陽新幹線が岡山まで開業し、さらにその3年後の1975年には関門海峡を越えて博多まで開業すると山陽路の優等列車は激減の一途を辿ることになります。20世紀末から21世紀初頭にかけて、それまで細々と運行されていた寝台列車も次々に廃止が進み、2009年の〔富士・はやぶさ〕廃止をもって山陽本線の倉敷以西を走る定期優等列車が消滅しました。

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しかしそれから11年、2020年に再び山陽路を走破する特急列車が復活。当初は一般発売が行われる特急列車としてのデビューが予定されていましたが、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から旅行商品のみでの発売となり、乗車口には「団体」と表示されています。

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ともあれ、山陽路を端から端まで走破する昼行列車はかなり久々の運行。運良く抽選に当たり、今回初めて乗車できることになりました。

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車両はかつて新快速でも活躍した117系。内装・外装とも大幅に改造され、普通列車運用時代にはなかった様々な設備を備えています。山陽新幹線開業以後、関西における長距離移動のターミナルは大阪駅から新大阪駅に移りましたが、令和の世に再び大阪駅から「下関行」の在来線列車に乗り込めることになろうとは誰が予測したでしょうか。

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列車は大阪駅3番線から、定刻通り7:19に出発。今回は最下等設備の「リクライニングシート」を利用します。一般的な特急車両によくある2+2列の配置の座席が並びますが、リクライニング角度はかなり深い上、前後の間隔もかなり広くとってあります。また各座席にはコンセントも完備されているほか、車内ではフリーWi-Fiも整備されており、長時間の乗車も快適です。

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大阪から下関までの所要時間は何と驚異の12時間以上。その距離561.2kmですから、表定速度は45km/hほどとかなりゆっくりです。新幹線〔のぞみ〕〔みずほ〕ならば新大阪~小倉駅間でも約2時間ですから、それの約6倍の時間がかかります。もっと言えば、この所要時間は晩年の山陽路の特急よりも遥かに長く、まさに今回この列車は「がない列車」の方の意味での特急列車です。

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列車は6両編成で、下関寄りの前から1号車、2号車…と続き最後部が6号車。1号車と6号車はグリーン車扱い、また2号車は女性専用車両となっています。私が乗車するリクライニングシートは3号車にあり、このほか女性専用のリクライニングシートが2号車にあります。3・5号車の乗客は1・2号車へ立ち入ることができない点に注意が必要です。また、2号車の乗客は1号車へ立ち入ることができません。

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リクライニングシートがある3号車の車端部には、フリースペース「明星」を併設。コロナ対策でアクリル板が立てられていますが、乗客同士で会話を楽しむことができるスペースです。

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4号車は何と1両丸々がフリースペース「遊星」となっています。4人がけのボックスシートもあり、添乗員さんは基本的にこの号車に常駐されています。

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5号車はクシェットと呼ばれる2段ベッドになっており、往年のブルートレインにあった「開放B寝台」を彷彿とさせます。ただし寝台料金は必要なく、私が利用している「リクライニングシート」と同じ普通車扱いの等級となります。

ツアーに応募する際、私もこのクシェットを第一希望としていたのですが、残念ながらそこまでは叶いませんでした。また改めて利用してみたいものです。

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クシェットがある5号車は車両の片側に通路が寄せられており、まさに往年の寝台客車の車内を彷彿とさせる構造です。かつてこの117系が普通・快速列車として使われていた際はこの辺りにも2人がけの転換クロスシートが並んでいたはずですが、その名残は微塵も感じさせません。

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列車は最初の停車駅である三ノ宮駅を7:50発車。左手には百貨店やデパートが林立しています。「阪急」と書かれた建物が阪神電車の駅になっているおなじみの光景も目にすることができました。

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続けて列車は三ノ宮駅から2つ先の神戸駅にも停車します。神戸市の中心地は先ほどの三ノ宮駅周辺ですが、こちら神戸駅東海道本線山陽本線の境目になっており、大阪駅を出発してからここまでは短いながらも東海道本線の旅だったというわけです。この神戸駅から先がいよいよ正真正銘山陽本線の旅となります。

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複々線の線路が続くこのJR神戸線区間では、車窓に大量の通勤客をのせた普通列車が行き交う様子を眺めることができます。”日常”と”非日常”が並走する、そんな光景もJR神戸線ならではかもしれません。

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やがて車窓左側には、本州と淡路島をつなぐ明石海峡大橋が見えてきました。天候にも恵まれ、最高の眺めです。残念ながら明石海峡大橋に線路は敷かれておらず、私もまだ一度も渡ったことがありませんが、今度是非高速バス等で利用してみたいと思っています。

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西明石駅を発車した後、添乗員さんから朝食を受け取ります。受け取りは事前に郵送されたバウチャー券と引きかえに4号車で行われますが、混雑回避のため1・2・6号車の乗客が優先となります。ホットコーヒーと神戸の名店「イスズベーカリー」のパンをいただきました。クリームたっぷりで個人的に大好きなパンです(笑)。

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大阪を出てからここまで順調なスピードで来ていましたが、何と大久保駅12分間土山駅16分間宝殿駅では何と31分間もの運転停車がありました。複々線区間が終わる西明石を過ぎて線路容量が少なくなるため、定期列車の運行の妨げとならないように列車の待避を行う必要が出てくるものと思われます。臨時列車なのでこれは仕方のないことです。

数えた限りでは、この3駅合計で何と13本もの列車を先に通しました。その中には特急や新快速のみならず普通列車(各駅停車)もあり、「普通列車に抜かされる特急」という何とも珍しい光景を目の当たりにすることができました。

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9:50に列車は姫路駅に停車。ここからは若干名の乗車がありました。現時点では団体列車なので乗車駅・降車駅が定められており、それぞれ応募時に選択する必要があるため短区間乗車はできません。フリースペース「遊星」のある4号車がメインの乗降口となっているものの、それ以外の各車両のドアも半自動式になっているので、客扱いを行う停車駅では乗客が自由にドアを開閉することができます。

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大阪からここまでは建物がずっと車窓に見える都会的な景色が続いていましたが、姫路を出ると徐々にのどかな車窓も楽しめるようになっていきます。

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新幹線停車駅である相生駅も通過し、兵庫県から岡山県へと入って列車は万富駅に停車。ここでは17分間運転停車となります。駅名標の色が関西エリアの青色から岡山エリアの薄緑色に変化し、いよいよ岡山が近づいてきたことを実感します。

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大阪を出て約4時間、11:26に列車は岡山駅へと到着。特に何かイベントがあるわけでもないのですが、ここでは8分間停車し列車の外へ出ることができます。

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新幹線はもちろんのこと、山陰方面や四国方面へと向かう特急列車がひっきりなしに発着する一大ターミナルの岡山駅。それらに混じって、ホーム上の発車標では何とこのWEST EXPRESS銀河も「特急」と表示されていました! 総社や福山といった岡山近辺の地名に混じって「下関行」の特急が発車していく光景に何とも心が躍ります。

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11:34に岡山駅を発車し、続いて11:52には倉敷駅に停車。ここでは駅員のみなさんが旗を振ってお見送りしてくださいました。

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倉敷を出たタイミングで、昼食をいただきます。朝食の時と同じくバウチャー券を4号車で引き換え、せっかくなのでフリースペース「遊星」でいただくことにしました。オリジナルの掛け紙がかかった「特製あなご和膳」で、ふっくらしたあなごがとっても美味しかったです!

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また、倉敷はデニムが有名な街だそうで、お弁当と一緒にデニム素材の小物入れのようなものもいただきました。かなりしっかりとした丈夫なもので、普通に買うと結構なお値段がしそうです。

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その先の笠岡駅では何と37分間もの運転停車。ホーム上にいる高校生も珍しそうにこちらを見ています。ここでも数本の普通列車に抜かされました。京阪神ならまだしも、この岡山地区で数本の普通列車を待避するとなるとかなり長い運転停車であったことが分かると思います。

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まもなくすると列車は広島県へと入り、13:16に福山駅へと到着。ここが今回の行程の中で最大の目玉スポットとなります。

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ここ福山駅では何と46分間の停車時間があり、地元の方々による特産品の販売のほか、新幹線ホームに移動して福山城を見学するツアー(無料)が組まれています。福山城は現在改修工事中のようですが、それでも駅のすぐ目の前にあるのはなかなか珍しい気がします。

本来、新幹線ホームに入るには有効な乗車券類もしくは入場券が必要ですが、このツアーは無料なので特別にガイドさんの先導にしたがってそのまま新幹線ホームへと入ることができます(もちろん単独行動は×)。

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大勢の方々に見送られながら、14:02に列車は福山駅を発車。ご当地ゆるキャラ「ローラ」も手を振ってくれます。

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福山駅の特産品販売では、せっかくなのでバラのジュースを購入しました。わずか100mLで350円という高級ジュースで、ペットボトルなどではなくガラスの瓶に入っています。鼻を刺すような強い香りを想像していましたが、全くそんなことはなくとっても飲みやすかったです。福山はバラの街ということで、商品を購入したお客さんにはバラのプリザーブドフラワーももらえます。

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一大観光地である尾道駅は残念ながら通過ですが、その先の区間では美しすぎる瀬戸内海の景色を楽しむことができます。朝方に神戸の辺りで見た時よりも太陽がずっと高い位置にあり、ここまでかなり長い時間乗車してきたことを実感します。瀬戸内海に浮かぶ小さな島々もとってもよく見えます。

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糸崎駅での2分間ほどの運転停車の後、列車は「セノハチ」と呼ばれる難所へと差し掛かります。今でこそ普通列車が難なく往来していますが、峠越え区間として今でも貨物列車は補助機関車の力を借りて運行がなされています。

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最後部の6号車はグリーン個室のある車両ですが、私のような普通車の乗客でも立ち入ってよいことになっています。運転台を覗いてみると、改造前からほとんど変わっていないようで、客室内のデザインとのギャップを感じました。

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大阪を出てから8時間半、15:49に列車は広島駅へと到着。一部のお客さんはこちらで降りていかれました。8時間半というと冒頭でご紹介したかつての在来線特急でも大阪~下関駅間を移動できるくらいの時間ですが、まだまだこの列車は下関まであと4時間ほどかかることになっています。

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4分ほど停車した後、15:53に広島駅を発車。この先はしばらく広島電鉄宮島線と並走します。広島電鉄広島市内を中心に運行される路面電車ですが、この宮島線に関しては専用軌道が敷設されており、ここを路面電車車両が走ります。1990年代までは一般的な鉄道車両も運行されていたため、その名残として一部の駅には今でも高床ホームが残されています。

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広島駅を出発したところで、午後のおやつの時間です。バウチャー券と引き換えに「瀬戸田レモンケーキ島ごころ」をゲット。ふわっとレモンの風味が香り、とっても美味しいです!

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続いて16:20には宮島口駅へと到着。世界遺産厳島神社がある宮島への玄関口となる駅です。駅前から少し歩くと、宮島へと向かうフェリーが高頻度で就航しています。

普通列車で来たことは何度かありますが、特急列車でやってきたのは初めてです。

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宮島口駅を出た先では、引き続き瀬戸内海の景色を楽しめます。遠くの方を見てみると工場地帯も見え、いよいよ山口県も近づいてきていることを実感します。

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岩国駅には16:45の到着。ここを越えると広島近辺で活躍する227系「Red Wing」の姿もほぼなくなり、いよいよ普通列車でも「下関行」として走る列車が出てくる区間になります。

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岩国駅を出てからの区間でもしばらく瀬戸内海の近くを走り続けます。午前中から何度も繰り返し瀬戸内海を眺めていますが、走行地域によって対岸の景色や車窓に浮かぶ島々が全く異なるので、見ていて飽きません。

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柳井駅では9分間ほどの運転停車の時間が設けられていました。寝台列車では客扱いを行っていたほどの主要駅です。

岩国~徳山駅間ではこの山陽本線だけでなく「岩徳線」という路線もあります。岩徳線の方は非電化ローカル線ですが、内陸を走る岩徳線の方が営業キロが短くなっています。これに対しWEST EXPRESS銀河が走る山陽本線経由のルートを「柳井線」と呼んだりするそうです。

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18:00には徳山駅へと到着。もちろん普段は普通列車しか来ない駅ですので、発車標に「全車指定席」と表示される光景はかなり貴重です。当然ながら団体列車なのでこの徳山駅から乗車することはできないようになっていますが、1人も乗車客がいないことを分かっていてもこのように発車標に表示してくれるのは鉄道ファンとしてとても嬉しいことです。

もちろん当初は一般発売列車としての運行が想定されていたため、このような表示の準備が各停車駅にあるということなのでしょう。

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徳山駅を出ると、先ほど広島の辺りで遥か遠くに見えていた工場地帯がすぐ近くまで迫っていることを実感します。日も沈み始め、辺りはだいぶ暗くなってきました。

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下関列車区の乗車記念証をもらい、4号車のフリースペース「遊星」でしばらくのんびり過ごすことにします。新型コロナ対策で定員が制限されているためか、この時間帯の遊星はガラガラでした。

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大阪を出発する前の私は、この「WEST EXPRESS銀河」が往年の山陽路を走った特急の”リバイバル運行”のようなものだと認識していました。もちろんその考え方は決して間違いではなく、そのような側面もあることでしょう。

しかし、それよりはこの銀河という列車が新たな鉄道旅のスタイルを我々に教えてくれるような存在であるという実感の方が強かったのも事実です。

かつてここを走った長距離列車に乗車されたことのある方はその当時と照らし合わせながら追体験するもよし、私のようにそうした列車に乗ったことのない方は全く新しい旅として体験するもよし。乗客一人ひとりにかけがえのない価値を提供・提案してくれる、そんな素晴らしい列車だと強く感じました。

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18:42に列車は新山口駅へと到着。かつて小郡駅という名前でしたが、2003年に現在の駅名となりました。

周りを見渡してみると昔ながらの黄色い普通列車があちこちにあり、いよいよ下関が近づいてきたことを実感します。

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新山口駅から乗務された車掌さんは何と車内放送で「特急 WEST EXPRESS 銀河、下関行です」と放送されていました。当初の計画ではこの列車が全車指定席の特急列車として一般発売される予定だったためそのような位置づけなのでしょうが、こうしたサービスも一つのおもてなしのように感じてしまうのが鉄道ファンというものです。

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新幹線と接続する新下関駅を発車すると、次の停車駅はいよいよ終点の下関。ホテルとセットになった旅行商品なので、ここまで乗車している人はみな下関駅周辺のどこかのホテルに宿泊されるはずですが、車内アナウンスでは他の普通列車と同じように「九州方面」へと向かう普通列車の乗り換え案内もしていました。

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大阪を出てから12時間26分、19:45に列車は終点の下関駅へと到着。果てしないロングラン列車の旅がようやくフィナーレを迎えました。

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下関駅は、山陽本線における山口県内最後の駅。ここから一つ先に進むと、関門海峡を越えて福岡県の門司駅となります。

乗客全員の降車を確認した後、到着から約7分後には下り方へ回送されていきました。

 

現在は新型コロナ対策としてツアーのみの発売になっているWEST EXPRESS銀河ですが、一般発売を心待ちにされている鉄道ファンの方も多いことでしょう。私もその一人で、今後より気軽に乗車できるようになることを楽しみにしています。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。