わたかわ 鉄道&旅行ブログ

乗り鉄&旅好きの20代男子が全国を巡る!

【車窓の変化に注目】青春18きっぷで横浜から新潟へおでかけしたら楽しすぎました!

 

2022年3月10日(木)

今回は、青春18きっぷで横浜から新潟まで移動してきましたので、その様子をお届けします。

いよいよ本日(2022年7月20日)より、2022年夏の青春18きっぷシーズンがスタート。この夏もたくさんの方が、青春18きっぷを片手にあちこちへお出かけされることでしょう。

今回の記事は2022年シーズンに旅行したものですので、現在は列車の時刻等が一部変更となっている可能性がありますが、首都圏~新潟間を青春18きっぷで移動しようとお考えの方は参考にしていただければと思います。

 

横浜から新潟までは360kmほど。横浜~岐阜などもほぼ同じくらいの距離です。もちろん普通列車1本のみで行けるわけではなく、何本かの列車を乗り継いで北へ北へと向かっていきます。

【1本目】横浜9:23発 上野東京ライン 高崎行

まずは上野東京ラインで一気に北関東へと向かいます。

青春18きっぷを一言で説明するならば「日本全国のJR線の普通列車のみが乗り放題になるフリーパス」。通常、首都圏~新潟間を鉄道で移動するなら上越新幹線を利用される方が多いかと思いますが、青春18きっぷでは新幹線や特急といった便利な乗りものに乗ることはできません。

15両編成の長大な列車がやってきました。終点の高崎まで乗り通していきます。

平日朝9時台ということで通勤ラッシュのピーク時間帯は過ぎていますが、車内はかなりの混雑。東京都内に入るまではかなりぎゅうぎゅう詰めの状態が続きました。

品川や新橋等でかなりの通勤客が下車し、東京駅に到着。ここで「東海道本線」は終わり、この先は「東北本線」へと入ります。かつては東海道本線の全ての列車がこの東京駅で折り返し運転を行っていましたが、2015年の上野東京ライン開業に伴い東海道本線高崎線宇都宮線等の相互直通運転が始まり、ここ東京駅を経由して乗り換えなしで関東地方の南北を移動できるようになりました。

なお「東北本線」という呼称は首都圏ではあまり一般的ではなく、東京駅より先は「高崎線」の列車として運行されます(正式な高崎線区間は大宮から先です)。

東京駅でかなり車内が空き、セミクロスシートを確保。列車の進行方向と同じ向きに座ることのできる座席です。

なお、上野東京ラインでは編成の中間に「普通列車グリーン車」が連結されており、追加でグリーン券を購入することで長距離の乗車でも快適なリクライニングシートへの着席が可能となります。青春18きっぷと組み合わせて乗車することも可能ですが、今回は節約のためにこの硬めの座席で引き続き移動することにしました。

エレファントカシマシの発車メロディが流れる赤羽駅を発車すると、まもなく列車は埼玉県へと入ります。

複々線区間が長く続くのも首都圏の大きな特徴。この辺りでは上野東京ライン宇都宮線高崎線)、湘南新宿ライン京浜東北線が並走するほか、少し離れた位置を埼京線が走ります。

浦和は埼玉県の行政機関が集まる街。2014年には湘南新宿ラインの線路上にもホームが造られました。先ほど通った赤羽とあわせて、近年「住みやすい街」としても再注目されています。

そして列車は大宮駅へと到着。新幹線や特急も集まる、埼玉県最大のターミナル駅です。

ここから先は宇都宮線高崎線が分岐していくため、改めて行先をしっかり確認しておきましょう。同じ色の車両でやってくるので、乗り間違いには注意が必要です。

大宮駅を過ぎると、並走する路線もなくなり高崎線が新潟方面へと繋がる一本道になります。

宮原駅では後ろを走る特急〔草津1号〕長野原草津口行を先に通しました。特急や新幹線の誘惑に勝ち、途中駅で抜かされることこそ青春18きっぷの旅の醍醐味の一つでもあります。

「日本一暑いまち」としても知られる熊谷を過ぎ、次の籠原駅ではしばらく停車。ここで15両のうち前寄りの5両を切り離し、ここから先は10両編成で高崎へと向かいます。籠原駅の電光掲示板にはここから先の運行両数である「10両」の文字に加え、その隣に「分割」という見慣れない表示があります。

先ほどまで東京都心の高層ビル群を走っていた列車ですが、この辺りまで来ると辺りはだいぶのどかになってきます。駅と駅の間隔も広く、沿線には田畑も広がります。

横浜を出て約2時間半、11:49に終点の高崎駅へと到着。この列車の終点であると同時に高崎線の終点でもあります。また県庁所在地ではありませんが、群馬県最大のターミナル駅です。

【2本目】高崎12:02発 上越線 水上行

この先へと続く線路は「上越線」という路線になります。普通列車の場合は基本的にここ高崎駅での乗り換えが必要となりますが、線路は高崎線からずっと繋がっており、かつて新幹線ができる前までは数多の特急・急行列車がここ高崎駅を跨いで運転されていました。現在でも特急草津号は高崎駅を跨いでの直通運転が行われています。

列車は10両から一気に短くなり4両編成211系と呼ばれる一昔前の車両で、ほんの10年ほど前までは高崎線等でも運行されていました。列車の本数・両数・車両の時代の違い等から、だんだんと東京から遠ざかってきたことを実感するものです。

列車は定刻通りに高崎駅を発車。車内はロングシートが並びます。

私が乗車してきた上野東京ラインよりも1本後に高崎駅11:58到着の湘南新宿ラインがあり、そこからの乗り換え客がかなり多かったように感じます。

新前橋を過ぎ、列車は群馬県内を北上していきます。高崎線内以上にのどかな景色が広がります。

渋川駅からは吾妻線が分岐していきます。上野を出発した特急草津号はこの先上越線を離れて吾妻線へと入っていきますので、これより先の上越線区間にはしばらく在来線定期特急列車の運行がない区間が続きます。

今回はあいにくタイミングが合いませんでしたが、群馬県内では週末等を中心にSL列車が運行されています。そのSLがここ渋川駅では長時間停車を行うということで、ホーム上の待合室等も三等客車を思わせるレトロなデザインになっています。

渋川駅を過ぎてしばらく進むと、前方に雪を被った険しい山岳地帯が見えてきました。ちょうど群馬県新潟県の境目にあたる地域は「上越国境」と呼ばれ、関東地方と日本海側を隔てる険しい山々が連なる交通の難所として古くから知られています。今いる群馬県側の麓ではまだほとんど雪はありませんが、上越国境の辺りでは3月ということでしっかり雪が積もっているのを見ると、気候の違いを感じずにはいられません。

高崎を出て約1時間、13:07に終点の水上駅へと到着。町名は「みなかみ町」とひらがなで書きますが、駅名は漢字の「水上」です。

かつては上野からここ水上まで、特急〔水上〕という列車が運行されていました。現在定期運行は終了していますが、主に年末年始に臨時列車として今でも運行されることがあります。

水上駅の駅前には食事処や土産物店等が立ち並び、いかにも観光の玄関口といった雰囲気。そして向こうには、上越国境の険しい山々がすぐそこまで迫ってきています。

難所越えを前に、ここで腹ごしらえとしておくことにします。

青春18きっぷの旅の道中では、ただひたすら乗り換え続けるばかりでなく休息も大事。前もってどこで食事を調達しておくのがよいか、どこで食べるのがよいかなど見当をつけておくと食事難民にならずにすみます。今回は高崎駅での乗り換えの際に買っておいた名物駅弁「だるま弁当」をいただきます。

その名の通りだるまの形をした容器の中には、山菜がてんこ盛り! ご飯がどんどん進む味付けで、あっという間に完食してしまいました。容器は洗えば持ち帰って再利用することもできそうですが、衛生的にちょっと気になるのとかばんの肥やしになってしまうので、ごみ箱を見つけた段階で捨てることにしました。

改めて駅の中に戻り、移動を続けていきます。

水上駅の時刻表を見てみると、ここまで通ってきた高崎方面は概ね1時間に1本程度列車があるのに対し、これから進む長岡方面は1日わずか5本しか列車の運行がありません。右の掲示板を見ると、旅行シーズンということでこのほか16時台に臨時列車の運行があるようですが、それでも首都圏と比べると圧倒的な少なさです。

【3本目】水上13:40発 上越線 長岡行

ということで、13時台の列車に乗車していきます。これを逃すと臨時列車を除けば次は17時台までなく、4時間ほど待ちぼうけとなりますので乗り遅れは何としても避けなければなりません。

雪深い水上駅から発車するのは、E129系という電車。主に新潟県内を中心に活躍する車両で、いよいよ関東脱出の瞬間であることを実感します。両数は先ほどの211系よりもさらに短くなり、わずか2両編成での運行です。

列車は定刻通りに水上駅を発車。車内はロングシートセミクロスシートがありますが、いずれも18きっぱー(青春18きっぷ旅行者)でかなり混雑しています。

水上の次の「湯檜曽(ゆびそ)」駅と「土合(どあい)」駅はいずれもホームがトンネルの中にあります。特に土合駅は地上に出るまでの階段が果てしなく長いことから「モグラ駅」と呼ばれることもあります。いずれも魅力深い駅ですので時間がある際は途中下車してみるのもよいですが、くれぐれも列車の時刻をしっかり確認しておきましょう。

土合(どあい)~土樽(つちたる)駅間でちょうど県境を跨ぎ、群馬県から新潟県へと入ります。ここが国境越え区間となりますので、駅間が比較的長め。ここでは不正乗車防止を目的として車内検札が行われる場合がありますので、青春18きっぷで旅行している際にはその日付のスタンプがはっきりと見えるように車掌さんに提示しましょう。

長い長いトンネルを抜けて新潟県へと入り、土樽駅へと到着。ホーム上は辛うじて除雪がなされているものの、フェンスを隔てたすぐそこからはものすごい積雪量です。一瞬冬かと勘違いしてしまいますが、3月ですからね…。

上越線沿線にはリゾートホテルなどがいくつも立ち並び、背後の雪山もあいまって完全に冬の装いです。この区間、これからの季節では冬や春とも違ったまた素晴らしい景色が望めるのではないでしょうか。

沿線にはスキー場も多く、中には線路のすぐそばまでゲレンデになっているところもあるようです。天候にも恵まれ、絶好のゲレンデ日和です。

まもなくすると、列車は越後湯沢駅に到着。新幹線も停車する主要駅で、普通列車で旅行をしていると季節を問わずここでそれなりに乗客が入れ替わります。

新幹線開業を機に、一時は「東京都湯沢町」と呼ばれるほどその利便性の高さが謳われた一大リゾート地でもある越後湯沢。新幹線ならば東京駅から1時間少々ですが、普通列車では実に4時間以上を要します。

越後湯沢駅を出てからも引き続き沿線にはいくつものスキー場が広がります。途中には「上越国際スキー場前」という名前の駅もあるほどで、駅の目の前にロッジのような建物がありいかにもスキー場への玄関口といった雰囲気です。もっとも、バスやマイカーを使う人が多いスキー場アクセスにおいていったいどの程度の方が上越線を利用してこのスキー場を訪れているかは分かりませんが…。

すっかり国境を越えて平野部へと入り、列車は遮るものが何もない銀世界の中を進んでいきます。7月に入り暑くジメジメとした日が続く今日この頃ですが、こんな銀世界の景色を見ると少し涼しくなった気分になりませんか…?

E129系は2014年にデビューした、比較的新しい車両。内装は首都圏で活躍する近郊型車両とさほど大きな違いもありません。そんな都会的な車両の大きな窓に映る白銀の大地をめいっぱい眺めていると、都会の喧騒を離れ心が洗われる気分になります。青春18きっぷの旅にもいろいろありますが、このような非日常体験を気軽にできることもその醍醐味の一つだと感じます。

小出駅からは只見線が分岐しており、山間部を抜けて福島県会津若松駅までを結びます。途中の区間が2011年の豪雨災害の影響で長らく不通となっていましたが、遂に本年10月より満を持して全線運転再開となることが発表されました!

宮内駅にて信越本線と合流します。信越本線を西に進むと直江津駅へと至り、その先えちごトキめき鉄道・あいの風とやま鉄道・IRいしかわ鉄道とつながって富山・金沢方面へ鉄路が続いています。

そして水上駅を出てから約2時間、15:29に終点の長岡駅へと到着!

すぐさま向かいのホームに停車する普通列車へと乗り換えます。

【4本目】長岡15:32発 信越本線 豊栄行

長岡駅では乗り換え時間が非常に短く、あれやこれや撮影する暇もなく慌てて列車へと乗り込みます。午後になり次第に列車内が高校生らで混雑する時間帯に差し掛かってきました。

バタバタしながらも、無事に新潟県第二の都市である長岡を発車。すぐそばには上越新幹線の高架橋がそびえ、ちょうどその陰になるようなところに敷かれたレールの上を走ります。

越後平野の辺りまで来ましたが、辺りはなおも一面の銀世界。湯沢の辺りと異なりそれほど高い山に囲まれているわけではありませんが、しかし都会民の私にとってこれほどの非日常感はたまりません。

…と思っていたら、そこからほんの十数分のうちに一気に雪がなくなり、車窓はのどかな田園風景になっていました。どこかに分水嶺のような場所があったのか全然気づきませんでしたが、やはり県内でも積もっているところとそうでないところがあるようです。

信越本線のこの区間は、首都圏~新潟(~東北日本海側)を結ぶ幹線ルートであると同時に、関西~青森を日本海経由で結ぶ通称「日本海縦貫線」の一角をなしています。ほんの10年ほど前まで長距離を走る寝台特急がいくつも運行されていましたが、今ではそれらも全てなくなり地域輸送に徹する普通・快速列車が主体となっています。

そしていよいよ新潟市内に入り、列車は新津駅へと到着。ここは新潟方面(信越本線)、新津方面(信越本線)、村上方面(羽越本線)、会津若松方面(磐越西線)の4方向へと線路がのびる主要駅で、数時間前の大宮と同じく「鉄道のまち」としても知られています。

越後石山駅近くには車両基地もあり、新潟地区で活躍する様々な列車の姿を見ることができました。これを過ぎればもう新潟駅は目の前です。

新潟駅到着目前にして、急に線路が真新しくなり登り坂へと差し掛かります。これは2018年に新潟駅在来線ホームの大部分が高架化されたためで、今では全面高架化が完了し在来線列車も全て高架ホームを発着しています。

遠くに見える高いビルは「朱鷺メッセ」。新潟のランドマークを列車内から確認し、これで新潟観光もバッチリデです(笑)。

そして16:50に新潟駅へと到着。列車はここが終点ではなく、この先進行方向を変えて白新線の豊栄へと直通します。

今回、横浜~新潟駅間の移動にかかった時間は7時間27分。横浜を出発する際には朝ラッシュの残り香さえ感じられる時間帯でしたが、新潟に着く頃にはもう夕暮れを迎えていました。

新幹線ならば東京~新潟駅間でもわずか2時間程度ですので、いかに技術の進歩が凄まじいかを実感せずにはいられません。一方で7時間以上に渡る長旅をわずか2,410円(青春18きっぷ1回分)でできてしまうのですから、コストパフォーマンスとしては抜群です。

みなさんもこの夏、青春18きっぷを握りしめて長旅に出かけてみてはいかがでしょうか!

ただしこまめな水分補給と余裕を持ったスケジュールを組むことをお忘れなく!

 

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

#9 ついにゴールへ…! 2500キロ超在来線特急の旅完結。その裏に秘めた思いとは【特急リレー最長片道切符の旅】

 

▼前回の記事はこちらから

watakawa.hatenablog.com

 

2022年5月5日(木)

5月1日に仙台駅からスタートした「特急リレー最長片道切符の旅」。

ここまで数々の在来線特急のみを乗り継いでやってきましたが、いよいよ最終日を迎えることとなりました。

本日のスタートは愛媛県松山駅。すじ状の雲は出ていますが、最終日の今日も晴れて穏やかな初夏の陽気です。

通算17本目にして今企画のアンカーとしてバトンを繋ぐのは、松山10:18発の特急〔宇和海9号〕宇和島です。この5日間、ひたすらこの「宇和島」の文字を目指して長距離移動を続けてきましたが、ついにここでその文字を見ることができました。

現在はホーム・駅舎とも全て地上にある松山駅ですが、その背後では着々と高架化工事が進められています。ホームは現在の位置の真上ではなくややずれた位置に設置されるようで、足場等が組まれ太い柱の並ぶ様子がホーム上から確認できます。

松山駅は、岡山・高松方面と宇和島方面を結ぶ特急の接続駅でもあります。

そこで乗客の利便性を考慮し、〔しおかぜ・いしづち〕と〔宇和海〕がどちらも同じ1番線に入線するようになっています。今回は〔宇和海〕の方に乗車するため、改札口を入り左へ進みます。

しばらく待っていると、列車が入線。JR四国2000系特急気動車が今企画のアンカーを務めます。かつて四国全土で活躍した車両で、銀色の車体にこれまで様々な色を施した編成が登場してきました。今回乗車する編成は青と赤の2色があしらわれ、「宇和海」のヘッドマークも掲げられています。

1番線では、これくらいの距離感で〔しおかぜ〕と〔宇和海〕が停車します。同一平面上で乗り換えられるのは大変便利ですが、箇所によってはそれほどホームが広くないので安全に十分気をつける必要があります。松山駅高架化と同時にこの光景も見れなくなってしまう可能性がありますので、今のうちにしっかり目に焼き付けておきましょう。

この車両は松山10:10着の上り〔宇和海8号〕からすぐ〔宇和海9号〕として折り返す運用となっており、停車時間はわずか8分間しかありません。この間に全ての乗客の降車を確認し、車内を清掃するのですから、もはや神業です。GW中ということで3両編成の車内には乗客がぎっしり詰め込まれていたようで降車に相当な時間を要し、清掃作業が終了したのは発車のわずか1分前でした。

無事に全ての乗客の乗車が完了し、ほぼ定刻通りに松山駅を発車。最後部の3号車のみが指定席で、1・2号車は自由席です。グリーン車はありません。

3号車の混雑具合は見たところ50%程度。一応予讃線は幹線ではあるものの、松山以西という支線的な区間であり、1時間に1本の特急が運行されていながらこれほどの乗車率であることを考えるとかなり混雑している方ではないでしょうか。

途中停車駅は伊予市、内子、伊予大洲八幡浜卯之町伊予吉田です。最近は感染症対策等の観点から車内の検札が省略されがちですが、松山駅には自動改札機がないため有人改札で綺麗な入鋏印を押していただきました。特に指定席特急券に入鋏されていることなど、今の時代にはかなり貴重かもしれません。

松山駅を出てすぐ、車窓右手には「坊っちゃんスタジアム」が見えてきます。市坪駅の目の前に位置し、イベント開催時等はかなり混雑するようです。

松山を出て最初の停車駅は伊予市予讃線の電化区間はここまでで、これより先へは電車が乗り入れることはできません。

そして次の向井原駅を通過した後、線路が左右二手に分かれています。〔宇和海〕は左側の線路を進んでいきます。

向井原伊予大洲駅間では、海沿いを通るルートと山の中を突き進むルートの2種類があり、山の中を通る方は「内子線」と呼ばれています。海側よりも距離が短く、線路が直線的なため〔宇和海〕は全て内子線経由で運行されています。

一方で、海沿いの通称「愛ある伊予灘線」の方では観光列車〔伊予灘ものがたり〕が運行されており、海のすぐ目の前にホームがあることで有名な「下灘駅」もこちら側にあります。〔伊予灘ものがたり〕はこの春よりちょうど特急列車に格上げされたところですので「最長距離」にこだわるという意味では内子線経由よりも愛ある伊予灘線経由の方が距離が長くなるため乗車すべきかとも思いましたが、あちらは定期列車ではなく臨時列車という扱いなので今回の乗車対象からは外すことにしました。

かつては予讃線五郎駅から分岐し、内子駅までを結ぶ盲腸線だった内子線。しかし1986年に向井原~内子駅間および新谷~伊予大洲駅間が開業し、優等列車の通る幹線ルートへと生まれ変わりました。

現在は途中駅となった内子駅。高架になっており、かなり立派です。乗降客もちらほらですがいたように見えました。

伊予大洲にて海沿いルートと再び合流し、予讃線を進んでいきます。ちょうど反対側のホームには特急〔伊予灘ものがたり〕が停車していました。快速時代にも一度も乗れず、特急化されてからもまだ一度も乗車したことがないので、是非いつか乗りたいですね。

伊予大洲駅を出発してすぐ車窓左側には大洲城が見えてきます。街の中にあるお城を見る機会はしばしばありますが、こんな山の中に造られた天守閣もなかなか立派なものです。

伊予大洲八幡浜などでそれなりの降車があり、車内は次第に空いてきました。

特急停車駅周辺ではそれなりに人や建物が多いですが、それ以外の区間ではのどかな景色が広がります。

宇和海〕という列車名ではありますが、実は車窓から海が見える区間はそれほど多くありません。かなりじっくりと車窓を凝視していないと、一瞬でオーシャンビューの区間を通り過ぎてしまいます。

もう間もなくすると、列車は終点の宇和島駅へと到着します。到着を前に、この5日間の思い出がいろいろとこみ上げてきました。

今回、私がこの「特急リレー最長片道切符の旅」実施に踏み切ったのには、主に2つの理由があります。

その一つは「昨夏の最長片道切符の旅追体験をするため」。昨年の夏、稚内から肥前山口まで46都道府県を通る日本一周旅行をしましたが、その際に得られた成功体験を忘れることができず、それに近い達成感を味わいたいと考え、何とか短い日程で昨夏の追体験ができないかと考え、この企画の実施に至りました。日数は最長片道切符の旅の7分の1程度ですが、全国各地で昨夏の思い出を振り返ることができ、良い5日間であったと感じています。

そしてもう一つは2022年の今でもこんな素晴らしい長距離特急の旅ができるのだ」ということをみなさんに実感してもらいたいため。これが2つ目にして最も大きな理由です。

鉄道開業150周年の節目の年となる2022年。この150年間で全国各地へ鉄道網が張り巡らされ、技術は格段に進歩しました。しかしその一方で、戦後の我が国においては新幹線や航空機等の発達により、長距離を走る在来線特急列車が減少傾向にあります。

在来線を走る特急列車に旅情を求める鉄道ファンは多く、その運行距離が年々短くなる傾向にあることを嘆く鉄道ファンは決して少なくありません。私自身もその一人です。

しかし、この5日間を思い返してみてください。鉄道の衰退が叫ばれる昨今ではありますが、各地で在来線特急列車が時代に合わせた活躍ぶりを見せているではありませんか。今の時代には「今の時代なりの在来線特急の魅力」がたくさん詰まっていると思うのです。

残念ながら、一つひとつの特急列車の運行距離は数十年前より短くなってきているかもしれません。しかしそうした列車をいくつも繋ぎ合わせ、順に乗り継いで旅をしていけば、こんなにも素晴らしい景色をたくさん見ることができるのです。鉄道には、特急には、まだまだ無限の可能性が秘められていると信じています。私の今回の旅を通じ、それが少しでもみなさんに伝わっていれば、こんなに嬉しいことはありません。

11:40、列車は定刻通りに終点の宇和島へと到着。〔宇和海〕の終点であると同時に、予讃線の終点でもあります。この先に線路は続いておらず、まさに「最果ての地」という感じがします。

無事に無効印を押していただき、これにて「仙台→宇和島」の出札補充券の全行程が終了。

「特急リレー最長片道切符の旅」2522.2km、完遂です!!

 

完遂記念に、宇和島駅前の「かどや本店」へ。最長片道切符の旅の道中でも訪れた、思い出のお店です。

いただくのはもちろん、宇和島名物「南予の鯛めし」。新鮮な鯛のお刺身と海藻を特製たまごだしに絡めてご飯にかける、いわば「日本一豪華なTKG」です(笑)。

これが本当にたまらない美味しさで、もはやこのためにはるばる仙台から長旅をしてきたといっても過言ではありません。特段「食」がテーマの旅ではありませんが、今回も様々なご当地グルメを味わうことができました。

 

というわけで、「特急リレー最長片道切符の旅」これにて完結!

最後までお読みいただきありがとうございました。

【近鉄】コスパ抜群!ビスタカーの1階席と2階席を乗り比べてみた

 

2022年3月2日(水)

さて、今回は奈良県にある近鉄大和八木駅へとやってきました。これから京都へと向かうべく、便利で快適な近鉄特急を利用していきます。

奈良県橿原市に位置する大和八木駅は、近鉄屈指の主要駅。東西に走る近鉄大阪線と南北に走る近鉄橿原線が十字を描くように交差し、街として・乗換駅としてとても多くの人で賑わっています。

4方向に分かれているということで、発車標も4種類。大阪・京都・名古屋・伊勢志摩のいずれにも1本で行けるという抜群の立地です。1階が近鉄橿原線(2面2線)、2階が近鉄大阪線(2面4線)となっています。

京都方面へ向かうには近鉄橿原線ですので、1階ホーム6番線から…かと思いきや、今回私が乗車する大和八木17:25発の特急 京都行は2階ホームの「4番線」と表示されています。4番線は大阪方面のホームであって京都方面とは異なるのでは…?と思いますよね。

実は大和八木から京都方面へと向かう特急には「橿原神宮前から来るもの」と「伊勢志摩方面から来るもの」の大きく2種類があります。橿原神宮前から来た特急であればそのまま大和八木駅橿原線ホームへと入ればよいのですが、伊勢志摩方面(大阪線)から来た列車に関してはこの大和八木駅にて大阪線から橿原線へと転線させなければなりません。しかし大和八木駅のホームは2層構造になっており、シーサスクロッシング的な平面転線はできないため、新ノ口短絡線と呼ばれる隠しコマンド(?)があるのです。

今回乗車する17:25発についても橿原神宮前ではなく伊勢志摩方面からの列車ということで、他の橿原線の列車と異なり1つ上のホームからの出発となります。

夕陽にキラキラと照らされながら入線してきたこちらの特急。近鉄30000系、通称「ビスタカー」と呼ばれます。1978年にデビューしたかなり古い車両ではありますが、リニューアルが重ねられ前面には行先表示ディスプレイも取り付けられています。

今回はビスタカー名物でもある、こちらの2階建て車両に乗車していきます!

4両編成のうち、中間にあたる2・3号車の2両はダブルデッカー構造になっており、これがまさに「ビスタカー」と呼ばれる所以になっています。せっかくなので、1階と2階を乗り比べていきましょう。

無事に乗り込み、列車は定刻通りに大和八木駅を発車。乗車口付近からは1階と2階にそれぞれつながる階段があり、天井が高く広々とした空間になっています。

新ノ口短絡線を渡り、橿原線の線路へと入りました。まずは2階席を利用していきます。

一般的な平屋建ての特急車両と比べ若干の狭さは感じるものの、上部には荷物棚もしっかり設置されており不便さを感じることはあまりなさそうです。曲面を描く大きな窓が特徴的で、外の眺めを存分に楽しむことができます。

2階席は途中の大和西大寺駅まで利用します。特急料金はたったの520円で、1区間とはいえお手頃価格なのが有難いところです。

他の列車とすれ違う時など、こちらの目線の高さがちょうど平屋建て列車の屋根くらいの高さになります。文字通り「高みの見物」です(笑)。

車窓右手に広大な車両基地が見えてきたところで、まもなく列車は大和西大寺駅に到着。

ここで2階から1階へと移動することにします。

列車は大和西大寺駅を発車。こちらがビスタカーの1階席です。

そう、何と1階席はセミコンパートメントになっているのです!!

個室内の中央に固定されたテーブルがあり、定員5名が向かい合って座れるようになっています。天井はやはり低めですが、ソファー席の座面を低くすることで空間を広く見せる工夫がなされています。

1両あたり2室しかなく、繁忙期には相当なプレミアチケットになりそうです。

なお個室部分の入口にドアはないため密室にはなりませんが、ものすごくうるさくしないようにだけ注意すれば特段他のお客さんの迷惑になることはなさそうです。

このセミコンパートメント席は3名以上のグループで乗車する場合に発売され、特急券にも「グループ」と印字されます。今回は友人らと4名で乗車したので、ややゆとりをもって利用することができました。

通常の特急料金以外に別途個室料金等は不要で、金額は先ほどの2階席と同じく京都までたったの520円。「払戻含む変更には全券片必要です」と印字のある通り、1席ずつ発売されることはないので「知らない人と隣り合わせで気まずい」なんてこともありません。

大和西大寺~京都駅間でのこの列車の途中停車駅は近鉄丹波橋のみで、その他の駅は高速で通過していきます。駅停車中や駅を通過する際などに見える目線の高さが、先ほどの2階席とは逆にこの1階席ではとても低く、これまた平屋建て車両とは一味違った車両が楽しめます。

辺りもすっかり暗くなり、定刻通り18:20に終点の京都駅へと到着。2階席・1階席合わせても1時間弱の乗車でしたが、とても楽しめました!

なおビスタカーで運行される列車については、空席照会等の際に「V」をかたどったマークが表示されるほか、近鉄公式HP内にあるPDF版の特急列車時刻表等でも運用を確認することができます。

みなさんも是非近畿地方へおでかけの際は利用してみてください!

 

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

#8 夕方6時に四国横断を開始するエクストリームスケジュール【特急リレー最長片道切符の旅】

 

▼前回の記事はこちらから

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4日目 2022年5月4日(水)

岡山駅から乗車した〔うずしお13号〕にて13時過ぎに徳島駅へと到着し、佐古~徳島駅間の乗り越し運賃を精算して改札外へ。昨夏の「最長片道切符の旅2021」以来となるつかの間の徳島市内散策をして楽しみました。

このまま本日は徳島駅周辺に宿泊…するかと思いきや、そうはいきません。今夜の宿は徳島から遠く離れた愛媛県県都松山です。

徳島から松山までは直線距離で約170km。実際には険しい山々を避けて回り道をする区間もあるため、移動距離はこれよりも長くなります。「もう夕方だし、今夜は徳島で泊まるべきだったかも」という思いが一瞬頭をよぎりますが、何はともあれ今夜は松山の宿を予約してしまっておりますので、複数の特急列車を乗り継いで四国横断の旅へと出ることにしましょう。

特急リレー通算14本目となる列車は、徳島18:00発の特急〔剣山7号〕阿波池田です。徳島線内を全線走破する特急で、徳島駅からの発車は6:46発、9:00発、12:00発、18:00発、19:00発、20:15発の5本のみです。特にお昼から夕方にかけて運行間隔が大きく開くため、今回私も徳島にて待ちぼうけせざるを得ませんでした。

使用される車両は国鉄時代末期に製造されたキハ185気動車。ここ数年新型車両の導入が進むJR四国管内ですが、ここ徳島線においては現在も昔ながらの歴史ある車両が使用されています。また一般的には青色を基調とした編成が使用される〔剣山〕ですが、今回乗車する便には何と深緑色の帯を纏った国鉄時代の塗装そのままの編成が充当されていました!! これは超ラッキー!!

列車は2両編成で、車体側面には国鉄時代そのままの方向幕やサボが今も現役です。徳島駅停車中に幕回しを行っていたところ、1号車の幕が「徳島行」からうまく動かなかったようで、乗務員さんが何度か様子を確認しに来られていました(その後正しい「阿波池田行」の幕になっていました)。年季の入った車両ですので、こうした動作不良(?)もよくあることなのかもしれません。

扉は今どき珍しい「折り戸」構造のもので、窓枠の下部に取り付けられたプレートには「ドアは手前に開きますからステップに立たないでください」という昔ながらの言い回しがそのまま残されています。バリアフリーとはかけ離れているという意味でも今の時代においては貴重な車両です。

2両編成のほとんどの座席が自由席ですが、後寄り1号車の後ろ4列のみ青いヘッドカバーがかけられており、この16席のみが「指定席」として発売されています。〔剣山〕には過去2回乗車したことがありますが、いずれも自由席だったので今回はあえて指定席を利用してみることにしました。なお、グリーン車はありません。

そして18:00となり、列車は定刻通りに徳島駅を発車。自由席・指定席ともお客さんはまばらで、たった2両編成であっても輸送力をかなり余らせているように見えます。

〔剣山〕の特徴の一つは、その停車駅の多さ。参考までに今回乗車している7号は、途中蔵本、石井、鴨島阿波川島阿波山川、穴吹、貞光、阿波加茂の計8駅に停車します。これはかつて急行〔よしの川〕として運行されていたものを1996年に特急へ格上げしたためで、速達性よりも沿線の細かい需要を拾うことに重点が置かれた停車駅設定になっているのです。

徳島~阿波池田駅間の特急料金は自由席の場合だと1,200円。今回は指定席の利用なのでそこに530円が加算され、さらにGWということでもう200円追加され1,930円になっています。成田エクスプレス等と同じA特急料金ですのでかなり割高…なのが正直なところです。

佐古を通過して高徳線と分かれ、列車は徳島線へ。途中の停車駅はどれもローカルな雰囲気が漂い、「まさかここが特急停車駅!?」と一瞬目を疑ってしまいます(笑)。

車内はガラガラでしたので、ここで夕食をいただくことに。徳島駅近くのセブンイレブンで購入したご当地商品「黒胡椒かしわ丼」です。ご飯の上に胡椒のきいた鶏肉とバターがのっており、レンチンすることでバターが溶けて絶品です! 香川県ご当地グルメだそうですが、先ほど乗車した〔うずしお13号〕では香川県の地に足をつけることなくスルーしてしまったのでちょうどよかったです。

こちらは鴨島駅。何名かの方が降りていかれました。ガラガラとはいってもやはり一定の需要はあるようで、この時間帯の〔剣山〕は徳島市内へおでかけされていた方等が徳島線沿線の自宅へ帰る際に重宝しているのだろうと思います。

窓の外には、沈みゆく夕陽がちらり。そういえば今朝は山陰地方から旅が始まったんだよな…と思うと、長く短い一日の終わりを感じます。

また徳島線は「よしの川ブルーライン」という愛称がつけられており、車窓には吉野川が見える区間もあります。何を血迷ったか吉野川とは反対側のA席の指定をしていまいましたが、吉野川の眺めを楽しむならD席がオススメです。

気づけば辺りもすっかり暗くなり、定刻通り19:17に終点の阿波池田駅へと到着。

3面5線の立派な構造をもつ阿波池田駅徳島県内陸部の重要なターミナル駅で、四国を縦に貫く土讃線とここまで乗車してきた徳島線の2路線が乗り入れます。ただしやってくる列車は短編成のものが多く、ホームの有効長をかなり余らせているような印象です。

続いて乗車するのは、阿波池田19:46発の特急〔南風26号〕岡山行です。佃~阿波池田駅間は〔剣山〕と〔南風〕で運行区間が重複することになりますが、いずれの列車も佃駅には停車しませんので、例によって「分岐駅通過特例」が適用されています。

今回の企画ではこの特例に何度助けられたことか…! 阿波池田駅の待ち時間も30分程度ですので、改札外に出られなくてもさほど困ることはありません。

2011年に新設された1番線ホームで待っていると、列車が到着。午前中に岡山駅で見かけた「アンパンマン塗装」の2700系がやってきました。車両前面のキリっとした目元が印象的な車両ですが、アンパンマンばいきんまんによって何ともかわいらしい感じになっています(笑)。

列車は定刻通りに阿波池田駅を発車。多度津までの短い乗車ですが、指定席を利用していきます。

天井にもアンパンマンとゆかいな仲間たちのイラストが描かれ、四国らしさを感じる車内。自由席はかなりの混雑を見せておりますが、指定席は自由席に比べるとある程度健康で文化的な環境が保たれています。

青を基調とした寒色系のモケットは新幹線らしさがあり、山間部を走るディーゼル音とのギャップが個人的にはかなり好きです。

途中停車する香川県琴平駅は「こんぴらさん」の愛称で親しまれる金刀比羅宮の玄関口。「さぬきのこんぴらさんご参拝のお客様はこちらでお降りください」という車内アナウンスも流れましたが、果たしてこんな夜になってからお参りする方はいらっしゃるのでしょうか(というかそもそもこの時間から参拝可能なのか…?)。

定刻通り、20:23に香川県多度津駅へと到着。ここからさらに乗り換えていきます。

本日最後に乗車する列車は、多度津20:26発の特急〔しおかぜ25号〕松山行です。多度津駅では階段を渡ってわずか3分間で乗り換えを済ませなければならないため、周囲に配慮しつつかなり急ぎまして何とか間に合いました…!!

新幹線のような尖った形状が印象的なJR四国8000系特急電車。普段であれば岡山方面からやってきた〔しおかぜ〕5両編成と高松方面からやってきた〔いしづち〕3両編成を連結し松山まで8両編成で向かいますが、GWのような多客期においては8両全てが〔しおかぜ〕として岡山発着で運行されます。このため普段多度津駅にて行われている〔しおかぜ〕+〔いしづち〕の増結作業はなく、その代わり多度津止まりの〔いしづち〕の到着を待ってここ多度津駅にて対面乗り換えが行われ、〔しおかぜ〕は特に編成の増解結もなく10分間停車していたということになるようです。

何とか乗り換えに成功し、列車は定刻通りに多度津駅を発車。ここから予讃線を西に進んでいきます。

車両自体はデビューから約30年が経過しており決して真新しくはありませんが、木をふんだんにあしらった特徴的な座席はその古さを感じさせません。座席周りにコンセントはありませんが、フリーWi-Fiは整備されています。

途中停車駅は詫間、高瀬、観音寺、川之江伊予三島新居浜伊予西条、壬生川、今治伊予北条多度津松山駅間は2時間以上を要し、松山行の特急としては最終列車の1本前にあたります。

日中であれば四国中央市付近(川之江伊予三島など)の駅間では瀬戸内海を見渡すことができますが、すっかり日が沈んでしまったこの時間帯には真っ暗で何も見えません。川之江駅では行き違いを行いましたが、あちら側も同じ8000系でした。

西条市の中心駅である伊予西条駅では数分間停車し、上下列車の行き違いを行います。今では8000系に代わる新型車両8600系が〔しおかぜ〕〔いしづち〕で幅広く運用されていることもあり8000系自体が貴重な存在となりつつありますが、多客期には8000系が往年のような活躍をしてくれるので、8000系どうしの行き違いも普段とは一味違った予讃線の光景といえそうです。

伊予西条を発車すると、車内はいよいよガラガラに。GW中とはいえ、こんな夜遅くともなると四国内一の主要幹線でも人影はまばらです。

この先の主な街というと今治と終点の松山くらいですが、しかし伊予西条から松山までは特急でもまだあと1時間かかります。目の前にそびえる山々をぐるっと反時計回りに迂回しなければならず、直線的に進む松山自動車道と比べて予讃線は距離が長くなっているのです。

そんなわけで、定刻通り22:35に終点の松山駅へと到着。朝7時に鳥取駅を出てから、何と15時間以上もの長い移動となりました。

三角屋根が特徴的なJR松山駅舎。現在は駅舎・ホームともに地上ですが将来的には高架化される計画となっており、現駅舎の背後ではその工事も着々と進められています。当たり前のはずのこの光景も、もう長くはないのかもしれません。

画像

4日目の今夜は、JR松山駅から歩いてすぐの「ホテルクラウンヒルズ松山」に宿泊。当初予定ではここ松山でも快活CLUBに宿泊する予定でしたが、昨晩の鳥取での悲劇を受けて急遽直前に予約しました。繁忙期の予約ということもあって決して安くはありませんでしたが、同じ過ちを繰り返すわけにもいかず、清水の舞台から飛び降りる覚悟で貯まっていたじゃらんクーポンをフル活用しました。

 

ゴールの宇和島はいよいよ目前!

最後の様子はまた今度お届けします。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

#7 2回もスイッチバック!? 「うずしお13号」全区間乗車【特急リレー最長片道切符の旅】

 

▼前回の記事はこちらから

watakawa.hatenablog.com

 

4日目 2022年5月4日(水)

米子から乗車した〔やくも8号〕は定刻通り10:35に終点の岡山駅へと到着。ここからはいよいよ本州を脱出し、四国へと渡ります!

1988年に瀬戸大橋が開通して以来、四国各地へと直通する列車が発着するようになった「大都会岡山」。改札口の上部にある巨大な発車標には「四国方面」の文字が光り輝いています。

そんな無数の列車が発車していく岡山駅から乗車するのは、11:05発の特急〔うずしお13号〕徳島行です。2700系気動車ということで、JR東日本JR東海JR西日本に続き、いよいよJR四国の車両にも巡り合いました!

列車は7両編成ですが、このうち前寄りの1~4号車は〔南風7号〕高知行。後寄りの6~8号車のみが徳島行の〔うずしお〕となっており、5号車は欠番になっています。

〔南風7号〕の方も同じく2700系ですが、こちらはアンパンマン車両。作者であるやなせたかしさんが高知県出身であることにちなみ、四国各地ではアンパンマンのラッピングを施した車両が数多く運行されておりちびっこに大人気です。

岡山駅で発車を待つ間、隣のホームにはちょうど松山からやってきた8000系のアンパンマンラッピング車両も入線。さらに画像には映っていませんがちょうどこの後方にある7番線には琴平行の臨時列車〔アンパンマンロッコ〕も入線しており、360°どこを見てもアンパンマンだらけ。まさに四国の玄関口であることを感じさせてくれるホームです。

それでは発車時刻も近いので乗り込みます。一応〔南風〕と〔うずしお〕の間の車内移動は可能ですが、アンパンマン車両の方に乗っていても徳島へは行けないのでしっかり確認して〔うずしお〕の方に乗り込みます。

列車は定刻通りに岡山駅を発車。ちょうど同時刻に出雲市へと向けて発車していく〔やくも9号〕と並走しながら、車内では「ぼく!アンパンマン!!!!」というおなじみのセリフが聞こえてきて車内のちびっこたちもテンション爆上げでした!

途中の停車駅は児島、宇多津、高松、栗林、志度、三本松、板野です。〔うずしお〕は基本的に高松~徳島駅間のみを結ぶ列車ですが、今回のように1日2往復限定で岡山まで乗り入れる便が存在しています。

岡山~徳島駅間を移動として最も一般的なのは、岡山~高松駅間で快速〔マリンライナー〕を利用し、高松駅で徳島行の特急〔うずしお〕に乗り換えるというもの。しかし今回乗車している〔うずしお13号〕はそのマリンライナーの運行区間をカバーする形で岡山駅始発にて運行されています。

今回の企画では、四国に入りまず高松経由で徳島方面へと向かうことで四国内の最長ルートを取れることが分かっていましたが、岡山~高松駅間は〔マリンライナー〕ばかりで特急の運行はあまりなく、この「岡山直通うずしお」を狙って乗らないと企画が成立しなくなるおそれもありました。

うずしお13号〕は3両編成のうち、先頭6号車のみが指定席。ぱっと見渡した感じだと乗車率は2~3割程度です。座席モケットの色が東海道新幹線に似ている気がします。

岡山駅を出てしばらくは高架区間が続きます。瀬戸大橋開業前は途中の茶屋町から宇野へと進み、終点の宇野駅で宇高航路に乗り換えるのが定番でしたが、今や宇野線は支線的な存在となってしまっています。

この列車の本州最後にして唯一の途中停車駅は児島。ここを境にJR西日本からJR四国へと入り、いよいよ瀬戸大橋を渡ります!

本州の児島と四国の宇多津を結ぶ瀬戸大橋。その美しい構造体の隙間からは瀬戸内海に浮かぶ島々も多数見え、とても清々しい気分です!

あちこち日本全国を飛び回っている私ですが、実は瀬戸大橋を渡るのは2014年(中学3年生)の夏以来約8年ぶり。今よりもお金も知識も経験もなかった当時の私は、青春18きっぷ片手に今はなき「岡山発琴平行」の普通列車に乗って瀬戸大橋を渡りました。しかしその時はあいにくの曇天で、霞んだ景色がいまひとつだったのを覚えています。

あれから8年後、私は社会人になりました。改めて美しい瀬戸大橋からの眺めを楽しむことができ、当時のリベンジを果たせました。そして特急へもある程度気兼ねなく乗ることができるようになった自分の成長を感じながら、万感の思いでいよいよ四国へ突入していきます。

四国に入り、〔マリンライナー〕と同じくデルタ線を左へ進む…かと思いきや、何とこの列車はへ進んでいきます。このままだと高松・徳島方面へは行けないですが…?

11:41に宇多津駅へと到着。そう、〔南風7号〕と〔うずしお13号〕の切り離し作業を行うため、ここ宇多津にいったん停車する必要があったのです。連結面には多くのギャラリーが集まっています。

本来〔うずしお13号〕は〔マリンライナー〕や〔サンライズ瀬戸〕と同様に岡山から高松方面へと向かう列車ですから、宇多津駅ホームを通らない短絡線を進めばスイッチバックの必要はないはずです。しかしそれでは〔南風7号〕との切り離しを行えないということで、「せっかく短絡線があるのにあえて使わずいったん宇多津駅に立ち寄る」という何とも奇妙なルートを通ります。

なお、上図の水色の短絡線を通る列車であっても運賃計算上は宇多津駅構内を通過している扱いとなっており、赤矢印と水色矢印で運賃に違いが出ることはありません。

無事に切り離しも完了し、11:44に〔南風7号〕が先に宇多津駅を発車。去っていく車両を見ると、アンパンマンばいきんまんが手を振っているような感じがします。

そして続けて11:46に〔うずしお13号〕が高松方面へと発車。南風7号とは逆方向に発車することになり、こちらはいったん座席の向きが逆向きになります。

宇多津~高松駅間はノンストップ。〔サンライズ瀬戸〕をはじめほぼ全ての列車が停車する坂出駅さえもこの列車は通過してしまいます。

そして12:03に高松駅へと到着。高松駅頭端式ホームとなっており、ここで約20分ぶり2度目のスイッチバックを行います。

高松駅を跨いで運行される列車は極めて少ないですが、この〔うずしお13号〕の停車時間はわずか2分。手際よく乗務員交代作業が行われ、12:05に高松駅を発車です。

高松駅で再び座席の向きと進行方向が同じになりました。逆向きとなるのは一時的なので、特に転換しようとする方の姿は見られませんでした。

高徳線はローカル線のイメージがありましたが、思いのほかスピードを出して走ります。実は今回乗車している〔うずしお13号〕は高松~徳島駅間をわずか59分で結ぶ最速達便で、高徳線内の途中停車駅も4駅のみですからかなり絞られています。ほとんどの列車が停車する屋島や引田をも通過し、1時間切りという驚異のタイムを叩き出しています。

鳴門線との分岐駅である池谷駅。ここにも大多数の〔うずしお〕が停車しますが、今回は通過です。

昨夏の最長片道切符の旅では高松~池谷駅間で〔うずしお〕を利用しましたが、その際に車掌さんからいただいた直筆のメッセージカードが今でも忘れられません。

岡山を出て約2時間、13:04に列車は終点の徳島駅へと到着。本州からここまで乗り換えなしでやってくることができるのは改めて感動です!!

徳島からはその先徳島線方面へと特急を乗り継ぐ予定になっています。佐古~徳島駅間が重複するため本来は改札外へ出られないのですが、実は次に乗車する列車まで何と約5時間も空いており、その間ずっと徳島駅構内で時間を潰すのは現実的ではないので、佐古~徳島駅間の乗り越し運賃を精算し改札の外へ出ることにしました。

せっかく徳島へ来たので、駅から歩いてすぐの「阿波踊り会館」へ。眉山ロープウェイに乗り、山頂を目指します。

山頂からは徳島市街地を一望できます。午後になり少し雲がでてきたようですが、特に天候が崩れることもなく良い眺めです。

いっそのこと4日目はこのまま徳島に泊まってしまおうか…とも思いましたが、本日はまだまだこの先移動が続きます。その様子はまた次回お届けします。

 

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

【速報】本日デビュー「HC85系」一番列車に乗車! グリーン車と普通車を乗り比べ

 

2022年7月1日(金)

今回やってきたのは名古屋駅。これから、JR東海24年ぶりとなる新型特急車両「HC85系」の営業一番列車に乗車していきます!!

HC85系が充当される営業一番列車は、名古屋7:43発の特急〔ひだ1号〕高山行。途中停車駅は岐阜・美濃太田下呂の3駅のみで、数あるひだ号の中でも最速達の停車パターンです。

名古屋駅構内の至るところに「Hello! NEW HIDA」と書かれたポスターがずらり。高山本線沿線の観光地の風景が色鮮やかに並べられ、とても魅力的です。

11番線ホームへ上がってみると、既に列車が入線していました!

改めて、こちらが本日デビューした新型特急車両「HC85系」です。HCとは「Hybrid Car」の略で、従来の気動車とは異なりこちらはモーターとエンジンの2種類を使いながら運行されます。

車体は白色をベースとしており、そこにJR東海のコーポレートカラーであるオレンジ色の帯が入っています。

前面の顔の形は何となく島根県一畑電車に似ているような気がします。何となくですが。

側面の行先表示器はフルカラーで視認性が高く、キハ85系の方向幕と比べるとかなり分かりやすい印象です。ドア横には「HYBRID」と書かれたHC85系ならではのロゴマークが描かれています。

ホーム上ではデビューを記念した横断幕や旗を持ったJR東海の社員の皆様が各所でお見送りのスタンバイ。ホームの端から端まで多くの鉄道ファンや乗客でごった返し、デビュー初日ならではのお祭り騒ぎとなっていました。

本日の〔ひだ1号〕は6両編成での運行。元々基本編成4両(1~4号車)のみでの運行予定でしたが、6月10日に急遽付属編成2両(5・6号車)の増結が発表されました。一番列車ということで1ヵ月前の午前10時に発売開始された指定席は瞬殺でしたが、この増結の情報を運良く手に入れることで6月10日以降に指定席を手に入れられたという人も多そうです。

では乗り比べということで、まずは名古屋からグリーン車に乗っていきます!

グリーン車1号車で、名古屋を出発する時点では先頭にあたります。ただし次の岐阜駅で列車の進行方向が変わるため、この時点では座席の向きは逆向きです。

座席のモケットは主に寒色が用いられ、背中を包み込むような形状の背もたれは見ため以上にゆとりがあります。リクライニングは東海道新幹線のN700Sと同様で、肘掛けのレバーを操作すると座面が同時に沈み込むようになっています。フルで倒すと感動の快適さです!!

座面は一瞬かなり硬いように感じましたが、ゆっくり腰掛けてみると体の形状に合わせて安定して座れるようになっており、低反発まくらと似ている感じがします。

足元にはフットレストがあり、靴のまま使える面と靴を脱いで使える面の両方があります。また各座席の肘掛け部分にコンセントが完備されているほか、車内ではJR東海のフリーWi-Fiも利用可能です。

グリーン車は座席間隔が広いということもあって、背面テーブルは出した後に手前側へスライドできるようになっています。またその上にはフックも設置されており、お弁当等を入れた袋を掛けておくのに便利で個人的にかなり有難いです!

ヘッドレストも可動式で、その横には読書灯も設置されています。読書灯は肘掛けにあるボタンでオンオフの操作ができるようになっています。

そして発車時刻となり、列車は定刻通り7:43に名古屋駅を発車!!

グリーン車付近では出発式が行われており、多くの人に見送られながら華々しいデビューとなりました。

SNS上でも話題になっていた通り、車内チャイムは「アルプスの牧場」。ワイドビューチャイムが引き継がれなかったことに一部では落胆する声も見られましたが、オルゴールの音色から鮮やかなメロディへとリメイクされ、新時代の幕開けを感じさせてくれるこの「(新)アルプスの牧場」もとても良いと思います。

客室とデッキを隔てるドアの上部には大きいモニターが設置され、どのような方法で走行しているかを随時リアルタイムで表示してくれます。ハイブリッド車両ならではの光景です。

そしてとにかく走行音が静か。これが今回乗車して最も感動したことです。従来のキハ85系が奏でるけたたましいエンジン音も旅情をかきたてるものがありましたが、それと真逆をいく驚きの静粛性で、私の中にあった〔ひだ〕のイメージが大きく覆されました。

2022年3月限りでJR東海の特急列車から「ワイドビュー」の呼称は廃止されましたが、HC85系の窓もかなり大きめで従来のワイドビュー車両とあまり遜色はない気がします。横に大きく長い窓からは太陽光が客室内にたっぷり差し込み、とても明るい車内で過ごすことができます。

駅到着時には、ドア上部のモニターに駅名が大きく表示されるほか、駅ナンバリングもしっかり表示されます。客室の一番後方からであってもこれほど見やすく表示されているので視認性は抜群です。

名古屋駅を出発して約20分、列車は最初の停車駅である岐阜駅に到着。ここで東海道本線から高山本線に入るため、列車の進行方向が変わります。

岐阜駅のホーム上では地元の皆様やちびっ子たちが旗を振ってお見送り。皆様朝早くから本当にありがとうございます!!

続いて岐阜駅からは、普通車指定席を利用していきます(上の画像は名古屋駅停車中に撮影したもの)。本日の〔ひだ1号〕では2・3・5・6号車が普通車指定席、4号車のみが普通車自由席となっています。

座席モケットの色はグリーン車と大きく異なり、オレンジや赤といった暖色を用いた温かみのある色合いです。可動式のヘッドレストはありませんが、特急ですので真っ白なヘッドカバーが掛けられています。

普通車の方ではリクライニング時に座面が沈み込む機構は備わっていませんが、背もたれの倒れ方はグリーン車とさほど変わらないような気がします。また座面の座り心地もグリーン車と大差なく、コンセント・Wi-Fi・フックもあることから普通車でもかなりクオリティが高いと感じました。

一方、普通車にはフットレスト、読書灯、テーブルが手前にスライドする機構はなく、この辺りはグリーン車と明確な差別化がなされていると感じます。グリーン車・普通車とも同じく2+2列の配置ですが、当然ながらグリーン車の方がゆとりがあり快適性は高いです。

高山本線に入り座席の向きと進行方向が同じになった〔ひだ1号〕。次の美濃太田までの区間の途中には、車窓犬山城木曽川の流れを楽しむことができ、キハ85系と同様に車窓を解説する車内放送が随時入ります。岐阜~美濃太田駅間ではこれら両方とも見えるA席がオススメです!

一つだけ残念な部分を挙げるとするならば、前面展望が楽しめなくなってしまったことでしょうか。客室内から前面が見えないほか、デッキに出て運転室のすぐ後ろの窓から覗いても窓枠などで視界が遮られ前面展望を楽しむことは難しそうです。高山本線雄大な自然を前面展望で楽しむなら、今のうちにキハ85系に乗っておきましょう!

岐阜駅からさらに20分ほどで、列車は美濃太田駅に到着。今回私はここで下車しました。

隣のホームにはちょうど高山駅を朝一番に出発した名古屋行の〔ひだ2号〕が停車しており、単線区間が続くためここで列車の行き違いを行います。一瞬でしたが新旧「ひだ」の揃い踏みとなりました!

列車は美濃太田駅でも多くの人に見送られながら、高山方面へと発車していきました。

 

market.jr-central.co.jp

HC85系は今後順次〔ひだ〕〔南紀〕のキハ85系を置き換えていく予定になっています。特にキハ85系高山本線で楽しめるのはそう長くありませんので、乗り納めも忘れずに!

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

#6 令和の世に蘇った懐かしき国鉄特急で本州最終章【特急リレー最長片道切符の旅】

 

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4日目 2022年5月4日(水)

仙台駅から始まった「特急リレー最長片道切符の旅」もいよいよ4日目に突入。本日のスタートは鳥取駅からとなります。

昨晩は一時絶体絶命のピンチに追い込まれましたが、何とか一命をとりとめて清々しい朝を迎えることができました。改めて東横INN鳥取駅南口様には感謝の思いでいっぱいです。

東横INNの朝食バイキングは朝6時30分からということで、あわよくば朝食もいただいてしまおうかと思いましたが、さすがは満室というだけあって朝食会場はオープンと同時にかなりの混雑。優雅に食べていると予定の列車に乗り遅れるおそれがあったので泣く泣く諦めチェックアウトしてきました。

改札をくぐり、発車標にて番線を確認します。5月1日の仙台出発から数えて通算11本目となる今回の列車は鳥取7:04発の特急〔スーパーまつかぜ1号〕益田行です。

朝7時…はえぇよぉ…(笑)。

鳥取には今回わずか8時間半程度しか滞在していません。というかいつもただ眠るためだけに鳥取の地に降り立つことが多いので、まともな観光をしたこともなくいつも慌ただしく去っている気がします。

ホームへ上がると、朝日に照らされた2両編成キハ187系気動車が停車中。顔の形状はあまり特急車両らしくありませんが、これこそが山陰地区で広く活躍する代表的な特急車両となっています。

側面には島根県の花である「牡丹」が描かれ、山陰らしさを感じることができます。

さっそく乗り込み、列車は定刻通りに鳥取駅を発車。西へと向かう朝一番の特急なだけあってかお客さんはそこそこ乗っています。

わずか2両編成の特急列車と聞いて首都圏に住む私としてはかなりびっくりですが、シンプルに1号車が指定席で2号車が自由席となっているのでとても分かりやすいです。グリーン車は連結されていません。

朝ご飯を食べ損ねていたので、鳥取駅構内のセブンで購入した「高菜やきめし」のおにぎりをいただきます。どうやら地域限定商品のようですが、山陰では有名なんでしょうか。とても美味しかったです!

4日目の今日も朝から快晴。ちょこちょこハプニングこそ起こりますが、今回の企画はとにかく天候に恵まれた日が多くて何よりです。

まもなくすると列車は途中の倉吉駅に到着。現在関西~鳥取間の主要アクセスルートとして知られる〔スーパーはくと〕はここ倉吉駅を始発・終着としています。乗り入れ路線は山陰本線のみですが主要駅ということもあってかそれなりの乗車がありました。

車窓右側では、ところどころで海も見渡すことができます。昨晩の〔はまかぜ〕では夜遅くにつき日本海の景色を眺めることができなかったので、この列車が最初で最後に日本海の眺めを楽しむことのできる列車といえそうです。

一方で車窓左側に目をやると険しい山々が連なっており、海と山に挟まれた地帯であることが確認できます。山陰「本線」と呼ぶ割に特急の本数が少なく編成も短いのは一見すると違和感かもしれませんが、むしろこれほど自然豊かな地域に少ないながらも特急が運行されていることはある意味とてもありがたいことなのかもしれません。

鳥取駅を出て約1時間、列車は8:06に米子駅へと到着。鳥取県西部最大の都市で、隣の安来駅はもうお隣の島根県に入ってしまうくらい県境ギリギリの街です。

ここ米子で岡山方面へと乗り換えます。2方向の線路は本来は伯耆大山という駅で合流しているのですが、例によって「分岐駅通過の特例」に基づき米子駅の改札口を出なければ特急を利用して伯耆大山米子駅間を往復乗車できます。

米子駅は現在絶賛工事中。かつての駅舎はかなりの部分が取り壊されており、米子のひそかな名物でもある「海、山、旅のドラマは米子駅から」と書かれた味のある跨線橋もじきに見れなくなってしまうのでしょうか。

先述の通り特例を利用しているため米子駅の改札外に出ることはできませんが、乗り継ぎの列車はすぐにやってくるので特段問題はありません。続いて乗車するのは米子8:19発の特急〔やくも8号〕岡山行です。昨晩いったん播但線経由で山陽から山陰へとやってきましたが、今度は伯備線経由にて再び山陽へと戻ります。

この〔やくも8号〕こそ、今回の企画において私が特に楽しみにしていた列車の一つでもあります。というのも…。

何とこちら、先日大きな話題ともなった「国鉄色リバイバル編成」にて運行されているのです!!

岡山~出雲市駅間を伯備線経由で結ぶ特急〔やくも〕は1972年に運行開始。今年デビュー50周年を記念し、381系1編成が赤と白のカラーリングからこちらの国鉄色へと変更されました。

381系は現在わが国で運行されているJRの特急車両としては最古参のものになります。今では珍しくなったヘッドマークもここでは現役です。

車体前面のみならず、側面も鮮やかな赤とクリーム色の塗装。これはテンションが上がります!

さっそく乗車していきます!

列車は定刻通りに米子駅を発車。残念ながら私の指定した座席は窓割りガチャに失敗したハズレ席でしたが、これはこれで古い車両をリニューアルしながら長く使い続けていることの証でもありますので、特に自由席に移ったりはせずこのまま乗っていこうと思います。

先ほどは通過した伯耆大山駅に停車し、山陰本線と分かれていよいよ伯備線へ入っていきます。

内装に関しては他の381系と特に違いはありません。GW期間中ということで混雑を恐れていましたが、中日ということもあってか車内は空いていました。また、私と同じ鉄道ファンらしき乗客も複数名見受けられました。

岡山までの途中停車駅は伯耆大山根雨、新見、備中高梁、倉敷です。列車によって停車駅が若干異なり、米子~岡山駅間で全ての列車が必ず停車する駅は新見、備中高梁、倉敷のみです。このほか生山や総社に停車するものもあります。

こどもの日も近いということで、車窓からはたくさんのこいのぼりが空を泳ぐ姿も。とっても立派です。

江尾駅は停車駅ではありませんが、1分ほど運転停車を行いました。

ここでは何と、下りの寝台特急サンライズ出雲とすれ違い。昨晩21:50に東京駅を出発してきた列車です。

かつてのブルートレイン「出雲」は京都から山陰本線に入るルートで運行されていましたが、サンライズ出雲に関しては〔やくも〕と重なる伯備線経由での運行となっています。1998年から2006年までの8年間は「出雲」と「サンライズ出雲」の両方が存在しており、方向幕に「伯備線経由」と書かれているのはそのためです。

1982年に全線電化が完了し、現在に至るまで陰陽連絡の主要ルートとして大きな役割を果たしている伯備線。ただ多くの区間が単線で、とってものどかな車窓が続きます。私自身この伯備線には何度か乗ったことがあり、晴れの日や雨の日、時に大雪の日もありましたが、どれをとっても本当に素晴らしい景色が広がっています。

途中のどっかの駅では下りの〔やくも〕との行き違いもありました。あちらが現在広く運用されている一般的な塗装の381系です。次の駅はどっかの駅です。

伯備線のほか姫新線芸備線が乗り入れる新見駅に到着。伯備線内の途中駅としては最も主要な駅で、山陽と山陰のほぼ中間に位置しています。新見からはそれなりの乗車がありました。

新見を過ぎてからも美しい車窓は続きます。車窓に広がる高梁川がこれまた絶景で、見ていて飽きません。

備中高梁駅を過ぎると、線路が複線になります。だんだんと岡山が近づいているのを実感します。

駅到着前、車内では鉄道唱歌のオルゴールチャイムが流れました!

倉敷駅に到着。ここから先は山陽本線へと入ります。ホームにあしらわれた蔵造の模様もこの駅の名物の一つです。

米子を出て約2時間、10:35に終点の岡山駅へと到着。「大都会岡山」というだけあって大変人が多いです!

国鉄色リバイバル編成の381系は運用が固定化されており、基本的にやくも8・9・24・25号に充当されています。8号からの折り返し11:05発が9号となりますので、季節や区間を問わず明るい時間帯に乗車される場合は8号か9号がオススメです!

 

このあとはいよいよ四国へと突入していきますが、その様子はまた次回お届けします。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。